妖怪アパートの幽雅な日常
『妖怪アパートの幽雅な日常』(ようかいアパートのゆうがなにちじょう)は、香月日輪によるライトノベル作品。全10巻で講談社YA!ENTERTAINMENTから刊行されている。2004年、第51回産経児童出版文化賞フジテレビ賞を受賞。略称は「妖アパ」。番外編として『妖怪アパートの幽雅な食卓 るり子さんのお料理日記』『妖怪アパートの幽雅な人々 妖アパミニガイド』および『妖怪アパートの幽雅な日常 ラスベガス外伝』がある。2008年からは文庫版シリーズが刊行されている。深山和香によって漫画化され、『月刊少年シリウス』2011年5月号に予告が乗り同年7月号より連載される。深山和香は講談社文庫のカバーイラストも期間限定の発売ではあるが手がけている。
世界観は香月曰く『地獄堂霊界通信』とリンクしているという。本作の舞台と地理的に近いらしく、上院町・イラズの森・森住神社などの名称が度々登場する。
ストーリー
主人公・稲葉夕士が親戚の元から独立したくて高校入学と同時に始めた下宿生活。ところがそこは、妖怪たちが暮らす妖怪アパートだった。自分の今までの常識が通じない場所で、夕士は様々なことを学んでいく。
登場人物
※担当声優は、漫画版単行本特装版付属ドラマCD版のもの。
妖怪アパートの住人
人間
- 稲葉 夕士(いなば ゆうし)
- 声 - 阿部敦
- 主人公。中学1年のときに両親を交通事故で亡くし、中学校3年間は伯父の家で過ごしたが、伯父一家とはあまり折り合いがよくなく、高校進学を機に学生寮で一人暮らしを決断。ところが、学生寮が火事で全焼してしまい、「前田不動産」で格安アパート「寿荘」を借りるが、それが「妖怪アパート」だった。アパートでは202号室に住んでいる。一度「普通の世界に戻る」という理由でアパートを去ったが、「普通とは何か」をよく考えた末に再び戻ってくる。
- 当初はアパートの住人たちによって常識を破壊され続けていたが、時が経つにつれてさまざまなことを吸収してゆく。また本人の素直さや苦労したことから経験の豊富な大人達の言葉を素直に受け入れることができる素地を持っておりバイト先、学校の友人などからの言葉も受け入れることができる。成長するようになって大局的に見据える力も持つように成長していく。本人も高校卒業後は公務員か県職員になるつもりだったが、のちに大学進学を決意する。普段はツッコミ担当だが、時折セクハラとも受け取れる発言をすることがあり、周囲からつっこまれることがある。「青春したい」と漏らしているが、中学生時代は長谷に「紹介してくれ」と言う女子がいたり、高校時代も仲のいい女子が複数いたりと自覚せずに青春している。
- 縁あって小(プチ)ヒエロゾイコンのマスターとなる。が、あまりにも使えないため余程の事がないと使わないよう自制している。秋音から魔道書の本質を知り、少しでも扱えるように特訓を始める。秋音には「トランス状態に入りやすいため練習の際は誰かいないとだめ」だと注意される。実際にアパートに住むようになってからは霊能力の素質が開花し始め、クラスメイトの田代貴子の危機を救っている。特訓の甲斐もありプチも多少は扱えるようになった。
- 完結編では、古本屋と一緒に海外旅行をした後、世界的に有名な小説家になる。また、作中ラストで封じられた状態になっていたプチそのものの力も旅行中に回復した。
- 久賀 秋音(くが あきね)/鈴木 まゆこ(すずき‐)
- 声 - 沢城みゆき
- 204号室。鷹ノ台の高校に通う女子高生。昼間は高校に通い夜は人間・妖怪両方を診る「月野木病院」で丁稚奉公として働く、除霊師の卵。
- 両親共に霊感を持つ家系で、小学生の時に「久賀流心錬術」という精神修行道場の門下生になり、裏で霊能力者の修行を積む。「久賀秋音」は小学6年生の時に才能を認められた際に貰った名であり、本名は「鈴木まゆこ」。夕士が「プチ」の主となったことから、彼の霊力トレーニングを手助けする。かなりパワフルで夕士の特訓に付き合った後にバイトに向かう姿を見て「かっこいい」と言わしめるほど。性格は明るく朗らかだが、時折長谷の様なシビアさを見せる事も。
