ラクトフェリン

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組み換え型ヒトラクトフェリンの図

ラクトフェリン(Lactoferrin, lactotransferrin)は、タンパク質の一種。トランスフェリンファミリーに属する。LFとも表記する。

概要

1分子あたりの質量は約80kDa

母乳牛乳などの乳や唾液等、粘膜からの分泌液に含まれるが、熱に弱く、加熱殺菌した牛乳などの加熱した食品にはほとんど含まれない。

発見などの経緯

名前の由来

Lactoferrinの名は、「lacto(乳)」に含まれる「ferrin(鉄)」と結合するたんぱく質ということに由来している。

安全性

安全性に関しては、現状では充分なデータがない。母乳や牛乳に含まれる成分であり、乳製品アレルギー反応様のリスクを有する。紅斑・そう痒感・膨疹のほかアナフィラキシーを起こすこともある。
一部では妊産婦の過剰摂取は避けるべきとの意見もある。鉄と結合し、ミネラルとしてと鉄を奪う能力があるので、鉄欠乏性貧血などミネラル不足による障害、鉄欠乏性疾患を引き起こす。貧血患者では貧血の悪化をもたらすので絶対禁忌である。鉄利用菌なら善玉菌も殺してしまう。

論文

信頼性については各自十分考慮すること。

種類

牛乳に含まれるのは牛ラクトフェリンであり、人の体内にあるのは人ラクトフェリンである。これらは別種である。ヒトラクトフェリンの場合は「ヒトラクトフェリン」と明記することとなっており、牛ラクトフェリンの場合は単に「ラクトフェリン」と表記される場合が多い。市販品のほとんどは牛ラクトフェリンである。牛ラクトフェリンを人が摂取するとその人の血液中の人ラクトフェリンが増加するという人もいるが論文は存在しない。この真偽はいまだ不明である。ラクトフェリンは消化酵素に比較的耐性があり分解されにくい。アミノ酸に分解されなかったラクトフェリンは便中に排泄される。なお消化酵素により分解されたラクトフェリンはアミノ酸になったものだけ腸管から吸収されることがわかっている。また、消化酵素により分解されたラクトフェリンから体内でラクトフェリンだけが特別つくられるわけではなく普通にアミノ酸として利用されることがわかっている。

