タルワー級フリゲート
タルワー級フリゲート | ||
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艦級概観 | ||
艦種 | フリゲート | |
運用者 | インド海軍 | |
艦名 | ||
前級 | ブラマプトラ級フリゲート | |
次級 | シヴァリク級フリゲート | |
性能諸元 | ||
排水量 | 基準:3,850t | |
満載:4,035t | ||
全長 | 124.8m | |
全幅 | 15.2m | |
吃水 | 4.5m | |
機関 | COGAG方式(55,283馬力) | |
DS-71ガスタービンエンジン | 2基 | |
DT-59ガスタービンエンジン | 2基 | |
スクリュープロペラ | 2軸 | |
速力 | 最大32 kt | |
航続距離 | 4,850 nmi/18 kt | |
乗員 | 180名 | |
兵装 | A-190E 100mm単装砲 | 1基 |
カシュタン (CADS-N-1) CIWS (F40, F43, F44) |
2基 | |
AK-630 CIWS (F45, F50, F51) |
2基 | |
3M-54 クラブN (SS-N-27) SSM 8連装VLS | 1基 | |
シュチーリ-1 (SA-N-12) SAM 単装発射機3S90 (ミサイル×24発) | 1基 | |
RBU-6000対潜ロケット12連装発射機 | 1基 | |
533mm 連装魚雷発射管 | 2基 | |
艦載機 | 哨戒ヘリコプター | 1機 |
C4I | トレーボヴァニェ-E 戦術情報処理装置 | |
FCS | MR-90 オリェーフ(フロント・ドーム)ミサイルFCS(SAM用) | 1基 |
5P-10E ピューマ 砲FCS(100mm砲用) | 1基 | |
3R14N ミサイルFCS(SSM用) | 1基 | |
レーダー | MR-750 フレガートMA 3次元レーダー | 1基 |
MR-352ポジティヴE 低空警戒/対水上/射撃指揮レーダー | 1基 | |
3Ts-25E ガルプン-B 長距離対水上レーダー | 1基 | |
ソナー | BEL APSOH 艦首装備ソナー | 1基 |
SSN-137 可変深度ソナー | 1基 | |
フランス製戦術曳航ソナー(?) | 1基 | |
電子戦 | TK-25E-5 統合電子戦システム |
タルワー級フリゲート (英: Talwar class frigate) は、インド海軍のフリゲート。ロシアの設計によるもので、建造もロシアで行なわれている。
概要
タルワー級フリゲートは、ロシア国境軍のクリヴァク3型(11351型)国境警備艦をベースとして、設計を全面的に刷新したものである。ロシアでは1135.6号計画艦(あるいはピリオドを省いて11356号計画艦)という番号が振られており、前期建造艦3隻は、いったんロシア軍艦として建造されたのち、インド海軍に引き渡された。ただし、本級は設計段階よりインド海軍向けとして開発されており、いったんロシア軍艦籍を与えられたのは、あくまで事務上の理由によるものである。
当時インド海軍は、主力フリゲートニルギリ級フリゲートの退役に直面しており、一方後継として計画中だったシヴァリク級フリゲートが戦力化されるまでにはなお時間が必要であった。その空白期間を埋めるために取得されたのが本級である。1997年11月17日、ロシアがインド向けに11351型国境警備艦をベースにした3隻の多目的フリゲートを10億ドルで建造する内容の契約がロシアとインドの間で締結された。
本級は、設計面ではクリヴァク3型国境警備艦に基づいているとはいえ、ステルス性を重視して外形は大きく改変されている。また、原型艦で搭載されていたオサーM(SA-N-4ゲッコー)個艦防空ミサイルに替わってシュチーリ-1(SA-N-12グリズリー)艦隊防空ミサイルを搭載、対艦ミサイルも搭載されている。
ロシア海軍向けとして、本艦をベースとしたアドミラル・グリゴロヴィチ級フリゲート(11356R/M型フリゲート)も建造中である。
設計と装備
船体と機関
本級は、原型艦であるクリヴァク3型国境警備艦と同様の長船首楼船型を採用している。船首楼の後端はヘリコプター格納庫となっており、艦尾甲板に飛行甲板が設けられているという点は原型艦を踏襲しているが、艦尾のVDS格納庫は撤去されている。また、上部構造物を含め、かなりの部分にステルス性を考慮した設計が導入され、外形から受ける印象はまったく様変わりしている。
機関構成としてCOGAG形式を採用しており、巡航用に18,000馬力のDS-71ガスタービンエンジンを2基、ブースト時にはさらに39,000馬力のDT-59ガスタービン2基を使用する。
C4Iシステム
