アカエリマキキツネザル

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アカエリマキキツネザル
アカエリマキキツネザル
アカエリマキキツネザル Varecia rubra
保全状況評価[1]
CRITICALLY ENDANGERED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 霊長目 Primates
: キツネザル科 Lemuridae
: エリマキキツネザル属
Varecia
: アカエリマキキツネザル
V. rubra
学名
Varecia rubra (É. Geoffroy, 1812)[3]
シノニム[4]
  • Lemur rubra É. Geoffroy, 1812
  • Prosimia rubra: A. Smith, 1833
  • Prosimia erythromela Lesson, 1840
  • Varecia rubra: Gray, 1863
和名
アカエリマキキツネザル[5]
英名
Red ruffed lemur[3]
マダガスカル島
分布域[1]

アカエリマキキツネザル学名Varecia rubra)は、マダガスカル島固有種で、クロシロエリマキキツネザルとともにエリマキキツネザル属を構成する原猿2018年時点における絶滅寸前種

分類[編集]

属名Vareciaマダガスカル語でキツネザルを意味するvarikaが語源であり、種小名rubraラテン語で赤を意味する[6]

かつてはクロシロエリマキキツネザルと同種(=エリマキキツネザル)とされその亜種と考えられていたが、2001年に独立種として分割する説が提唱された[3][5]

分布・保全状況[編集]

公式には、すべての野生種マダガスカル島北東部のマスアラ半島周辺にあるマスアラ国立公園英語版マキラ自然公園英語版で保護されており[1]飼育下では2009年時点において世界で約590頭と、絶滅に対する最低限の予防対策はとられているものの、その遺伝的多様性は非常に限られている[1]違法伐採をはじめとする自給自足者による開墾生息地を奪われたり、狩猟の対象として命を狙われることもあり、その結果として絶滅寸前まで追いやられている[1]

身体的特徴[編集]

体長5056センチメートルであるのに対し、尾長5665センチメートルと、やや尻尾のほうが長い[7][8]体重3.34.5キログラムだが、メスのほうがオスよりも重い[9][7]。厚く覆われた柔らかい体毛は赤褐色で、頭部腹部四肢、尻尾は黒色だが、後頸部こうけいぶだけ白色。英名Red Ruffed LemurRuffed(ラフト)は「襞襟ひだえりのついた」という意味であり、小さな耳を隠すように少し長く伸びた赤褐色の毛によって作られる襞襟がある[9]

生態[編集]

行動[編集]

昼行性であり、活動のピークは朝方と夕方である[10]。樹上での生活を好み、樹冠の最上部にいることが多い[7]。きれい好きな動物であるため、自分自身に限らず社会的グルーミングに多くの時間を費やすこともある。

採餌[編集]

熱帯雨林では、特に木の上に生ったイチジクの実を好み、これを探すために木に登ったり、別の木にジャンプしたりしながら一日を過ごす[8]

食物[編集]

基本は果実食動物英語版。野生下では、果物木の葉花蜜種子を好み、季節によって異なるものを摂取する[9]。飼育下では、果物、コロブス亜科用の餌、ケールロメインレタスほうれん草などの野菜が与えられる[9]

社会体制[編集]

メスが群れを統率する主導権を握っているが、一つの群れを構成する数は多様である[7]雨季乾季で群れの行動に違いがあり、餌が豊富な雨季は大きな群れで行動するのに対し、乾季は不足する餌を求めて分散して行動するが、このとき大きな群れが完全に分裂することもある[10]

繁殖[編集]

性成熟までの期間はオスが34メスが2年弱[1]。同じエリマキキツネザル属クロシロエリマキキツネザルと同様に一夫一妻つがいを形成する[11]繁殖期は57で、メスは102の妊娠期間を経て911月初旬に出産する[1]。ほかの霊長類とは異なり地1020メートルの高さに小枝や木の葉、つる植物でできたを作り、出産と育児をそこで行う[7]一度に23産まれるのが一般的だが、飼育下においては最大で6匹の同腹仔数が報告されている[7]。野生下の子ザル12間で巣離れをし、34間までには母親の後ろを追いかけようとすることができるようになるが、死亡率が非常に高いため偶発的な転倒や怪我により、子ザル65%3月を迎えることができない[7]

寿命[編集]

野生下では1520生きるが、飼育下で25生きることも珍しくなく、記録では33生きた個体もいる[7]

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d e f g h Borgerson, C.; Eppley, T.M.; Patel, E.; Johnson, S.; Louis, E.E.; Razafindramanana, J. (2020). “Varecia rubra”. The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T22920A115574598. doi:10.2305/IUCN.UK.2020-2.RLTS.T22920A115574598.en. 
  2. ^ Checklist of CITES Species”. CITES. UNEP-WCMC. 2024年3月23日閲覧。
  3. ^ a b c Groves, C. P. (2005). Wilson, D. E.; Reeder, D. M. eds. Mammal Species of the World (3rd ed.). Baltimore: Johns Hopkins University Press. pp. 117. OCLC 62265494. ISBN 0-801-88221-4. http://www.departments.bucknell.edu/biology/resources/msw3/browse.asp?id=12100060 
  4. ^ John Buettner-Janusch & Ian Tattersall, “An annotated catalogue of Malagasy primates (families Lemuridae, Indriidae, Daubentoniidae, Megaladapidae, Cheirogaleidae) in the collections of the American Museum of Natural History,” American Museum Novitates, No. 2834, American Museum of Natural History, 1985, Pages 1–45.
  5. ^ a b 相見滿・小山直樹「キツネザル類はどのように分類されてきたか」『霊長類研究』第22巻 2号、日本霊長類学会、2006年、97-116頁。
  6. ^ Red-ruffed Lemur (Varecia rubra) Fact Sheet: Taxonomy & History”. San Diego Zoo Wildlife Alliance (2024年3月6日). 2024年3月30日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h Animal Info – Ruffed Lemur”. Animalinfo.org. 2023年3月23日閲覧。
  8. ^ a b Bristol Zoo gardens: red ruffed lemur”. Bristolzoo.org.uk. 2009年6月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月23日閲覧。
  9. ^ a b c d red ruffed lemur factsheet”. 2006年11月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月23日閲覧。
  10. ^ a b Duke Primate Center red ruffed lemur”. 2011年3月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年3月23日閲覧。
  11. ^ Red Ruffed Lemur Facts”. 2012年3月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年3月23日閲覧。

関連項目[編集]