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「オウム目」の版間の差分

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英語版 ”Parrots” 15:55, 11 July 2008 を元に改訳
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|名称 = オウム目(インコ目)
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|下位分類名 = 科
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<small>([[#系統発生論|ただし下記参照のこと]])</small><br/>
*[[オウム]]科 [[:w:Cockatoo|Cacatuidae]] {{AU|[[w:John Edward Gray|Gray]], [[1840年|1840]]}}
*[[インコ]]科 [[:w:True_parrots|Psittacidae]] {{AU|[[w:Johann Karl Wilhelm Illiger|Illiger]], [[1811年|1811]]}}
'''[[オウム]]科''' [[:w:Cockatoo|Cacatuidae]] {{AU|[[w:John Edward Gray|Gray]], [[1840年|1840]]}}<br/>
* Microglossinae 亜科<br/> (ヤシオウム)
* Calyptorhynchinae 亜科<br/> (クロオウム)
* Cacatuinae 亜科<br/>(白色オウム)

'''[[インコ]]科''' [[:w:True_parrots|Psittacidae]] {{AU|[[w:Johann Karl Wilhelm Illiger|Illiger]], [[1811年|1811]]}}<br/>
* [[ヒインコ|Loriinae]] 亜科 <br/>([[ヒインコ]])
* [[インコ|Psittacinae]] 亜科<br/>(typical parrots and allies)
** [[w:Neotropical parrot|Arini]] 族<br/>(南米産インコ)
** [[w:Cyclopsitticini|Cyclopsitticini]] 族<br/>(イチジクインコ)
** [[w:Micropsittini|Micropsittini]] 族<br/>(ケラインコ)
** [[ミヤマオウム属|Nestorini]] 族<br/>([[カカ]]、[[ミヤマオウム]])
** [[w:Platycercini|Platycercini]] <br/>(アオハシインコ)
** [[w:Psittrichadini|Psittrichadini]] 族 <br/>(アラゲインコ)
** [[w:Psittacini|Psittacini]] 族<br/>([[ヨウム]]、ハネナガインコ)
** [[w:Psittaculini|Psittaculini]] 族<br/>(アジアンパロット)
** [[フクロウオウム|Strigopini]] 族<br/>([[フクロウオウム]])
<small>(''[[側系統群]]'')</small>
}}
}}
<!--
{{otheruses}}
{{Taxobox
| name = Parrots
| fossil_range = {{fossil range|55}}Early [[Eocene]] – Recent
| image = Pyrrhura frontalis.jpg
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| image_caption = [[Maroon-bellied Parakeet]]s<br>''Pyrrhura frontalis''
| regnum = [[Animal]]ia
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| infraclassis = [[Neognathae]]
| ordo = '''Psittaciformes'''
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(but see [[#Phylogeny|below]])

Family [[Cacatuidae]] (cockatoos)<br/>
* Subfamily Microglossinae (Palm Cockatoo)
* Subfamily Calyptorhynchinae (dark cockatoos)
* Subfamily Cacatuinae (white cockatoos)
Family [[Psittacidae]] (true parrots)<br/>
* Subfamily [[Lories and lorikeets|Loriinae]] (lories and lorikeets)
* Subfamily [[Psittacinae]] (typical parrots and allies)
** Tribe [[Neotropical parrot|Arini]] (American psittacines)
** Tribe [[Cyclopsitticini]] (fig parrots)
** Tribe [[Micropsittini]] (pygmy parrots)
** Tribe [[Nestorini]] (kakas and Kea)
** Tribe [[Platycercini]] (broad-tailed parrots)
** Tribe [[Psittrichadini]] (Pesquet's Parrot)
** Tribe [[Psittacini]] (African psittacines)
** Tribe [[Psittaculini]] (Asian psittacines)
** Tribe [[Strigopini]] (Kakapo)

<small>(''[[paraphyletic]]'')<small>
}}-->


[[Image:Scarlet macaw eating 31l07.JPG|right|250px|thumb|[[コンゴウインコ (種名)|コンゴウインコ]] 一羽は足を使ってクルミを食べている。嘴でクルミを割るために足で保持している]]
'''オウム目'''(鸚鵡目、'''Psittaciformes''')は約353種を含む[[鳥類]]の[[目 (分類学)|目]]の一つである。'''インコ目'''(鸚哥目、音呼目)と呼ばれることもある。


'''オウム目'''(鸚鵡目、'''Psittaciformes'''、英語では Parrots )はおおよそ350種類、85属からなる[[鳥類]]の[[目 (分類学)|目]]のひとつで英語では '''psittacines '''<!--({{pronEng|ˈsɪtəsaɪnz}}),--><ref>{{cite web
==概要==
| title = Psittacine
オウム目の分類については2つの主要な説が両立している。単一の科 '''Psittacidae''' のみからなるという考えと、'''Psittacidae'''と'''Cacatuidae'''の2つの科に分類されるとする考えである。これらの分類群の日本での呼称については後述の[[#分類和名|分類和名]]の節を参照。
| work =American Heritage Dictionary of the English Language, Fourth Edition
| publisher = Houghton Mifflin Company
| date = 2000
| url =http://www.bartleby.com/61/21/P0632100.html
| accessdate = 2007-09-09 }}</ref><!--
--><ref>{{cite web
| title =Psittacine
| work =Merriam-Webster Online Dictionary
| publisher =Merriam-Webster, Inc
| url =http://www.merriam-webster.com/
| accessdate = 2007-09-09 }}</ref> としても知られており、'''インコ目'''(鸚哥目、音呼目)と呼ばれることもある。ほとんどの温暖な地域や[[熱帯]]地方で見ることができる。通常二つのグループに分類されており、それぞれ[[インコ]]科(''Psittacidae''、true parrots)と[[オウム]]科(''Cacatuidae''、cockatoos)とよばれている。


オウム目に固有の特徴として、強靭な湾曲した[[嘴]]、直立した姿勢、強力な脚、そして鉤爪をもった[[趾 (鳥類)#陸鳥の趾|対趾足]]の趾(あしゆび)などがあげられる。ほとんどのインコ科の鳥は全身が主に緑色で、部分的にほかの明るい色をしているが、中には多彩な色をした種類もある。オウム科の鳥ではその色彩はほとんど白からおおむね黒の範囲に及び、可動する羽根の冠([[冠羽]])をその頭頂部にもつ。ほとんどのオウム目の鳥は性的単型であるか最小限の[[性的二形]]である。
<small>''訳注:以下オウム目の鳥全般を指してインコと呼ぶ。これにはいわゆるインコとオウムのすべてが含まれる。''</small>


<small>''訳注:以下オウム目の鳥全般を指してインコと呼ぶ。これにはいわゆるインコとオウムのすべてが含まれる。''</small>
この目に属するすべての種は、特徴的な湾曲した形状の[[嘴]]を持っている。この嘴の上側はわずかな可動性をもった関節で頭骨と接続されており、通常は頭骨から直立した姿勢になっている。すべてのインコの脚は[[趾 (鳥類)#陸鳥の趾|対趾足]]で、趾(あしゆび)の二本が前方を、二本が後方を向いている。


インコは[[カラス]]、[[カケス]]、[[カササギ]]と並んで最も知能の高い鳥の一つであり、またその人の言葉をまねする能力から[[ペット]]として高い人気を博している。ペット売買を目的とした捕獲が、これ以外の狩猟、[[w:habitat loss|居住地の破壊]]および[[移入種]]との競合と同様に、野生の生息数の減少を引き起こしており、ほかのどんな種類の鳥のグループよりも多くのインコの種が[[絶滅危惧種|絶滅]]の危機に瀕している<ref>IUCN, Status Survey and Conservation Action Plan, 2000-2004, Parrots, Foreword</ref>
インコは[[熱帯]]地方を中心に[[東南アジア]]、[[インド]]、西[[アフリカ]]、[[オーストラリア]]、[[南アメリカ]]など広い範囲に分布する。[[カロライナインコ]](''Conuropsis carolinensis''、Carolina Parakeet)はすでに絶滅しているが、かつて[[合衆国]]に生息していた。圧倒的に多数のインコの種が[[オーストラレーシア]]、[[南アメリカ]]と[[中央アメリカ]]に由来する。


ほとんどのインコの食餌のなかで最も重要な構成要素は、[[種子]]、[[ナッツ]]、[[果実]]、[[花粉]]とその他の植物性の素材で、いくつかの種は[[昆虫]]や小[[動物]]も食べる。また[[ヒインコ]]は[[花]]や柔らかい果実から蜜や果汁を採食することに特化している。ほとんどすべてのインコが木の洞(飼育下では[[巣箱]])に巣をかけ、白い卵をうみ、[[w: altricial|晩成]]の雛を孵す。
==分類和名==
Psittaciformes の和名は一定しておらず、「オウム目」と「インコ目」が使用されている。ただし最近では鳥類学術関連でもペット関連でもオウム目の方を使われる例が多い。インターネット上でも検索するとオウム目がはるかに浸透していることが分かる。また国語辞典でも、例えば広辞苑は第4版まではインコ目だったが第6版ではオウム目を説明記述に使用している。


現存する種類では、その大きさは[[w:Buff-faced Pygmy-parrot|アオボウシケラインコ]](Buff-faced Pygmy-parrot)の10g以下、8cmから[[スミレコンゴウインコ]](Hyacinth Macaw)の体長1m、[[フクロウオウム]](Kakapo)の体重4kgにまで及ぶ。かれらは体長という項目に関して最も変化に富んだ分類目の鳥である。 並外れたインコとしては性的二型性の[[w:Eclectus Parrot|オオハナインコ]](Eclectus、雄は緑色で雌は赤色である)、飛行せず[[一夫多妻#配偶システム|レック型繁殖]]行動を行うフクロウオウムなどがあげられる。[[カカ]]、[[ミヤマオウム]]、[[w:Long-billed Corella|テンジクバタン]]はとりわけ湾曲の強い上嘴をもつ。
また、系統学の項で述べる差異を重視して2科に分ける場合は、主に小型の種からなるインコ科('''Psittacidae''')、大型の種からなるオウム科('''Cacatuidae''') と2つの科に分ける。複数の科からなるという説では、さらにヒオウム科(ヒインコ科:'''Loriidae''') を立てる。しかし後述する差異を同じ科内での変異として考える説ではPsittacidae 1科とされ、[[Sibley-Ahlquist鳥類分類|Sibley分類]]でもその立場を取っている。この場合もPsittacidaeの和名は一定しておらず、「オウム科」と「インコ科」とがある。


このグループを1目1科の Psittaciformes - Psittacidae とする場合も、この分類和名には、「オウム目オウム科」あるいは「インコ目インコ科」と表記される他に「インコ目オウム科」とか「オウム目インコ科」などと交差した用例まである。このようにオウム類の分類和名には現状やや混乱があるが、何れも同じ分類対象をさしていることに注意すること。


==進化と分類学==
==進化と分類学==
===起源===
===起源と進化===
[[南アメリカ]]と[[オーストラレーシア]]におけるインコの分布から、この目が[[ゴンドワナ大陸]]起源であることが示唆される。しかしながらインコの仲間の[[化石]]記録の存在は希薄であり、その起源は事実というよりは証拠に基づいた推測の域にとどまっている。


[[ワイオミング州]][[w:Niobrara County, Wyoming|ニオブララ郡]]の[[w:Lance Formation|ランスクリーク堆積]]から発見された一片の15mmの下嘴の破片([[w:UCMP|UCMP]] 143274)が最初のインコの化石で、およそ7,000万年前の後期[[白亜紀]]のものであるといわれていた<ref>Stidham T. (1998) "A lower jaw from a Cretaceous parrot" ''Nature'' '''396''': 29-30</ref>。しかしその後の調査<ref>Dyke GJ, Mayr G. (1999) "Did parrots exist in the Cretaceous period?" ''Nature'' '''399''': 317-318</ref> <ref>Waterhouse DM. (2006) "Parrots in a nutshell: The fossil record of Psittaciformes (Aves)" ''Historical Biology'' '''18(2)''': 227-238</ref> でこの化石が鳥のものでないことがほぼ確実であり、[[w:caenagnathid|caenagnathid]] -- 鳥のような嘴をもった飛行しない[[獣脚類]]恐竜に由来することが立証されている。
一般に、特定の科に属するさまざまな種がそれ以外の地域に比べて大規模に集まっている地域は、その科の起源となる先祖の故郷である可能性が高い。南アメリカとオーストラレーシアにおけるインコの多様性はこの目が[[ゴンドワナ大陸]]起源であることを示唆している。しかしながらインコの[[化石]]記録はまばらにしかなく、彼らの起源は事実というよりは情報に基づいた推測にとどまっている。


現在では一般にオウム目、あるいはそのいくつもの関連する鳥類の目を含む共通の祖先は、約6,500万年前の[[白亜紀]]から[[第三紀]]の[[K-T境界|大絶滅イベント]]のころ、地球のどこかに現れたと仮定されている。もしそうだとすれば、このときおそらく彼らはその[[w:morphology (biology)|形態学]]的[[w:autapomorph|固有派生形質]]を[[進化]]させておらず、大ざっぱにいうなら現代の(必ずしも密接に関連があるというわけではないが)[[w:potoo|タチヨタカ]]または[[w:frogmouth|ガマグチヨタカ]]に似た、未分化の樹上生活に適応した鳥だったのであろう。後述の[[古第三紀]]のインコ類も併せて参照されたい。
知られている中でもっとも初期のインコに似た鳥の化石記録は約7000万年前の後期[[白亜紀]]にまでさかのぼる。たった一個の下嘴の15mmの破片で、ワイオミングで発見されたものであり、現代の[[ヒインコ]]のそれに似ている。この発見がインコのものと分類できるかどうかは明らかになっていない。


[[ヨーロッパ]]は最初に一般にインコのものと認められた化石の出土した場所である。最初のものは''[[Mopsitta tanta]]''の翼で[[デンマーク]]で発掘され、年代は5,500万年前までさかのぼる<ref name=Waterhouse2008>{{cite journal
[[ヨーロッパ]]は[[始新世]](5800万年から3600万年前)からの広範な化石記録が出土する場所である。いくつものインコに似た鳥のほぼ完全な骨格が[[イングランド]]と[[ドイツ]]で発見されている。幾分の不確かさはあるが、全体的に見ておそらくこれらは現代のインコの真の祖先ではないと思われる。そして、それは[[北半球]]で進化した関連しあったグループですでに[[絶滅]]してしまったものと思われる。
| author = Waterhouse, D.W.
| coauthors = Lindow, B.E.K.; Zelenkov, N.; Dyke, G.J.
| year = 2008
| title = Two new fossil parrots (Psittaciformes) from the Lower Eocene Fur Formation of Denmark
| journal = Palaeontology 51: 575-582
| volume = 51
| pages = 575–582
| doi = 10.1111/j.1475-4983.2008.00777.x}}</ref> 。当時の気候は熱帯気候で[[w:Paleocene-Eocene Thermal Maximum|暁新世-始新世境界温暖化極大イベント]](PETM)に一致する。