ロシア製のトレーボヴァニェ-E(Trebovaniye-E; 「要求」の意味) 戦術情報処理装置を搭載する。これは、完全な分散処理方式を導入しており、8基のT-171ワークステーションおよび3基のT-162サーバが、T-119およびT-190インターフェース・ユニットを介して10/100 Mbpsのイーサネットで接続されている。ソフトウェアはC++言語で書かれており、リアルタイムオペレーティングシステムとしてはQNXを使用している。
T-171ワークステーションは、高度に商用オフザシェルフ化されており、ユーザー・インターフェースとして19.6インチ・カラー液晶ディスプレイ、キーボード、15インチ液晶タッチパネルおよびトラックボールを有しており、処理装置はPentium III CPUと256 MBの主記憶装置(512MBまで増設可能)、128MB フラッシュメモリ・ディスク(1.5 GBまで拡張可能)から構成される。
ロシア本国向けのトレーボヴァニェ-Mでは256の目標を同時に扱うことができるが、本級の搭載するトレーボヴァニェ-Eは輸出向けのダウングレード版であるため、同時に処理できる目標の数は24に減らされている。[1]
なお、インド海軍は、イギリス・フェランティ社の輸出向け規格であるリンク Yをベースに開発した独自規格の戦術データ・リンクを艦隊配備しており、これは本級にも搭載されている。
対潜戦闘システム
本級は対潜センサーとして、国産の艦首装備ソナーとフランス製の戦術曳航ソナー、あるいはロシア製の可変深度ソナーを装備する。
原型となったクリヴァク3型国境警備艦は、あくまでロシア連邦保安庁所属の準軍事的組織であるロシア国境軍が使用する国境警備艦であるため、ロシア海軍所属の警備艦や大型対潜艦と比較して対潜兵装は少なく、その特徴は本級にも引き継がれている。とはいえ本級の対潜兵装は、西側諸国海軍艦艇と比較した場合むしろ重武装の感がある。
短距離の対潜火力として533mm対潜魚雷、中距離の対潜火力としてRBU-6000を備え、また長距離の対潜戦闘においては、搭載する哨戒ヘリコプターを使用する。ロシアの対潜艦に伝統的な長射程の対潜ミサイルは搭載しないが、ロシア海軍のネウストラシムイ級フリゲートのように、533mm対潜魚雷発射管よりRPK-6 ヴォドパート (SS-N-16)の運用が可能であるか否かは不明である。なお、本級とネウストラシムイ級フリゲートとでは、533mm魚雷発射管の装備要領がやや異なっており、門数も、本級のほうが2門少ない。
また、RBU-6000対潜ロケットは、西側では既にほぼ見られなくなったボフォース375mm対潜ロケットと同様のコンセプトに基づく装備であるが、より長射程であり、また、弾頭として無誘導の爆雷を使用する[2]ことから、特に浅海域での戦闘に有用であり、対魚雷防御にも使用可能とされている。
対水上戦闘システム
装備の面で、クリヴァク3型国境警備艦からの大きな変更点のひとつが、3M-54E クラブ-N (SS-N-27)対艦ミサイルの搭載である。これはロシアのNovator設計局が開発した巡航ミサイルで、終末航程の20kmは超音速を発揮し、射程は300 km、3R14N-11356 射撃指揮装置による管制を受ける。本級は、これを8セルのVLS 1基に収容して搭載する。また、後期建造型3隻は、ロシアとインドが共同で開発したブラモス(BraMos)対艦巡航ミサイルを搭載するが、これも終末航程では超音速を発揮する。なお、本級は低空警戒/対水上用にMR-352ポジティヴE(クロス・ドーム)レーダーを有する。これはXバンドで動作し、本来は対水上警戒と対艦ミサイルの射撃指揮に使用されるものだが、低空警戒にも用いられ、アメリカ製のAN/SPQ-9に似た性格のレーダーである。
対空戦闘システム
本級は対空センサーとして、原型艦と同じくMR-750フレガートMA(トップ・プレート)3次元レーダーを有する。フレガートMAはSバンドで動作し、最大探知距離は対空で300km、対水上で30km、シースキマー対艦ミサイルの探知も可能である。
対空兵装における原型艦からの大きな変更点に、シュチーリ艦隊防空ミサイル・システムの搭載が挙げられる。原型艦はオサーM(SA-N-4ゲッコー)個艦防空ミサイルを搭載しており、当初本級には、ロシア海軍においてオサーMの後継として使用されているキンジャール個艦防空ミサイル・システムの輸出型であるクリノークがオファーされたと言われている。しかし、インド海軍は艦隊防空能力を向上させるため、シュチーリ-1(SA-N-12グリズリー)艦隊防空ミサイルの搭載を要望した。これは、ロシア海軍が3K90ウラガン(SA-N-7ガドフライ)の後継として使用する3K37ヨーシュの輸出版で、改良型の9M317ミサイルを使用することで、射程を延伸し、同時交戦能力は大幅に向上している。ただし、のちにロシア海軍がヨーシュ搭載艦として開発したアドミラル・グリゴロヴィチ級フリゲートのシステムとは異なり、兵站と保守面での利点も大きい、従来のウラガンと同様の射撃指揮装置・発射装置で構成されている。
