ティファニー・ポーター

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ティファニー・ポーター
Tiffany Porter
Portal:陸上競技
選手情報
フルネーム ティファニー・アダエズ・ポーター
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
イギリスの旗 イギリス
国籍 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
イギリスの旗 イギリス
二重国籍
競技 陸上競技
種目 60mH
100mH
200m
走幅跳
大学 ミシガン大学
生年月日 (1987-11-13) 1987年11月13日(36歳)
生誕地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
ミシガン州イプシランティ[1]
コーチ担当者 Rana Reider[2]
自己ベスト 60mH: 7秒80 (2011年、イギリス記録)[3]
100mH: 12秒51(2014年)
走幅跳: 6m48(2009年)
獲得メダル
陸上競技
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
世界ジュニア選手権
2006 北京 100mH
イギリスの旗 英国
世界選手権
2013 モスクワ 100mH
世界室内選手権
2012 イスタンブール 60mH
2014 ソポト 60mH
ヨーロッパ選手権
2014 チューリッヒ 100mH
ヨーロッパ室内選手権
2011 パリ 60mH
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ティファニー・アダエズ・ポーター(Tiffany Adaez Porter、1987年11月13日 - )は、アメリカ合衆国イギリス陸上競技選手。旧姓はオフィリ(Ofili)。

ジュニア時代はアメリカ合衆国代表であったが、2011年以降はイギリス代表として競技している[1]100メートルハードルを専門としており、2013年世界陸上競技選手権大会銅メダルを獲得した。

陸上競技選手としての経歴[編集]

アメリカ代表選手として、ティファニーは2007年北中米カリブ陸上競技選手権大会英語版に100mハードルで出場し、銀メダルを獲得している。しかしながら、2010年のシーズンの終わりにティファニーはイギリスの選手となることを決めた。イギリスの選手になることについて、「私はどの国に属そうとも競技をするであろうと分かっている。私は自分をイギリス人でもあり、アメリカ人でもあり、ナイジェリア人でもあると常に思ってきた。私は3つともなのだ。」とコメントした[4]

2011年5月29日ファニー・ブランカース=クン・ゲームズ英語版において、ティファニーはアンジー・ソープ(Angie Thorp)が持っていた100mハードルの女子イギリス記録12秒80を更新する12秒77をマークした[5]。ソープは自身の持っていた記録を破られたことについて「(心が)荒廃した」と語った。というのも、ジェシカ・エニスサラ・クラクストン英語版のようにソープの記録に0秒1まで迫っていたイギリス生まれイギリス育ちの選手であれば、「最初から祝福する」が、ティファニーはアメリカからイギリスに変えた選手であるため、「完全に取り乱した」のだという[6]

ティファニーは2011年7月22日モナコで開かれたIAAFダイヤモンドリーグの1戦で12秒60をマークしてイギリス記録を更新した。それまでのティファニーの自己ベストはアメリカ選手時代にマークした12秒73だった。この記録はジェシカ・エニスがロンドンオリンピックの陸上競技・女子七種競技中に12秒54をマークして塗り替えられた[7]。同年9月にはヨーロピアン・アスリート・オブ・ザ・イヤー英語版にノミネートされた[8]。結局ティファニーは受賞ならず、同年10月に800m選手のマリア・サビノワが栄誉に輝いた[9]

イギリス陸上競技連盟英語版のヘッドコーチチャールズ・ファン・コンメニー英語版は、ティファニーを2012年世界室内陸上競技選手権大会のキャプテンに任命した[10]。ティファニーはキャプテン就任時の記者会見でイギリス国歌女王陛下万歳』を歌うことを拒否したため、プラスチック・ブリット英語版(えせイギリス人)呼ばわりされることとなった[11]。イギリスの大衆紙デイリー・メールの記者が、ティファニーがアメリカからの帰化選手であることに目を付け、イギリス国歌を歌うよう求めたところ、ティファニーは「国歌はもちろん知っているが、私は国歌の歌唱力でイギリス代表になったわけではない」と切り返した、という一件である[12][13][14]。この件は、折しも猫ひろしカンボジア国籍を取得し、同国代表としてマラソンに出場しようとして世間を賑わせていたため、類似した事例として日本でも取り上げられた[12][13][14][15]。こうしてティファニーへの風当たりが強くなった背景には、2008年北京オリンピックではアメリカ代表として出場しようとして選考から漏れ、オリンピックに出るために国籍を変えたのではないかと噂されたことや、(イギリス生まれではないのに)イギリス代表のキャプテンに就任したことが挙げられる[15]

2012年にティファニーは2度「ヨーロピアン・アスリート・オブ・ザ・マンス」にノミネートされた。1回目は3月に同じイギリス代表選手のカタリナ・ジョンソン=トンプソン英語版ヤミレ・アルダマとともに[16]、2回目は5月にハンナ・イングランド英語版やジェシカ・エニスとともにノミネートされていた[17]

2013年世界陸上競技選手権大会において、自己新記録となる12秒55で100mハードルで銅メダルを獲得、ジェシカ・エニスの持つイギリス記録まで0秒1と肉迫した。

人物[編集]

父・フェリックス(Felix)はナイジェリア人、母・リリアン(Lilian)はイギリス人である。ティファニー自身はアメリカ生まれであるため、生まれながらにしてアメリカ・イギリス双方の国籍(二重国籍)を持っている[15]。したがってティファニーはアメリカ・イギリス双方の代表選手になれる資格を有する[15]

2011年5月にアメリカのハードル選手・ジェフ・ポーター英語版と結婚し[5]、同年の7月まで旧姓のオフィリのままで競技を続けた[18]。2012年にミシガン大学を卒業し、薬学博士(PharmD)の学位を授与された[19]

