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インコ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
インコ
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: オウム目 Psittaciformes
: インコ科”(広義) Psittacidae
和名
インコ(鸚哥)
英名
True parrots
2019年現在の科[1]

インコ(鸚哥/音呼、: true parrots)は、オウム目Psittaciformes)におけるオウム科を除く広義の“インコ科”(Psittacidae)に属するの総称である。オウム科Cacatuidae)の鳥(オウム cockatoo)も含めて英語ではオウム目の鳥類を parrots とよぶが、オウムとその他のインコ類 true parrots とは区別されている。インコはオウムよりも広く分布しており、アメリカアフリカアジアオーストラリアポリネシアに至る太平洋東方まで生息している種がある。

ほとんどのオウム目の鳥がそうであるようにインコ科の鳥も基本的に種子食である。個々の種によって多少バリエーションがあり、果実、ナッツ、葉そして昆虫や、時には他の動物を捕食するものも種類によっては存在する。ヒインコは主に花のを食べているが、他のインコも同様に蜜を食べる。ほとんどのインコは木のウロに巣をかけ、一夫一婦でつがいを作る。

九官鳥と同様、教えることによって人語やその他の音声をまねて発声するようになる。記録では、100語以上発話できた個体もいる。

形態

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白や黒、暖色系を中心とするオウムとは異なり、青や緑といった色彩を持つものも多い[2]

嘴は湾曲し、穀物および種子類の殻を割りやすくなっているほか、木の枝や鳥かごを咥えてよじ登ったり移動したりする。

オウムが頭頂部に発達した冠羽を持つのに対し、インコは冠羽を持たない(ただし、ヒオウギインコのように頭部に飾り羽根を持つインコもいる)[2]

雌雄の区別は見た目ではわからない種類が多いが、オオハナインコのように雌雄で大きく見た目が異なる種のほか、雌雄で虹彩やろう膜の色が異なる種もいる[2]

分類と系統

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伝統的には、オウム目はオウム科、インコ科のふたつの科から成るとされていた。

かつてのインコ科は、インコ亜科 (一般のインコとその仲間) とヒインコ亜科のふたつの亜科から構成された。しかしこれとは異なる分類法もあり、これらふたつのグループがインコ科(Psittacidae)とヒインコ科(Loriidae)と呼ばれ、正規の科として記述される場合もあった。またオウム類をオウム亜科としてインコ科(=オウム科)に含めることもあった[3]。オウムとヒインコ類を除くインコ類はアラゲインコ亜科・インコ亜科・ケラインコ亜科・フクロウオウム亜科・ミヤマオウム亜科の5亜科とされ、オウム亜科・フクロウオウム亜科・ミヤマオウム亜科を除いたインコ科とヒインコ科の種がインコとされた[3]

のちの分類体系では上記のインコ科・ヒインコ科の単系統性は否定されており、旧インコ科Psittacidaeとヒインコ科はインコ科(Psittaculidae、アジア・太平洋・オーストラリア産のインコ類)、ヨウム科(Psittacidae、アフリカとアメリカ大陸産のインコ類)、フクロウオウム科(Strigopidae、フクロウオウムミヤマオウム類)の3科に分けられた[1]

伝統的な分類

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オウム目をインコ科とオウム科に分け、インコ科をヒインコ亜科とインコ亜科に分ける分類。

2019年時点での分類

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インコを3つの科に分ける分類[1]

系統樹

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オウム目全体の系統樹[4]。種数はIOC(国際鳥類学者連合)のリストによる[5]

Psittaciformes

Strigopidaeフクロウオウム科(4種)

Cacatuidaeオウム科(22種)

Psittacoidea

Psittacidaeヨウム科(アフリカと新大陸のインコ)(179種)

Psittaculidae – 狭義のインコ科(旧大陸のインコ)(203種)

以下は狭義のインコ科の系統樹[6]。狭義のインコ科は203種を含み、54属に分類される。このうち13種は有史時代に絶滅した[5]。アラゲインコ属Psittrichasとクロインコ属Coracopsisを独立した科Psittrichasidaeとし、残りをさらに狭義のインコ科(Psittaculidae)とする説もある[4]。ホンセイインコ属Psittaculaとオオハナインコモドキ属Tanygnathus、およびCyclopsitta属とクサビオヒメインコ属Psittaculirostrisはそれぞれ単系統ではないことが示されている[6]。種数はIOCのリストによる[5]

狭義のインコ科Psittaculidae
Psittrichasinae

Psittrichas – アラゲインコ

Coracopsis – クロインコなど(4種)

さらに狭義のインコ科Psittaculidae
Psittaculinae

Micropsitta – ケラインコ(6種)