- かなりの大食いで、毎回その大食漢っぷりを披露している。所謂どんぶり飯で大盛りを毎回食べている。
- 後に霊能力プロの除霊師を目指して四国へ修行に行き、アパートを去った。現在は介護福祉士となって月野木病院で勤務している。ストーカーの幽霊(死んだ後も女性に付きまとっていた)が自分の後をついてきた時、「禁!」と唱え、撃退したことがある。
- 詩人/一色 黎明(いっしき れいめい)
- 声 - 石田彰
- 102号室。有名な詩人で童話作家。夕士曰く「子供のラクガキのような顔」。性別は男性だが一人称は「アタシ」。甚平姿が定番。
- 自室は最新のAV機器やパソコンで埋め尽くされていて、デジカメで撮った写真などを加工しているらしい。
- 収入源もいつ仕事をしているのかも分からない人だが、その耽美でグロテスクな作風と文体から一部に偏執狂的なファンを持ち、熱狂的なファンの1人に刺されそうになった事がある。
- 『僕とおじいちゃんと魔法の塔』に登場する美術商「黎明苑」の社長とは従兄弟同士らしい。
- 画家/深瀬 明(ふかせ あきら)
- 声 - 中井和哉
- 103号室。外見は暴走族の頭(ヘッド)にしか見えない、流離のヤンキー画家。国内より海外で人気が高い。
- 相当な場数を潜っている事を窺わせるほど喧嘩が強く、本人も好戦的。性格は頼れる兄貴分といった感じだが、第3巻では「救えないものは、救えない」とバッサリ切り捨てるリアリストな一面を覗かせた。
- パフォーマンスとしてたまに個展で暴れるらしく、それを楽しみにするファンもいる。愛犬「シガー」は狼の血が混じった大型犬で、アラスカを旅行していた時に譲られたらしい(当時は子犬だった)。最終巻以降はアラスカに永住。
- 龍(りゅう)/本名不明
- 声 - 森川智之
- 203号室。長身痩躯で長髪、黒ずくめの美男子という出で立ちだが、年齢不詳。「龍さん」と呼ばれる。
- かなりの力を持った霊能力者で、彼がアパートにやってくると妖怪たちも襟を正すような存在感の持ち主。秋音にとっての憧れの君。普段は温厚だが、自分の力で困難を乗り越えようとしない人間には力を貸さないという、厳しい面も持つ。幽霊は幽霊と割り切ったところがあり、まり子が男湯に来ても動じないらしい。
- ふらりとどこかへ出かけており、霊能力者ということで犯罪捜査に協力している。大半が所謂「X-FILE」的な事であちこちに手を貸しているらしい。古本屋曰く、ヤクザな商売らしく、危ない宗教団体の壊滅などの手伝いで刀傷が残っていることから相当の修羅場を潜っている事が窺える。
- 『地獄堂霊界通信』に登場する藤門 蒼龍と同一人物とする説あり。
- 古本屋/本名不明
- 声 - 杉田智和
- 妖怪アパートの住人だが、普段は世界各地を歩き回っている。時折妖怪アパートに帰ってご飯を食べ、「日本人でよかった」と絶叫する。骨董屋と同じく怪しいものを扱っているらしく、一度ヴァチカンの「奇跡狩り」に連行されたことがある。
- 希少本や依頼があれば世界各地へ行くらしく、初登場時で1年振り(夕士が入る以前)で帰って来たと住人達は語っている。旅行トランクに本を大量に詰め込んでおり、骨董屋と同じく怪しげな本が多い。小(プチ)ヒエロゾイコンも紛れており、縁あって夕士の元に渡った。依頼された本も様々でいわく憑きも扱う。そういった本に対処するため魔道書『七賢人の書』を所持している。
- 『下町不思議町物語』にも登場する。
- 骨董屋/本名不明
- 声 - 速水奨
- 怪しげな商品を売る商人。オールバックで薄い口髭、黒いコートを纏い、左目には幅の広い眼帯。いつも大きな荷物を背負い、編み笠をかぶった従者を5人ほど従え、次元を超えて品を求め旅をしている。怪しいものも扱っているらしくヴァチカンの「奇跡狩り」から追い回されている。
