「高温岩体地熱発電」の版間の差分
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[[Image:EGS diagram.svg|thumb|1. 貯水池 2. ポンプ室 3. 熱交換器<br />4. タービン室 5. 産出井 6. 注入井<br />7. 地域暖房用温水 8. 多孔質堆積物<br />9. 観測井 10. 結晶質岩盤]] |
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'''高温岩体地熱発電'''(こうおんがんたい |
'''高温岩体地熱発電'''(こうおんがんたいちねつはつでん)または'''高温岩体発電'''(こうおんがんたいはつでん)とは、[[地熱発電]]において天然の熱水や蒸気が乏しい場合に、水を送り込んで蒸気や熱水を得る技術である<ref name="criepi49">{{Cite journal |和書 |year=2003 |title=未利用地熱資源の開発に向けて -高温岩体発電への取り組み- |journal=電中研レビュー |issue=49 |publisher=電力中央研究所 |ISSN=09147896 |url=http://criepi.denken.or.jp/research/review/No49/index.html}}</ref><ref name="MIT_EGS">[http://geothermal.inel.gov/publications/future_of_geothermal_energy.pdf The Future of Geothermal Energy, Massachusetts Institute of Technology, 2006]</ref>。略称は |
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HDR (hot dry rock geothermal power) もしくはEGS (Enhanced Geothermal System)。 |
HDR (hot dry rock geothermal power) もしくはEGS (Enhanced Geothermal System)。 |
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== 概要 == |
== 概要 == |
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すでに存在し地下滞留している熱水を利用する従来の地熱発電に対し、天然の熱水や蒸気が乏しい場合に、地下に高温の岩体が存在する箇所を水圧破砕し水を送り込み、熱水の滞留地層をつくることで蒸気や熱水を得る。地熱利用の機会を拡大する技術として期待されている<ref name="criepi49" |
すでに存在し地下滞留している熱水を利用する従来の地熱発電に対し、天然の熱水や蒸気が乏しい場合に、地下に高温の岩体が存在する箇所を水圧破砕し水を送り込み、熱水の滞留地層をつくることで蒸気や熱水を得る。地熱利用の機会を拡大する技術として期待されている<ref name="criepi49" />。生産された蒸気・熱エネルギーの利用については従来の地熱発電と同じく、主に[[地熱]]によって生成された[[水蒸気]]により[[発電機]]の[[蒸気タービン]]を回すことにより[[電力]]を得る。既存の温水資源を利用せず温泉などとも競合しにくい技術とされ、日本においては38GW (38,000MW) 以上(大型発電所40基弱に相当)におよぶ資源量が利用可能と見られている<ref name="criepi49" />。従来の地熱発電と同様に、[[クリーンエネルギー]]として、ウランや石油等の枯渇性エネルギーの価格高騰や[[地球温暖化]]への対策手法となることから、[[エネルギー安全保障]]の観点からも各国で利用拡大が図られつつある。太陽からの熱・光などのエネルギーに由来しない発電方法のひとつでもある。{{いつ範囲|現在の技術|date=2018年2月}}ならばコストも9.0円/kWhまで低減する可能性が指摘されている<ref name="criepi49" />。 |
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2008年には、googleがベンチャー企業等に1000万ドルを出資して話題になった<ref>[http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080820/313037/ Google.org, 地熱発電の新技術開発に1000万ドル強を投資 、2008年8月]</ref>。 |
2008年には、googleがベンチャー企業等に1000万ドルを出資して話題になった<ref>[http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080820/313037/ Google.org, 地熱発電の新技術開発に1000万ドル強を投資 、2008年8月]</ref>。 |