Polytelini

Alisterus – キンショウジョウインコ(3種)

Aprosmictus – ハゴロモインコ(2種)

Polytelis – テンニョインコなど(3種)

Psittaculini

Prioniturus – ウチワインコ(10種)

Eclectus – オオハナインコなど(5種)

Geoffroyus – イロガシラインコ(3種)

Psittinus – ルリゴシインコ(2種)

Psittacula + Tanygnathus – ホンセイインコ、オオハナインコモドキ (16 + 5種)

Psittacellinae

Psittacella – クビワインコ(4種)

Platycercinae
Pezoporini

Pezoporus – キジインコなど(3種)

Neopsephotus – アキクサインコ

Neophema – キキョウインコなど(6種)

Platycercini

Lathamus – オトメインコ

Prosopeia – メンカブリインコ(3種)

Eunymphicus – ヘイワインコ(2種)

Cyanoramphus – アオハシインコ(12種)

Barnardius – マキエゴシキインコ

Platycercus – ヒラオインコ(6種)

Psephotus – ビセイインコ

Northiella – ハナガサインコなど(2種)

Purpureicephalus – ユーカリインコ

Psephotellus – ヒスイインコなど(4種)

Agapornithinae

Bolbopsittacus – バンジロウインコ

Agapornis – ボタンインコ(ラブバード)(9種)

Loriculus – サトウチョウ(15種)

ヒインコ亜科 Loriinae
Cyclopsittini

Cyclopsitta – イチジクインコ(4種)

Psittaculirostris – クサビオヒメインコ(3種)

Melopsittacus – セキセイインコ

Loriini

Oreopsittacus – ヤマムスメインコ

Charminetta – コシアカキスジインコ

Hypocharmosyna – ミツアカインコなど(2種)

Charmosynopsis – ブルインコなど(2種)

Synorhacma – タスジインコ

Charmosyna – コウゴウインコなど(3種)

Charmosynoides – キフジンインコ

Vini – ムスメインコ(11種)

Neopsittacus – タカネインコ(2種)

Lorius – オビロインコ(6種)

Psitteuteles – クスダマインコ

Parvipsitta – ヒメジャコウインコなど(2種)

Pseudeos – コシジロインコ(2種)

Chalcopsitta – テリハインコ(3種)

Glossoptilus – スジハラスミレインコ

Trichoglossus sensu lato

Saudareos – ズグロゴシキインコなど(5種)

Eos – ヒインコ(6種)

Glossopsitta – ジャコウインコ

Trichoglossus – セイガイインコ(10種)

ギャラリー

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種名リスト

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この節では狭義のインコ科に属する種をリストアップする。和名は山階(1986)に従う[8]。他のインコに関しては以下の項目を参照のこと。

オウム目全種のリスト(英語)

書籍

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  • Bruce Thomas Boehner - Parrot Culture. Our 2,500-year-Long Fascination with the World's Most Talkative Bird (2004)

脚注

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  1. ^ a b c 山崎剛史・亀谷辰朗「鳥類の目と科の新しい和名 (1) 非スズメ目・イワサザイ類・亜鳴禽類」『山階鳥類学雑誌』第50巻 2号、山階鳥類研究所、2019年、141-151頁。
  2. ^ a b c 磯崎哲也『世界のインコ』ラトルズ、2016年10月31日、10頁
  3. ^ a b 菅野宏文『オウム、大型インコの医・食・住』どうぶつ出版、2004年、22-24頁。
  4. ^ a b Joseph, L.; Toon, A.; Schirtzinger, E.E.; Wright, T.F.; Schodde, R. (2012). “A revised nomenclature and classification for family-group taxa of parrots (Psittaciformes)”. Zootaxa 3205 (1): 26–40. doi:10.11646/zootaxa.3205.1.2. 
  5. ^ a b c Parrots, cockatoos”. IOC World Bird List Version 13.2. International Ornithologists' Union (2023年7月). 2023年9月22日閲覧。
  6. ^ a b Smith, B.T.; Merwin, J.; Provost, K.L.; Thom, G.; Brumfield, R.T.; Ferreira, M.; Mauck, W.M.I.; Moyle, R.G. et al. (2023). “Phylogenomic analysis of the parrots of the world distinguishes artifactual from biological sources of gene tree discordance”. Systematic Biology 72 (1): 228–241. doi:10.1093/sysbio/syac055. PMID 35916751. 
  7. ^ Blue-crowned Hanging Parrot” (英語) (2023年12月20日). 2025年1月23日閲覧。
  8. ^ 山階芳麿『世界鳥類和名辞典』大学書林、1986年10月10日

外部リンク

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