妖怪
- 大家
- 妖怪アパートの大家。207号室。黒坊主。巨大なタマゴのようなずんぐりとしたつるつるの身体に小さな目だけ付いている(漫画版ではペンギンをデフォルメした様な顔にカエルの様な手足、和服を着ている)。「部屋代」と書かれた大きな帳面を持っている。夕士が家賃を滞納して居留守を使ったときには、ドア下の隙間から強引に中に入ろうとした。
- 時空の穴を開けることができ、アパートの地下にある滝場から雪原への穴を開けたこともあった。
- 佐藤
- 声 - 遊佐浩二
- 208号室。「佐藤幸司」という名前で様々な会社を転々としながら働いている妖怪。一つの会社を勤め上げた後、若干容姿を変えて別の会社に再就職している。現在はソワール化粧品という会社で働いている。働いている間は妻子がいることにしている。いつか寿命が近づいたら本当に所帯を持って人間の様に老いて行きたいと語っている。
- 山田
- 209号室。庭いじりが趣味の妖怪。丸っこい身体でいつもちょっと困ったような顔をしている。
幽霊
- クリ
- 声 - 釘宮理恵[1]
- 母親に虐待されて死んだ男の子の赤ん坊の霊。生まれてからも出生届が出されず名前すらも付けて貰えなかった為、「目がクリクリしているから」という理由で黎明に「クリ」と名付けられた。虐待の後遺症で喋る事や笑う事が出来ない。
- 母親の妄執に縛られている為に成仏できないでいたが、最終巻にて遂に妄執が消え、龍の計らいで彼の知り合いの子に生まれ変わる。
- シロ
- 声 - 田村睦心[1]
- 犬の幽霊。牝。生前は虐待されていたクリにどこからか食べ物を持ってきて与えるなど、積極的にクリの世話をしていた。クリを殺した母親を噛み殺した直後駆けつけた隣人に殺され、死後もいつもクリと一緒にいる。死んでもなおクリに執着する母親から彼を守るため大神の聖域に駆け込んだが、茜と出会い妖怪アパートへと行くこととなった。
- 最終巻ではクリと共に龍の知り合いの子供(双子の兄弟)に生まれ変わる。
- まり子
- アパートの部屋は101号室。妖怪託児所「鶴亀園」で働く幽霊。美人でスタイルがよく、そのプロポーションは夕士曰く「ボン・キュ・ボン」。だが女というものを捨てていて、現在はまるっきり中身は親父。「女湯より広いから」という理由で、男湯に平気で裸で入ってくる。
- 生前は成金の家の娘で、自らを甘やかす両親の下、我儘放題で極度の遊び人に育った。大人になってからは幾人もの男と付き合い堕胎を繰り返してきたが、ある時心底惚れた男性と出会い、彼との結婚を決意する。しかし堕胎を繰り返してきた事で身体に負担がかかっていた為、出産の際に胎児もろとも死去。それ以来「母親」というものに強い憧れを抱いている。
- るり子
- 妖怪アパートの賄い。生前はホステスで、いつか小料理屋を開くのが夢だった。「るり子」は当時の源氏名で本名不明。つきまとっていた客にバラバラに殺されたため、手首だけの姿。会話をする時は筆談である(メールもできる)。
- 彼女が作る料理は絶品で、夕士の一部のクラスメートからも絶賛されている(もちろん、作ったのがどんなヒトかは知らない)。和洋折衷、様々な料理を作る事ができ、住人たちにも好評である。それぞれ季節の食材を使った料理を提供している。
- 鈴木
- アパートを掃除してくれているおばさん。あかなめの眷属らしい。
- 華子
- 玄関で「いってらっしゃい」と「おかえりなさい」を言うだけの幽霊。季節によって着ている着物の柄が変わる。そのセンスは抜群。
- 貞子(仮)
- 髪が腰まである女の幽霊。風呂やトイレなど水周りが好きで、その辺りによく出没する。「貞子」は夕士が勝手に付けた呼び名。特に害はないが、不意に現れるので、長谷がひどくビビっていた。
