ちょっとの雨ならがまん

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ちょっとの雨ならがまん
監督 安田潤司
脚本 安田潤司、唐原理恵
製作 安田潤司
出演者

GAUZE、G.I.S.M.、THE EXECUTE 、THE COMES、 THE TRASH、CLAY、GASTUNK、町田町蔵(町田康)、石井聰亙(石井岳龍)、

ZELDA、佐藤幸雄(すきすきスウィッチ)、マサミ、LSD、ほか
主題歌 『戦場』GAUZE
撮影 安田潤司
編集 安田潤司
配給 P.P.P.project
公開 日本の旗 1983年3月
上映時間 45分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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ちょっとの雨ならがまん』(ちょっとのあめならがまん)は1983年に製作された日本のパンクドキュメンタリー映画。安田潤司監督。

概要[編集]

映画『素晴らしき日々も狼狽える』『ファー・イースト・ベイビーズ』や伝説のハードコア・パンクバンドG.I.S.M.のオフィシャルビデオ、頭脳警察イエロー・モンキーLUNA SEAglobeなどのMVを監督した安田潤司が、横浜放送映画学校(日本映画大学の前身)に在校時、21歳だった1983年に監督制作した当時のパンク、ハードコパンクシーンを8mmフィルムで撮影したパンクドキュメント映画である。

タイトルは、GAUZEの曲「戦場」の歌詞から引用されている。この曲は1982年にCITY ROCKERレーベルから発売されたオムニバスアルバム「CITY ROCKERS」の中に収録されている。また、本作のエンディングにも使用されている。

内容[編集]

1981年頃、日本のパンク・アンダーグラウンドシーンにGAUZE 、G.I.S.M.、THE EXECUTE、THE COMESなどのハードコアパンクが登場、演奏スピード、歌詞やパフォーマンスの過激さもあり音楽雑誌の『DOLL』『宝島』をはじめ多くのメディアに取り上げられる。

この映画は当時のパンクおよびハードコアパンクを中心に活動していたバンドのライブ映像とバンド、映画監督の石井聰亙などのインタビュー、客のコメントのカットバック、THE STALIN-サルのアニメーションカリグラフ、そしてパンクシーンを傍観する1人の少女のモノローグで構成されている。このモノローグは、ライブシーンの過激さとは対照的にとてもクールな口調で語られている。

笑い飛ばすことができなくて何がパンクだと思います。のっけに永遠の白旗を掲げ、負けを承知の八百長試合、勝ってしまったら終わりです。私はジャコメッティの彫刻のようなガリガリの体になってヌード写真を撮るんだ。『セーラー服と機関銃』と『狂い咲きサンダーロード』を2で割ったような映画を撮るんだ。
退屈なんてとっくの昔に通り過ぎてしまった。色々なものが見えてくる

というモノローグからラストシーンを迎え、渋谷の交差点(現・109前)で大きな白旗を掲げた少女が叫ぶ。

「少年はいつも動かない!世界ばかりが沈んでいくんだ!」

出演[編集]

ライブ

インタビュー

  • カズシ(THE CLAY)
  • マリオ(G.I.S.M.)
  • SHIN(GAUZE)
  • ヒロ(GAUZE)
  • ヒデマル(GAUZE)
  • サヨコ(ZELDA)
  • 町田町蔵(町田康)
  • RANDY内田(G.I.S.M.)
  • 石井聰亙(石井岳龍)
  • 佐藤幸雄(すきすきスウイッチ)
  • 木村俊樹(映画プロデューサー)
  • マエダジョー
  • アベ
  • 川上啓之(人民オリンピックショウ、現swaraga)
  • 鈴木琢(人民オリンピックショウ)
  • 箕輪扇太郎(人民オリンピックショウ)
  • チトセ(THE COMES)
  • ヨッサン(THE CLAY)
  • KAZ(THE CLAY)
  • MASAMI(THE TRASH 当時)
  • HIROSHI(THE TRASH)
  • マーチン(THE TRASH)
  • JUN(THE TRASH)
  • NAMI(米屋奈巳)
  • インタビュアー:唐原理恵

スタッフ[編集]

  • プロデューサー:安田潤司、唐原理恵
  • 監督・撮影・編集・アニメーション:安田潤司
  • 助監督:上田明輝

製作[編集]

「製作」としてクレジットされた「スローターハウス」とは、唐原理恵と出演者の米屋奈巳が居住していた川崎市木月元住吉)の住宅に設けられた事務所である。本作の完成後に解散した。

上映[編集]

映画完成後、安田は後輩の大坪草次郎とともに、パンク映像などをリリースする「P.P.P.project」を立ち上げ、本作の上映主体とした。

1983年、文芸坐ル・ピリエで公開、SOLD OUTとなる。

1984年7月、池袋文芸坐にて開催された「オールナイト・フィルムGIG」(本作のほかに『爆裂都市 BURST CITY』(監督・石井聰互)、『闇のカーニバル』(監督・山本政志)、『アナーキー/ノットサティスファイド』(監督・太田達也))では、会場のキャパシティが300席のところに600人のパンクスや客が集まり、会場に入りきれないパンクスが暴れて騒ぎになるが、急遽隣接する文芸坐の別館でも上映することで対応した。この上映会は同年の「黒澤明特集」に次ぐ動員記録となった。

同年8月、安田は文芸座ル・ピリエでパンクやロック映画のみを5日間上映する「PUNKS 5DAYS」を開催。本作のほかに『パンクス青の時代』『G.I.S.M.』『アジアの逆襲』(監督・石井聰互)、『闇のカーニバル』、『無防備教室』(監督・諸沢利彦)、『アナーキー/ノットサティスファイド』、『カンカンランラン』(監督・塚本雪介)、『カスッカスッ』(監督・Mオーツボ/大坪草次郎)が上映された。

以後、日本各地のミニシアターや新宿ロフト(シネロフト)などのライブハウス[1]京都大学西部講堂など[要出典]各地で上映を重ね、延べ5万人に及ぶ動員を記録したが、1994年の上映を最後に一切の上映をやめ、ビデオ化されることもなかった[2]

再公開[編集]

最後の上映から24年が経過した2018年8月から、デジタルリマスターされた形で、安田の『ファー・イースト・ベイビーズ』(1993年)との併映という形で全国の映画館で順次公開された[3]

宇川直弘が主宰するメディアのDOMMUNEでは「JAPANESE HARD CORE PUNK MOVIE / 安田潤司の世界」という特番も組まれた[4]

脚注[編集]

  1. ^ 「ちょっとの雨ならがまん」の検索結果 - ロフトアーカイブズ
  2. ^ 映画『ちょっとの雨ならがまん』 - PPP.project(2018年の再上映時の案内)
  3. ^ “パンクドキュメンタリー「ちょっとの雨ならがまん」リマスター版の予告編解禁”. 映画ナタリー. (2018年7月26日). https://natalie.mu/eiga/news/292661 2023年11月20日閲覧。 
  4. ^ JAPANESE HARD CORE PUNK MOVIE / 安田潤司の世界 - DOMMUNE

外部リンク[編集]