ダウン症候群

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ダウン症候群(ダウンしょうこうぐん、: Down syndrome)は、体細胞の21番染色体が1本余分に存在し、計3本(トリソミー症)持つことによって発症する、先天性の疾患群。ダウン症とも呼ばれる。多くは第1減数分裂時の不分離によって生じる他、第2減数分裂時に起こる。治療法・治療薬はない。蒙古症とも呼ばれる。

ダウン症候群 22対の常染色体のうち21番以外の染色体は全て正常な2本組(ダイソミー)だが、21番染色体だけは3本組(トリソミー)になっており、これがダウン症候群を引き起こす原因になる。右下に見えるXとYは性染色体。

歴史

1866年に英国の眼科医ジョン・ラングドン・ハイドン・ダウンが論文『白痴の民族学的分類に関する考察』でその存在を発表(学会発表は1862年)。最初は「目尻が上がっていてまぶたの肉が厚い、鼻が低い、頬がまるい、あごが未発達、体は小柄、髪の毛はウェーブではなくて直毛で薄い」という特徴を捉えて「Mongolism(蒙古人症)」または「mongolian idiocy(蒙古痴呆症)」と称されており、モンゴル人などアジア系民族由来の遺伝的な障害と説明されていた。

1959年フランス人ジェローム・レジューンによって、21番染色体がトリソミーを形成していることが発見された。

1965年WHOによって「Down syndrome(ダウン症候群)」を正式な名称とすることが決定された。

原因

染色体の不分離や転座によっておこる。染色体の不分離によって起こるケースは全体の95%を占め、母親の出産年齢が高いほど発生頻度が増加する。25歳で1/1200、30歳で1/880、35歳で1/290、40歳で1/100、45歳で1/46という高齢出産で多発する研究報告がある。[要出典]

疫学

染色体異常は21番染色体以外にも起こるが、他の染色体は生命活動に必須の遺伝情報が含まれるため、異常があった場合は死産となるか、出産できたとしても長くは生きられない。これに対し21番染色体は異常が致命的とならない場合もあるが、21トリソミーの胎児の80%は流産や死産に終わる。

遺伝子疾患及び染色体異常の中では最も発生頻度が高い。参考としてアメリカにおける統計では、20 - 24歳の母親による出産ではおよそ1/1562なのに対し、35 - 39歳でおよそ1/214、45歳以上の場合はおよそ1/19と高率となっており、母体の加齢により発生頻度は増加すると言える[1]。イギリスでは2000年の年間約600人の出生数が2006年には15%増え746人となった。原因は出産の高齢化による。

93%が標準型21トリソミー。5%が21番染色体が他の染色体に付着した転座型で、転座型の半分(全体の2%)は親が均衡型転座を保因する遺伝性転座。1 - 2%が、個体の中に正常核型の細胞と21トリソミー(21番目の染色体が3本ある核型)の細胞とが混在しているモザイク型である。標準型は精子卵子形成時の減数分裂における染色体不分離が原因である。転座型は親の片方が均衡転座保因者であり、適切な遺伝カウンセリングを受ける必要がある。モザイク型は受精後の卵分裂の過程での不分離に基づく。細胞の一部はトリソミーというように混在する。そのため、重度な障害は無い。

臨床像

知的障害先天性心疾患、低身長、肥満、筋力の弱さ、頸椎の不安定性、眼科的問題(先天性白内障、眼振、斜視、屈折異常)、難聴があるが、必ず合併するわけではない。新生児期に哺乳不良やフロッピーインファントのような症状を示し、特異的顔貌、翼状頚、良く伸展するやわらかい皮膚などから疑われることもある。青年期以降にはストレスから来るうつ症状・早期退行を示す者もいる。男性の場合不妊となる可能性が非常に高く、女性の場合多くは妊娠が可能であるが、胎児のダウン症候群発症率は50%である。陽気な性格でありながら、病的な気分屋・頑固な性質である。

40歳以降にアルツハイマー病が高確率でおきる[2]

外表奇形

顔の中心部があまり成長しないのに対して顔の外側は成長するため、吊り上った小さい目を特徴とする顔貌(特異的顔貌)を呈する。他には舌がやや長い、手に猿線、耳介低位、翼状頚などが発生するなど。

精神発達遅滞

一般に精神発達遅滞が認められる。

合併奇形

ダウン症候群では高率に内臓の奇形を伴っている。

青年期の心理的問題

思春期から成人期にかけて、部屋に閉じこもる、寡黙になる、といった変化が急に現れ性犯罪を起こす。

検査

妊娠段階において妊娠11週ごろに絨毛検査で確定的に診断することができるが、日本においては絨毛検査を実施している医療機関は少ない。妊娠15 - 16週ごろに、母体血清マーカー検査により確率的に診断することが、羊水染色体検査(羊水穿刺)で確定的に診断することが可能である(産婦人科病院で行われる)。検査結果が出るまでに2 - 3週間を要する。 「妊婦検診等でこういった検査を勧められなかった」としても医療側の落ち度は無いとされる(裁判事例:京都地裁平成9年1月24日判決[3] 。そのため妊婦は自ら医療側に進言(結婚している妊婦の場合夫婦の同意に基づく)しないと正式には行ってもらえない。また検査の結果も、正式には「妊婦側が聞くことを希望して初めて通知出来る」とされている。

英国では出生前診断が広く普及している。

治療

ダウン症は染色体異常であるため、根本的な治療方法は無い。

配慮

ダウン症の原因は母親にあり、状況に応じた遺伝カウンセリングが必要である。

ダウン症を題材にした作品

出典・脚注

外部リンク


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