特性類

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

数学では、特性類 (Characteristic class)は、位相空間 X の上の各々の主バンドルを、X のコホモロジーへ結びつける方法のことを言う。コホモロジー類は、バンドルが「ツイストされている」ことへ拡張可能かどうかを測る、特に、切断を持っているか否かを測る道具である。言い換えると、特性類は大域的な生成構造から局所的な生成構造の導出がどれくらいを可能かを測る大域的な位相不変量である。特性類は、代数トポロジー微分幾何学代数幾何学における統一した幾何学的な考え方の一つである。

1935年の多様体上のベクトル場についてのスティーフェル英語版(Eduard Stiefel)とハスラー・ホイットニー英語版(Hassler Whitney)の仕事より、特性類の考え方が発生した。

定義[編集]

G を位相群として、位相空間 X に対し、主G-バンドル同型類集合を bG(X) と書くこととする。この bG は、位相空間と連続函数カテゴリ Top から集合函数のカテゴリへの反変函手であり、写像 f は引き戻し英語版作用素 f* である。

従って、主G-バンドルの 特性類 c は、bG からコホモロジー函手 H* への自然な変換英語版であり、また Set への函手ともみなされる。

言い換えると、特性類は任意の主G-バンドル P → X を、f : Y → X が連続写像のときに c(f*P) = f*c(P) となるような H*(X) の元 c(P) へ関連付ける。コホモロジーの中の引き起こされた写像の下では、左側は P を Y への引き戻しの類(class)であり、右側は P の類の像(image)である。

特性数[編集]

特性数は、コホモロジー群の元である[1]。ので、特性類からある整数を取り出すことができ、これを 特性数(characteristic numbers)という。以下、各々

という。

基本類英語版(fundamental class) [M] \in H_n(M) と特性類 c_1,\dots,c_k を持つ G-バンドルを持つ向き付け可能 n-次元多様体 M が与えられると、基本類と次数 n の特性類のペアリング(交叉積)を考えることができる。特性数とは、全次数がちょうど n となるような特性類と基本類の(交叉)積のことを言う。異なる特性数はちょうど次数の和が n となるような特性類の組み合わせの数、つまり、次数の和が n となる単項式の数だけであり、この数は n の \mbox{deg}\,c_i への分割数に等しい。

形式的な定義としては、i_1,\dots,i_l such that \sum \mbox{deg}\,c_{i_j} = n が与えられたとき、対応する特性数は、

c_{i_1}\smile c_{i_2}\smile \dots \smile c_{i_m}([M])

である。

これらは、それぞれの特性類の積として記号化されていて、例えば c_1^2 であったり、別な例でポントリャーギン数英語版(Pontryagin number)は p_1^2 に対応する P_{1,1} あるいは、オイラー標数を \chi と書いたりする。

ド・ラームコホモロジーの観点からは、特性類を表現する微分形式を取ることができ[2]、ウェッジ積を最高次元の形式となるようにとることができるので、多様体上で積分することができる。これは、コホモロジーで積を取ったり、基本類とのペアリングをしたりすることの類似である。

これはまた、向き付けできな多様体へも適用することができ、\mathbf{Z}/2 での向き付けを与えることで、\mathbf{Z}/2 に値を持つ特性数を得ることができる。この例はスティーフェル・ホイットニー数である。

特性数は、向き付け可能か向き付け不可能かというボルディズム問題英語版(bordism question)を解決する。2つの多様体が(それぞれ向き付け可能、向き付け不可能である多様体と)コボルダント(cobordant)であることと、それらの特性数が等しいこととは同値である。

動機[編集]

特性類は、コホモロジー論の本質的な現象であり、反変な構造を持っている。反変な構造とは、切断[3]は、空間上の函数の一種で、変更を必要とする切断の存在から反変性を導く。実際、コホモロジー論ホモロジー論ホモトピー論の後で開発された。両者とも反変であり、空間の「中への」写像を基礎としている。1930年代に幼児期を迎えた(障害の理論英語版(obstruction theory)の一部として)特性類の理論は、ホモロジー論の「双対」な理論と見ることができることにより、大きな理論となった。曲率不変量に対する特性類のアプローチは、一般化されたガウス・ボネの定理を証明するための理論を作るという特別な理由を持っている。