主な成績[編集]

大会 開催地 順位 種目 記録
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国代表
2006 世界ジュニア選手権 中華人民共和国の旗 中国 北京 3位 100mH 13秒37
2007 北中米カリブ選手権 エルサルバドルの旗 エルサルバドル サンサルバドル 2位 100mH 13秒27
イギリスの旗 イギリス代表
2011 ヨーロッパ室内選手権 フランスの旗 フランス パリ 2位 60mH 7秒80
世界選手権 大韓民国の旗 韓国 大邱 4位 100mH 12秒63
予選落ち 4x100mR 43秒95
2012 世界室内選手権 トルコの旗 トルコ イスタンブール 2位 60mH 7秒94
ロンドンオリンピック イギリスの旗 イギリス ロンドン 準決勝落ち 100mH 12秒79
2013 世界選手権 ロシアの旗 ロシア モスクワ 3位 100mH 12秒55
2014 ヨーロッパ選手権 スイスの旗 スイス チューリッヒ 1位 100mH 12秒76

脚注[編集]

  1. ^ a b Matthew Nash (2011年3月2日). “Tiffany Ofili: 'Representing UK, not USA, always at the back of my mind'”. Metro.co.uk (Associated Newspapers). http://www.metro.co.uk/sport/857053-on-the-spot-tiffany-ofili 2011年9月3日閲覧。 
  2. ^ Athlete Profile”. Power of 10. 2013年6月3日閲覧。
  3. ^ “GB's Tiffany Ofili wins European indoor hurdles silver”. BBC Sport. (2011年3月4日). http://news.bbc.co.uk/sport1/hi/athletics/9415349.stm 2011年9月3日閲覧。 
  4. ^ Alex Sphinx (2011年3月5日). “Tiffany Ofili smashes record held by Jess Ennis to take European silver”. Mirror Online (Mirror Group Newspapers). http://www.mirror.co.uk/sport/more-sport/2011/03/05/tiffany-ofili-smashes-record-held-by-jess-ennis-to-take-european-silver-115875-22967929/ 2011年9月3日閲覧。 
  5. ^ a b “Proctor adds Caribbean flavour to lift British medal prospects”. The Independent. (2011年6月8日). http://www.independent.co.uk/sport/general/athletics/proctor-adds-caribbean-flavour-to-lift-british-medal-prospects-2294225.html 2012年6月9日閲覧。 
  6. ^ Martin Samuel (2011年6月27日). “Losing my record to a Plastic Brit has left me devastated”. Mail Online (Associated Newspapers). http://www.dailymail.co.uk/sport/article-2008394/Martin-Samuel-Losing-record-Plastic-Brit-left-devastated.html 2011年9月3日閲覧。 
  7. ^ “Mo Farah and Tiffany Ofili-Porter set records in Monaco”. BBC Sport. (2012年7月22日). http://www.bbc.co.uk/sport/0/athletics/14257692 2012年6月10日閲覧。 
  8. ^ “Williams is Rising Star”. uka.org.uk. (2012年9月30日). http://www.uka.org.uk/media/news/september-2011/30-09-11-ea-rising-star/ 2012年9月19日閲覧。 
  9. ^ “Russia’s Savinova voted 2011 European Athlete of the Year”. european-athletics.org. (2011年10月3日). http://www.european-athletics.org/news/latest-news/374-events-2011/european-athletics-awards-night-/10425-russias-savinova-voted-2011-european-athlete-of-the-year.html 2012年9月17日閲覧。 
  10. ^ “Van Commenee defends handing GB captaincy to US-born Porter”. bbc.co.uk. (2012年3月8日). http://www.bbc.co.uk/sport/0/athletics/17303331 2012年9月19日閲覧。 
  11. ^ Jonathan McEvoy (2012年3月8日). “Tiffany Porter to lead Team GB at World Indoor Championships | Mail Online”. Dailymail.co.uk. 2013年8月18日閲覧。
  12. ^ a b NEWSポストセブン (2012年7月25日). “続々登場 英国帰化五輪選手に「えせイギリス人」と非難も”. エキサイト. 2013年9月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年9月4日閲覧。
  13. ^ a b 木村正人 (2012年4月25日). “英国版“猫ひろし論争” 五輪代表1割が海外出身者”. MSN産経ニュース. 2013年9月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年9月4日閲覧。
  14. ^ a b 堺ビザ申請・帰化申請サポートオフィス (2012年7月25日). “英国でも猫ひろし論争”. 林 行政書士事務所. 2013年9月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年9月4日閲覧。
  15. ^ a b c d 日本放送協会 (2012年7月26日). “オリンピックのためなら国籍変更もアリ?!”. 日本放送協会. 2013年9月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年9月4日閲覧。
  16. ^ “vote for european athlete of the month for march”. uka.org.uk. http://www.uka.org.uk/media/news/april-2012/03-04-12-euro-athlete-of-the-month/ 2012年9月16日閲覧。 
  17. ^ “vote in athlete of the month for may”. uka.org.uk. (2012年6月6日). http://www.uka.org.uk/media/news/june-2012/06-06-12-athlete-of-the-month/ 2012年9月16日閲覧。 
  18. ^ “Tiffany Porter: Set to silence critics by being plastic fantastic”. The Independent. (2011年8月4日). http://www.independent.co.uk/news/people/profiles/tiffany-porter-set-to-silence-critics-by-being-plastic-fantastic-2331239.html 2012年6月9日閲覧。 
  19. ^ “Tiffany Porter: I am proud to be American, British and Nigerian”. guardian.co.uk (Guardian News and Media). (2012年5月28日). http://www.guardian.co.uk/sport/2012/may/28/tiffany-porter-american-british-olympics 2012年6月10日閲覧。 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]