おふくろの味

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おふくろの味(おふくろのあじ)は、幼少期に経験した家庭料理、もしくはそれによって形成された味覚、またそれらを想起させる料理を指す言葉。「おふくろの味」という言葉の普及は料理人の土井勝が出演する番組(後述)の影響によるところが大きいとされる。

概要[編集]

家庭料理の例

日本では古くから家庭における料理、炊事は母親(「おふくろ」)の仕事であったため、このように呼ばれる。肉じゃが味噌汁卵焼き漬物などが代表格に挙げられるが、世代によってバラつきがあり、第二次世界大戦後はカレーライスなどの洋食も含まれるようになっていった。また都市部では惣菜としてのコロッケなどは早い段階から肉屋で市販されていたため、こういった出来合いの惣菜も、ともすればおふくろの味に近いイメージで扱われる。

こういった料理はテレビ受像機が家庭に普及し始めて以降、「きょうの料理」「おかずのクッキング」等の番組の全国放送で知られる料理人の土井勝らによって様々な家庭料理が紹介されたことにより、各々の家庭でのメニューの平板化も発生している。

ただ、テレビなどメディアの普及によってメニューの種類こそ平板化したものの、各家庭で手に入る食材や調味料、個々の家族の嗜好にもよって「適当に」改変が加えられる傾向も根強く、料理の名前こそ同一でも味付けは各家庭で独自のものとなっていることも少なくない。場合によっては各家庭の経済事情から、野菜炒め一つとっても野菜がキャベツであったりハクサイであったり、類が豚肉鶏肉魚肉ソーセージであったりと、使われる食材も様々な組み合わせが存在する。また料理を作る人の性格的な違いから、下拵えや火加減にもばらつきがあり、この辺りの差も「おふくろの味」の構成要素となっていた。

おふくろの味と食生活[編集]

おふくろの味に似た概念は世界各地に見出される。例えば米国の黒人社会に根付いているソウルフードなどである。いずれも郷土料理国民食とも呼ばれるものであるが、日本では世界各地の郷土料理やそれの改変料理が家庭料理として食卓に上っている。

その一方で、日本が経済的な豊かさを謳歌したバブル景気以降、インスタント食品冷凍食品レトルト食品といった簡便で半調理済みの食材が家庭の食卓に浸透し、「食卓のアメリカ化」とでも呼ぶべき現象も見られる。ただこの「食卓のアメリカ化」は見た目が豪華になった半面で、地域色や季節に於ける変化に乏しいものともなってしまい、ここでアンチテーゼ的に「おふくろの味」が見直される現象が発生し始めている。

バブル景気以降の日本では、こういった素朴な料理に回帰する需要にあわせ、「おふくろの味のような料理」を提供する飲食店も増加する傾向も見られ、これらは都市部を中心に素朴な料理を提供している。またこういった需要はコンビニエンスストア弁当にまで見出すことができ、従来よりの若者向けに味が濃くボリュームのある弁当のほかに、炊き込み御飯や郷土料理といった伝統食に回帰した弁当も販売されている。

上に挙げたコンビニエンスストアの変化は、高度経済成長以降に進行した核家族化に加え少子高齢化独居老人の増加にも関連し、また団塊の世代という2000年代以前には未開拓であった市場への対応でもある。世代を問わず、グルメブームの一端としてこういった郷土料理に関心を示す層も見られる。

関連項目[編集]

  • 味覚
  • 食育
  • 個食 / 孤食
  • 雁屋哲 - 漫画原作者。自身のコラムである美味しんぼ塾で「もしも恋人がおふくろの味と聞いて顔が緩むようであれば婚約を伸ばすべきだ」と書いたり、おふくろの味自体を乳離れできない甘ったれた物と書いている。