これに続く化石は[[始新世]]のころ、およそ約5,000万年前のものである。複数のほぼ完全なインコ様の鳥の骨格が[[イングランド]]と[[ドイツ]]で発見されている<ref>Dyke GJ, Cooper JH (2000) "A new psittaciform bird from the London clay (Lower Eocene) of England" ''Palaeontology'' '''43''': 271-285</ref>。多少不確実な部分もあるが、全般的に見てこれらは現代のインコの直系の祖先ではなく、[[北半球]]で進化したものの[[絶滅]]してしまった同族の系統であると見るべきであろう。これらはおそらくその祖先と現代のインコとを結ぶ"[[ミッシングリンク]]"ではなく、むしろインコやオウムと並行して進化したオウム目の系統であり、それ自身の独自の固有派生形質をもっていたのであろう。
[[南半球]]には、北半球に見られるような興味深い時代の豊富な化石記録に匹敵するものが存在しないし、その化石記録には初期[[中新世]]から中期中新世より前(2000万年前ころ)の、既知のインコに似た鳥の遺物も含まれていない。しかしながら、南半球では(インコのようなものの化石ではなく)明らかにインコとわかる現時点で最古の化石が発見されており、その上側の嘴は現代の白色オウムのそれと見分けがつかない。


*''[[Psittacopes]]'' (初期/中期始新世 ガイゼルタール、ドイツ) — ベーサルか?
*''[[Serudaptus]]'' - pseudasturid または psittacid?
*'''[[Pseudasturidae]]''' (おそらく正しくは [[Halcyornithidae]])
**''[[Pseudasturides]]'' - 従来は ''Pseudastur''
*'''[[w:Quercypsittidae|Quercypsittidae]]'''
**''[[w:Quercypsitta|Quercypsitta]]'' (後期始新世)


現代のインコの最も古い記録はおよそ2,300万年から2,000万年前にまでさかのぼり、これらもすべてヨーロッパで出土している。これに続く化石記録は - これもまた主にヨーロッパからであるが - 明瞭に現代のタイプのものであると識別できる骨格からなっている。[[南半球]]には北半球に匹敵するような興味深い時代に関する化石記録が存在せず、また2,000万年前の中新世より古い時期の既知のインコ様の鳥の遺物も含まれていない。しかしながら、この点に関しては(インコ様のものとは対照的に)最初の明白なインコの化石が発見されており、その上嘴は現代の[[オウム]]のそれと見分けがつかない。いくつかの現代の属は暫定的に[[中新世]]起源とされているが、その明確な記録はたった500万年かそこいらさかのぼったものに過ぎない<!-- (see genus articles for more)-->。
===系統学===
[[画像:AmazonFeathers.jpg|200px|thumb|right|[[w:Yellow-headed Parrot|キガシラボウシインコ]]の雛の羽毛を拡大した画像。緑色の色彩の中に見られる青い部分は光の散乱によるもので、黄色は色素によるもの。]]
オウム目の[[系統学]]は研究途上であり、最終結論がえられていない。現時点の分類は、新しい研究知見により変更される可能性がある。よって以下の分類は暫定的なものとして扱うこと。


命名されている化石のオウム目の属はおそらくすべてインコ科ないしその祖先の近縁である:
オウム目の系統は、二つの大きな系統からなる。オウム類('''Cacatuidae''' 、[[オウム|cockatoo]])とインコ類('''Psittacidae'''、[[インコ|true parrots]]))である。
*''[[Archaeopsittacus]]'' (後期漸新世/初期中新世)
オウム類の特徴は、動く[[冠羽]]を持っていること、頚[[動脈]]の配列が異なっていること、[[胆嚢]]を持っていること、[[頭蓋骨]]に相違点が見られること、そして[[w:Feather|ダイクテクスチャー組織]]の羽根を欠いていることなどである。なお、インコ類ではダイクテクスチャー組織が光を[[散乱]]させることで非常に多くのインコの鮮やかな色彩を作り出している。
*''[[Xenopsitta]]'' (チェコの初期中新世)<!-- BelgJZool134:47 -->


* Psittacidae gen. et spp. indet. (オタゴ地方バサンズの初期/中期中新世 ニュージーランド) - 複数の種類<!-- JSystPaleontol5:1 -->
インコ類の下位分類(例:[[ヨウム]]グループと[[セキセイインコ]]グループの関係)の理解は、ここ数年でかなり確固としてきたし、種相互の関係の理解も向上してきた。しかしインコ類の下位分類を[[生物の分類#リンネの分類|亜科]]とするか、[[族]]とするかは、意見の合意は得られていない。


*''[[Bavaripsitta]]'' (スタインバーグの中期中新世 ドイツ)<!-- *BelgJZool134:47 -->
これはインコ類の化石と分子分岐による年代の推定では、その進化において大規模な種の多様化と分岐の起こった時代が正確
*Psittacidae gen. et sp. indet.(中期中新世 フランス) - 誤って''"Psittacus" lartetianus''<!--(ヨウムの仲間?)-->とともに''Pararallus dispar''<!--(クイナの仲間?)-->におかれていた。<!-- BelgJZool134:47 -->
にいつであったのか(すなわちさまざまな系統それぞれが本当にどれだけ隔たっているか、あるいは、[[進化]]によっていかにすばやくかつ根本的に彼らが変化したのか)厳密に決定するには不十分なデータしか得られないためである。


いくつかの古第三紀の化石はオウム目の化石であると明確には認められていない:
この問題は[[ヒインコ]]類の分類学的地位決定に大きく依存している。というのも数多くの専門家がヒインコ類をインコ科というよりは第三の科であるヒインコ科('''Loriidae''') であるとみなしているからである(e.g. Forshaw & Cooper, 1989)。少なくとも大多数の意見では、ヒインコには亜科をたてることが十分正当化できるだけの差異がある。しかし、このきわめて明白な差異が(たとえば[[w:Neotropical Parrots|新世界産のインコ]] と [[w:Broad-tailed parrot|オーストラリアン・パラキート]]との間の差異と、量的には同じようなものであるにせよ)一意的に重大な進化上の分岐の証拠とはならないと考えるものもある。また一方、[[生物地理学]]が示唆するところでは、ヒインコは独自の明確な系統であり、オウム目の中でオウムほど隔たった種ではなく、しかし残りのオウム目からは離れた位置にあると考えるのがもっとも適切である。


*''[[Palaeopsittacus]]''(初期-中期始新世 北西ヨーロッパ)- caprimulgiform (podargid?) あるいは quercypsittid?<!-- Palaeontology43:271 -->
[[2005年]]になってインコの分類学はさらに複雑なものへと成長した。というのは分子生物学によるspindlin遺伝子の分析から、[[ニュージーランド]]のインコである[[フクロウオウム]]、[[カカ]]および[[ミヤマオウム]]からなるグループが、それ以外のすべてのオウム目から分岐したのがその[[適応放散]]以前であることが明らかになったからである。なおその上で残りのインコが二つのグループに分岐した。そのうち一つのグループは[[ヒインコ]]や、ほとんどのオーストラリア産の[[w:broadtail|クサインコ類]]や[[セキセイインコ]]のようなインコ、さらにアフリカ産の[[ラブバード]]を含む。そしてもう一つのグループはすべての新世界産のインコ、[[オウム]]と[[ヨウム]]、[[マダガスカル]]産の[[w:Greater Vasa Parrot|クロインコ]]とニューギニア産の[[w:Pesquet's Parrot|アラゲインコ]]を含む<ref>de Kloet, R.S.; de Kloet, S.R. (2005). The evolution of the spindlin gene in birds: sequence analysis of an intron of the spindlin W and Z gene reveals four major divisions of the Psittaciformes. ''Molecular Phylogenetics and Evolution'' '''36''': 706-721.</ref>。


*''"[[w:Precursor (bird)|Precursor]]"'' (初期始新世) - 明らかに[[キメラ]]であるこの化石の部分は''pseudasturid'' か ''psittacid'' であろう。
[[Image:amazon.parrot.arp.jpg|thumb|right|200px|[[w:Amazon parrot|キビタイボウシインコ]]]]
*''[[Pulchrapollia]]'' (初期始新世)— ''"Primobucco" olsoni''を含む - オウム目 (pseudasturid か psittacid)?<!-- *Palaeontology43:271 -->


===インコの知能===
飼育されている個体に関する研究から、どの種類の鳥がもっとも知能が高いかについての知見がもたらされた。インコにはヒトの言葉を物まねすることができるという特徴があるが、[[ヨウム]](African Grey Parrot)の研究から、中には単語をその意味にしたがって結びつけて簡単なセンテンスを作ることができるものもあることが明らかになった([[w:Alex (parrot)|Alex]]、 [[w:N'kisi|N'kisi]]もあわせて参照されたい)。[[カラス]]・[[ワタリガラス]]・[[カケス]]などの[[カラス科]]鳥類と並んでインコはもっとも知能の高い鳥であると考えられる。事実、インコやカラス科の鳥の[[脳化指数|頭脳と体の大きさの比率]]は高等[[霊長類]]のそれに匹敵する[http://www.nserc.ca/news/features/parrot_e.htm] 。鳥類の想定された知的能力に対する反論の一つは、鳥類が相対的に小さな[[大脳皮質]]しか持っていないということである。大脳皮質は、ほかの動物においては知能をつかさどると考えられている脳の一部分である。しかしながら、鳥類は脳の異なった部分、すなわち吻側部内側新[[線条体]]/上位線条体をその知性の中枢として使っていると見られている。研究によりそれらの種がもっとも大きな上位線条体をもっている傾向があるということが明らかになったが、これは意外なことではない。カリフォルニア州立大学サンディエゴ分校の神経科学者であるDr. Harveyと J. Kartenは、鳥類の[[生理学]]の研究により、鳥類の脳の下位部分はわれわれのそれに似通っていることを明らかにした。


===系統学===
''Animal Planet's''の番組 ''"Most Extreme Animals: Smartest"''のなかで、インコは世界でもっとも賢い動物の一位にランクされた。インコはその知能を言語を使う能力に関する科学的テストによって示したのみならず、たとえばミヤマオウムなどの一部の種類のインコでは道具を使うことに長けており、これでパズルを解くことができるということを示した[http://www.bbc.co.uk/nature/animals/features/132index.shtml]。
[[画像:AmazonFeathers.jpg|200px|thumb|right|[[w:Yellow-headed Parrot|キガシラボウシインコ]]の羽毛を拡大した画像。緑色の色彩の中に見られる青い部分は光の散乱によるもので、黄色は色素によるもの。]]


インコに関する[[系統学]]は現在も研究途上である。以下に述べる分類は現時点での状況を反映したものであり、現在も議論が続いている。したがって未解決の問題が新たに究明された場合には変更される可能性がある。このためこの分類は暫定的なものと見なすべきである。

一般にオウム目は二つの現存する主要な系統から構成されていると考えられており、それぞれ科として分類される。すなわち[[インコ]]科(''Psittacidae'')と[[オウム]]科(''Cacatuidae'')である。

オウム科はインコ科とは明白に異なっており、頭部に可動する[[冠羽]]をもち、インコ科とは異なる配置の頚[[動脈]]をもち、[[胆嚢]]があり、[[頭蓋骨]]に相違があり、そして羽毛の[[w:Feather|ダイクテクスチャー組織]](さまざまなインコに見られる鮮やかな色彩を作り出すように光を散乱させる羽根の構造)を欠いている。しかしながら実際の状況はおそらくもっと複雑である(下記参照)。

インコ科の下位分類群(たとえば[[ヨウム]]を含むグループに対する[[セキセイインコ]]の仲間の関係、といった)相互の関係についての理解はかなり確固としたものになってきているし、種相互の関係についての知見はここ数年で非常に改善されてきている。しかしインコ科における異なる系統を[[生物の分類#リンネの分類|亜科]]と考えるべきなのか、それとも[[族 (分類学)|族]]と考えるべきなのかについてはいまだに論争が続いている。インコの化石や[[分子分岐学]]による年代決定では、その進化における主要な多様化と[[分岐学|分岐]]の起きた時期を正確に決定するための十分なデータが得られず、このためさまざまな系統が実際には互いにどれくらい異なっているのか、そして[[進化]]によってどれほど素早く、また根本的に変化したのかを断定することは困難なのである。

[[ヒインコ]]は従来オウム目第三の科であるヒインコ科('''Loriidae''') と見なされていたが<ref name ="Forshaw78">Forshaw, Joseph M. & Cooper, William T. (1978): ''Parrots of the World'' (2nd ed). Landsdowne Editions, Melbourne Australia ISBN 0-7018-0690-7</ref>、現在ではほとんどの場合インコ科(''Psittacidae'')の亜科と考えられている<ref>Forshaw, Joseph M. & Cooper, William T. (2002): ''Australian Parrots'' (3rd ed). Press, Willoughby, Australia. ISBN 0-9581212-0-6</ref> 。またヒインコを含むすべての[[オウム目 (Sibley)|オウム目の鳥を巨大な単一の科の範疇に収める考え方]]もある。現在主流となっている見方は、ヒインコが亜科としての位置を正当化するに足るだけの差異をもっているとするものである。しかしこのきわめて顕著な差異が一意的な深い分岐の証拠ではなく、むしろもっと近縁の系統との差異と量的には違っていないと考えている者もある。[[生物地理学]]によればヒインコは明瞭に区別できる系統と考えるのが最良であり、おそらくオウムほど分岐した種ではなく、しかしそれでも他のインコの種からは隔たっていることが示唆される。

1998年の[[ミトコンドリアDNA]]や<ref name ="Miyaki98">{{cite journal | last = Miyaki | first = Y. | last2 = Matioli | first2 = R. | last3 = Burke | first3 = T. | last4= Wajntal | first4 = A. | title = Parrot evolution and paleogeographical events: Mitochondrial DNA evidence | journal = Molecular Biology and Evolution | volume = 15 | issue = 5 | pages = 544–551 | date = 1998 | url = http://mbe.oxfordjournals.org/cgi/reprint/15/5/544.pdf}}</ref>、2005年の[[Z染色体]]の [[spindlin]] 遺伝子の分析<ref name="deK05">de Kloet, R.S. & de Kloet, S.R. (2005): The evolution of the spindlin gene in birds: sequence analysis of an intron of the spindlin W and Z gene reveals four major divisions of the Psittaciformes. ''Molecular Phylogenetics and Evolution'' '''36''': 706-721.
</ref> などのような最近の[[分子生物学]]的研究から、どんな証拠からも現存しているインコの系統相互の関係がほとんどの場合解決不能であることがわかった。予想外の結果は、spindlin 遺伝子の配列データから計算系統学により信頼性のある位置決定が可能な、現存しているインコの間での唯一の主要な分岐が起きたのが[[ニュージーランド]]産インコ - [[フクロウオウム]]、[[ミヤマオウム]]、[[カカ]] - のいずれかとその他のインコの間であったことである<ref>しかしこれは既知の古第三紀のニュージーランド[[固有種]]の系統の量からして驚かないわけにはいかない。[[モア]]、[[w:hihi|Stitchbird]]、[[w:Acanthisittidae|イワサザイ]]、 [[w:Callaeidae|ホオダレムクドリ]]の項を参照のこと</ref>。