夕士の親族
- 博(ひろし)
- 夕士の伯父。両親を失った夕士を中学卒業まで引き取っていた。
- 恵子(けいこ)
- 博の妻(夕士の伯母)。
- 恵理子(えりこ)
- 博と恵子の娘(夕士の従姉)。夕士が家に引き取られた当時、自身が受験を控え神経質になっていた事もあって最後まで反発し、一日でも早く家から追い出そうと毎日いびり続けるなど、夕士を邪魔者として真っ向から嫌った。但し彼がアパートに移った後、そのことを反省していると伝え謝罪し和解する。
長谷家
- 長谷 泉貴(はせ みずき)
- 声 - 中村悠一
- 夕士の唯一無二の友人。中学を卒業するとき、別れの挨拶として夕士と殴り合いをした。
- 容姿端麗、頭脳明晰(夕士曰く「よくて東大、悪くても東大」らしい)で、進学先でも生徒会の一員たる優等生として知られるが、いつの日にか父親が重役を務めている会社を乗っ取ろうと画策する野心家で、陰では地元の不良どもを束ねて着々と準備を進めている。合気道が得意。怒らせてはいけないタイプで、キレると無双に入るらしく容赦がない。
- 一流のビジネスマンである父親から、さまざまなこと(酒、女、帝王学…など)を教え込まれている。週末や長期の休みにはバイクでアパートにやってくることも多く、そのたびにドンペリやキャビアといった高価な品々を持ちこみ、古本屋らとともに大宴会を開く。「必要な場所への根回しには金と手間を惜しむな」を主義としており住人からの評判も良い。特にクリに懐かれており、長谷自身もクリを溺愛している。高校卒業の後、東大へ進学する。
- 家族内では最年少であるため、家族旅行の雑用や冷え切った関係にある本家への挨拶など、厄介事を押し付けられてばかりいる。妖怪アパートでの余暇はその憂さ晴らしでもある。
- 最終巻では、父親の跡を継ぐのではなく、仲間を集めて会社を興し、社長に納まっている。また、高校卒業直後から妖怪アパートの201号室を確保していた模様。
- 長谷 慶二(はせ けいじ)
- 声 - 大川透
- 泉貴の父。父・恭造のやり方を嫌って家を飛び出し(後に相続も放棄)、身一つで一流のビジネスマンにのし上がった。会社のナンバー2だが、唯一社長を呼び捨てできる立場。恭造の子供の中で最も帝王の器を受け継いでいるが、表立って頂点に君臨するより裏から「暗躍」する方を好む。夕士にも何かと目をかけてくれている。『全裸男と柴犬男』にも登場し、主要人物をクラブでの飲みへ誘ったり、『魔法の塔』に登場する黎明苑の社長・一色清弥と商談していたりもする。
- 長谷 瑞羽(はせ みずは)
- 声 - 大原さやか
- 泉貴の母。大物政治家の娘。夕士曰く「ふわっと柔らかくとても可愛いが、実は図太く行動力がある」らしい。
- 長谷 汀(はせ みぎわ)
- 声 - 能登麻美子
- 泉貴の姉。目元が弟・泉貴や父・慶二とそっくり。弟にも引けを取らない美女で、弟には合気道でも負けたことがない。慶二の秘書である結城一馬に片想い中(泉貴談)。
- 長谷 恭造(はせ きょうぞう)
- 泉貴の父方の祖父。生年や本名は不明(親族ですら知らない)。幼少時にある場所で霊的な“力”を取り込み(当人は霊的なものは信じなかったが)、以来手段を選ばずに財力・権力を取り込み財閥を築く。その犠牲になった者は数知れないと言う。「鬼(おに)恭造」という通称があり、その通称が示す通り血族にも冷徹で、一度でも自分に逆らった者を絶対に許さない。後継者の叡仁ですら財閥の部品でしかなく、次男・慶二の一家に至っては自分に逆らった事を理由に本家の母屋にも上がらせなかった。一方で、子供(嫡出・非嫡出を合わせて5名)の中で最も帝王の器であった慶二を手許に置けなかった事に未練を持ってもいる。最終巻で死去するがその力への執念と“力”が恐ろしい事態を引き起こす。
- 長谷 叡仁(はせ よしひと)
