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ゆべし

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ゆべし(柚餅子)とは、柚子を用いた加工食品あるいは和菓子の一種。

概要

源平の時代に生まれたとも伝えられ、菓子というよりも保存食・携帯食に近いものであったとされ、時代とともに現在のような菓子へ変化したといわれている。

現在では珍味に分類されるものと、和菓子の一種(蒸し菓子や餅菓子など)に分類されるもの、その他のものに分けられる。

全国各地で様々な形状・味のゆべしが存在しており、製造法も異なり、千差万別である。中には各地のゆべしを食べ歩く事を趣味とする通もいる。

珍味のゆべし

珍味のゆべし(長野県天龍村)

柚子の実の上部を切り取った後、中身をくり抜き、この中に味噌山椒胡桃などを詰めて、切り取った上部で蓋をする。そして、これを等に巻いて日陰で1ヶ月〜半年ほど乾燥させる。食べる際には、藁を外して適宜に切り分け、酒の肴やご飯の副食物として用いる。

古来からある料理で、江戸時代の料理書『料理物語』には酒肴としてゆべしの製法が記されている。現在でも、愛媛県松山市奈良県十津川村和歌山県田辺市龍神村長野県天龍村などで製造されている。

和菓子のゆべし

丸ゆべし

柚子の実の上部を切り取り、そこから中身をくり抜いて柚釜を作り、そこに柚子の果肉、もち米粉、上新粉白味噌砂糖などを混ぜたものを入れて蒸したもの。

蒸しと乾燥を20〜30回、飴色になるまで繰り返す製法のため3〜4ヶ月の期間を要する。常温で比較的長期保存が可能なのは、この製法に起因する。また、柚釜に使用される柚子も傷のない、上質なものが必要とされるため、贅沢な茶菓として茶席で供される機会も多い。

丸ゆべしの代表的な産地として石川県輪島市が有名であるが、これは輪島塗行商人が携行食として、また顧客への手土産として広まったとの説が有力である。

棒ゆべし(竹皮ゆべし)

柚子の皮を刻んだものともち米粉、上新粉、白味噌、醤油、砂糖などを混ぜて蒸し、の皮に包んだもの。

棒ゆべしの代表的な産地には愛媛県西条市がある。

東北地方のゆべし

くるみゆべし(宮城県仙台)

仙台ゆべしなど、東北地方のゆべしには柚子が入っていない。柚子の産地から距離があり、材料として使われにくかったからである。また、胡桃を入れるが、これは胡桃が材料として入手しやすかったからである。その良質で豊富な油脂分(江戸時代以前はクルミは山村にとって貴重な蛋白源と脂肪分でもある)のためか店頭では「油べし」と表記されることもある。

味付けは醤油ベースであり、砂糖・黒砂糖の甘みにより、甘じょっぱいものになっている。東北地方のゆべしは、本来の柚子の菓子ではなく、餅菓子となっている。

東北地方のゆべしは、2種類に大別される。

  • 棒型
仙台市盛岡市山形市などでは、棒状の「くるみゆべし」や「胡麻ゆべし」を切ったものが食される。
  • 三角型
福島県田村郡三春町では、をゆべし生地で包んだ、三角の饅頭型ものが広く知られている。福島県で単に「ゆべし」と言うと、こちらを指す場合が多い。

例外として、福島県奥会津地方では20*5cmほどのかまぼこ型にさい箸などで二本の筋を整形し、山椒の皮の粉末の入った餅菓子である。 製法としてはきりせんしょと同じでもち米粉に砂糖と山椒の実の皮の粉末を混ぜ、練ったものを蒸して作る。岩手方面のきりせんしょからの派生、名称の混交と思われる。

備中のゆべし

岡山県の旧備中国は柚子の産地であったため、高梁市矢掛町で江戸時代より地元産の柚子を用いたゆべしが製造されている。

岡山県のゆべしは形状が様々なのが特徴である。高梁のゆべしには薄い平板状のもの、薄い棒状・紐状のものを結んである形のもの、サイコロ状のもの、また上述の丸ゆべしなどがあり、矢掛のゆべしには羊羹を用いて丸ゆべしに類似した形状のもののほか、紐状のものを結んだ形のもの、上述の竹皮ゆべし(棒ゆべし)や丸ゆべしなどがある。

高梁のゆべし

柚子、もち米粉、水飴、砂糖などを用いて製造され、餅のように柔らかくモチモチとした食感である。表面には砂糖がまぶしてあり、薄黄色・白っぽい色をしている。土産菓子としてだけでなく、地元では健康食品としても親しまれている。
かつて松山城下に居住した小堀遠州が考案したとされる。現在も県内産、特に高梁市内産の柚子が使用される。
派生として味噌風味の「味噌ゆべし」などもある。また、同地には「ゆねり(柚練)」という柚子製品も存在する[1]

矢掛のゆべし

柚子のヘタ付近を切り、中をくりぬき、その中に柚子風味の羊羹を練り込んで蒸したもので、丸ゆべしに類似している。
羊羹の代わりに餡などを入れる派生品も存在する。他にも高梁風のゆべしや味噌ゆべしなども製造されているが、前述の柚子をくり貫いたものが矢掛におけるオリジナルである。
江戸時代から名物として知られ、矢掛は山陽道の中でも大きい宿場町であったため、銘菓として参勤交代の大名達にも好まれ、同地に宿泊した天璋院(篤姫)も好み大量に食したという[2]。他にも作家の武者小路実篤も好んだという。
矢掛は高梁に比べると規模の小さな町ではあるが、多くのゆべし製造菓子店が存在し、様々な形のゆべしがあり、独自のゆべし文化が根付いている[3]

その他のゆべし

香り付けとしてのゆべし

求肥羊羹に柚子の香りをつけたものを「ゆべし」と称する場合もある。

薬味のゆべし(壱岐)

長崎県の壱岐では、柚子の皮だけを煮たものをゆべしと呼ぶ。由来は不明である。薬味として用いる。

一般的な家伝壱岐ゆべしの製法は、まず柚子の皮を薄く剥き、粉砕する。醤油を加え極弱火で加熱し1時間煮て、昆布の出汁と砂糖(柚子の皮2kgに対し三温糖10kgとザラメ1〜2kg)を加えさらに2時間煮る。仕上げに唐辛子を入れて30分ほど煮て完成する。

脚注

  1. ^ 太田健一 『図説 新見・高梁・真庭の歴史』 郷土出版社、2009年。
  2. ^ 岡山県立博物館で発見された宿帳記録にその旨が記載されていた。
  3. ^ 犬飼亀三郎 「矢掛名物ゆべし考」 『高梁川』第4号、高梁川流域連盟、1956年。

関連項目

外部リンク