少なくとも nestorine <ref>ミヤマオウム、カカなどの総称</ref>の特異性に関するケースは、さしあたりほぼ決着してるようである。その位置(フクロウオウムの有無に関わらず)と、分子分析による年代測定から示唆されるその古代の年齢が化石記録と食い違っているのに関わらず、またそれが不合理に高度な[[収斂進化|成因的相同]]と、現存のインコに対して明らかに[[最大節約法]]に反する分布特性を要求することになるにも関わらず、である。これらの研究は、物的証拠による[[校正 (計測)|校正]]を経ていない旧式な[[分子時計]]モデルに依存しているため、その結果は非常に疑わしい。ミヤキらによるシナリオ(1998)<ref name ="Miyaki98" />は不完全であり、またフクロウオウムが含まれていないが、物的証拠とは完全ではないにせよ、よく一致している。しかしこれにもまた信頼のおけない分子時計モデルが使われている。

後者二種(ミヤマオウム、カカ)がいかにも独立した系統を構成するように見えるのに、これらの種のなかにフクロウオウムを位置づけることはミトコンドリアDNA [[w:Cytochrome b|シトクロームb]] 配列データによって否定される<ref name ="Miyaki98"/>。どんな場合でも、インコの主要な系統がいかにもそれぞれの[[w:Clade|分岐群]]を代表しているように見えるが、しかしその相互関係は現存する分子配列データからは十分に解明されてはいない。明らかに彼らの[[適応放散]]はおおよそ[[始新世]]のあいだの非常に限られたタイムスパンのなかで起きている。ある一つの重要な発見はオウムもヒインコも、それ以外の主要なインコの系統から、従来考えられていたほどには隔たってはいないということである。


===分類学===
===分類学===
以下の分類は複数の亜科を認めるバージョンである。分子配列データ(上記参照)によれば複数の亜科による分類が実際に確実かもしれず、おそらく科に昇格するものもあるかもしれない。しかしこの中での族の配置については現時点ではあまりよく解明されていない。
* 一般名による'''[[w:list of parrots|オウム目の種名リスト]] '''(英文) (アルファベット順)
[[Image:Rainbow Lorikeet Trichoglossus haematodus Perched 1900px.jpg|thumb|200px|right|[[w:Rainbow Lorikeet|ゴシキセイガイインコ]](若鳥) (''Trichoglossus haematodus'')]]
* '''[[w:Cockatoo#Species list|オウム科の分類学的種名リスト]]'''(英文), 7属21種。
[[Image:ParrotSkelLyd.jpg|200px|thumb|インコの骨格]]
* '''[[w:list of parrots (family)|インコ科の分類学的種名リスト]]'''(英文)は分類学的なシーケンスを、二つの亜科の下に属名と種名が連なるアプローチにより、またインコの適応放散による特徴を族と考えて作成されている。

* '''[[w:Parrot#Systematics|このリスト]]'''(英文)は、インコ科の分類学的種名リストの異なるバージョンで、より多くの亜科を認めている。
'''[[インコ]]科'''(''Psittacidae''):true parrots
*'''[[オウム科 (Sibley)]]'''はオウム目を単一の科として分類したリスト
*[[w:Arinae|Arinae]] 亜科:[[新熱帯区]]のインコ、おおよそ160種、約30属からなる。おそらくは二つの異なる系統からなる<ref name ="Miyaki98" /><ref name="deK05" />
*[[ヒインコ|Loriinae]] 亜科:おおよそ10属前後、約50種の[[ヒインコ]](ローリー、ロリキート)。ニューギニアを中心にオーストラリア、インドネシアおよび南太平洋の島嶼に広がっている
*[[w:Micropsittinae|Micropsittinae]] 亜科:ケラインコ6種からなり、すべてがひとつの属に分類される
*[[w:Nestor (genus)|Nestorinae]] 亜科あるいは[[w:Strigopinae|Strigopinae]]亜科:[[ニュージーランド]]産インコ
**[[ミヤマオウム属|Nestorini]] 族:1属2種のみの現存種で構成され、ニュージーランドの[[ミヤマオウム]]と[[カカ]]からなる
**[[フクロウオウム|Strigopini]] 族:飛行しない絶滅寸前の [[フクロウオウム]]、ニュージーランド産
*[[インコ|Psittacinae]] 亜科
**[[w:Cyclopsitticini|Cyclopsitticini]] 族:イチジクインコ、3属、 すべてニューギニアかその近傍産
**[[Polytelini]] 族:オーストラリアおよび[[w:Wallacea|Wallacea]]産の3属 - アオハシインコの仲間に属するのかもしれない
**[[w:Psittrichadini|sittrichadini]] 族: [[w:Pesquet's Parrot|アラゲインコ]] 1種のみ
**[[w:Psittacini|Psittacini]] 族:アフリカの熱帯産インコ、約10種前後、3属
**[[w:Psittaculini|Psittaculini]] 族: 旧熱帯産の psittaculine 族のインコ、約70の現存種、12属からなりインドからオーストラレーシアにかけて分布
*[[w:Platycercinae|Platycercinae]] 亜科:アオハシインコの仲間、約30種が約12の属に分類される
**[[セキセイインコ|Melopsittacini]] 族:1属、1種、[[セキセイインコ]]
**[[w:Neophemini|Neophemini]] 族:キキョウインコ、アキクサインコの仲間。二つの小さな属からなる
**[[w:Pezoporini|Pezoporini]] 族:[[w:Night Parrot|ヒメフクロウインコ]]、[[w:Ground Parrot|キジインコ]]の非常に異なった2種、1属からなる
**[[w:Platycercini|Platycercini]] 族:[[w:Rosella|クサインコ]]の仲間、おおよそ20種、8属


===種名のリスト===
* '''[[w:list of parrots|オウム目の種名リスト]] ''' (英文) 一般的な英名と学名でそれぞれソートできる約350[[種 (分類学)|種]]のリスト
** '''[[オウム#オウム科 Cacatuidae|オウム科の分類学的種名リスト]]''' 7属21種。
** '''[[w:list of parrots (family)|インコ科の分類学的種名リスト]]'''(英文)分類学的なシーケンスを冒頭の taxobox のように、二つの亜科の下に属名と種名が連なる古典的なアプローチにより列挙したリスト
**'''[[オウム科 (Sibley)]]'''はオウム目を単一の科として分類したリスト

===分類和名===
''Psittaciformes'' の和名は一定しておらず、「オウム目」と「インコ目」が使用されている。ただし最近では鳥類学術関連でもペット関連でもオウム目の方を使われる例が多い。インターネット上でも検索するとオウム目がはるかに浸透していることが分かる。また国語辞典でも、例えば広辞苑は第4版まではインコ目だったが第6版ではオウム目を説明記述に使用している。

また、系統学の項に述べられているような差異を重視して2科に分ける場合は、主に小型の種からなるインコ科(''Psittacidae'')、大型の種からなるオウム科(''Cacatuidae'') と2つの科に分ける。複数の科からなるという説では、さらにヒオウム科(ヒインコ科:''Loriidae'') を立てる。しかしこれらの差異を同じ科内での変異として考える説では''Psittacidae'' 1科とされ、[[Sibley-Ahlquist鳥類分類|Sibley分類]]でもその立場を取っている。この場合も''Psittacidae'' の和名は一定しておらず、「オウム科」と「インコ科」とがある。

このグループを1目1科の ''Psittaciformes - Psittacidae'' とする場合も、この分類和名には、「オウム目オウム科」あるいは「インコ目インコ科」と表記される他に「インコ目オウム科」とか「オウム目インコ科」などと交差した用例まである。このようにオウム類の分類和名には現状やや混乱があるが、何れも同じ分類対象をさしていることに注意すること。

==生息範囲と分布==
[[Image:Cachaña.jpg|thumb|left|ほとんどのインコは熱帯に分布するが、[[w:Austral Parakeet|コイミドリインコ]]のように温帯に深く進出している種もいくつかある ]]

インコは[[オーストラリア]]や[[太平洋]]の[[島嶼]]、[[インド]]、[[東南アジア]]、[[北アメリカ]]の南部地域、[[南アメリカ]]および[[アフリカ]]を含むすべての[[熱帯]]および[[亜熱帯]]の[[大陸]]で見ることができる。一部の[[カリブ海]]と太平洋の島々には[[固有種]]が存在する。圧倒的多数のインコの種がオーストラレーシアと南アメリカに由来する。

複数の種類のインコが南アメリカとニュージーランドの冷涼な温帯地方に進出している。一種類、[[カロライナインコ]]が北アメリカの温帯に生息していたが20世紀の初期に狩り尽くされて絶滅した。数多くの種が温暖な気候の地域に移入されて安定個体群を確立している。[[オキナインコ]](Monk Parakeet)は現在では[[合衆国]]の15の州で繁殖している。

いくつかのインコの種はまったくの[[w:Sedentary|定着性]]であったり、また完全な[[w:Bird migration|渡り鳥]]であったりするが、大多数はその二つの間のどこかに落ち着いて、十分には解明されていない地域間の移動を行ったり、また種類によっては完全に非定着な生活様式を採用したりしている。

==形態学==
[[image:Glossy black cockatoo male kobble08.JPG|thumb|200px|[[w:Glossy Black Cockatoo|テリクロオウム]]
インコの強靭な嘴、鉤爪のある脚そして側面を向いた目が見られる]]
インコは時に"hookbill"(鉤状の嘴)と呼ばれることがある。これは彼らの最も顕著な身体的特徴、すなわち強力な湾曲した幅の広い[[嘴]]のことをさしている。上側の嘴は張り出しており、下向きにカーブし、先がとがっている。この嘴は頭骨とは癒合しておらず、これにより嘴を独立して動かすことができ、このことがこれらの鳥が噛む際に発揮することのできる驚異的な圧力に貢献している。下側の嘴は短く、上向きの鋭い先端をもっている。これが上嘴の平坦な部分に対して、鉄床に対するハンマーのような動きをする。種子を食べるインコは強靭な[[舌]]をもっており、これが嘴の中で種子を扱ったり、ナッツの位置決めを助けたりする。これによって嘴は殻を割るために適切な力を加えることができる。頭は大きく目は横向きについている。これは双眼視による展望を制限するが、周辺視野を大いに強化する。彼らは直立した姿勢で、強力な脚と鉤爪をもった趾(あしゆび)をしており、二つの趾は前方を向き、二つの趾が後方を向いている([[趾 (鳥類)#陸鳥の趾|対趾足]])。

オウムはその頭頂部に可動する羽根でできた冠([[冠羽]])をもっており、ディスプレイのために起立させたり、畳んだりすることができる。

==生態==
インコは力強い、直線的な飛行をする。たいていの種はそのほとんどの時間を樹冠の中で枝に留まったり、木に登ったりしながら過ごす。しばしばその嘴を枝やそのほかの手がかりに引っかけたりくわえたりして木登りのために使う。地上ではよたよたと歩くことが多い。

===食餌===
[[Image:Glossopsitta concinna feeding.jpg|200px|thumb|left|[[w:Musk Lorikeet|ジャコウインコ]]が蜜をなめている]]

インコの[[w:food|食餌]]は[[種子]]、[[果実]]、[[果汁]]や蜜、[[花粉]]と、度合いは小さいが動物の捕食からなっている。これらの中で、ほとんどのインコ科の鳥とオウムにとって疑いなく最も重要なものは種子である。大きく強力な嘴の進化は主として種子を割って摂食することへの適応として説明することができる。[[w:Pesquet's Parrot|アラゲインコ]](Pesquet's Parrot)を除くすべてのインコ科の鳥は殻から種子を取り出すのに同じ方法をとる。種子は嘴の間に保持され、下側の嘴によって殻が砕かれる。するとすぐに嘴の中で転がされ、残った殻が取り除かれる<ref name = "collar">Collar N (1997) "Family Psittacidae (Parrots)" in ''[[w:Handbook of the Birds of the World|Handbook of the Birds of the World]] Volume 4; Sandgrouse to Cuckoos'' (eds del Hoyo J, Elliott A, Sargatal J) Lynx Edicions:Barcelona. ISBN 84-87334-22-9</ref> 。場合によっては大きな種子を保持するのを助けるために足が使われる。インコは種子の[[w:Biological dispersal|散布者]]というよりはむしろ種子の[[捕食]]者であり、果実を摂取するとして記録されているものでも、多くの場合彼らは単に種子を手に入れるためだけの目的で果実を食べている。種子は自身を守るため有[[毒]]であることがよくあり、インコは、化学的によく防御されている種皮や果実のこれ以外の部分を食べる前に注意深く取り除いている。[[新世界]]や[[アフリカ]]、[[パプアニューギニア]]のたくさんの種類のインコが[[粘土]]を食べている。粘土はミネラルを放出し、そしてインコの腸から有害な化合物を吸着する<ref>Diamond, J (1999). "Evolutionary biology: Dirty eating for healthy living" ''Nature'' '''400'''(6740): 120-121</ref> 。

[[Image:Parrot clay lick.jpg|200px|thumb|粘土を食べる[[コンゴウインコ]] [[エクアドル]]にて。粘土を摂取して餌に含まれる毒素を中和する]]

[[ヒインコ]]、[[w:Swift Parrot|オトメインコ]](Swift Parrot)と[[w:Philippine Hanging Parrot|シュバシサトウチョウ]](Philippine Hanging Parrot )は主に果汁や蜜と花粉を食べる。そしてこの食餌のもとを集めるために先端がブラシ状になっている舌をもっており、同様にこの食餌に順応するために腸もある種の特殊化によって適応している<ref>Gartrell B, Jones S, Brereton R & Astheimer L (2000) "Morphological Adaptations to Nectarivory of the Alimentary Tract of the Swift Parrot ''Lathamus discolor''". ''Emu'' '''100'''(4) 274 - 279</ref>。またほかの多くの種も同じように果汁が得られるようになればこれを摂取する。

一部のインコは種子や花を食べるほかに、動物を捕食することがある。[[w:Golden-winged Parakeet|キンバネミドリインコ]] (Golden-winged Parakeet)は水棲の巻き貝を捕食するし、よく知られているようにニュージーランドの[[ミヤマオウム]](Kea)は[[ヒツジ]]の屍肉をあさって食べることがある。またヒメウミツバメ(petrel)の幼鳥を殺すことすらある。ほかのニュージーランドのインコである[[w:Antipodes Island Parakeet|ムジアオハシインコ]](Antipodes Island Parakeet)は[[w:Grey-backed Storm-petrel|ヒメアシナガウミツバメ]](Grey-backed Storm-petrel)が営巣している巣穴に侵入して抱卵している成鳥を殺す<ref>{{cite journal | last = Greene | first = Terry | title = Aspects of the ecology of Antipodes Island Parakeet (''Cyanoramphus unicolor'') and Reischek's Parakeet (''C. novaezelandiae hochstetten'') on Antipodes Island | journal = Notornis | volume = 46 | issue = 2 | pages = 301–310 | publisher = Ornithological Society of New Zealand | date = 1999 Nov/Dec | url = http://www.notornis.org.nz/free_issues/Notornis_46-1999/Notornis_46_2_301.pdf}}</ref> 。ある種のオウムやカカもまた地虫を得るために枝や幹を掘り返すことがある。