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一方課題点として「地震の誘発」と「注入水の確保困難」が指摘されている。スイス・バーゼルでの事例では注水により地震が誘発され、その地震により約900万ドルの物的損害が発生している。このため、プロジェクトは中止され開発企業の社長が起訴され裁判にかけられた<ref>[http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/8414795.stm BBC News 15 December 2009]</ref>。また注入した水の回収率は80%以上でなければ実用化に影響が出るとされている<ref name="criepi49"/>。 |
一方課題点として「地震の誘発」と「注入水の確保困難」が指摘されている。スイス・バーゼルでの事例では注水により地震が誘発され、その地震により約900万ドルの物的損害が発生している。このため、プロジェクトは中止され開発企業の社長が起訴され裁判にかけられた<ref>[http://news.bbc.co.uk/2/hi/europe/8414795.stm BBC News 15 December 2009]</ref>。また注入した水の回収率は80%以上でなければ実用化に影響が出るとされている<ref name="criepi49" />。 |
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出典根拠は見つからないが、地熱温度の分布と、すでに行われているシェールガスの生産井戸への注水などを考えると。世界中の廃井戸は注水による地熱生産の可能性があると考えられる。 |
出典根拠は見つからないが、地熱温度の分布と、すでに行われているシェールガスの生産井戸への注水などを考えると。世界中の廃井戸は注水による地熱生産の可能性があると考えられる。 |
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* 2000年から2年間、肘折地区で実証実験、発電が実施された<ref>[http://www.env.sci.toho-u.ac.jp/topics/017235.html 東邦大学、高温岩体発電方式]</ref>。 |
* 2000年から2年間、肘折地区で実証実験、発電が実施された<ref>[http://www.env.sci.toho-u.ac.jp/topics/017235.html 東邦大学、高温岩体発電方式]</ref>。 |
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{{いつ範囲|現在|date=2018年2月}}、雄勝地区で実証実験プラント設備を使って、蒸気生産が行われている。実験開始当初、注入水より生産蒸気が少かったが(回収率3%)生産井戸を増やすことで80%回収するモデルを想定している。ただし生産井戸の増加はコストの増大につながる<ref name="criepi49"/>。 |
{{いつ範囲|現在|date=2018年2月}}、雄勝地区で実証実験プラント設備を使って、蒸気生産が行われている。実験開始当初、注入水より生産蒸気が少かったが(回収率3%)生産井戸を増やすことで80%回収するモデルを想定している。ただし生産井戸の増加はコストの増大につながる<ref name="criepi49" />。 |
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実証プラントは、{{いつ範囲|現在|date=2018年2月}}、発電会社に譲渡された |
実証プラントは、{{いつ範囲|現在|date=2018年2月}}、発電会社に譲渡された<ref name="criepi49" /><ref>雄勝 地熱実証試験 参考出典、[http://blogs.yahoo.co.jp/chugamo2008/35801713.html]</ref>。 |
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=== アメリカ === |
=== アメリカ === |
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アメリカにおいては、セントラルオレゴンのニューベリー火山の側面から地下熱地層に、9080万リットル注水して貯留層を作っている |
アメリカにおいては、セントラルオレゴンのニューベリー火山の側面から地下熱地層に、9080万リットル注水して貯留層を作っている<!--<ref>October 1, 2012: The Newberry EGS Demonstration is in full swing. >Find updates atblog.newberrygeothermal.com http://blog.newberrygeothermal.com/] -->。 |
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{{See|地熱発電#技術#貯留層管理}} |
