非国民

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非国民(ひこくみん、旧字体: 非國民)とは、国民としての義務や本分に違反する者、あるいは国民としての観念が薄い人を指す語[1]

日本では特に第二次世界大戦中にや国策に非協力的な者を非難する語として用いられた[1]。英語では traitor(トレーター、裏切者、国賊、売国奴、非国民)が該当する[2]

差別的なを強く含む「非国民」は、人権的な観点から極めて不適切であるため、冗談で軽く発することは国民として極めて不名誉なことであり、「非国民」と軽く発することそのものが「非国民」的な行為と見れる。 なお、「非国民」とは、国民としての義務や本文に合致しない行為を有する者を対象に扱う語であり、価値観や心情、趣味人種信条、社会的身分又は門地といった観点でこの語を用いるのは本来の意から大幅にずれるものであり、正しい使い方ではない。なお、日本国秩序を代表する日本国憲法では、いかなる属柄や精神を有しても公共の福祉に反さない限り差別されないという概要が明記されている。

使用例

戦時中

日本政府も「非国民」という言葉を用いた。例えば内閣情報局による「家庭防空の手引き:我等は総て国土防衛の戦士」『週報』では、本土空襲があった場合、隣組による消火活動に協力しなかったり(防空法で禁じられた空襲予告地域からの逃亡など)、事前に買いだめをしたりすることなど、つまり自分や自分の家族の安全・生活を戦争遂行のための集団行動よりも優先させるような姿勢を持つことを、「非国民的」と述べている[3]

戦中の翼賛体制を批判して不敬罪に問われた経験をもつ尾崎行雄(元衆議院議員・1898年-文部大臣・1903年-東京市長・1914年-司法大臣)は、1948年に世界連邦建設同盟(現・世界連邦運動協会)を創設し、肯定的・積極的な意味合いで「非国民たれ」と主張した[4]

日露戦争中
露探(ロシア側の軍事探偵・スパイ)のレッテルで非国民狩りが行われた[5]
第二次世界大戦中のアメリカ
  • 強制収容所 - アメリカでは敵性国民を集めて管理した。

戦後

今日ネット上では、「(勝敗が国家の存亡や利益に即座に影響しないような)他国との争いがある状況下で自国を応援しない、他国を応援する」・・・例えばスポーツの国際試合で自国の代表を応援しなかったり試合自体を見なかったりする、他国の製品を購入するなどの程度のことをもって「非国民」と呼ぶような、軽い意味で使われることもある。また税法の抜け穴を利用して外国のタックス・ヘイヴンなどで資産運用した者が「非国民」と罵られたこともある[6]。しかしこれは、上記で示した通り、本来の意からずれる間違った使い方である。

その他

ラトビアやエストニアでは旧ソ連の国民は、永住権があるが国民とは扱われない非国民と呼ばれる地位に置かれる[7]

注釈

  1. ^ a b 非国民』 - コトバンク
  2. ^ traitor Weblio英和辞書
  3. ^ 情報局(内閣)『週報』(1941年9月3日号)「家庭防空の手引き:我等は総て国土防衛の戦士」7, 42
  4. ^ 世界連邦運動・高知
  5. ^ 敵意が「非国民」生む”. 日本経済新聞 (2014年2月2日). 2022年10月21日閲覧。
  6. ^ 朝日新聞(2016年7月24日)
  7. ^ アレクセイ・ティモフェイチェフ (5月 06, 2015). “過度の政治化が問題”. Russia Beyond 日本語版. 2022年10月21日閲覧。

関連項目