===繁殖===
[[Image:Amazoneggs.jpg|200px|thumb|left|二個のインコ (''Amazona aestiva xanthopteryx'') の6日目の卵を透過光で見たもの。左は無精卵、右は心拍が見られる胚を含んでいる。動脈が卵黄の上に成長しているのが見える]]

いくつかの例外はあるが、インコは[[一夫一婦制|一雄一雌]]で繁殖を行い、なんらかの空洞に営巣し、その営巣地以外には[[なわばり]]を設定しない<ref name = "collar"/><ref name = "Rowley">Rowley I(1997) "Family Cacatuidae (Cockatoos)" in ''[[w:Handbook of the Birds of the World|Handbook of the Birds of the World]]Volume 4; Sandgrouse to Cuckoos'' (eds del Hoyo J, Elliott A, Sargatal J) Lynx Edicions:Barcelona. ISBN 84-87334-22-9</ref> 。[[オキナインコ]]と ''Agapornis''属([[ラブバード]])のうちの5種のみが樹上に巣を編み<ref>Eberhard J (1998) "Evolution of nest-builing behavior in '''[[ラブバード|Agapornis]]''' parrots" ''Auk'' '''115'''(2): 455-464</ref>、3種のオーストラリアとニュージーランドの[[w:Ground Parrot|キジインコ]](''Pezoporus wallicus''、Ground Parrot)が地上に巣を作る。これ以外のすべてのインコは、木の洞か、そうでなければ崖や河岸に掘られた巣穴や、シロアリの巣ないし地上に掘られた穴といった空洞に巣を作る。集団で営巣する種もあり、[[イワインコ]]のばあい、優に70,000羽を超える[[w:Bird colony|コロニー]]を形成する<ref> Masello, J; Pagnossin, M; Sommer, C & P Quillfeldt (2006) "Population size, provisioning frequency, flock size and foraging range at the largest known colony of Psittaciformes: the Burrowing Parrots of the north-eastern Patagonian coastal cliffs" ''[[w:Emu (journal)|Emu]]'' '''106''' (1): 69-79 {{doi|10.1071/MU04047}}</ref>。

インコの卵は白である。ほとんどの種で雌が[[w:Avian incubation|抱卵]]をすべて受け持つが、いくつかの種では雌雄で分担して抱卵が行われる。雌は抱卵期のほとんどすべてを巣にとどまって過ごし、雄によって給餌される。

[[コンゴウインコ]]やその他の大型のインコは[[r-K戦略説#展開|K選択]]を採用する種の典型で、低い繁殖率を示す。彼らは成熟するまでに数年を要し、年間に1羽ないし非常に少ない数の子を育てるが、必ずしも毎年繁殖を行うとは限らない場合もある。

===知能===
[[Image:Sunconurepuzzle.jpg|200px|thumb|パズルの腕前を披露する[[コガネメキシコインコ]]]]
飼育されている個体による研究から、どの種類の鳥がもっとも知能が高いかについての知見がもたらされている。[[ヨウム]](African Grey Parrot)による研究から、インコにはヒトの言葉を物まねすることができるという特徴があるだけではなく、中には単語をその意味にしたがって結びつけて簡単なセンテンスを作ることができるものもあることが明らかになった。[[カラス]]・[[ワタリガラス]]・[[カケス]]などの[[カラス科]]鳥類と並んでインコはもっとも知能の高い鳥であると考えられている。事実、インコやカラス科の鳥の[[脳化指数|頭脳と体の大きさの比率]]は高等[[霊長類]]のそれに匹敵する<ref>{{cite news
| last =Iwaniuk
| first =Andrew
| title =This Bird Is No Airhead
| publisher =Natural Sciences and Engineering Research Council of Canada
| date =2004-02-09
| url =http://www.nserc.ca/news/features/parrot_e.htm
| accessdate = 2007-09-09 }}</ref>
。鳥類の想定された知的能力に対する反論の一つは、鳥類が相対的に小さな[[大脳皮質]]しか持っていないということである。大脳皮質は、ほかの動物においては知能をつかさどると考えられている脳の一部分である。しかしながら、鳥類は脳の異なった部分、すなわち吻側部内側新[[線条体]]/上位線条体をその知性の中枢として使っていると見られている。研究によりそれらの種がもっとも大きな上位線条体をもっている傾向があるということが明らかになったが、これは意外なことではない。また、カリフォルニア州立大学サンディエゴ分校の神経科学者である Dr. Harvey と J. Karten は鳥類の[[生理学]]の研究により、鳥類の脳の下位部分がわれわれのそれに似通っていることを明らかにした。
インコはその知能を言語を使う能力に関する科学的テストによって示したのみならず、たとえばミヤマオウムなどの一部の種類のインコでは道具を使うことに長けており、これでパズルを解くことができるということを示した<ref>{{cite news
| last =Beynon
| first =Mike
| title =Who's a clever bird, then?
| publisher =BBC News
| date =April 2000
| url =http://www.bbc.co.uk/nature/animals/features/132index.shtml
| accessdate = 2007-09-09 }}</ref>。

====物まねと会話をする能力====

{{main|w:Talking birds}}
{{see also|w:Animal language}}

多くの種類のインコがヒトの言葉やその他の音のものまねをすることができる。そして[[w:Irene Pepperberg|アイリーン・ペッパーバーグ]]の研究結果によって[[w:Alex (parrot)|アレックス]]という名のヨウムが高い学習能力を持っていたことが示されている。アレックスは言葉を使って対象を識別し、それらを説明し、その数を数えるように訓練された。さらには「赤い四角はいくつありますか?」といった複雑な質問に80%以上の正確さで答えることすらできた。第二の例は[[w:N'kisi|N'kisi]]という名の別のヨウムである。N'kisiは1,000語近い語彙をもち、それを正しい文脈で使うだけではなく、正しい時制で作文できる能力を持っていることを示した。

インコには[[声帯]]がなく、このため音は分岐した気管の口全体に空気を噴出させることによって作り出される。異なった音は気管の深さと形状を変化させることによって作り出される。したがって話すインコは、実際にはさまざまなバリエーションでさえずっているということになる。ヨウム(Congo African Grey Parrots、CAG)は、その"話す"能力でよく知られているが、これはおそらく強靭な気管かあるいはその精密なコントロールに依っているのであろう。しかしこのことは[[オカメインコ]](オカメインコの話す能力は一般にあまり知られていない)がヨウムよりもたくさんの[[語彙]]をもつことができるということを意味するわけではない。

この能力によって古代から現在に至るまで、インコはペットとして珍重されてきた。[[ペルシャ]]の[[ジャラール・ウッディーン・ルーミー|ルーミー]]によって1250年に書かれた[[w:Masnavi|"精神的マスナウィー"]]の中で、筆者はインコを話すように訓練する古代の方法について述べている。

<blockquote>「インコは単語の意味を理解することなく話すことを教えられます。その方法はインコとトレーナーの間に鏡を置くことです。鏡の背後に隠れたトレーナーは単語を口にします。そしてインコは鏡に映った彼自身の姿を見て、もう一羽のインコが話していると思い鏡の背後のトレーナーが口にした全ての言葉を模倣します。」</blockquote>



==インコヒトの関わり==
==人間との関==
人間とインコの間には複雑な関係がある。経済的にはかれらはペット売買による収入源としてコミュニティに利益をもたらしうるし、また市場性の高い観光の呼び物であり、シンボルでもある。しかしまた害鳥として、ことに[[オーストラリア]]のある種のオウムのように、経済的に影響の大きい種もある。場合によっては人間による環境の改変によって利益をこうむっているインコもいて、その生息域を農業活動にともなって拡大しており、また同じように多数のインコがその生息数を減らしている。


インコは何千万もの個体が野生の環境から連れ去られている。というのもインコはほかのいかなる種類の野生動物に比べても、より大量に、そしてはるかに長い期間に渡って取引されてきているからである<ref> IUCN, Status Survey and Conservation Action Plan, 2000-2004, Parrots, Foreword </ref>。多数の種のインコが、[[w:habitat loss|生息地の破壊]]や、[[移入種]]による捕食、ほかの形の狩猟と同様に、この売買のための捕獲によって生存を脅かされている。ある種のインコは果実や穀物、そしてそのほかの農作物を食べる害鳥でもあるが<ref>Warburton, L. S. & M. R. Perrin (2006) "The Black-cheeked Lovebird (Agapornis nigrigenis) as an agricultural pest in Zambia" ''[[w:Emu (journal)|Emu]]'' '''106''' (4): 321-328 {{doi|10.1071/MU04037}}</ref>、しかしまた[[野鳥観察|バードウォッチング]]を目的とした[[エコツーリズム]]を通して経済的な利益を生むこともできる。
===絶滅危惧種としてのインコ===
[[ワシントン条約]](CITES、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」)により、捕獲された野生のインコすべての種類についての取引、輸入と輸出が違法とされている。きわめて危険な状態にある種は付属書Iに[[絶滅危惧状態]](Endangered)として掲げられ、これ以外のすべての種が付属書IIに[[生存環境脆弱]](vulnerable)として掲げられている。


===ペットとしてのインコ===
===ペットとしてのインコ===
[[Image:Pet parrots in Cuba.jpg|right|250pix|thumb|ペットの [[w:Cuban Amazon|サクラボウシインコ]]、 [[キューバ]]にて]]
{{See|w:Companion parrot}}


そのヒトと親しくまじわる愛らしい性質、高い知能、鮮やかな色彩と言葉をまねする能力からインコは[[ペット]]として高い人気を得ており、歴史的にもさまざまな文化において飼育されてきた。1世紀の初めの大プリニウス([[ガイウス・プリニウス・セクンドゥス]])の記録によれば、ヨーロッパ人は[[ワカケホンセイインコ]](Rose-ringed Parakeet 、ring-necked parrot とも)と記述の一致する鳥を飼っていた<ref>{{Cite web
[[Image:Budgerigar_Female_Benno.JPG|thumb|250pix|right|メスのセキセイインコ]]
|author=The Medieval Bestiary
インコ、ことに[[w:Conure|コニュア]]、[[コンゴウインコ]]、[[アマゾン]]、[[オウム]]、[[ヨウム]]、[[ラブバード]]、[[オカメインコ]]、[[セキセイインコ]]、[[w:Eclectus Parrot|オオハナインコ]]や[[w:Parakeet|パラキート]]などが、その色彩の多彩さやヒトの言葉の物まねをする能力から[[ペット]]として飼われている。ときにそれらの鳥の羽根はクリップされることもあるが、多くの人たちはインコを飛べる状態のままペットにしている。インコの種類によっては80年に及ぶような長い寿命を持つものもいる(これには白色オウムやアマゾン、ヨウムや大型のコンゴウインコなどが含まれる)。
|date=2008-02-13
|url=http://bestiary.ca/beasts/beast235.htm
|title=Parrot
|language=英語
|accessdate=7月13日
|accessyear=2008年
}}</ref>。何千年ものあいだ、かれらはその美しさと話す能力から珍重されてきたが、飼育することの困難さもまた証明されてきた。たとえば筆者 Wolfgang de Grahl は1987年の彼の著作"The Grey Parrot" の中で、真水が有害であると考えて、船積みされたインコにコーヒー以外を飲むことを許さなかった輸入業者がいたこと、そしてその行為が輸送中の生存率を向上させると信じていたことを取り上げている(今日では[[コーヒー]]に含まれる[[カフェイン]]が鳥に有害であるということが一般にみとめられている)。


ペットのインコは[[w:bird cage|鳥かご]]や[[w:aviary|鳥小屋]]で飼われるだろう。しかし一般にヒトに慣れたインコは、日常的に外に出てスタンドやジムにとまることが許されなければならない。地域によってインコは捕獲された野生種かもしれないし、飼育下の人工繁殖による個体かもしれないが、野生インコの存在しない大部分の地域では人工繁殖による個体である。
[[2004年]]に[[イギリス]]の新聞"''[[デイリー・ミラー]]''"紙が、[[1899年]]生まれと推定され、後にはペットとして[[第二次世界大戦]]中に[[ウィンストン・チャーチル]]に飼われていたというメスのコンゴウインコに関する記事を掲載した。チャーリーと呼ばれたこの年老いたインコは、[[ナチス]]や[[アドルフ・ヒトラー]]に悪態をつくと有名だったという<ref>http://www.google.com/url?sa=t&ct=res&cd=1&url=http%3A//www.mirror.co.uk/news/allnews/content_objectid%3D13832640_method%3Dfull_siteid%3D50143_headline%3D-F----THE-NAZIS--SAYS-CHURCHILL-S-PARROT-name_page.html&ei=qmsHQ8LsJ7-AQueAlcQO</ref> 。その後の調査ではこのインコはいちどもウィンストン・チャーチルに飼われていたことはないということが強く示唆されたが<ref>http://news.bbc.co.uk/1/hi/england/3414323.stm</ref> <ref>http://news.bbc.co.uk/1/hi/england/3417353.stm</ref>、それにしてもチャーリーの長命には疑いの余地がない。


ペットとして一般的に飼育されているインコの種類には、[[w:conures|コニュア]]、[[コンゴウインコ]]、[[w:Amazon parrot|ボウシインコ]]、白色[[オウム]]、[[ヨウム]]、[[ラブバード]]、[[オカメインコ]]、[[セキセイインコ]]、[[w:eclectus|オオハナインコ]]、[[シロハラインコ]]、[[パラキート]]、[[w:Pionus|アケボノインコ]] や[[w:Poicephalus|ハネナガインコ]]などがある。その気質、騒音の大きさ、物まねの能力、ヒトに触れられることへの好悪、そして世話の方法などは種類によって異なるが、しかしそのインコがどのように育てられたかということが、一般にその個性に大きな影響を与える。
ペットのインコが人気を博すことでこの鳥の(しばしば非合法の)売買が盛んになってきており、インコの種類によっては絶滅の危機に瀕している。[[1969年]]のトニー・シルヴァ事件によってこの問題のスケールを理解することができる。この事件は[[テネリフェ島]]の[[w:Loro Parque|Loro Parque]](ヨーロッパ最大のインコ園)のディレクターにして世界的に高名なインコ専門家であったトニー・シルヴァが、[[w:Hyacinth Macaw|スミレコンゴウインコ]]の密輸の廉で合衆国において82ヶ月間投獄され、$100,000の罰金を科されたものである<ref>http://www.wwf.org.uk/filelibrary/pdf/crime_and_punishment.pdf 1</ref>。この事件は環境保護論者や鳥類学者の社会に一石を投じ、より強力な鳥の保護や、取引に対する規制を求める声を呼び起こした。これ以降Loro Parqueはインコの保護活動によってよく知られるようになった。


