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UGM-27 ポラリス

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ポラリスA-1
ポラリスA-3
ロンドン帝国戦争博物館で展示されている、イギリス海軍用のポラリス

ポラリス (Polaris) は、冷戦期アメリカ合衆国が開発し、アメリカ海軍イギリス海軍で運用された潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の名称である。制式番号はUGM-27。

ポラリス(Polaris)」とは、現在の「北極星」の天体名。

開発

ポラリスはアメリカ合衆国で最初に配備されたSLBMであり、核弾頭を搭載した戦略弾道ミサイルで、アメリカ海軍では艦隊弾道ミサイル(Fleet Ballistic Missile、FBM)と呼称していた。

アメリカ海軍は戦略長距離攻撃兵器としてレギュラス巡航ミサイルを運用していたが、ロケット技術の向上により、長距離弾道ミサイル実用化可能性が出てくると、その開発も行うこととなった。1955年12月にアメリカ陸軍と海軍は共同でジュピターIRBMの開発を開始した。しかし、ジュピターの性能や液体燃料ロケットの仕様に不満を持った海軍は、1956年より陸軍とは別個の計画としてポラリスの開発を開始した。

当時のロッキード社によって固体燃料ミサイルとして開発されたポラリスは1960年1月7日ケープ・カナベラルで実施された発射テストに成功した。搭載された核弾頭は現在のローレンス・リバモア国立研究所1957年からハロルド・ブラウンを長とする研究チームによって開発されたもので、1960年7月には最初の16発の弾頭が海軍に納入され、7月20日には初めて潜水艦からの発射テストが行われた。

ミサイルは全長12.3 m(40.5 ft)、翼間長2.6 m(8.5 ft)であり、核出力1 Mtの弾頭を4,000km投射する能力があった。ポラリスの最初のバージョンであるA1は、重量13 t(28,800 lb)、全高8.7 m(28.5 ft)、直径2.6 m(54 in)、射程1,000海里(Nautical Mile、1,852km)であった。

1960年7月20日の潜水艦からの発射テストは、潜航中のプラットフォームから行われた初のロケットエンジンによる発射テストだった。USSジョージ・ワシントン(SSBN-598)は16発のミサイルを搭載した最初の艦隊弾道ミサイル潜水艦(一般的には弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)と呼ばれる)であり、アメリカ海軍では1960年から1966年までに40隻のSSBNが進水している。1962年5月6日に、ドミニクI作戦においてポラリスミサイルはW47核弾頭を搭載して実弾頭ミサイルの発射および核実験が行われた。これはアメリカ合衆国において初めて実際の弾道核ミサイルを使用したテストとなった。

後期型のA-2、A-3、B-3は射程の延伸のためA-1に比べて大型化し、重量が増した。A-2は、射程1,500海里(2,300 km)、A-3は射程2,500海里(4,600 km)、およびB-3は射程2,000海里(3,700 km)だった。A-3は複数再突入弾頭(Multiple Re-entry Vehicle、MRV)化されており、B-3はソビエト連邦弾道弾迎撃ミサイルに対抗するペネトレーション・エイドが搭載されていた。その後、B-3開発計画はポセイドンC-3へと発展した。

ポラリスミサイルは二段式ミサイルで、両段とも可動ノズルによって姿勢制御(Thrust Vectoring)を行う。誘導は慣性航法装置で行われ、命中精度はCEPにして900 m(3,000 ft)であった。このため、高い命中精度が必要な敵のミサイルサイロのような硬化目標に対する第一撃に用いるには不適当であり、ポラリスは第二撃(報復攻撃)兵器とされた。

