アマゾン川

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アマゾン川
アマゾン川 2006年11月8日撮影
マナウス附近のアマゾン川
延長 6,516 km
平均流量 209,000 m³/s
(河口)
流域面積 7,050,000 km²
水源 ミスミ山
水源の標高 5,597 m
河口・合流先 大西洋
流域 ブラジルの旗 ブラジル (62.4%)
ペルーの旗 ペルー (16.3%)
ボリビアの旗 ボリビア (12.0%)
 コロンビア (6.3%)
エクアドルの旗 エクアドル (2.1%)
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アマゾン川(アマゾンがわ、: Rio Amazonas, 西: Río Amazonas, 以前は 西: Rio Orellana)は南米ブラジルとその周辺国の熱帯雨林アマゾン熱帯雨林)を流れ、大西洋に注ぐ世界最大の河川である。数多くの巨大な支流を持ち、アマゾン川という名称はそれらの総称として用いられている。

概説

アマゾン川の本流の水の色はコーヒーのように茶褐色に濁っているが、水の色は支流によって違ってくる。きれいな清水のような水が流れている支流もあり、本流ソリモンエスは茶褐色、ネグロ川ジャングルの樹液が溶け込み黒く濁っている。ネグロ川と本流の合流点ではしばらくは水が混ざり合うことがなく数十キロメートルもそれぞれの川の色が帯状になって流れる。マデイラ川は白く濁っている。多くの支流の水が合流して茶褐色になる。

アマゾン川は河口から 1,600 km 遡っても高度は 32m 、3,800 km 遡っても高度は 80 m しかない。アマゾニアと呼ばれる広い大湿原の低地が広がっている。新生代以降にアンデス山脈が隆起するまでは太平洋側に流れていた。

アマゾン川の流域面積は世界最大であり、ジャングルや大湿原などのいわゆる自然のダムや地下に含まれている水の量は世界の全河川の 2/3 に当たる膨大な量である。

アマゾン川流域
アマゾン川の源流 ペルーのミスミ山山麓。木製の十字架が立てられている (2006年)

規模

南米大陸の北部を大きく流れるきわめて巨大な水系を持ち、いくつもの支流に分かれる。このため、アマゾン川の定義は複数存在する。規模についても出典により、複数の値が示されている。

  • 6,400 km - 理科年表 2006年
The Water Encyclopedia, Second Editionなどに基づくものであり、アマゾン川の源流として支流のウカヤリ川、さらにウカヤリ川の支流としてアプリマック川を採用したもの。
  • 6,516 km - 理科年表 2006年
The Times Atlas of the World, 2004などに基づくものである。

これらの値は、ナイル川の長さである 6,650 km ないし 6,695 km に近い。さらに、アマゾン川の流路は複雑であり、より長い支流が存在するとして、アマゾン川が世界一長い河川であるという主張も存在する。例えば、2007年6月22日に共同通信は、ミスミ山の奥深くで新たな源流が発見されアマゾン川の全長は 400 km も伸びて 6,800 km となりナイル川を超えると報道した[2][3]。 2008年7月3日アマゾン川とナイル川の衛星写真を比べてアマゾン川の長さは 6992 km になりナイル川よりも長いと報道された9月の会議で正式な話し合いがされるが、衛星写真や源流調査からもアマゾン川のほうがナイル川より長い可能性はより一層高くなっている[4]

アマゾン川の上流部分はアンデス山脈の奥深く入り込んでいる。ナショナルジオグラフィック協会[5]などによる調査では、ペルー南部のボリビアチリ国境近くにあるミスミ山 (Nevado Mismi, 5597 m) が最も遠い水源と考えられ、ここから河口のマカパまでは 6,400 km の長さになる。主要な支流全体の長さは延べ 50,000 km にもなる。

河口は大きく広がっており、どこからどこまでを河口と考えるかにより大きく異なるが、その幅は東京から名古屋大阪までの距離に匹敵する 300 km とも 500 km ともされる。一般的には、九州より僅かに広い面積を持つマラジョ島は中洲島と考えられている。水量、流出物の量が莫大なため、河口から約 320 km 沖合いまで大西洋は海水の塩分濃度や、海面の色が変化している。

アマゾン川は世界最大の河川の一つである。特に流域面積では2位以下のコンゴ川、ナイル川、ミシシッピ川のそれぞれ2倍程度、オーストラリア大陸の面積に匹敵する705万km²にわたる。1973年から1990年の平均流量は毎秒 209,000 t と推定される[1]。全世界の川の流量の 20% を占めている。水深も深く、河口から 4,000 km 上流まで遠洋航海用の船が航行できる。平均水深は雨季で 40 m である。