インコはその美しさと高い知能、そしてヒトと親しくまじわる性質のためペットとしての人気が高い。1992年に、新聞 [[USAトゥディ]]紙は、アメリカ合衆国だけで1100万羽の鳥がペットとして飼われており、その多くがインコであると発表した[http://pqasb.pqarchiver.com/USAToday/access/4150521.html?dids=4150521&FMT=ABS&FMTS=ABS&date=Dec+21%2C+1992&author=Ward%2C+Sam&pub=USA+TODAY&edition=&startpage=D1&desc=USA+Snapshots%3A++Most+Popular+Pets]。あらゆる種類のペットバードのなかでも家畜化されている[[セキセイインコ]]や一般的な[[パラキート]]、小型のインコなどがもっともポピュラーである。
一部の野生生物保護センターではコンゴウインコのような大型のインコが鳥類の展示によく用いられる。


インコは優れた[[コンパニオンアニマル]]になることができ、その飼い主と近しい愛情深い絆を形作ることができる。しかしながら彼らは決して飼うことの容易なペットではない。その健康的な生活のためには給餌やグルーミング、獣医の診察、訓練、おもちゃを与えることによる[[w:Environmental enrichment|環境強化]]、運動、そしてほかのインコやヒトとの社会的インタラクションなどが必要である。大型の白色オウムやボウシインコ、コンゴウインコといった一部の大型種のインコは80年におよぶ非常に長い寿命をもつことが報告されており、100年を超える年齢の記録もある。ラブバードやサトウチョウ、セキセイインコといった小型のインコは15年から20年程度の短い寿命をもつ。インコの中には非常にやかましい種類もある。ほとんどの大型のインコは破壊的なことがあり、このため常に新しいおもちゃか、木の枝や噛んで遊ぶためのものを供給することが必要である。
===物まねをする能力===
多くの種類のインコがヒトの物まねをすることができる。そして[[w:Irene Pepperberg|アイリーン・ペッパーバーグ]]の研究結果によれば[[w:Alex (parrot)|アレックス]]という名のヨウムは高い学習能力を示すことが示唆される。アレックスは言葉を使って対象を識別し、それらを説明し、その数を数えるように訓練された。さらには「赤い四角はいくつありますか?」といった複雑な質問に80%以上の正確さで答えることすらできた。別の研究者は、アレックスがその意味について何の考えもなしに単に言葉を繰り返しているに過ぎないと主張している。そしてペッパーバーグの研究結果は古典的な[[条件反射]]の一形態以上のものではなく、あるいは[[賢馬ハンス|クレバーハンス(賢馬ハンス)]]効果の発現かもしれないと指摘している。第二の例は[[w:N'kisi|N'kisi]]という名の別のヨウムである。N'kisiは1,000語近い語彙をもち、それを正しい文脈で使うだけではなく、正しい時制で作文できる能力を示した[http://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/3430481.stm]。


大型のペットのインコの中でもその多くが高い人気と長命、そして知能のために、長い生涯のコースの途上で新しい飼い主に引き取られるということが起こる。一般的な問題とはこうである。つまり可愛らしい穏やかな幼鳥として購入された大型種のインコが、複雑で、多くの場合手数のかかる、飼い主よりも長生きする成鳥へと成熟する。これらの問題のために、そしてこういったホームレスのインコを犬やネコのように安楽死させられないという事実から、パロットレスキューやサンクチュアリといった施設がより一般的になってきている。


===野生化したインコの群れ===
===インコの売買===
[[Image:Anodorhynchus hyacinthinus wild.jpg|250px|thumb|left|1980年代には 10,000 もの野生のスミレコンゴウインコがペット売買のために捕獲された。<ref>BirdLife International (2004). ''[http://www.iucnredlist.org/search/details.php/1314/all Anodorhynchus hyacinthinus]''. 2006 IUCN Red List of Threatened Species. IUCN 2006. Retrieved on 27 August 2007.</ref>]]
さまざまな種類の逃げ出したインコたちが、その驚くほどたくましい環境適応性をヨーロッパや北アメリカにおいて証明している。ときには彼らは数が増えすぎて厄介者になったり、またちょっとした害鳥になったり、土着の生態系に対して脅威となることすらある。現在こういったことが[[スペイン]]の[[バルセロナ]]やテネリフェ島で起こりつつある。


ペットとしてのインコの人気は、鳥の売買 - その多くは非合法 - を隆盛に導いた。この結果、現在では絶滅の危機にさらされている種もある。野生のインコの捕獲とその居住地の破壊が組み合わされることで、その生存が難しくなっており、また種類によっては不可能にすらなってきている。
相当数の野生化した[[w:Rose-ringed Parakeet|ホンセイインコ]]''Psittacula krameri''の群れが[[イングランド]]や[[オランダ]]、[[ベルギー]]、[[ドイツ]]西部、南部の都市周辺に生息している。彼らは逃げ出した、あるいは捨てられたペットのながれを汲むものであると信じられて(あるいは時には記録に残って)いる。彼らの英国で最大のねぐらは、[[サリー (イングランド)|サリー]]のイーシャーにあり、その数は数千に及ぶと考えられている。


野生インコの売買はいくつかの国では衰えることなく続いている。2007年1月に発表されたレポートではメキシコにおける捕獲された野生インコ取引の鮮明な図式を描いている。この中で「メキシコで捕獲されたインコの大多数は国内での売買のため国内にとどまる。捕獲されたうちわずかなパーセンテージ(4%~14%)が合衆国に密輸される」と述べている<ref>{{Cite web
ベルギーやイングランドでは、野生化した[[w:Rose-ringed Parakeet|ホンセイインコ]]''Psittacula krameri'' の群れと[[w:Alexandrine Parakeet|オオホンセイインコ]]''Psittacula eupatria'' の小さな群れがしばしば群れを作っている。
|author= Defenders of Wildlife
|date=
|url= http://www.defenders.org/programs_and_policy/international_conservation/mexico_program/stopping_the_illegal_parrot_trade.php/
|title= Stopping the Illegal Mexican Parrot Trade
|language=英語
|accessdate=12月23日
|accessyear=2007年
}}</ref>。


この問題のスケールは1996年の[[w:Tony Silva|トニー・シルヴァ]]事件をみることで理解することができる。これは[[テネリフェ島]]の[[w:Loro Parque|Loro Parque]](ヨーロッパ最大のインコ園)のディレクターにして世界的に高名なインコ専門家であったトニー・シルヴァが、[[スミレコンゴウインコ]](この種の鳥は極めて高価である)の密輸の廉で合衆国において82ヶ月間投獄され、$100,000の罰金を科されたものである<ref>{{Citation
また[[オキナインコ]]''Myiopsitta monachus'' の群れが[[合衆国]]とスペインの多くの地域で定着している。
| first =Jason
| last =Lowther
| first2 =Dee
| last2 =Cook
| first3 =Martin
| last3 =Roberts
| title = Crime and Punishment in the Wildlife Trade
| publisher = World Wildlife Federation
| date = 2002-08-05
| format = PDF
| url = http://www.wwf.org.uk/filelibrary/pdf/crime_and_punishment.pdf
| accessdate = 2007-09-09 }}</ref> 。この事件はより強力な鳥の保護と、取引に対する規制を求める声を呼び起こした。それぞれの国にはそれぞれの国内および国際間の取引を取り扱う方法がある。オーストラリアは1960年以降その固有の鳥の輸出を禁止した。合衆国はその唯一の固有のインコを「絶滅危惧種に関する法律」"Endangered Species Act"により保護しており、そして他の国の鳥を「野鳥保護法」[http://www.fws.gov/international/laws/law102.html Wild Bird Conservation Act]によって保護している。何百もの [[NGO]] によるキャンペーンや[[鳥インフルエンザ]]の発生がきっかけとなって、2007年7月に[[欧州連合]]は野生の鳥の輸入の永久的な禁止によって、その輸入を停止させた[http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/07/40&format=HTML&aged=0&language=EN&guiLanguage=en]。2005年10月末に始まった初期の一時的な輸入禁止措置以前には、EUは毎年およそ200万羽の生きた鳥を輸入しており、これは国際市場のおよそ90%にあたる [http://www.birdsareforwatching.org/news.html]。そしてこれは何十万羽ものインコであった。合衆国においては移入種のインコを保護する国内法がない。メキシコには自国の野鳥を捕獲、売買するための免許制の制度がある(法律が十分に執行されているとは言えないが)。


===文化にみるインコ===
合衆国ではさらに[[w:Rose-ringed Parakeet|ホンセイインコ]]''Psittacula krameri'' や、ミドリインコの仲間(''Brotogeris'' 属、おもに[[w:Canary-winged Parakeet|ソデジロインコ]]''B. versicolurus''、あるいは[[w:Yellow-chevroned Parakeet|キカタインコ]]''B. chiriri'' )が一部の地域で見られる。[[アリゾナ州]][[ツーソン]]では[[コザクラインコ]]''Agapornis roseicollis'' が帰化して群れを作っている。
[[Image:Mochica Portrait.jpg|200px|thumb|right|モチェIII期の典型的な人面形象土器 400 A.D.[[w:Larco Museum|Larco Museum Collection]] Lima, Peru.]]
インコは人々の著作や物語、美術、ユーモア、宗教そして音楽などに何千年ものあいだおおきな位置を占めてきた。ローマの詩人オウィディウスの"オウムの死に際して"[http://www.bartleby.com/245/215.html (Latin),] [http://www2.prestel.co.uk/rey/ovid.htm (English)]から何千年も後の[[モンティ・パイソン]]の"[[死んだオウム]]"スケッチにいたるまで、インコは数多くの文化の意識のなかに存在してきた。人間の文化におけるインコに関する最近の書籍としては''Parrot Culture''<ref>{{cite book | title=Parrot Culture | last=Boehrer | first=Bruce | date=2004 | isbn=978-0-8122-3793-1}}</ref>などがある。


古代においても、そして現代でもインコの[[羽根]]は式典や装飾のために使われてきている。インコという"主題"は"[[動物寓意譚]]"のような[[中世文学]]の中で人間の状態を表すために使われている。かれらはペットとしても長い歴史を持っているのである。
[[w:Red-lored Parrot|キホオボウシインコ]]''Amazona autumnalis''、[[w:Lilac-crowned Parrot|フジイロボウシインコ]]''Amazona finschi''、[[w:Yellow-chevroned Parakeet|キカタインコ]]''B. chiriri'' といった何種類ものインコが南[[カリフォルニア州]]の気候によく適応しており、また[[サンフランシスコ]]の[[w:Telegraph Hill, San Francisco|テレグラフヒル]]周辺には[[w:Red-masked Parakeet|オナガアカボウシインコ]]''Aratinga erythrogenys'' や[[w:Red-masked Parakeet|ベニガオメキシコインコ]]''Aratinga mitrata''、さらにこれらのインコの[[ハイブリッド]]などが生息している。


現在インコはたくさんのメディアで大きく取り上げられている。ペットとしてのインコのために発行されている雑誌もあるし、またインコの保護のための雑誌([http://www.worldparrottrust.org/publications/psittascene/psittascene.htm PsittaScene])もある。最近の小説でインコをあつかっているものには[[マイケル・クライトン]]の" [http://www.michaelcrichton.com/index.html Next]"がある。映画では"[[w:Paulie|ポーリー]]"が、またドキュメンタリーとしては "[[w:The Wild Parrots of Telegraph Hill|The Wild Parrots of Telegraph Hill]]"がある。
現在、合衆国の多くの州では上記の種のいずれかについて販売、繁殖、ペットとしての保持を禁じる法律を成立させている。


インコは神聖なものとして考えられていたこともある。古代[[ペルー]]の[[モチェ文化|モチェ]]の人々は、鳥を崇拝して彼らの芸術のなかにしばしばインコを表現した<ref>Berrin, Katherine & Larco Museum. ''The Spirit of Ancient Peru:Treasures from the [[w:Larco Museum|Museo Arqueológico Rafael Larco Herrera]].'' New York: [[w:Thames and Hudson|Thames and Hudson]], 1997.</ref>。
日本では元々この目の鳥はいなかったが、近年は[[ペット]]が野生化し[[移入種]]として[[東京都]]などに生息数を増やしている。熱帯の鳥が定着したことについて、[[地球温暖化]]や[[ヒートアイランド現象]]により都市部の冬期の気温が以前よりあがったことが指摘されている。

インコは国家やナショナリズムの象徴としても使われる。[[ドミニカ]]の旗に[[w:Imperial Amazon|ミカドボウシインコ]](Imperial Parrot)を見ることができる。[[w:St. Vincent Amazon|オウボウシインコ]](St. Vincent parrot)は、カリブ海の国[[セントビンセント・グレナディーン]]の国鳥である。

インコに関する言い回しが現代の英語に色を添えている。"parroting"という語を辞書で見ることができるが、これは「丸暗記で繰り返す(おうむ返し)」という意味である。ほかにもイギリスで使われる決まり文句に "sick as a parrot."(ひどく不調、落ち込んでいる)というのがある。ミュージカルアーティストの[[ジミー・バフェット]]のファンたちは自らを"parrot heads"と呼ぶ。

一生の仕事としてインコに身を捧げることが可能である。動物園や水族館ではインコの世話をし、そして訓練をするために飼育係を雇っている。獣医の中には鳥類の医療に専門化して、インコを専門に扱っている者たちもいる。生物学者たちは野生のインコの生息数について研究を行い野生インコの保護の助けになっている。ブリーダーはインコを繁殖させペット売買のため販売している。

===移入種としてのインコ===
{{main|w:Feral parrots}}
[[Image:Parrots of telegraph hill.jpg|200px|thumb|right|サンフランシスコの野生オナガアカボウシインコ、''Aratinga erythrogenys''
この個体群は書籍と映画"The Wild Parrots of Telegraph Hill"の題材になっている。]]

いくつかの種類の逃げ出したインコたちが、その本来の生息域の外に野生で定着するようになっており、なかにはオウム目の自然の生息域を超えているケースもある。そのなかで最も初期の事例が[[フィジー]]島産のペットの[[w:Red Shining-parrot|キサキインコ]](Red Shining-parrot、''Alisterus scapularis'')で、トンガ諸島南部に定着してあらたな個体群を形成している。これらの移入は有史以前に行われており、[[トンガ]]諸島のキサキインコは1770年代に[[キャプテン・クック]]によって記録されている<ref>Steadman D, (2006). ''Extinction and Biogeography in Tropical Pacific Birds'', University of Chicago Press. ISBN 978-0-226-77142-7</ref>。逃亡したインコたちが[[カリフォルニア]]や[[テキサス]]、[[フロリダ]]の市街地で繁殖し始めたのは1950年代のことである(証明されてはいないが、テキサスとフロリダで1920年代にまでさかのぼる初期の主張もある)<ref>Butler C (2005) "Feral Parrots in the Continental United States and United Kingdom: Past, Present, and Future" ''Journal of Avian Medicine and Surgery'' '''19'''(2): 142-149</ref> 。彼らはその驚くほどたくましい適応性をヨーロッパや北アメリカの環境において証明している。ときには彼らは数が増えすぎて厄介者や害鳥になったり、土着の生態系に対して脅威となることすらある。