ポラリスのポセイドンへの置き替えは1972年から始まり、1980年代にはポラリスとポセイドンはトライデントIに置き替えられた。

英国のポラリス

英国でのポラリスの採用は、1950年代に英国で進められていたブルーストリーク中距離弾道ミサイル(IRBM)の開発計画と、米国で進められていた空中発射弾道ミサイル(ALBM)スカイボルトの開発計画が両方とも中止された事に端を発する。ブルーストリークが中止されたため、英国は自国の核運搬能力の一部を米国に求め、その結果スカイボルトが内定していたのである。スカイボルトの開発中止は英国の核運搬能力、ひいては核抑止力が著しく減少する事を意味していた。英国首相ハロルド・マクミラン米国大統領ジョン・F・ケネディは、1962年に行われたナッソー会議で会談し、米国がスカイボルトの代わりにポラリスを英国に供給する事(ナッソー協定)で合意した。米国がミサイル本体、発射管、火器管制装置を供給し、核弾頭とミサイルを搭載する潜水艦を英国が建造することとなった。米国からは英国のミサイルの使用に関して関して保障が与えられている。(NATO軍指揮下にあった旧西独の作戦航空機等による核運搬、投射とは異なる)英米間のポラリス販売協定は1963年4月6日に署名された。

英国で建造されたポラリスミサイル搭載潜水艦はレゾリューション級として知られる。ポラリスシステムは、米国から購入したミサイル本体に英国で開発された核弾頭を搭載したポラリスA-3TKが使用されている。その後、レゾリューション級のポラリスシステムは英国で設計されたChevaline(シュバライン)と呼ばれる延命プログラムを受けた。Chevaline延命プログラムは核弾頭全体の数を減らす一方で、防御対策を賦与する事を可能にした。政治的な紛争の後に、結局はコストと必要性から英国のポラリスはトライデントにアップグレードされる事が決まるが、その実行はトライデントII(D-5)の完成を待つ事となった。

水上艦への搭載

ポラリスはイタリア海軍の誘導ミサイル巡洋艦ジュゼッペ・ガリバルディへの搭載が検討されたことがある。ジュゼッペ・ガリバルディは1936年就役の艦であるが、1957年から1961年にかけて大改装を行い、ポラリス発射筒4基を搭載した。1961年から1962年にかけて発射試験が行われ、成功したが、実弾頭の配備は行なわれなかった。

要目

ポラリスA-1

ポラリスA-1(UGM-27A)は、重量28,800 lb(13.1 t)、全長28.5 ft(8.7 m)、直径54 in(1.37 m)、射程は約1,000海里(2,200 km)、CEPは1,800 mだった。第一段、第二段共にスチールのモーターケースを採用し、ポリウレタン酸化剤過塩素酸アンモニウムを混練し、アルミニウムを添加した固体ロケット燃料を使用していた。弾頭は核出力600 ktW47-Y1核弾頭を搭載したMk.1型再突入体(re-entry vehicle、RV)を一基備えた単弾頭ミサイルであった。

ポラリスA-2

ポラリスA-2(UGM-27B)は、重量32,500 lb(14.7 t)、全長31 ft(9.45 m)、直径54 in(1.37 m)、射程は約1,450海里(2,800 km))、CEPは1,200 mだった。第一段はスチールのモーターケースを採用し、ポリウレタン/過塩素酸アンモニウム系固体ロケット燃料を使用していた。第二段はガラス繊維強化プラスチックのモーターケースを採用し、ダブルベース系火薬コンポジット推進剤を使用していた。弾頭は核出力800 ktのW47-Y2核弾頭を搭載したMk.1型RVを一基備えた単弾頭ミサイルであった。

ポラリスA-3

ポラリスA-3(UGM-27C)は、重量35,700 lb(16.2 t)、全長31 ft(9.45 m)、直径54 in(1.37 m)、射程は約2,500海里(4,630 km))、CEPは900 mだった。第一段、第二段共にガラス繊維強化プラスチックのモーターケースを採用し、第一段の燃料はニトロ化されたポリウレタンを使用し、第二段はダブルベース系火薬のコンポジット推進剤を使用していた。弾頭は核出力200 ktのW58核弾頭を搭載したMk.2型RVを三基備えた複数弾頭ミサイルであった。1964年より部隊配備が開始されている。

関連項目