- 泉貴の父方の伯父。恭造の長男で後継者だが父や弟・慶二に比べて凡庸。若い頃は兄弟の中で特別扱いだったことを鼻にかけていたが、今では限界が見え父の期待に応えられなくなり、慶二に愚痴をこぼしている。
条東商業高校
生徒
- 田代 貴子(たしろ たかこ)
- 夕士のクラスメート。夕士が「姦し娘」と呼ぶ3人組の1人。垣内、桜庭からは「タァコ」と呼ばれる。
- 入学したての頃はそれほど仲良くもなかったが、交通事故に遭い重傷を負った彼女を夕士がヒーリングで助けたことがきっかけか、何かと接点が生まれる。女子のわりにサバサバしていて付き合いやすい性格。夕士と同じ英会話部所属。BLまがいのことが好きで、夕士と千晶のことをダーリン、ハニーと命名したのも彼女。千晶の熱烈なファンで、学内のイベントで千晶が歌を歌ったりする際には、その様子をぬかりなくDVDに収める。
- かなりの情報通で、千晶の情報でさえやすやすと入手してしまうその手腕には周囲も驚かされる。三年生に進級した際に生徒会副会長になった。高校卒業後は、情報収集力を活かして企業コンサルタントとなり、長谷の会社を顧客に持つ。
- 垣内 由衣(かきうち ゆい)
- 夕士のクラスメート。夕士が「姦し娘」と呼ぶ3人組の1人。3人の中では比較的短気で、怒りっぽい。田代や桜庭からは「ウッチー」と呼ばれる。3人の中では一番早く結婚・出産した。
- 桜庭 桜子(さくらば さくらこ)
- 夕士のクラスメート。夕士が「姦し娘」と呼ぶ3人組の1人。田代や垣内からは「桜」と呼ばれる。スタイルの良い巨乳(文庫版の人物紹介によるとバスト90cm前後)。
- 3人の中では一番おっとりしているが、第5巻で千晶の生徒に対する喝の真意を見抜き、千晶に対して憤慨するクラスメートを諭した。
- 神谷 瑠衣(かみや るい)
- 夕士たちの先輩。才色兼備の生徒会長。キックボクシングが得意で、裏で「兄貴」と呼ばれ、学内では絶大な権力を持つ。夕士いわく「アンジェリーナ・ジョリー似の美人」。早くに父親を亡くすが、それを感じさせないほどの天才。大胆な一面もある。
- 千晶に好意を持ち、彼が関わる会員制クラブのオーナー・神代正宗に引き合わされた際、その才能を買われ、未来の運営メンバー候補となった。
職員
- 千晶 直巳(ちあき なおみ)
- 簿記の教師。2年C組の担任として、休職した早坂敏三の後任でやってくる。
- 「どうして歌手にならなかったのか」と夕士に問われる程の天才的な歌唱力を持ち、そのルックスの良さゆえに女子生徒から絶大な人気を誇る。喫煙者。生まれつき血が薄く、貧血を起こすこともしばしば。3人兄弟の末っ子で、周囲から甘やかされて育ったせいか、夕士に「ホントに手がかかる」と言われるなど、子供っぽい一面がある。従兄弟の土方薫は上院中学の教師で、クラブを外側からサポートしている。
- 教師になる前は、会員制クラブのオーナーをしていた。いろいろな事件をまるでドラマのように乗り越えるなど、かなりの苦労人と思われる。その後、交通事故で右腕を失い、教師を辞めてかつて運営メンバーだった会員制クラブで歌手デビューする。
- 青木 春香(あおき はるか)
- 千晶と時を同じくして条東商にやってきた英語教師。聖書を愛読するクリスチャン。
- 男子が歓声を上げるほどの美人。そのうえ「ほぼ」平等な博愛精神を持つが相手のことをよく見ず、自分の「カテゴリー」にあてはめて行動してしまう。そのため「両親を亡くした不憫な子」と一方的に思われている夕士から何かと反感を買う。逆にその精神に惹かれる女子生徒たちからは神のように(カルト教団と見まごうほど)絶対的な信頼を寄せられている。校内での喫煙や生徒との接し方をめぐり、千晶とはいさかいが絶えない。
- 早坂 敏三(はやさか としぞう)
- 千晶の前の担任。持病の悪化のために休職した。田代からは「トシゾーちゃん」と呼ばれていた。
妖怪アパートに出入りする妖怪
- 茜