関連項目

脚注

  1. ^ a b c 山内恒治「ラクトフェリン」日本食品科学工学会誌 53巻3号、193頁、2006年3月15日
  2. ^ 築地真実、田爪正氣、石坂富美、糠信憲明、平野貢、沼尻悟「腸管出血生大腸菌O157に対するウシラクトフェリンの感染防御効果」無菌生物 = Japanese journal of germ free life and gnotobiology 32巻2号、111-113頁、2002年12月1日 (ISSN 09100903)
  3. ^ 武井直樹、名倉義夫、藤田優他「山羊初乳からのラクトフェリン分離・精製と大腸菌に対する抗菌性」畜産の研究 59巻8号、873-876頁、2005年8月 (ISSN 00093874)
  4. ^ 築地真実、石坂富美、田爪正氣他 「腸管出血性大腸菌O157:H7に対するラクトフェリンの感染防御効果」神奈川県立衛生短期大学紀要 通号34、22-24頁、2001年 (ISSN 03886042)
  5. ^ 新光一郎、寺口進、福渡康夫、島村誠一「ウシラクトフェリン (bLF) の大腸菌タイプ1線毛に対する作用 : 食品」日本農藝化學會誌 69号(臨時増刊)、352頁、1995年7月5日 (ISSN 00021407)
  6. ^ 富田信一、清澤功「ラクトフェリンによるビフィズス菌増殖促進作用」必須アミノ酸研究 通号157、54~59頁、2000年4月(ISSN 03874141)
  7. ^ Steijns Jan M.「ラクトフェリン - 鉄欠乏症防止と健康増進、スポ-ツ選手のパフォーマンス向上のために 特集 食品化学研究 - 1997年注目食品素材の動向」月刊フードケミカル 13巻1号、106-108頁、1997年1月 (ISSN 09112286)
  8. ^ 川上浩「ラクトフェリンの鉄吸収促進効果とその利用に関する研究」雪印乳業研究報告 通号101、145-207頁、1994年3月 (ISSN 13402773)
  9. ^ 久原徹哉「ラクトフェリンのNK細胞活性増強作用(特集 腸管免疫 - 免疫と健康)」Food style 21 12巻10号(通号 137)、40-42頁、2008年10月 (ISSN 13439502)
  10. ^ 久原徹哉「ラクトフェリン経口摂取によるNK細胞活性増強とそのメカニズム(特集 ラクトフェリンの機能と有用性 (2))」食品・食品添加物研究誌 211巻9号、754-762頁、2006年 (ISSN 09199772)
  11. ^ 久原徹哉、山内恒治、田村吉隆「ウシラクトフェリンの経口投与によるNK細胞活性の増加とその作用機序(ラクトフェリン研究 - 基礎から応用への掛け橋)」ミルクサイエンス 53巻4号(通号 294)、262-264頁、2004年 (ISSN 13430289)
  12. ^ 前田隆子、原田悦守『腸溶性ラクトフェリンによる月経痛緩和とQOLの改善効果』母性衛生 48巻2号、239-245頁、2007年7月 (ISSN 03881512)
  13. ^ 高山喜晴『ウシラクトフェリンによる骨芽細胞の分化促進と骨組織再生への応用』畜産技術 639号、2-6頁、2008年8月 (ISSN 03891348)
  14. ^ 安藤邦雄「花粉症とラクトフェリン」ジャパンメディカルソサエティ 通号131、85-87頁、2007年11月
  15. ^ 佐藤保、佐藤れえ子「ラクトフェリン製剤の口内炎、歯周病に対する臨床効果と口腔内細菌に及ぼす抑制効果」日本歯科保存学雑誌 41号16頁、1998年5月1日 (ISSN 03872343)
  16. ^ 石井耕司、松丸克彦、高村尚子、篠原美絵、篠原正夫、永井英成、渡邊学、寺口進、山内恒治、住野泰清「ウシラクトフェリン摂取によるC型慢性肝炎患者血清IL-18の誘導」東邦醫學會雜誌 51巻4号、214-221頁、2004年7月1日 (ISSN 00408670)
  17. ^ 垣内雅彦「C型肝炎に対するその他の治療法 -血療法、鉄制限食療法、牛ラクトフェリン療法-」日本臨床 62号(別冊7号)、534-539頁、2004年
  18. ^ 安藤邦雄『ドライアイとラクトフェリン』ジャパンメディカルソサエティ 通号137、84-87頁、2008年5号
  19. ^ 坂井隆之、川口充、澤木康平、大久保みぎわ、四宮敬史『ラクトフェリン酵素分解産物の口腔扁平上皮癌細胞へのアポトーシス誘導と抵抗性』Journal of oral biosciences 46巻5号、471頁、2004年9月1日 (ISSN 13490079)
  20. ^ 劉永春、渡邊市紀子、東市郎、島崎敬一「ウシラクトフェリンおよびラクトフェリシンによる癌転移抑制効果 : 食品」日本農藝化學會誌 69号(臨時増刊)、143頁、1995年7月5日 (ISSN 00021407)
  21. ^ 田仲哲也、小俣吉孝、勇田津弥、斎藤篤志、島崎敬一、山内恒治、鈴木直義「マウスマクロファージにおけるウシラクトフェリンによる抗Toxoplasma gondii増殖抑制効果 : ウシラクトフェリンによって誘発されるマウスマクロファージ内でのチロシンリン酸化(短報)」The journal of veterinary medical science 60巻3号、369-371頁、1998年3月25日 (ISSN 09167250)
  22. ^ 安藤邦雄「話題 ラクトフェリン実用化研究の新たな展開(第6回)ラクトフェリンの脂質代謝改善作用」ジャパンメディカルソサエティ 通号104、79-81頁、2005年6月

外部リンク

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