阪堺電気軌道501形電車

阪堺電気軌道501形電車
モ505号（帝塚山四丁目停留場にて。2006年6月）
基本情報
製造所	帝國車輛工業
主要諸元
編成	1両
軌間	1,435
編成定員	90人
編成重量	16.8t
全長	13,310
全幅	2,436
全高	3,650
主電動機	TDK830-A 30kW×4
駆動方式	WNドライブ
編成出力	30kw×4
備考	全金属製

阪堺電気軌道モ501形電車（はんかいでんききどうモ501がたでんしゃ）は、1957年に阪堺電気軌道の前身である南海電気鉄道（南海）が当時の同社大阪軌道線向けに導入した、路面電車用電車。

概要

当時この路線を経営していた南海では、1938年から木造車の鋼体化に取り組んでいたが（これによって生まれたのがモ205形）、大型木造車・モ101形は太平洋戦争も乗り越えて主力として走りつづけていた。

そこで同形の一部置き換えを目的に、1957年にモ501 - 505の5両が帝國車輛工業によって製造された。後述するように当時の最先端の技術が盛り込まれた高性能車である。

車体

竣工当時の塗装を復刻したモ505

車体は全金属製。運転席窓を広く取った3枚窓の前面など大阪市電3001形に準じたスタイルながら、側面は当時南海が増備していた特急車11001系などによく似ている。

1976年からワンマン化改造が行われた際に、それまで系統番号と行き先を表示する形だった方向幕が、方向幕を新設したモ161形などと共通化するために小型化されている。また1985年にモ501 - 504が冷房改造され同年7月3日から冷房を作動させての営業運転を開始し、翌年にモ505も冷房改造されて2012年現在は全車冷房車となっている。冷房改造された当初の夏場には、非冷房車を敬遠して待ってでも冷房車に乗る乗客もいたという。

なお、「うるさい」との苦情を受けて、本形式のみ新造時からフートゴングを装備していない。

主要機器

大阪市電3001形同様、いわゆるPCCカーの影響下に登場したことや、専用軌道の多い路線で使用されることからか、走行装置は当時の最新鋭技術による豪華なものが装備された。

台車は枕バネにベローズ式の空気バネを使用する一自由度系軸箱梁式台車である汽車製造KS-53台車を履いているが、これは日本初の路面電車用空気ばね台車である。また駆動方式も、遊び歯車を介した二段減速式のWNドライブを採用し、セルフラップ式の電空併用ブレーキSME-D、多段式総括制御を装備するなど、現代でも通用し路面電車らしからぬスペックを誇っている。

しかし、電空併用ブレーキの扱いが他形式のSM-3空気ブレーキと全く異なり、扱いが難しい事などもあって間もなく使用を中止し、冷房化時に電気ブレーキそのものを撤去している。1980年の分社化に際して路面電車では一般的なSM-3空気ブレーキとなったが、空気ブレーキのみとなった事や冷房化による重量増が影響してか、他形式よりブレーキ性能が劣る。

また製造当初は連結器を装備していたが、のちに連結運転が中止されたため撤去された。

熊本市交通局5000形電車と共に、いわゆる和製PCCカー組の中でカルダン駆動を現在でも採用している希少な車両である。特に、他社に一度も譲渡されていない車両としては最後の存在でもある。

運用・変化

登場から同路線のエース的存在となっており、現在も5両全車が運用されている。なお、モ503は2015年7月30日に大和川検車区構内で脱線事故を起こした。

2013年12月にモ502の行き先表示機が、従来の幕式表示からLED表示へと変更され、運転席背面に液晶ディスプレイが設置された。運賃箱も1001形と同じタイプのものに交換され、ドア横にICカードリーダーが新設された。

保有車両の塗装

• モ501 - 関西国際学園「さくらインターナショナルスクール」
• モ502 - パチンコ店「デルーサツインK's・プラチナム5」
• モ503 - パチンコ店「デルーサツインK's・プラチナム5」
• モ504 - 雲電車（橙）
• モ505 - キン肉マン