- 山の神「大神」に仕える霊獣の1匹。着物を纏った狼の獣人の様な姿で、身長は170cm以上。
- 母親に虐待され死んだクリと、クリの母親の怨霊からクリを守ろうとしたシロが、大神の聖域に駆け込んだ際にクリとシロに出会う。その当時自らの子供を亡くしたばかりだった為、既に母親の妄執に憑かれ聖域を汚した罪で消されてしまう筈だったクリとシロを見逃してくれるよう大神に嘆願し、彼等を聖域からより遠のかせる事で我儘を許された。その後はクリの母親代わりとなり、彼女自身もクリを心底愛している。クリの母親の怨霊がクリを狙って現れる時に限って妖怪アパートを訪れ、母親の怨霊を迎撃している。
- 又十郎
- 声 - 麦人
- 熊野の山奥の「隠れ里」の住人で、一つ目の巨大な山男。たまに妖怪アパートに山の幸を届けてくれる。人間の作る菓子が好物。
- 桔梗
- 佐藤さんの知人の妖怪。外見は完全に猫娘だが、長く生きている妖怪で、秋音の代わりに夕士の修行のトレーナーを務めた。
小ヒエロゾイコンの妖魔・精霊
小(プチ)ヒエロゾイコンに封じ込まれている妖魔や精霊達。大アルカナになぞらえたタイトルと番号が付けられている。
- フール
- 声 - 子安武人
- 番号0、タイトルは愚者(フール)。小ヒエロゾイコンの案内人。身長15cm前後の道化師の姿(漫画版では上半身が鳥の様な装い)で、22組の妖魔・精霊で唯一主人の命令なく本を出入りできる。動作がいちいち大袈裟で、言動がインチキくさい。
- ジン
- 番号I、タイトルは魔術師。万能だが、非力な精霊。アラブ風の筋肉質でハゲ頭な中年男性の姿。
- 登場当初は夕士の「金」という願いに対し500円を出して力を使い切ったが、第5巻では夕士の命令により彼の部屋から霊薬アムリタ(一滴だけ入ったビン)を取り寄せ、千晶の命を救う活躍をした。
- ジルフェ
- 番号II、タイトルは女教皇。風の精霊。当初の力は机上の物を吹き飛ばす程度だったが、プチ復活直後には滝から落ちたゴムボートを軟着水させた。
- メロア
- 番号III、タイトルは女皇。水の精霊(漫画版では女性的な眼が付いた水の塊)。当初の力は小さな水溜りを作る程度。
- プーカ
- 番号・タイトルは不明。サキュバスで、フール曰く「薔薇色の夢を見せる」とのことだが、夕士は胡散臭く感じて呼び出していない。
- ヒポグリフ
- 番号VII、タイトルは戦車。神の戦馬である黒いグリフォン。誇り高い為気難しく、乗られることを嫌がる。龍ですら「危ないから乗らない」と言うほどで、夕士では本から出したり呼び戻したり位しか制御出来ない。
- ホルスの眼
- 番号VIII、タイトルは正義。魔を看破する神の眼。外観は宙に浮くバレーボール大の眼球で、ピンポン球並みに縮むことも可能(フール曰く、夕士の修行次第では更に縮められる)。見た映像を記憶・再生する能力もあるが、その外観ゆえ旅行撮影のビデオカメラ代わりに使うのは難あり。8巻で事件に巻き込まれた際は、現場の構造や犯人の内情を探る活躍をした。
- コクマー
- 声 - 遊佐浩二
- 番号IX、タイトルは隠者。ミネルヴァ女神に仕える知識のフクロウの眷属。だが耄碌していて、なかなか必要な知識を思い出してくれない。通称「ご隠居」。
- ノルン
- 番号X、タイトルは運命の輪。スクルド、ザンディ、ウルズの3人の運命の女神姉妹。
- 占い、透視、類感魔術の能力を持つ。三人で力を合わせなければならないのに、いつもケンカしている。衣装選びは法螺吹きケット・シーの意見を参考にしているため、夕士から見るとズレたセンス。
- ゴイエレメス
- 番号XI、タイトルは力。古代ローマ兵を象った石造りの魔人形。力の総量は3トンで、1分間しか使えない。8巻では3分になった。
- ケット・シー
- 声 - 櫻井孝宏[1]
- 番号XII、タイトルは吊るされた男。「長靴をはいた猫」で有名な猫王の一族の者。法螺吹き。やる気がない。