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高圧で注水したあと、地震計測などで割れ目の分布や水の分布や地下滞水の動きを調査している<ref>ニューベリーデモ(実証試験)[http://blog.newberrygeothermal.com/]</ref>。 |
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=== オーストラリア === |
=== オーストラリア === |
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オーストラリアでは、南部のクーパー盆地で掘削・注水して、地下熱水滞留層を作っている |
オーストラリアでは、南部のクーパー盆地で掘削・注水して、地下熱水滞留層を作っている<ref>ジオダイナミクスホーム[http://www.geodynamics.com.au/home.aspx]<br> 貯留層管理のレポート[http://www.geodynamics.com.au/getattachment/67cd47d8-4375-4de5-adf3-eeaf812b6503/Major-stimulation-completed-at-Habanero-4.aspx](管理のための地震頻度チャートなど)</ref>。人工地下熱水を放出試験。つぎに、送電設備を画策し、補助金や投資を要請している。 |
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* 2003年: ジオダイナミクス社による、オーストラリアのEGS。最初の井戸はハバネラ1、4212メートル、243度<ref> Wells to Date >2003 Habanero 1 4,421 m 243°C </ref> |
* 2003年: ジオダイナミクス社による、オーストラリアのEGS。最初の井戸はハバネラ1、4212メートル、243度<ref> Wells to Date >2003 Habanero 1 4,421 m 243°C </ref> |
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=== スイス === |
=== スイス === |
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スイス・バーゼルでのプロジェクトは、誘発地震により中止されたプロジェクトである<ref> |
スイス・バーゼルでのプロジェクトは、誘発地震により中止されたプロジェクトである<ref>{{Cite journal |和書 |author=村岡洋文 |author2=浅沼宏 |author3=伊藤久男 |year=2013 |title=延性帯地熱系の把握と涵養地熱系発電利用への展望 |journal=地学雑誌 |volume=122 |issue=2 |pages=343-362 |doi=10.5026/jgeography.122.343}}</ref>。 |
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本プロジェクトは2006年12月より本坑井を全坑加圧することにより、花崗岩を水圧破砕していた。しかし、小地震が予想外に頻発したため注水流量を大幅に下げ、送水を停止し、その後、坑口バルブを開放することとしたが、その矢先にM3.4の地震が発生した。 |
本プロジェクトは2006年12月より本坑井を全坑加圧することにより、花崗岩を水圧破砕していた。しかし、小地震が予想外に頻発したため注水流量を大幅に下げ、送水を停止し、その後、坑口バルブを開放することとしたが、その矢先にM3.4の地震が発生した。 |
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2019年6月7日 (金) 11:01時点における版
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高温岩体地熱発電(こうおんがんたいちねつはつでん)または高温岩体発電(こうおんがんたいはつでん)とは、地熱発電において天然の熱水や蒸気が乏しい場合に、水を送り込んで蒸気や熱水を得る技術である[1][2]。略称は HDR (hot dry rock geothermal power) もしくはEGS (Enhanced Geothermal System)。
概要
