介護等の体験

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介護等の体験(かいごとうのたいけん)とは、義務教育学校教育職員の免許状(教育職員免許状)の授与を受ける際に必要とされる介護などを基調とする体験活動のことである。いわゆる「介護実習[1]と混同する場合があるが、後述の理由などもあり、全く異なるものである。

概要

義務教育諸学校の教育職員免許状教育職員免許法5条別表第1で授与を受けるにあたっては、社会福祉施設特別支援学校などにおいて、文部科学大臣が定める期間(7日間)、介護等の体験を行わなければならない。その目的は、人の心の痛みのわかる教員、各人の価値観の相違を認められる心を持った教員の実現に資することにある[2]

文部科学省指定の「体験に関する証明書(この証明書の再発行は一切できない)」の用紙を、社会福祉施設および特別支援学校に持参し、必要事項の記入および公印の捺印をしてもらったうえで、教育職員免許状を申請する際、提出する必要がある。文部事務次官通達によると、特殊教育諸学校(現・特別支援学校)における体験は2日間、社会福祉施設については5日間が望ましいとされている。

田中眞紀子議員らが提出した議員立法により、根拠法の法案が提出され、平成10年4月1日[3]より教育職員免許状取得者に義務化された制度である。

2000年度以降大学入学者が教職課程の履修科目として認定する場合は、通常、「教科又は教職に関する科目」の欄(厳密には、その中の「大学が加える教職に関する科目に準ずる科目」にカウントされる)の単位を履修したものと見なされる(事前・事後指導部分を単位認定とされる場合も同様)。一般的に、修得単位としては、(必修ではない)高等学校の「教科又は教職に関する科目」に含めることが可能(概ね、1~2単位程度)。

ただし、近年では、地域によっては特別支援学校教諭教育職員免許状に必要な障害者教育実習の受講希望者の増加傾向や校舎の狭小状態などのキャパシティの問題、教員の転勤サイクルが早いことに伴って、現場実習指導に対応できる教諭が減少傾向にあることなどを理由として、「介護等の体験」の特別支援学校での2日間の実習受け入れを見合わせる傾向にあるケースもあるとされる。

在籍大学や派遣された体験先によって異なるが、実習記録実習日誌)を付けることを必須にするケースや、A4用紙裏表で1枚程度の感想や観察記録などを提出させるケースもある。

根拠法

体験内容

義務教育諸学校の教員免許状の授与を受けることを希望する者は、教育職員免許法に規定される単位を修得しながら、次の施設等において介護等の体験を行う。

特別支援学校

特別支援学校等での介護等の体験の主な内容は、次の通り。

体験場所

体験内容

  • 登校時のお出迎え
  • 朝の会
  • 自立活動へのかかわり
  • 給食時の補助
  • 児童・生徒との交流
  • 下校時の送迎 など

実習2日目には、校外学習学内行事が組まれる場合もある。

社会福祉施設

社会福祉施設での介護等の体験の主な内容は、次の通り。

体験場所

体験内容

  • 利用者の食事補助
  • 利用者の環境保全
  • 利用者の入浴、排泄等衛生管理
  • 利用者との交流

体験を免除される者

以下の免許または資格、保有者は介護等の体験が免許状の授与要件からは免除される。

関連項目

脚注

  1. ^ 高等学校教科福祉の教職課程には、教科に関する科目の科目区分に「社会福祉総合実習社会福祉援助実習及び社会福祉施設等における介護実習を含む。)」があり、この区分を充足させるために実習を要する。
  2. ^ 介護等体験特例法の施行について(文部事務次官通達)
  3. ^ 厳密には、同日以降に大学に入学した者が対象。
  4. ^ 学校教育法および教育職員免許法がそれぞれ改正される前の盲学校、聾学校又は養護学校のそれぞれの教育職員免許状を受けている場合でもよい。ただし、教育職員免許法第5条に基づいて、特別支援学校教諭の免許を取得した場合に限られるので、教員資格認定試験または教育職員検定によって、特別支援学校1種教諭の免許を受けている者は、原則として介護等の体験の免除の対象とはならないことに注意する必要性がある。