===絶滅の危機と保護活動===
[[Image:Karolinasittich 01.jpg|200px|thumb|left|狩尽くされて絶滅した[[カロライナインコ]]の標本]]
多数の種のインコが生息数を減らしており、そして複数の種がすでに絶滅している。350種前後の現存しているインコの種のうち130種が [[国際自然保護連合]](IUCN)によって準絶滅危惧(near threatened)ないしそれよりも悪い状態としてリストされている<ref>{{cite web
|author= IUCN
|date= 2006
|title = IUCN Red List of Threatened Species
|url = http://www.iucnredlist.org
|language=英語
|accessdate=8月31日
|accessyear=2007年
}}</ref> 。これほど多数の種が個体数を減らしているのにはいくつもの理由があるが、第一の原因は居住地の喪失、狩猟そしていくつかの種においては野鳥の売買である。インコはいくつもの理由のために虐げられている。ある地域では彼らは食料として、羽根のために、そして農業的な害鳥として狩られる(あるいは狩られてきた)こともあるだろう。アルゼンチン政府がオキナインコに農業的害鳥として賞金をかけた時には、結果として何千羽もの鳥が殺されたが明らかにこのことは全体の生息数にはたいした影響を及ぼさなかった[http://invasions.bio.utk.edu/invaders/monk.html]。ペット売買を目的とした捕獲は多くの希少な種や、繁殖の遅い種にとって脅威となっている。居住地の喪失や退廃は、そのほとんどが農業のために引き起こされるが、数多くのインコの種に対する脅威となっている。インコは木の洞に巣をかけるため営巣地の喪失と、これらの場所に移入された種との競争に対してきわめて脆弱である。ことに老木の喪失は地域によって(特にオーストラリアのように営巣に好適な樹木が、樹齢数百年にもおよぶことがあるところでは)大きな問題となっている。

多くの種類のインコが島嶼のみに生息しており、そして哺乳類の捕食者に対抗していくために必要な[[w:Island tameness|適切な対捕食者行動を欠いている]]ために、[[ネズミ]]や[[ネコ]]といった[[移入種]]に対して脆弱である。このような捕食者たちをコントロールすることが、絶滅危惧種の個体数を維持したり、また増加させる助けになりうる<ref>Ron Moorhouse, Terry Greene, Peter Dilks, Ralph Powlesland, Les Moran, Genevieve Taylor, Alan Jones, Jaap Knegtmans, Dave Wills, Moira Pryde, Ian Fraser, Andrew August and Claude August (2002) "Control of introduced mammalian predators improves kaka ''Nestor meridionalis'' breeding success: reversing the decline of a threatened New Zealand parrot". ''Biological Conservation'' '''110''' (1): 33-44</ref> 。限定された居住地に生息する個体数の少ない孤立した種は、ハリケーンや噴火といった物理的な脅威に対してもまた脆弱である。

絶滅の危険があるすべての野生種の国際取引を規制するために1975年に発効した CITES(Convention on the International Trade in Endangered Specie、[[絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約]])の加盟国においては、捕獲された野生インコの売買と輸出入が規制されており、特別に許可された状況下でのみ許される。1975年には24種のインコがCITESの付属書 I に記載され、これによりこれらの種の鳥の商業的な国際取引が禁止された。この最初の記載以来、国際取引による脅威の継続によって過去4年間の9種を含む32種のインコがさらにCITES付属書 I に追加された[http://www.birdsareforwatching.org/WBDecFinal.pdf]。これ以外のすべてのインコの種はCITES付属書 II によって保護されている。これに加えて、それぞれの国には特定の種の種の取引を禁止する法律がある場合もある。

[[Image:Chalcopsitta sintillata -drinking nectar from small cup-1c.jpg|upright|200px|left|thumb|[[w:Yellow-streaked Lory|キスジインコ]] 小さなカップから果汁を飲んでいる]]
野生インコの個体数の保存を目的とした活動的な環境保護団体がたくさん存在している。これらのグループの多くはインコに深い関心をよせるペットの飼い主たちによって支えられている傾向がある。最も大きなグループの一つに、国際的な組織であるワールド・パロット・トラスト[http://www.parrots.org/ The World Parrot Trust] がある。このグループは、雑誌''Psittascene''[http://www.parrots.org/index.php/ourpublication/psittascene/]を発行し、寄付とメンバーシップを通して資金を集めるのと同時に、有益なプロジェクトに援助を与えている。彼らは22カ国で保護活動を援助していると述べている。もっと小さなスケールでは、地元のバードクラブ(鳥の愛好者や飼い主の団体)が保護活動に寄付するための寄金を募ることもあるだろう。動物園や野生生物保護センターでは普段、野生動物の個体数にダメージを与えるような習慣を変えるための公教育を提供している。

最近多くの動物園で採用されている人気のアトラクションが、ローリーやロリキート([[ヒインコ]])への給餌ステーションである。ここで入場者は小型のインコにカップに入った液体の飼料を食べさせる。通常これは教育的な掲示と講義に関連して行われる。


==参照と脚注==<!-- SystBiol55: 454–470 DOI: 10.1080/10635150600697390 needs at least one other study to work out if 1, 2, 3 or 4 clades. Clock is guesswork but fits amazingly well with fossils. -->
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==外部リンク==
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{{commonscat|Psittaciformes}}
{{wikispecies|Psittaciformes}}
{{Wikispecies|Psittaciformes}}
{{portal|鳥類}}
* [http://www.parrotlinks.co.uk/ Parrotlinks - Parrot and parrot-like community site]
*[http://www.cityparrots.org/ City Parrots] Parrot news, Conservation, Naturalized parrots
* [http://www.araproject.nl/ Araproject - Where parrots are wild in flying colours]
*[http://www.freeparrots.net/ FreeParrots] Conservation, welfare, and ecotourim opportunities on behalf of wild parrots
* [http://www.rspb.org.uk/birds/advice/endangeredspecies/threats.asp RSBP website - Threats to wild bird populations]
* [http://ibc.hbw.com/ibc/phtml/familia.phtml?idFamilia=73 Parrot videos] on the Internet Bird Collection
*[http://www.birdadoption.org/groups.htm Parrot Rescue, Adoption & Sanctuary Groups]
* [http://www.avianwelfare.org/issues/index.htm Avian Welfare Resource Center]
*[http://www.1911encyclopedia.org/Parrot 1911 Britannica article]
* [http://www.birdadoption.org/groups.htm Bird Rescue, Adoption & Sanctuary Groups]
*[http://www.theparrotsocietyuk.org/ The Parrot Society UK]
*[http://www.tsubasa.ne.jp/ TSUBASA] 千葉県にあるバード・サンクチュアリ
* [http://www.parrotscience.com/ Parrot Videos, scientific articles, and podcast]
* [http://www.geocities.com/shanlung9/ Tinkerbell - a flighted CAG parrot in Taiwan and how to keep a flighted grey parrot at home]
* [http://translate.google.com/translate?u=http%3A%2F%2Fwww.geocities.com%2Fshanlung9%2F&langpair=en%7Cja&hl=EN&ie=UTF-8 Tinkerbell - 家で飛行のオウムを飼う方法]
* [http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080521-00000048-maiall-soci 迷子になるも「ナガレヤマシ…」「ヨウスケクン」住所と名前話し、無事飼い主の元に戻る(2008年5月21日、毎日新聞)]


==脚注==
{{reflist}}
<div class="references-small">
* '''Forshaw''', Joseph M. & '''Cooper''', William T. (1981): ''Parrots of the World'' (3rd ed). Press, Willoughby, Australia
</div>


[[Category:オウム目|*]]
[[Category:オウム目|*]]
{{bird-stub}}


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2008年7月20日 (日) 12:14時点における版

オウム目(インコ目)
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: オウム目インコ目
Psittaciformes Wagler, 1830

(ただし下記参照のこと)
オウム Cacatuidae Gray, 1840

  • Microglossinae 亜科
    (ヤシオウム)
  • Calyptorhynchinae 亜科
    (クロオウム)
  • Cacatuinae 亜科
    (白色オウム)

インコ Psittacidae Illiger, 1811

(側系統群)

コンゴウインコ 一羽は足を使ってクルミを食べている。嘴でクルミを割るために足で保持している

オウム目(鸚鵡目、Psittaciformes、英語では Parrots )はおおよそ350種類、85属からなる鳥類のひとつで英語では psittacines [1][2] としても知られており、インコ目(鸚哥目、音呼目)と呼ばれることもある。ほとんどの温暖な地域や熱帯地方で見ることができる。通常二つのグループに分類されており、それぞれインコ科(Psittacidae、true parrots)とオウム科(Cacatuidae、cockatoos)とよばれている。

オウム目に固有の特徴として、強靭な湾曲した、直立した姿勢、強力な脚、そして鉤爪をもった対趾足の趾(あしゆび)などがあげられる。ほとんどのインコ科の鳥は全身が主に緑色で、部分的にほかの明るい色をしているが、中には多彩な色をした種類もある。オウム科の鳥ではその色彩はほとんど白からおおむね黒の範囲に及び、可動する羽根の冠(冠羽)をその頭頂部にもつ。ほとんどのオウム目の鳥は性的単型であるか最小限の性的二形である。

訳注:以下オウム目の鳥全般を指してインコと呼ぶ。これにはいわゆるインコとオウムのすべてが含まれる。

インコはカラスカケスカササギと並んで最も知能の高い鳥の一つであり、またその人の言葉をまねする能力からペットとして高い人気を博している。ペット売買を目的とした捕獲が、これ以外の狩猟、居住地の破壊および移入種との競合と同様に、野生の生息数の減少を引き起こしており、ほかのどんな種類の鳥のグループよりも多くのインコの種が絶滅の危機に瀕している[3]

ほとんどのインコの食餌のなかで最も重要な構成要素は、種子ナッツ果実花粉とその他の植物性の素材で、いくつかの種は昆虫や小動物も食べる。またヒインコや柔らかい果実から蜜や果汁を採食することに特化している。ほとんどすべてのインコが木の洞(飼育下では巣箱)に巣をかけ、白い卵をうみ、晩成の雛を孵す。

現存する種類では、その大きさはアオボウシケラインコ(Buff-faced Pygmy-parrot)の10g以下、8cmからスミレコンゴウインコ(Hyacinth Macaw)の体長1m、フクロウオウム(Kakapo)の体重4kgにまで及ぶ。かれらは体長という項目に関して最も変化に富んだ分類目の鳥である。 並外れたインコとしては性的二型性のオオハナインコ(Eclectus、雄は緑色で雌は赤色である)、飛行せずレック型繁殖行動を行うフクロウオウムなどがあげられる。カカミヤマオウムテンジクバタンはとりわけ湾曲の強い上嘴をもつ。


進化と分類学

起源と進化

南アメリカオーストラレーシアにおけるインコの分布から、この目がゴンドワナ大陸起源であることが示唆される。しかしながらインコの仲間の化石記録の存在は希薄であり、その起源は事実というよりは証拠に基づいた推測の域にとどまっている。

ワイオミング州ニオブララ郡ランスクリーク堆積から発見された一片の15mmの下嘴の破片(UCMP 143274)が最初のインコの化石で、およそ7,000万年前の後期白亜紀のものであるといわれていた[4]。しかしその後の調査[5] [6] でこの化石が鳥のものでないことがほぼ確実であり、caenagnathid -- 鳥のような嘴をもった飛行しない獣脚類恐竜に由来することが立証されている。

現在では一般にオウム目、あるいはそのいくつもの関連する鳥類の目を含む共通の祖先は、約6,500万年前の白亜紀から第三紀大絶滅イベントのころ、地球のどこかに現れたと仮定されている。もしそうだとすれば、このときおそらく彼らはその形態学固有派生形質進化させておらず、大ざっぱにいうなら現代の(必ずしも密接に関連があるというわけではないが)タチヨタカまたはガマグチヨタカに似た、未分化の樹上生活に適応した鳥だったのであろう。後述の古第三紀のインコ類も併せて参照されたい。

ヨーロッパは最初に一般にインコのものと認められた化石の出土した場所である。最初のものはMopsitta tantaの翼でデンマークで発掘され、年代は5,500万年前までさかのぼる[7] 。当時の気候は熱帯気候で暁新世-始新世境界温暖化極大イベント(PETM)に一致する。

これに続く化石は始新世のころ、およそ約5,000万年前のものである。複数のほぼ完全なインコ様の鳥の骨格がイングランドドイツで発見されている[8]。多少不確実な部分もあるが、全般的に見てこれらは現代のインコの直系の祖先ではなく、北半球で進化したものの絶滅してしまった同族の系統であると見るべきであろう。これらはおそらくその祖先と現代のインコとを結ぶ"ミッシングリンク"ではなく、むしろインコやオウムと並行して進化したオウム目の系統であり、それ自身の独自の固有派生形質をもっていたのであろう。

現代のインコの最も古い記録はおよそ2,300万年から2,000万年前にまでさかのぼり、これらもすべてヨーロッパで出土している。これに続く化石記録は - これもまた主にヨーロッパからであるが - 明瞭に現代のタイプのものであると識別できる骨格からなっている。南半球には北半球に匹敵するような興味深い時代に関する化石記録が存在せず、また2,000万年前の中新世より古い時期の既知のインコ様の鳥の遺物も含まれていない。しかしながら、この点に関しては(インコ様のものとは対照的に)最初の明白なインコの化石が発見されており、その上嘴は現代のオウムのそれと見分けがつかない。いくつかの現代の属は暫定的に中新世起源とされているが、その明確な記録はたった500万年かそこいらさかのぼったものに過ぎない。

命名されている化石のオウム目の属はおそらくすべてインコ科ないしその祖先の近縁である:

  • Psittacidae gen. et spp. indet. (オタゴ地方バサンズの初期/中期中新世 ニュージーランド) - 複数の種類
  • Bavaripsitta (スタインバーグの中期中新世 ドイツ)
  • Psittacidae gen. et sp. indet.(中期中新世 フランス) - 誤って"Psittacus" lartetianusとともにPararallus disparにおかれていた。

いくつかの古第三紀の化石はオウム目の化石であると明確には認められていない:

  • Palaeopsittacus(初期-中期始新世 北西ヨーロッパ)- caprimulgiform (podargid?) あるいは quercypsittid?
  • "Precursor" (初期始新世) - 明らかにキメラであるこの化石の部分はpseudasturidpsittacid であろう。
  • Pulchrapollia (初期始新世)— "Primobucco" olsoniを含む - オウム目 (pseudasturid か psittacid)?