また、1番艦から3番艦は近接防空に、原型艦のAK-630にかえてコールチク (CADS-N-1) の輸出型カシュタンを2基備えている。これは、GSH-6-30L ガトリング式30mm機関砲2門と9M311K (SA-N-11グリソン)近距離対空ミサイルを組み合わせたもので、世界初にして2009年現在唯一の砲・ミサイル複合型CIWSである。追加建造の3隻は、AK-630を搭載している。
砲熕兵器システム
主砲として、A-190型100mm単装砲を1基備える。これは原型艦で搭載されたAK-100の改良型である。ただし、ロシア海軍が採用しているA-190の砲塔はステルス化されているが、タルワー級に搭載されている砲塔はステルス化されていない。その射撃指揮は、5P-10E ピューマ射撃指揮装置によって行われる。
航空機
本級は、1機の中型ヘリコプターを収容・運用することができる。その機種は、ロシア製のKa-28対潜哨戒ヘリコプター、またはインド国産のHAL Dhruvである。また、早期警戒用のKa-31の搭載も考慮されている。
配備
同型艦
サンクトペテルブルク市のバルチースキィ・ザヴォート(バルチック造船所)で建造された1番艦から3番艦は、一時ロシア軍艦籍に入った後、インド海軍に引き渡されている。ただし、これら3隻の建造に当たって、工事の不手際などによる引渡しの遅延などがあったため、3隻の追加発注分については、カリーニングラード市のヤンタリ(Yantar)造船所で建造されることとなった。
艦番号 | 艦名 | 起工 | 進水 | 就役 | 備考 |
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F-40 | タルワー INS Talwar |
1999年 3月10日 |
2000年 3月12日 |
2003年 6月18日 |
ロシア軍艦としての艦名はドゾルヌイ Дозорный |
F-43 | トリシュル INS Trishul |
1999年 9月24日 |
2000年 11月24日 |
2003年 6月25日 |
ロシア軍艦としての艦名はウダールヌイУдарный |
F-44 | タバール INS Tabar |
2000年 5月26日 |
2001年 5月25日 |
2004年 4月19日 |
ロシア軍艦としての艦名はSKR-23号(СКР-23) |
F-45 | テグ INS Teg[3] |
2007年 7月27日 |
2009年 11月27日[4] |
2012年 4月27日 |
|
F-50 | タルカシュ INS Tarkash |
2007年 11月27日 |
2010年 6月23日[5] |
2012年 11月9日[6] |
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F-51 | トリカンド INS Trikand |
2008年 6月11日 |
2011年 5月25日 |
2013年 6月29日[7] |
脚注
- ^ 野木恵一「ロシア海軍注目の新艦載兵器」『世界の艦船』第675集、海人社、2007年6月、90-95頁。
- ^ 誘導爆雷も開発されている。
- ^ インドは、ロシアで建造中の3隻のフリゲートの命名を行った。
- ^ インド海軍向けにロシアで建造中の1隻目のフリゲートが進水した。
- ^ インド海軍向けにロシアで建造中の2隻目のフリゲートが進水した。
- ^ カリーニングラードの造船所はインド海軍へフリゲート、タルカシュの引渡を行った。
- ^ 「ニュース・フラッシュ インドの新造フリゲイト「トリカンド」Trikandが就役」 『世界の艦船』785集(2013年10月号) 海人社
参考文献
- Norman Friedman "The Naval Institute Guide to World Naval Weapon Systems", Edition: 5, Naval Institute Press, 2006
- シア・クァンファ (2006年12月27日). “「タルワー」級(プロジェクト1135.6)” (HTML). 2009年3月9日閲覧。
- BHARAT RAKSHAK (2007年8月15日). “TALWAR {KRIVAK III} CLASS” (HTML) (英語). 2009年3月9日閲覧。
- GlobalSecurity.org (2006年8月15日). “Talwar Class / Project 11356” (HTML) (英語). 2009年3月9日閲覧。