後鳥羽伝説殺人事件
後鳥羽伝説殺人事件 | ||
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著者 | 内田康夫 | |
発行日 | 1985年1月 | |
発行元 | 角川書店 | |
ジャンル | 小説 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
ページ数 | 298 | |
コード |
ISBN 4041607019 ISBN 978-4041607015(文庫本) | |
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『後鳥羽伝説殺人事件』(ごとばでんせつさつじんじけん)は、内田康夫の長編推理小説。浅見光彦シリーズの第一弾である。
概要
あらすじ
8年前、卒業論文の執筆のため、後鳥羽法皇が隠岐に流された道順を追って旅行していた女性、正法寺美也子は土砂崩れにあい、友人である浅見祐子と自らの記憶とを失ってしまった。彼女は友人の冥福を祈り、失われた記憶を取り戻すために旅行をしていたが、ある古本屋で自分の記憶に関わる一冊の書物を見つける。しかし、その日の午後、広島県の国鉄三次駅構内で、彼女は遺体となって発見された。彼女の遺留品からはあの本が紛失していた。
その事に目をつけた野上刑事は捜査本部に報告するが、無視されてしまった。翌日、彼は正法寺美也子を目撃していた富永隆夫が殺害されたことをニュースで知ると、彼女のことを知るために東京へ出張した。彼はそこで浅見祐子の兄、浅見光彦と出会う。
登場人物
- 正法寺 美也子(しょうほうじ みやこ)
- この事件における第一の犠牲者。8年前、大学の卒論執筆のために友人・浅見祐子と旅行をしていたが、島根県仁多町で土砂崩れにあい、祐子は死亡、自分も記憶喪失となる。8年前と逆のコースを辿って、仁多町から尾道までを旅していたが、最終日の尾道にて、古本屋で「緑色の本」を購入し、旅の中間地点であった三次市に戻るという不可解な行動を取る。彼女の行動なくしてはこの連続殺人事件はありえなかったという重要な位置に立つ人物。
- 正法寺 尚之(しょうほうじ なおゆき)
- 美也子の兄。遺体を引き取りに来る。
- 浅見 祐子(あさみ ゆうこ)
- 美也子の友人であり、浅見光彦の妹。8年前、島根県で土砂崩れに遭い死亡。遺体に性行為の痕跡が認められた。
- 浅見 光彦(あさみ みつひこ)
- この物語における主人公。ルポライターで、祐子の兄。広島県警の野上刑事に協力し、連続殺人事件と妹の死の真相を追い求める。活躍するのは、主に物語の中盤からで、最初は登場予定ではなかった。作者・内田康夫の思い付きからの登場で、この発想が無ければ、浅見光彦シリーズは無かったと言ってもいい。
- 浅見 陽一郎(あさみ よういちろう)
- 光彦と祐子の兄で、浅見家の長男。警察庁の刑事局長を務める。エリートという役職に対し、まっすぐな意見を持っている。
- 浅見 雪江(あさみ ゆきえ)
- 浅見兄弟の母。厳格な人物。
- 坂巻(さかまき)
- 北村 義夫(きたむら よしお)
- 田坂 峯夫(たさか みねお)
- 富永 隆夫(とみなが たかお)
- D-社の会社員。美也子が「緑色の本」を福塩線の列車内で手にしているのを目撃した人物。庄原市で殺害される。
- 野上 智子(のがみ ともこ)
- 野上刑事の妻。
- 新祖(しんそ)
- 国鉄三次駅の駅員
- 池田 謙二(いけだ けんじ)
- 三次高校の歴史教諭。8年前、美也子達が泊まっていた民宿で、一緒に停まっていた「3人組」の一人で、8年前の事件に深く関与している。自殺に見せかけて絞殺される。
- 木藤 孝一(きとう こういち)
- 庄原市の木藤製材所の二代目社長。「3人組」の一人で、「3人組」の最後の一人(すなわち犯人である)と連絡を取り合っていた。
警察
- 野上(のがみ)
- 三次警察署の叩き上げ部長刑事。この物語におけるもう一人の主人公。周りからは、ベテランで信頼のおける警察官として見られている。既婚者。殺害前、池田と接触を図るが、それが理由で桐山主任から謹慎処分を受け、捜査チームから外されてしまう。
- 桐山 道夫(きりやま みちお)
- 広島県警本部から来たエリート警部。榊原とは大学の同窓。殺人事件の捜査主任を務めることになった。野上刑事に対して、非協力的な態度を取る。
- 榊原(さかきばら)
- 広島県警本部長。桐山の大学の先輩に当たり、桐山に眼をかけている。浅見陽一郎とは知り合いで、光彦とも面識がある。
- 土屋(つちや)
- 広島県警捜査一課長。
- 稲垣(いながき)
- 広島県警刑事部長。
- 大友(おおとも)
- 警視。三次警察署署長。
- 落合(おちあい)
- 警部。三次警察署刑事課長。
- 森川(もりかわ)
- 警部補。三次警察署捜査係長。
- 石川(いしかわ)
- 広島県警捜査一課刑事。
テレビドラマ
1982年版
TBS系の2時間ドラマ「ザ・サスペンス」(毎週土曜日21:02 - 22:53)で1982年8月21日に放送された。
本作では、正法寺美也子が「光彦の恋人」という設定になっている。主人公は光彦ではなく、野上刑事になっている。
- キャスト
1990年版
『浅見光彦ミステリー7・備後路殺人事件』は、日本テレビ系の2時間ドラマ「火曜サスペンス劇場」(毎週火曜日21:02 - 22:54)で1990年1月6日に放送された。
- キャスト
2000年版
『浅見光彦シリーズ14・後鳥羽伝説殺人事件』は、TBS系の2時間ドラマ「月曜ドラマスペシャル」(毎週月曜日21:00 - 22:54)で2000年9月4日に放送された。
- キャスト
2009年版(フジテレビ)
『浅見光彦シリーズ33・後鳥羽伝説殺人事件』は、フジテレビ系の2時間ドラマ「金曜プレステージ」(毎週金曜日21:00 - 22:52)で2009年4月10日に放送された。
- キャスト
2009年版(TBS)
『浅見光彦〜最終章〜 木曽編―浅見家の悲劇―』は、TBS系の「水曜劇場」枠(毎週水曜日21:00 - 21:54)で2009年11月25日(第6話・前編)と12月2日(第7話・後編)に放送された。
- キャスト
逸話
- 作家に専念する前の内田がCM制作会社を経営していたとき、広島県府中市のリョービの本社を度々訪れて広告の仕事を手がけた。この時、現在の会長で当時社長だった浦上浩から、この地方(備後地方)に伝わる後鳥羽天皇に纏わる伝承を聞いた。それを素に創作したのが、商業デビュー作である本作である。この作品は浅見光彦が初登場する内田の出世作となった。浦上はこの前作である『本因坊殺人事件』の主人公の名前に使われている[1]。
- 連続ドラマで放送されている「浅見光彦〜最終章〜」では桐山道夫が陽一郎の部下という設定で登場しており、6話ではこの作品を元にしたストーリーで描かれる。ただ、舞台は広島・島根ではなく、木曽に変更され、オリジナルキャストも登場する。
- 沢村版(「月曜ドラマスペシャル」)と中村版は、祐子が亡くなった時期が原作とそれぞれ異なる。原作が8年前に対して、沢村版は10年前に変更されており、中村版は12年前に変更されている。