系統学

キガシラボウシインコの羽毛を拡大した画像。緑色の色彩の中に見られる青い部分は光の散乱によるもので、黄色は色素によるもの。

インコに関する系統学は現在も研究途上である。以下に述べる分類は現時点での状況を反映したものであり、現在も議論が続いている。したがって未解決の問題が新たに究明された場合には変更される可能性がある。このためこの分類は暫定的なものと見なすべきである。

一般にオウム目は二つの現存する主要な系統から構成されていると考えられており、それぞれ科として分類される。すなわちインコ科(Psittacidae)とオウム科(Cacatuidae)である。

オウム科はインコ科とは明白に異なっており、頭部に可動する冠羽をもち、インコ科とは異なる配置の頚動脈をもち、胆嚢があり、頭蓋骨に相違があり、そして羽毛のダイクテクスチャー組織(さまざまなインコに見られる鮮やかな色彩を作り出すように光を散乱させる羽根の構造)を欠いている。しかしながら実際の状況はおそらくもっと複雑である(下記参照)。

インコ科の下位分類群(たとえばヨウムを含むグループに対するセキセイインコの仲間の関係、といった)相互の関係についての理解はかなり確固としたものになってきているし、種相互の関係についての知見はここ数年で非常に改善されてきている。しかしインコ科における異なる系統を亜科と考えるべきなのか、それともと考えるべきなのかについてはいまだに論争が続いている。インコの化石や分子分岐学による年代決定では、その進化における主要な多様化と分岐の起きた時期を正確に決定するための十分なデータが得られず、このためさまざまな系統が実際には互いにどれくらい異なっているのか、そして進化によってどれほど素早く、また根本的に変化したのかを断定することは困難なのである。

ヒインコは従来オウム目第三の科であるヒインコ科(Loriidae) と見なされていたが[9]、現在ではほとんどの場合インコ科(Psittacidae)の亜科と考えられている[10] 。またヒインコを含むすべてのオウム目の鳥を巨大な単一の科の範疇に収める考え方もある。現在主流となっている見方は、ヒインコが亜科としての位置を正当化するに足るだけの差異をもっているとするものである。しかしこのきわめて顕著な差異が一意的な深い分岐の証拠ではなく、むしろもっと近縁の系統との差異と量的には違っていないと考えている者もある。生物地理学によればヒインコは明瞭に区別できる系統と考えるのが最良であり、おそらくオウムほど分岐した種ではなく、しかしそれでも他のインコの種からは隔たっていることが示唆される。

1998年のミトコンドリアDNA[11]、2005年のZ染色体spindlin 遺伝子の分析[12] などのような最近の分子生物学的研究から、どんな証拠からも現存しているインコの系統相互の関係がほとんどの場合解決不能であることがわかった。予想外の結果は、spindlin 遺伝子の配列データから計算系統学により信頼性のある位置決定が可能な、現存しているインコの間での唯一の主要な分岐が起きたのがニュージーランド産インコ - フクロウオウムミヤマオウムカカ - のいずれかとその他のインコの間であったことである[13]

少なくとも nestorine [14]の特異性に関するケースは、さしあたりほぼ決着してるようである。その位置(フクロウオウムの有無に関わらず)と、分子分析による年代測定から示唆されるその古代の年齢が化石記録と食い違っているのに関わらず、またそれが不合理に高度な成因的相同と、現存のインコに対して明らかに最大節約法に反する分布特性を要求することになるにも関わらず、である。これらの研究は、物的証拠による校正を経ていない旧式な分子時計モデルに依存しているため、その結果は非常に疑わしい。ミヤキらによるシナリオ(1998)[11]は不完全であり、またフクロウオウムが含まれていないが、物的証拠とは完全ではないにせよ、よく一致している。しかしこれにもまた信頼のおけない分子時計モデルが使われている。

後者二種(ミヤマオウム、カカ)がいかにも独立した系統を構成するように見えるのに、これらの種のなかにフクロウオウムを位置づけることはミトコンドリアDNA シトクロームb 配列データによって否定される[11]。どんな場合でも、インコの主要な系統がいかにもそれぞれの分岐群を代表しているように見えるが、しかしその相互関係は現存する分子配列データからは十分に解明されてはいない。明らかに彼らの適応放散はおおよそ始新世のあいだの非常に限られたタイムスパンのなかで起きている。ある一つの重要な発見はオウムもヒインコも、それ以外の主要なインコの系統から、従来考えられていたほどには隔たってはいないということである。

分類学

以下の分類は複数の亜科を認めるバージョンである。分子配列データ(上記参照)によれば複数の亜科による分類が実際に確実かもしれず、おそらく科に昇格するものもあるかもしれない。しかしこの中での族の配置については現時点ではあまりよく解明されていない。

ゴシキセイガイインコ(若鳥) (Trichoglossus haematodus)
インコの骨格

インコ(Psittacidae):true parrots


種名のリスト

分類和名

Psittaciformes の和名は一定しておらず、「オウム目」と「インコ目」が使用されている。ただし最近では鳥類学術関連でもペット関連でもオウム目の方を使われる例が多い。インターネット上でも検索するとオウム目がはるかに浸透していることが分かる。また国語辞典でも、例えば広辞苑は第4版まではインコ目だったが第6版ではオウム目を説明記述に使用している。

また、系統学の項に述べられているような差異を重視して2科に分ける場合は、主に小型の種からなるインコ科(Psittacidae)、大型の種からなるオウム科(Cacatuidae) と2つの科に分ける。複数の科からなるという説では、さらにヒオウム科(ヒインコ科:Loriidae) を立てる。しかしこれらの差異を同じ科内での変異として考える説ではPsittacidae 1科とされ、Sibley分類でもその立場を取っている。この場合もPsittacidae の和名は一定しておらず、「オウム科」と「インコ科」とがある。

このグループを1目1科の Psittaciformes - Psittacidae とする場合も、この分類和名には、「オウム目オウム科」あるいは「インコ目インコ科」と表記される他に「インコ目オウム科」とか「オウム目インコ科」などと交差した用例まである。このようにオウム類の分類和名には現状やや混乱があるが、何れも同じ分類対象をさしていることに注意すること。

生息範囲と分布

ほとんどのインコは熱帯に分布するが、コイミドリインコのように温帯に深く進出している種もいくつかある

インコはオーストラリア太平洋島嶼インド東南アジア北アメリカの南部地域、南アメリカおよびアフリカを含むすべての熱帯および亜熱帯大陸で見ることができる。一部のカリブ海と太平洋の島々には固有種が存在する。圧倒的多数のインコの種がオーストラレーシアと南アメリカに由来する。

複数の種類のインコが南アメリカとニュージーランドの冷涼な温帯地方に進出している。一種類、カロライナインコが北アメリカの温帯に生息していたが20世紀の初期に狩り尽くされて絶滅した。数多くの種が温暖な気候の地域に移入されて安定個体群を確立している。オキナインコ(Monk Parakeet)は現在では合衆国の15の州で繁殖している。

いくつかのインコの種はまったくの定着性であったり、また完全な渡り鳥であったりするが、大多数はその二つの間のどこかに落ち着いて、十分には解明されていない地域間の移動を行ったり、また種類によっては完全に非定着な生活様式を採用したりしている。

形態学

テリクロオウム インコの強靭な嘴、鉤爪のある脚そして側面を向いた目が見られる

インコは時に"hookbill"(鉤状の嘴)と呼ばれることがある。これは彼らの最も顕著な身体的特徴、すなわち強力な湾曲した幅の広いのことをさしている。上側の嘴は張り出しており、下向きにカーブし、先がとがっている。この嘴は頭骨とは癒合しておらず、これにより嘴を独立して動かすことができ、このことがこれらの鳥が噛む際に発揮することのできる驚異的な圧力に貢献している。下側の嘴は短く、上向きの鋭い先端をもっている。これが上嘴の平坦な部分に対して、鉄床に対するハンマーのような動きをする。種子を食べるインコは強靭なをもっており、これが嘴の中で種子を扱ったり、ナッツの位置決めを助けたりする。これによって嘴は殻を割るために適切な力を加えることができる。頭は大きく目は横向きについている。これは双眼視による展望を制限するが、周辺視野を大いに強化する。彼らは直立した姿勢で、強力な脚と鉤爪をもった趾(あしゆび)をしており、二つの趾は前方を向き、二つの趾が後方を向いている(対趾足)。

オウムはその頭頂部に可動する羽根でできた冠(冠羽)をもっており、ディスプレイのために起立させたり、畳んだりすることができる。

生態

インコは力強い、直線的な飛行をする。たいていの種はそのほとんどの時間を樹冠の中で枝に留まったり、木に登ったりしながら過ごす。しばしばその嘴を枝やそのほかの手がかりに引っかけたりくわえたりして木登りのために使う。地上ではよたよたと歩くことが多い。

食餌

ジャコウインコが蜜をなめている

インコの食餌種子果実果汁や蜜、花粉と、度合いは小さいが動物の捕食からなっている。これらの中で、ほとんどのインコ科の鳥とオウムにとって疑いなく最も重要なものは種子である。大きく強力な嘴の進化は主として種子を割って摂食することへの適応として説明することができる。アラゲインコ(Pesquet's Parrot)を除くすべてのインコ科の鳥は殻から種子を取り出すのに同じ方法をとる。種子は嘴の間に保持され、下側の嘴によって殻が砕かれる。するとすぐに嘴の中で転がされ、残った殻が取り除かれる[15] 。場合によっては大きな種子を保持するのを助けるために足が使われる。インコは種子の散布者というよりはむしろ種子の捕食者であり、果実を摂取するとして記録されているものでも、多くの場合彼らは単に種子を手に入れるためだけの目的で果実を食べている。種子は自身を守るため有であることがよくあり、インコは、化学的によく防御されている種皮や果実のこれ以外の部分を食べる前に注意深く取り除いている。新世界アフリカパプアニューギニアのたくさんの種類のインコが粘土を食べている。粘土はミネラルを放出し、そしてインコの腸から有害な化合物を吸着する[16]

粘土を食べるコンゴウインコ エクアドルにて。粘土を摂取して餌に含まれる毒素を中和する

ヒインコオトメインコ(Swift Parrot)とシュバシサトウチョウ(Philippine Hanging Parrot )は主に果汁や蜜と花粉を食べる。そしてこの食餌のもとを集めるために先端がブラシ状になっている舌をもっており、同様にこの食餌に順応するために腸もある種の特殊化によって適応している[17]。またほかの多くの種も同じように果汁が得られるようになればこれを摂取する。

一部のインコは種子や花を食べるほかに、動物を捕食することがある。キンバネミドリインコ (Golden-winged Parakeet)は水棲の巻き貝を捕食するし、よく知られているようにニュージーランドのミヤマオウム(Kea)はヒツジの屍肉をあさって食べることがある。またヒメウミツバメ(petrel)の幼鳥を殺すことすらある。ほかのニュージーランドのインコであるムジアオハシインコ(Antipodes Island Parakeet)はヒメアシナガウミツバメ(Grey-backed Storm-petrel)が営巣している巣穴に侵入して抱卵している成鳥を殺す[18] 。ある種のオウムやカカもまた地虫を得るために枝や幹を掘り返すことがある。

繁殖

二個のインコ (Amazona aestiva xanthopteryx) の6日目の卵を透過光で見たもの。左は無精卵、右は心拍が見られる胚を含んでいる。動脈が卵黄の上に成長しているのが見える

いくつかの例外はあるが、インコは一雄一雌で繁殖を行い、なんらかの空洞に営巣し、その営巣地以外にはなわばりを設定しない[15][19]オキナインコAgapornis属(ラブバード)のうちの5種のみが樹上に巣を編み[20]、3種のオーストラリアとニュージーランドのキジインコ(Pezoporus wallicus、Ground Parrot)が地上に巣を作る。これ以外のすべてのインコは、木の洞か、そうでなければ崖や河岸に掘られた巣穴や、シロアリの巣ないし地上に掘られた穴といった空洞に巣を作る。集団で営巣する種もあり、イワインコのばあい、優に70,000羽を超えるコロニーを形成する[21]

インコの卵は白である。ほとんどの種で雌が抱卵をすべて受け持つが、いくつかの種では雌雄で分担して抱卵が行われる。雌は抱卵期のほとんどすべてを巣にとどまって過ごし、雄によって給餌される。

コンゴウインコやその他の大型のインコはK選択を採用する種の典型で、低い繁殖率を示す。彼らは成熟するまでに数年を要し、年間に1羽ないし非常に少ない数の子を育てるが、必ずしも毎年繁殖を行うとは限らない場合もある。

知能

パズルの腕前を披露するコガネメキシコインコ

飼育されている個体による研究から、どの種類の鳥がもっとも知能が高いかについての知見がもたらされている。ヨウム(African Grey Parrot)による研究から、インコにはヒトの言葉を物まねすることができるという特徴があるだけではなく、中には単語をその意味にしたがって結びつけて簡単なセンテンスを作ることができるものもあることが明らかになった。カラスワタリガラスカケスなどのカラス科鳥類と並んでインコはもっとも知能の高い鳥であると考えられている。事実、インコやカラス科の鳥の頭脳と体の大きさの比率は高等霊長類のそれに匹敵する[22] 。鳥類の想定された知的能力に対する反論の一つは、鳥類が相対的に小さな大脳皮質しか持っていないということである。大脳皮質は、ほかの動物においては知能をつかさどると考えられている脳の一部分である。しかしながら、鳥類は脳の異なった部分、すなわち吻側部内側新線条体/上位線条体をその知性の中枢として使っていると見られている。研究によりそれらの種がもっとも大きな上位線条体をもっている傾向があるということが明らかになったが、これは意外なことではない。また、カリフォルニア州立大学サンディエゴ分校の神経科学者である Dr. Harvey と J. Karten は鳥類の生理学の研究により、鳥類の脳の下位部分がわれわれのそれに似通っていることを明らかにした。 インコはその知能を言語を使う能力に関する科学的テストによって示したのみならず、たとえばミヤマオウムなどの一部の種類のインコでは道具を使うことに長けており、これでパズルを解くことができるということを示した[23]

物まねと会話をする能力

多くの種類のインコがヒトの言葉やその他の音のものまねをすることができる。そしてアイリーン・ペッパーバーグの研究結果によってアレックスという名のヨウムが高い学習能力を持っていたことが示されている。アレックスは言葉を使って対象を識別し、それらを説明し、その数を数えるように訓練された。さらには「赤い四角はいくつありますか?」といった複雑な質問に80%以上の正確さで答えることすらできた。第二の例はN'kisiという名の別のヨウムである。N'kisiは1,000語近い語彙をもち、それを正しい文脈で使うだけではなく、正しい時制で作文できる能力を持っていることを示した。

インコには声帯がなく、このため音は分岐した気管の口全体に空気を噴出させることによって作り出される。異なった音は気管の深さと形状を変化させることによって作り出される。したがって話すインコは、実際にはさまざまなバリエーションでさえずっているということになる。ヨウム(Congo African Grey Parrots、CAG)は、その"話す"能力でよく知られているが、これはおそらく強靭な気管かあるいはその精密なコントロールに依っているのであろう。しかしこのことはオカメインコ(オカメインコの話す能力は一般にあまり知られていない)がヨウムよりもたくさんの語彙をもつことができるということを意味するわけではない。