- タナトス
- 番号XIII、タイトルは死神。死の大天使の眷属。
- 死相を読んで宣告するとのことだが、修行をしていないため不正確。幽霊である(つまり既に死んでいる)クリに向かって3日後に死ぬと言い放ち、周囲を白けさせた。
- シレネー
- 番号XIV、タイトルは節制。小鳥サイズの呪歌を歌う人面妖鳥。
- 歌が得意な精霊とのことで、新曲も覚えるがハミングでしか歌えない。
- ケルベロス
- 番号XV、タイトルは悪魔。地獄の人食い狼。放電を起こしながら登場する。だがまだ仔犬で、フール曰く育つのには200年くらいかかる。
- イタカ
- 番号XVI、タイトルは塔。雷の精霊。雷を一瞬だけ放つ。金色の光の帯が龍のように対象に襲いかかる。
- サク
- 番号XVIII、タイトルは月。月の宮を守護するサソリ。青い電光と共に標的にとりつき、痺れさせて動けなくする。
- イグニスファタス
- 番号XIX、タイトルは太陽。光の精霊。眩しい光で地縛霊を(一時的だが)追い払った。
- ブロンディーズ
- 番号XX、タイトルは審判。フール曰く「最後の審判で死者を呼び覚ます神鳴」。破壊力ある大音響を起こし、夕士が窮地に立たされたときなどに役立っている。最初は破壊が広範囲に及んでいたが、4巻で夕士の修行の結果、音を弾の様に収束できるようになった。
用語
- 寿荘
- 妖怪アパートの正式名称。モデルは作者の出身地である和歌山県田辺市にある赤別荘である。
- 魔道書
- 精霊あるいは妖魔を魔術で持って封じた魔法の本。その主人(マスター)は封じ込まれた精霊あるいは妖魔を自由に使役できる。だが発揮される力は主人の力量次第であり、また使用の代償として主人の生命力を消耗するため、使いこなすには修行を要する。
- 小(プチ)ヒエロゾイコン
- ヒエロゾイコンを真似て作られた魔道書。大アルカナになぞらえて二十二組の式が封印されている。が、力量は正直微妙なところ。本の主人(この場合夕士)が成長することによりパワーアップする。作中では主に「プチ」と呼称。本編最終巻で主である夕士の命を守るため全力を尽くし封印状態となったが、3年後の古本屋との旅行中に回復した。
- 七賢人の書(セブンセイジス)
- 古本屋の術具である魔道書。7人の魔道士の魔力が封じられている。
- ヒエロゾイコン
- 小ヒエロゾイコンのモデルになった、72組の妖獣が封印された伝説の魔道書。現物は本作ではなく『地獄堂霊界通信』に登場。
- 霊能力者
- この節の加筆が望まれています。
- 条東商業高校
- 夕士の通っている学校。女子生徒の割合が異常に高い。学生寮があったのだが夕士が中学卒業の日に火災で全焼したことから、物語の幕が切って下される。
- アムリタ
- 古本屋が微量(一滴だけ入ったビン)を入手して来た、インド神話で不老不死の神薬とされる霊薬。本作ではそこまではいかないものの、寿命を延ばしたり(最大800年。夕士たちが微量を舐めた際は推定7ヶ月)瀕死者の命をつないだりする効能がある。効能を発揮するには「聖別された満月の光」を当てておく必要がある(作中では寿荘の月見の宴で供えた)。
既刊
- 妖怪アパートの幽雅な日常1 (2003年10月) ISBN 4-06-212066-6
- 妖怪アパートの幽雅な日常2 (2004年3月) ISBN 4-06-212312-6
- 妖怪アパートの幽雅な日常3 (2004年10月) ISBN 4-06-212587-0
- 妖怪アパートの幽雅な日常4 (2005年8月) ISBN 4-06-269359-3
- 妖怪アパートの幽雅な日常5 (2006年3月) ISBN 4-06-269364-X
- 妖怪アパートの幽雅な日常6 (2007年3月) ISBN 978-4-06-269379-0
- 妖怪アパートの幽雅な日常7 (2007年10月) ISBN 978-4-06-269388-2