アマゾン川は支流だけでも規模が巨大で、最大の支流ネグロ川の年平均流量はマナウスで毎秒28,400 t、マデイラ川の年平均流量は合流点で毎秒31,200 tある。タバチョス川は毎秒13,500 t、シングー川は毎秒9,7000 t、トカンチンス川の年平均流量は 1,1800 tある[2]。もし、世界最大の湖であるカスピ海にアマゾン川を流れ込ませたとすると、蒸発散する分を含めても、一年間に水位が 20 m 上昇してしまうという。

名前

アマゾンの名の由来は定かではない。一般には、アマゾンの名はギリシア神話の女人族アマゾネスにちなみ、初期の探検者フランシスコ・デ・オレリャーナによって命名されたという説が流布している。別の説では現地語で似た音をもつ名があり、それによってアマゾナスと名づけられたという。他に、インディオの言葉で "Amassunú" といい、これに由来するともいう。アマゾン川にちなむ地名としては、アマゾン盆地のほか、ブラジルベネズエラコロンビアの行政区画がある。アマゾンも参照。

流域の町と産業

河口付近

アマゾン川流域には河口都市ベレン、1,600 km 上流の町マナウス、3,900 km 上流の都市イキトスがあるがその他にも小さな町や村は多くある。ベレン、マナウス、イキトスは人口も多く遠洋航海用の船が接岸できる港があるが、小さな町や村には港がなくて大型船から小型船に乗り換えて品物などの取引をしている。 

アマゾン川は雨季と乾季の水位の差が大きい。乾季と雨季ではアマゾン川の水位は 20 m 以上も違うところがあり、数十万平方キロメートルの熱帯雨林が雨季には水没する。アマゾン川の近くで暮らす人々は、雨季になれば水没してしまう地域「バァルゼア」と雨季でも水没しない「テラフィルメ」と呼ばれる地域を知っており、乾季や雨季に適した暮らしを行なっている。アマゾン地方の交通手段は船が重要である。ジャングルには道路も通っているが、アマゾン川には橋が一つもかかっていないので、船を主な交通に利用している。

アマゾン川の流れは絶えず変化しており、大きく蛇行して蛇行部分が切り離された三日月湖になる。そしてその肥沃な土壌と強い日光によって樹木は瞬く間に生長し、三日月湖はやがて埋まって元の熱帯雨林に戻り、再びアマゾン川が蛇行して三日月湖になるという変化を絶えず繰り返している。

あまりにも巨大な川であるため、本流にはダムが一つも作られておらず開発から取り残されているので、アマゾン川は世界一健康な川(世界一汚染の少ない河川)でもある。アマゾンの熱帯雨林は世界の二酸化炭素の 1/4 を酸素に変えているといわれているが、最近では木材を切り出したり工業用の木炭の生産や畑を作るために森林破壊が続いており、自然環境破壊の問題も起きている。また沿岸に住む人たちは生ゴミや汚物をアマゾン川に垂れ流しているが、世界の他の河川のような公害問題が起きていないのはアマゾン川の規模が桁違いに大きいからに過ぎない。アマゾン川は地球の最後の水資源の宝庫とも言われている。

アマゾン川の川幅は広く、海洋から中流域まで船舶が乗り入れることが可能である。かつてはゴム栽培が盛んであり、中流域のマナウスは天然ゴムの集散地として栄えた。

このゴム産業には日本人からの移民も多数参加した。1900年代前後にペルーやブラジルに移住した日本人の一部が、ゴム採集やゴム工場の肉体労働者として働いていた。このため、マナウス付近やボリビアリベラルタなどには現在も日本人の子孫が多く暮らしている。

生物

アマゾン川流域が形成されたのはとても古く、2 - 5 億年前の古生代にまで遡る。また、長年生態的条件や気象的条件が比較的安定していたため、セルバと呼ばれる熱帯雨林や水中の世界でも、豊かで多様性に富んだ動植物が数多く見られる。

魚類では、肉食の淡水魚であるピラニアカンディル、淡水化したサメエイ、1 億年以上前から姿を変えることのない古代魚など、大西洋で見られるよりも多い 2,000 種類以上が発見されている。ちなみに、ミシシッピ川では 250 種、ヨーロッパ全体では 150 種といわれる。

アマゾン川流域には、約 250 種類の哺乳類、約 1,800 種類の鳥類が生息している。 特に昆虫全体に至っては、100 万種以上が生息していると推測されている。

哺乳類では、川にすめるように進化したアマゾンカワイルカコビトイルカが知られている。

ポロロッカ

大潮の時に海水と川の流れがぶつかり合い、大きな波となって川を遡る現象が発生する。この現象をポロロッカという。一般的な海の波が 20 - 30 秒で消えるのに対し、ポロロッカによる波は 30 分以上持続する。

主な支流

脚注

  1. ^ Moliner et al. "Hydrologie du Bassin de L'Amazone"[1], Grands Bassins Fluviaux, 22-24 novembre 1993, p340.
  2. ^ 以上各支流の流量はMoliner et al. "Hydrologie du Bassin de L'Amazone", p340.

関連項目

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