おしぼりうどん
概要
このつゆの名称は「絞り汁」を由来とした「おしぼり」であり、手を拭くおしぼりとはまったく無関係で、ねずみ大根という大根をすりおろし、布巾で搾った汁に信州味噌を溶かしてつゆを作り、うどんをつけて食べる。大根おろしではなく、搾り汁を使うという点が特徴である。味は、大根に依存し辛いものが好まれる。
ねずみ大根以外にも、中之条大根、上野大根、戸隠大根など辛みのある大根を利用する。薬味には刻みネギ、削り節などを添える。なぜこのような食べ方になったかというと、信州は海から遠く離れていたことがあげられる。昆布や鰹節といった海産物は手に入りにくく、出汁にできない。また、醤油も東日本で一般に普及したのは江戸時代も後期のことであり、田舎では高級品であった。砂糖や味醂はなおさらである。(現代人にもそうだが)江戸人の舌には全く合わなかったとみえ、「蕎麦は美味いがつゆは江戸からもっていけ」といわれていた。
類似の習慣
長野県内の戸隠や千曲市(旧更埴市、旧戸倉町)には「おしぼりそば」がある。同様に辛味大根の絞り汁に味噌を溶かしたものをつゆとして冷たい蕎麦を浸して食べる習慣がある。
脚注
参考文献
- 奥村彪生『日本めん食文化の一三〇〇年』(増補版第1刷)農山漁村文化協会、2014年。ISBN 9784540111730。