この能力によって古代から現在に至るまで、インコはペットとして珍重されてきた。ペルシャルーミーによって1250年に書かれた"精神的マスナウィー"の中で、筆者はインコを話すように訓練する古代の方法について述べている。

「インコは単語の意味を理解することなく話すことを教えられます。その方法はインコとトレーナーの間に鏡を置くことです。鏡の背後に隠れたトレーナーは単語を口にします。そしてインコは鏡に映った彼自身の姿を見て、もう一羽のインコが話していると思い鏡の背後のトレーナーが口にした全ての言葉を模倣します。」


人間との関係

人間とインコの間には複雑な関係がある。経済的にはかれらはペット売買による収入源としてコミュニティに利益をもたらしうるし、また市場性の高い観光の呼び物であり、シンボルでもある。しかしまた害鳥として、ことにオーストラリアのある種のオウムのように、経済的に影響の大きい種もある。場合によっては人間による環境の改変によって利益をこうむっているインコもいて、その生息域を農業活動にともなって拡大しており、また同じように多数のインコがその生息数を減らしている。

インコは何千万もの個体が野生の環境から連れ去られている。というのもインコはほかのいかなる種類の野生動物に比べても、より大量に、そしてはるかに長い期間に渡って取引されてきているからである[24]。多数の種のインコが、生息地の破壊や、移入種による捕食、ほかの形の狩猟と同様に、この売買のための捕獲によって生存を脅かされている。ある種のインコは果実や穀物、そしてそのほかの農作物を食べる害鳥でもあるが[25]、しかしまたバードウォッチングを目的としたエコツーリズムを通して経済的な利益を生むこともできる。

ペットとしてのインコ

ペットの サクラボウシインコキューバにて

そのヒトと親しくまじわる愛らしい性質、高い知能、鮮やかな色彩と言葉をまねする能力からインコはペットとして高い人気を得ており、歴史的にもさまざまな文化において飼育されてきた。1世紀の初めの大プリニウス(ガイウス・プリニウス・セクンドゥス)の記録によれば、ヨーロッパ人はワカケホンセイインコ(Rose-ringed Parakeet 、ring-necked parrot とも)と記述の一致する鳥を飼っていた[26]。何千年ものあいだ、かれらはその美しさと話す能力から珍重されてきたが、飼育することの困難さもまた証明されてきた。たとえば筆者 Wolfgang de Grahl は1987年の彼の著作"The Grey Parrot" の中で、真水が有害であると考えて、船積みされたインコにコーヒー以外を飲むことを許さなかった輸入業者がいたこと、そしてその行為が輸送中の生存率を向上させると信じていたことを取り上げている(今日ではコーヒーに含まれるカフェインが鳥に有害であるということが一般にみとめられている)。

ペットのインコは鳥かご鳥小屋で飼われるだろう。しかし一般にヒトに慣れたインコは、日常的に外に出てスタンドやジムにとまることが許されなければならない。地域によってインコは捕獲された野生種かもしれないし、飼育下の人工繁殖による個体かもしれないが、野生インコの存在しない大部分の地域では人工繁殖による個体である。

ペットとして一般的に飼育されているインコの種類には、コニュアコンゴウインコボウシインコ、白色オウムヨウムラブバードオカメインコセキセイインコオオハナインコシロハラインコパラキートアケボノインコハネナガインコなどがある。その気質、騒音の大きさ、物まねの能力、ヒトに触れられることへの好悪、そして世話の方法などは種類によって異なるが、しかしそのインコがどのように育てられたかということが、一般にその個性に大きな影響を与える。

インコはその美しさと高い知能、そしてヒトと親しくまじわる性質のためペットとしての人気が高い。1992年に、新聞 USAトゥディ紙は、アメリカ合衆国だけで1100万羽の鳥がペットとして飼われており、その多くがインコであると発表した[1]。あらゆる種類のペットバードのなかでも家畜化されているセキセイインコや一般的なパラキート、小型のインコなどがもっともポピュラーである。

インコは優れたコンパニオンアニマルになることができ、その飼い主と近しい愛情深い絆を形作ることができる。しかしながら彼らは決して飼うことの容易なペットではない。その健康的な生活のためには給餌やグルーミング、獣医の診察、訓練、おもちゃを与えることによる環境強化、運動、そしてほかのインコやヒトとの社会的インタラクションなどが必要である。大型の白色オウムやボウシインコ、コンゴウインコといった一部の大型種のインコは80年におよぶ非常に長い寿命をもつことが報告されており、100年を超える年齢の記録もある。ラブバードやサトウチョウ、セキセイインコといった小型のインコは15年から20年程度の短い寿命をもつ。インコの中には非常にやかましい種類もある。ほとんどの大型のインコは破壊的なことがあり、このため常に新しいおもちゃか、木の枝や噛んで遊ぶためのものを供給することが必要である。

大型のペットのインコの中でもその多くが高い人気と長命、そして知能のために、長い生涯のコースの途上で新しい飼い主に引き取られるということが起こる。一般的な問題とはこうである。つまり可愛らしい穏やかな幼鳥として購入された大型種のインコが、複雑で、多くの場合手数のかかる、飼い主よりも長生きする成鳥へと成熟する。これらの問題のために、そしてこういったホームレスのインコを犬やネコのように安楽死させられないという事実から、パロットレスキューやサンクチュアリといった施設がより一般的になってきている。

インコの売買

1980年代には 10,000 もの野生のスミレコンゴウインコがペット売買のために捕獲された。[27]

ペットとしてのインコの人気は、鳥の売買 - その多くは非合法 - を隆盛に導いた。この結果、現在では絶滅の危機にさらされている種もある。野生のインコの捕獲とその居住地の破壊が組み合わされることで、その生存が難しくなっており、また種類によっては不可能にすらなってきている。

野生インコの売買はいくつかの国では衰えることなく続いている。2007年1月に発表されたレポートではメキシコにおける捕獲された野生インコ取引の鮮明な図式を描いている。この中で「メキシコで捕獲されたインコの大多数は国内での売買のため国内にとどまる。捕獲されたうちわずかなパーセンテージ(4%~14%)が合衆国に密輸される」と述べている[28]

この問題のスケールは1996年のトニー・シルヴァ事件をみることで理解することができる。これはテネリフェ島Loro Parque(ヨーロッパ最大のインコ園)のディレクターにして世界的に高名なインコ専門家であったトニー・シルヴァが、スミレコンゴウインコ(この種の鳥は極めて高価である)の密輸の廉で合衆国において82ヶ月間投獄され、$100,000の罰金を科されたものである[29] 。この事件はより強力な鳥の保護と、取引に対する規制を求める声を呼び起こした。それぞれの国にはそれぞれの国内および国際間の取引を取り扱う方法がある。オーストラリアは1960年以降その固有の鳥の輸出を禁止した。合衆国はその唯一の固有のインコを「絶滅危惧種に関する法律」"Endangered Species Act"により保護しており、そして他の国の鳥を「野鳥保護法」Wild Bird Conservation Actによって保護している。何百もの NGO によるキャンペーンや鳥インフルエンザの発生がきっかけとなって、2007年7月に欧州連合は野生の鳥の輸入の永久的な禁止によって、その輸入を停止させた[2]。2005年10月末に始まった初期の一時的な輸入禁止措置以前には、EUは毎年およそ200万羽の生きた鳥を輸入しており、これは国際市場のおよそ90%にあたる [3]。そしてこれは何十万羽ものインコであった。合衆国においては移入種のインコを保護する国内法がない。メキシコには自国の野鳥を捕獲、売買するための免許制の制度がある(法律が十分に執行されているとは言えないが)。

文化にみるインコ

ファイル:Mochica Portrait.jpg
モチェIII期の典型的な人面形象土器 400 A.D.Larco Museum Collection Lima, Peru.

インコは人々の著作や物語、美術、ユーモア、宗教そして音楽などに何千年ものあいだおおきな位置を占めてきた。ローマの詩人オウィディウスの"オウムの死に際して"(Latin), (English)から何千年も後のモンティ・パイソンの"死んだオウム"スケッチにいたるまで、インコは数多くの文化の意識のなかに存在してきた。人間の文化におけるインコに関する最近の書籍としてはParrot Culture[30]などがある。

古代においても、そして現代でもインコの羽根は式典や装飾のために使われてきている。インコという"主題"は"動物寓意譚"のような中世文学の中で人間の状態を表すために使われている。かれらはペットとしても長い歴史を持っているのである。

現在インコはたくさんのメディアで大きく取り上げられている。ペットとしてのインコのために発行されている雑誌もあるし、またインコの保護のための雑誌(PsittaScene)もある。最近の小説でインコをあつかっているものにはマイケル・クライトンの" Next"がある。映画では"ポーリー"が、またドキュメンタリーとしては "The Wild Parrots of Telegraph Hill"がある。

インコは神聖なものとして考えられていたこともある。古代ペルーモチェの人々は、鳥を崇拝して彼らの芸術のなかにしばしばインコを表現した[31]

インコは国家やナショナリズムの象徴としても使われる。ドミニカの旗にミカドボウシインコ(Imperial Parrot)を見ることができる。オウボウシインコ(St. Vincent parrot)は、カリブ海の国セントビンセント・グレナディーンの国鳥である。

インコに関する言い回しが現代の英語に色を添えている。"parroting"という語を辞書で見ることができるが、これは「丸暗記で繰り返す(おうむ返し)」という意味である。ほかにもイギリスで使われる決まり文句に "sick as a parrot."(ひどく不調、落ち込んでいる)というのがある。ミュージカルアーティストのジミー・バフェットのファンたちは自らを"parrot heads"と呼ぶ。

一生の仕事としてインコに身を捧げることが可能である。動物園や水族館ではインコの世話をし、そして訓練をするために飼育係を雇っている。獣医の中には鳥類の医療に専門化して、インコを専門に扱っている者たちもいる。生物学者たちは野生のインコの生息数について研究を行い野生インコの保護の助けになっている。ブリーダーはインコを繁殖させペット売買のため販売している。

移入種としてのインコ

サンフランシスコの野生オナガアカボウシインコ、Aratinga erythrogenys この個体群は書籍と映画"The Wild Parrots of Telegraph Hill"の題材になっている。

いくつかの種類の逃げ出したインコたちが、その本来の生息域の外に野生で定着するようになっており、なかにはオウム目の自然の生息域を超えているケースもある。そのなかで最も初期の事例がフィジー島産のペットのキサキインコ(Red Shining-parrot、Alisterus scapularis)で、トンガ諸島南部に定着してあらたな個体群を形成している。これらの移入は有史以前に行われており、トンガ諸島のキサキインコは1770年代にキャプテン・クックによって記録されている[32]。逃亡したインコたちがカリフォルニアテキサスフロリダの市街地で繁殖し始めたのは1950年代のことである(証明されてはいないが、テキサスとフロリダで1920年代にまでさかのぼる初期の主張もある)[33] 。彼らはその驚くほどたくましい適応性をヨーロッパや北アメリカの環境において証明している。ときには彼らは数が増えすぎて厄介者や害鳥になったり、土着の生態系に対して脅威となることすらある。

絶滅の危機と保護活動

狩尽くされて絶滅したカロライナインコの標本

多数の種のインコが生息数を減らしており、そして複数の種がすでに絶滅している。350種前後の現存しているインコの種のうち130種が 国際自然保護連合(IUCN)によって準絶滅危惧(near threatened)ないしそれよりも悪い状態としてリストされている[34] 。これほど多数の種が個体数を減らしているのにはいくつもの理由があるが、第一の原因は居住地の喪失、狩猟そしていくつかの種においては野鳥の売買である。インコはいくつもの理由のために虐げられている。ある地域では彼らは食料として、羽根のために、そして農業的な害鳥として狩られる(あるいは狩られてきた)こともあるだろう。アルゼンチン政府がオキナインコに農業的害鳥として賞金をかけた時には、結果として何千羽もの鳥が殺されたが明らかにこのことは全体の生息数にはたいした影響を及ぼさなかった[4]。ペット売買を目的とした捕獲は多くの希少な種や、繁殖の遅い種にとって脅威となっている。居住地の喪失や退廃は、そのほとんどが農業のために引き起こされるが、数多くのインコの種に対する脅威となっている。インコは木の洞に巣をかけるため営巣地の喪失と、これらの場所に移入された種との競争に対してきわめて脆弱である。ことに老木の喪失は地域によって(特にオーストラリアのように営巣に好適な樹木が、樹齢数百年にもおよぶことがあるところでは)大きな問題となっている。

多くの種類のインコが島嶼のみに生息しており、そして哺乳類の捕食者に対抗していくために必要な適切な対捕食者行動を欠いているために、ネズミネコといった移入種に対して脆弱である。このような捕食者たちをコントロールすることが、絶滅危惧種の個体数を維持したり、また増加させる助けになりうる[35] 。限定された居住地に生息する個体数の少ない孤立した種は、ハリケーンや噴火といった物理的な脅威に対してもまた脆弱である。

絶滅の危険があるすべての野生種の国際取引を規制するために1975年に発効した CITES(Convention on the International Trade in Endangered Specie、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の加盟国においては、捕獲された野生インコの売買と輸出入が規制されており、特別に許可された状況下でのみ許される。1975年には24種のインコがCITESの付属書 I に記載され、これによりこれらの種の鳥の商業的な国際取引が禁止された。この最初の記載以来、国際取引による脅威の継続によって過去4年間の9種を含む32種のインコがさらにCITES付属書 I に追加された[5]。これ以外のすべてのインコの種はCITES付属書 II によって保護されている。これに加えて、それぞれの国には特定の種の種の取引を禁止する法律がある場合もある。

キスジインコ 小さなカップから果汁を飲んでいる

野生インコの個体数の保存を目的とした活動的な環境保護団体がたくさん存在している。これらのグループの多くはインコに深い関心をよせるペットの飼い主たちによって支えられている傾向がある。最も大きなグループの一つに、国際的な組織であるワールド・パロット・トラストThe World Parrot Trust がある。このグループは、雑誌Psittascene[6]を発行し、寄付とメンバーシップを通して資金を集めるのと同時に、有益なプロジェクトに援助を与えている。彼らは22カ国で保護活動を援助していると述べている。もっと小さなスケールでは、地元のバードクラブ(鳥の愛好者や飼い主の団体)が保護活動に寄付するための寄金を募ることもあるだろう。動物園や野生生物保護センターでは普段、野生動物の個体数にダメージを与えるような習慣を変えるための公教育を提供している。

最近多くの動物園で採用されている人気のアトラクションが、ローリーやロリキート(ヒインコ)への給餌ステーションである。ここで入場者は小型のインコにカップに入った液体の飼料を食べさせる。通常これは教育的な掲示と講義に関連して行われる。


参照と脚注

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  13. ^ しかしこれは既知の古第三紀のニュージーランド固有種の系統の量からして驚かないわけにはいかない。モアStitchbirdイワサザイホオダレムクドリの項を参照のこと
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外部リンク