すでに存在し地下滞留している熱水を利用する従来の地熱発電に対し、天然の熱水や蒸気が乏しい場合に、地下に高温の岩体が存在する箇所を水圧破砕し水を送り込み、熱水の滞留地層をつくることで蒸気や熱水を得る。地熱利用の機会を拡大する技術として期待されている[1]。生産された蒸気・熱エネルギーの利用については従来の地熱発電と同じく、主に地熱によって生成された水蒸気により発電機の蒸気タービンを回すことにより電力を得る。既存の温水資源を利用せず温泉などとも競合しにくい技術とされ、日本においては38GW (38,000MW) 以上(大型発電所40基弱に相当)におよぶ資源量が利用可能と見られている[1]。従来の地熱発電と同様に、クリーンエネルギーとして、ウランや石油等の枯渇性エネルギーの価格高騰や地球温暖化への対策手法となることから、エネルギー安全保障の観点からも各国で利用拡大が図られつつある。太陽からの熱・光などのエネルギーに由来しない発電方法のひとつでもある。現在の技術[いつ?]ならばコストも9.0円/kWhまで低減する可能性が指摘されている[1]。 2008年には、googleがベンチャー企業等に1000万ドルを出資して話題になった[3]。
一方課題点として「地震の誘発」と「注入水の確保困難」が指摘されている。スイス・バーゼルでの事例では注水により地震が誘発され、その地震により約900万ドルの物的損害が発生している。このため、プロジェクトは中止され開発企業の社長が起訴され裁判にかけられた[4]。また注入した水の回収率は80%以上でなければ実用化に影響が出るとされている[1]。
高温岩体発電の事例
日本
- 1992年: 熱水滞留、1本の坑井で複数の貯留層の造成に成功(世界初)
- 1993年: 22日間循環実験開始
- 2000年から2年間、肘折地区で実証実験、発電が実施された[5]。
現在[いつ?]、雄勝地区で実証実験プラント設備を使って、蒸気生産が行われている。実験開始当初、注入水より生産蒸気が少かったが(回収率3%)生産井戸を増やすことで80%回収するモデルを想定している。ただし生産井戸の増加はコストの増大につながる[1]。 実証プラントは、現在[いつ?]、発電会社に譲渡された[1][6]。
アメリカ
アメリカにおいては、セントラルオレゴンのニューベリー火山の側面から地下熱地層に、9080万リットル注水して貯留層を作っている。
高圧で注水したあと、地震計測などで割れ目の分布や水の分布や地下滞水の動きを調査している[7]。
オーストラリア
オーストラリアでは、南部のクーパー盆地で掘削・注水して、地下熱水滞留層を作っている[8]。人工地下熱水を放出試験。つぎに、送電設備を画策し、補助金や投資を要請している。
- 2003年: ジオダイナミクス社による、オーストラリアのEGS。最初の井戸はハバネラ1、4212メートル、243度[9]
- 2007年: クーパー盆地のジョイントベンチャー開発開始、ジオダイナミクス社による、オーストラリアのEGS、高温岩体地熱発電、計画[10]
- 2010年: 熱水、貯留層の放出試験をへて、75MWの大規模な高温岩体地熱発電プラントの建設が進められている
- 2012年: 送電設備を画策し、補助金や投資を要請している。
スイス
スイス・バーゼルでのプロジェクトは、誘発地震により中止されたプロジェクトである[11]。 本プロジェクトは2006年12月より本坑井を全坑加圧することにより、花崗岩を水圧破砕していた。しかし、小地震が予想外に頻発したため注水流量を大幅に下げ、送水を停止し、その後、坑口バルブを開放することとしたが、その矢先にM3.4の地震が発生した。
この地震は、家屋や建物に約700 万スイスフランの被害を及ぼしたため、本プロジェクトを一時中断し、バーゼル市とスイス連邦政府が評価委員会をつくり、今後の地震発生リスクについて地震学的検討を行った。その結果、開発を続行するならば,最大M4.5 程度の地震の誘発が起こり得ることが指摘されたため、本プロジェクトは2009年に中止された。なお、2009年8月に、ドイツ側のライン地溝帯のLandau 地熱発電所(2,500 kW)付近でもM2.7 の地震が起こっている。
脚注
- ^ a b c d e f g 「未利用地熱資源の開発に向けて -高温岩体発電への取り組み-」『電中研レビュー』第49号、電力中央研究所、2003年、ISSN 09147896。
- ^ The Future of Geothermal Energy, Massachusetts Institute of Technology, 2006
- ^ Google.org, 地熱発電の新技術開発に1000万ドル強を投資 、2008年8月
- ^ BBC News 15 December 2009
- ^ 東邦大学、高温岩体発電方式
- ^ 雄勝 地熱実証試験 参考出典、[1]
- ^ ニューベリーデモ(実証試験)[2]
- ^ ジオダイナミクスホーム[3]
貯留層管理のレポート[4](管理のための地震頻度チャートなど) - ^ Wells to Date >2003 Habanero 1 4,421 m 243°C
- ^ Innamincka Deeps (EGS) Project
Project Overview
>in 2007 with the
> Enhanced Geothermal Systems (EGS) from the Cooper Basin in South Australia. - ^ 村岡洋文、浅沼宏、伊藤久男「延性帯地熱系の把握と涵養地熱系発電利用への展望」『地学雑誌』第122巻第2号、2013年、343-362頁、doi:10.5026/jgeography.122.343。