理論の基礎が1950年に確立する(ホモトピー論から還元された定義を使い)と、最も基本的な当時知られていた特性類(スティーフェル・ホイットニー類英語版チャーン類ポントリャーギン類英語版)は、古典線型群や最大トーラス英語版(maximal torus)構造を反映していることが明らかとなった。さらには、チャーン類はそれほどは新しくなく、グラスマン多様体英語版(Grassmannian)のシューベルトの計算英語版(Schubert calculus)や、代数幾何学のイタリア学派英語版(Italian school of algebraic geometry)の業績の中に反映されていることが分かった。他方、現在はベクトルバンドルがあるときはいつでも、特性類の族を生成するフレームワークがある。

従って、元になるメカニズムは、次のように現れる。ベクトルバンドルを持つ空間 X が与えられると、適切なある線型群 G に対して、ホモトピーカテゴリ英語版(homotopy category)の中で、X から分類空間 BG への写像が存在する。ホモトピー論に対し、適切な情報は G直交群英語版(orthogonal group)やユニタリ群のようなコンパクトな部分群によりもたらされる。一度でよいのだが、コホモロジー H*(BG) が計算されると、コホモロジーの反変性は、同じ次元では H*(X) の中に定義される中に、バンドルの特定類が定義されることを意味する。例えば、チャーン類は実際、偶数次元の次数付きの成分を持った類の一つである。

このことは、幾何学的な理論で(特性類が)もたらした特別な構造を考えにいれることが有益なことであるが、しかし、まだ古典的な説明である。進んで1955年からK-理論コボルディズム論英語版とともに、コホモロジーが「異常なほど」通常の理論となると、実際に、特性類と言っている時はいつでも、文字 H を変更する必要が出てきた。

特性類は、後日、多様体の葉層構造英語版(foliation)の中でも発見された。(葉層に対してはある特異点を許容するように意味を変更すると)特性類はホモトピー論の中に分類空間の理論を持っている。

さらに後日、数学と物理学が「親善関係」を結ぶようになると、新しい特性類がサイモン・ドナルドソン(Simon Donaldson)とディエテール・コチック(Dieter Kotschick)によりインスタントン英語版(instanton)の理論の中で発見された。チャーン(S. S. Chern)の観点と業績は、また、別な重要性も持っている。チャーン・サイモンズ形式チャーン・サイモンズ理論を参照のこと。

安定性[編集]

安定ホモトピー論英語版(stable homotopy theory)の言葉では、チャーン類スティーフェル・ホイットニー類英語版ポントリャーギン類英語版安定 であり、一方、オイラー類英語版不安定 である。

具体的には、安定類は自明バンドル c(V \oplus 1) = c(V) を追加した場合に変化しない類である。このことを抽象的に言うと、BG(n)分類空間の中のコホモロジー類は、包含写像 BG(n) \to BG(n+1) の下での、BG(n+1) のコホモロジー類の引き戻しである。(この包含写像は、包含写像 \mathbf{R}^n \to \mathbf{R}^{n+1} に対応する、ほかも同様)同じことであるが、有限な特性類はみな、BG の安定類からの引き戻しである。

このことは、ここに述べるようにオイラー類の場合は該当しない。何故ならば、k-次元バンドルのオイラー類は、H^k(X) の中に生きている(従い、H^k(BO(k)) からの引き戻しである)ので、次元が異なることから H^{k+1} から戻すことができない。

参照項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 非公式には、特性類はコホモロジーの中に「住んで」("live" in)いる。
  2. ^ チャーン・ヴェイユ理論により、これらは曲率の多項式であり、ホッジ理論(Hodge theory)により調和形式を取ることができる。
  3. ^ f\colon X\to Yg\colon Y\to X が射(morphism)とするときに、それらの結合 f\circ g\colon Y\to YY 上の同一視写像となる写像が存在する場合に、切断(section)という。英文へのリンクを削除した。

参考文献[編集]