- 妖怪アパートの幽雅な日常8 (2008年1月) ISBN 978-4-06-269390-5
- 妖怪アパートの幽雅な日常9 (2008年10月) ISBN 978-4-06-269402-5
- 妖怪アパートの幽雅な日常10 (2009年3月) ISBN 978-4-06-269412-4
- 妖怪アパートの幽雅な日常 ラスベガス外伝(2013年8月) ISBN 978-4-06-269473-5
- 文庫版
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- 1 (2008年10月15日)ISBN 978-4-06-276169-7
- 2 (2009年3月13日) ISBN 978-4-06-276299-1
- 3 (2009年12月15日)ISBN 978-4-06-276532-9
- 4 (2010年6月15日) ISBN 978-4-06-276673-9
- 5 (2011年1月14日) ISBN 978-4-06-276856-6
- 6 (2011年7月15日) ISBN 978-4-06-277004-0
- 7 (2012年2月15日) ISBN 978-4-06-277196-2
- 8 (2012年12月14日) ISBN 978-4-06-277430-7
- 9 (2013年11月15日)ISBN 978-4-06-277700-1
- 10 (2014年4月15日) ISBN 978-4-06-277824-4
- 番外編
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- 妖怪アパートの幽雅な食卓 るり子さんのお料理日記 (2009年11月26日) ISBN 978-406-269426-1
- 妖怪アパートの幽雅な人々 妖アパミニガイド (2012年1月26日) ISBN 978-4-06-269449-0
- 漫画版
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- 2011年11月9日発売[2] ISBN 978-4-06-376310-2
- 2012年5月9日発売[2] ISBN 978-4-06-376343-0
- 2012年11月9日発売[2] ISBN 978-4-06-376370-6
- 2013年4月9日発売[2] ISBN 978-4-06-376394-2
- 2013年11月8日発売[2] ISBN 978-4-06-376429-1
- 2014年4月9日発売[2] ISBN 978-4-06-376457-4
- 特装版 2014年4月7日発売[3] ISBN 978-4-06-358489-9
- 2014年11月7日発売[2] ISBN 978-4-06-376508-3
- 2015年3月9日発売[2] ISBN 978-4-06-376527-4
- 2015年7月9日発売[2] ISBN 978-4-06-376554-0
- 2015年11月9日発売[2] ISBN 978-4-06-376581-6
- ドラマCD(漫画単行本特装版に合わせての掲載誌付録)
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- ドラマCD EXTRA(月刊シリウス2012年12月号)
- ドラマCD EXTRA PART2「今日も長谷がアパートにやってくる」(月刊シリウス2013年5月号、描き下ろし脚本)
- ドラマCD EXTRA PART3「古本屋が面白いものを持ってきた」(月刊シリウス2013年12月号、描き下ろし脚本)
- ドラマCD EXTRA PART4「ハッピーバースデイ」(月刊シリウス2014年5月号)