モ501は通称雲電車（橙）と呼ばれる特別塗装を施していた。2008年6月より就役50周年を記念してステッカーが貼られている。2010年8月には上半分の塗装がオレンジ色から黄色に変更された。2013年11月からは前面は雲電車の塗装のまま、側面はパチンコ店「P-ROOTs CASINO」の広告塗装となり、1年を経たのち関西国際学園「さくらインターナショナルスクール」の広告塗装となっている。

モ502は2010年6月6日から2年間の予定で、南海グループと東京都交通局の共同キャンペーンの一環として, 1978年以前の東京都電の塗色である黄色地・窓下赤帯に変更されていた。発表の時には車両の方向幕を「早稲田」に変更し、共同PRを行った。このいわゆる「塗装交換」は2009年10月より江ノ島電鉄と京福電気鉄道との間で実施している方法と類似（両社も方向幕に互いの事業者の行先「嵐山」「鎌倉」を掲示した）しているが、江ノ電・京福間が塗装で実施しているのに対して都電・阪堺間ではラッピングで行っていた。2014年5月以降は、同年4月1日から阪堺で導入されたPiTaPaおよび南海グループカード minapitaの広告塗装を経て、モ503と同じパチンコ店「デルーサツインK's・プラチナム5」の広告塗装となった。

モ504は竣工当時の塗装が復活し、2009年12月29日から営業運転を行っていたが、2013年2月に塗装が変更されて近鉄百貨店の広告塗装となり、雲電車（橙）を経て2015年11月1日からは大阪府警察など各種団体連合による『カギかけた？880万人防犯啓発運動』ラッピング電車となった。

モ505もモ504と同様に竣工当時の塗装となっていたが、2012年5月に赤と青のダイナミックな塗装に変更されており、2012年6月10日に開催された「第14回路面電車まつり」にてお披露目が行われ、「キン肉マンプロジェクト推進委員会」特別塗装電車となった。

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  モ501　関西国際学園「さくらインターナショナルスクール」塗装（2014年11月8日）
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  モ502「デルーサツインK's・プラチナム5」塗装（2015年11月29日）
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  モ503「デルーサツインK's・プラチナム5」塗装（行き先表示機改修後。2014年5月6日）
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  モ504　雲電車（橙）＆防犯啓発運動塗装（2015年12月5日）
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  モ505「キン肉マン」塗装（行き先表示機改修後。2014年4月19日）

過去

• モ501 - （アサヒビール）→阪堺標準色→大阪宅建協会→雲電車（橙）→雲電車（黄色）＆パチンコ店「P-ROOTs CASINO」
• モ502 - 末廣堂→公益社→雲電車（橙）→トラスティ不動産販売→旧都電塗装→PiTaPa・南海グループカード minapita
• モ503 - あびこ道&安立商店街→雲電車（橙）
• モ504 - 南海辰村建設→雲電車（橙）→竣工当時の塗装→近鉄百貨店
• モ505 - （ほのぼのレイク）→阪堺標準色→雲電車（橙）→竣工当時の塗装

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  雲電車（黄色）＆パチンコ店「P-ROOTs CASINO」塗装時代のモ501（2014年5月6日）
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  都電と「塗装交換」を行ったモ502（行き先表示機改修前。2010年10月）
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  行き先表示機がLEDに変更された直後のモ502（2014年1月19日）
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  モ504「近鉄百貨店あべのハルカス近鉄本店」塗装（2015年4月に解除）（行き先表示機改修後。2014年6月28日）
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  モ505「キン肉マン」塗装（行き先表示機改修前。2012年10月）

参考文献

• 小林庄三　『阪堺電軌・和歌山軌道線』、トンボ出版、1996年。
• 中山嘉彦　「南海車両　－音と色－」、『鉄道ピクトリアル』 807、2008・8 臨時増刊、電気車研究会、2008年、pp.164 - 165。
• 中山嘉彦　「阪堺車両　－音と色－」、『鉄道ピクトリアル』 852、2011・8 臨時増刊、電気車研究会、2011年、pp.125 - 128。

関連項目

• 阪堺グリーン