岸田周三

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きしだ しゅうぞう

岸田 周三
生誕 Kishida Shuzo
(1974-08-08) 1974年8月8日(49歳)
愛知県豊明市
国籍 日本の旗 日本 日本
職業 料理人
活動期間 1993年 -
影響を受けたもの パスカル・バルボ
高橋忠之(ラ・メール)
宮代潔(カーエム)
公式サイト https://www.quintessence.jp/
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岸田 周三(きしだ しゅうぞう、1974年8月8日 - )は、日本愛知県出身の料理人。『レストラン カンテサンス』オーナーシェフ。「ミシュランガイド」から2008年以降、16年連続(2022年末時点)で三ツ星評価を受けている唯一の日本人フレンチシェフ。

来歴[編集]

東京都町田市生まれ。幼少期に愛知県豊明市に転居。 両親共働き、男子3人兄弟の末っ子として育つ。小学校の卒業文集には「将来の夢・料理人」と明記。1993年に名古屋調理師専門学校を卒業し、志摩観光ホテル『ラ・メール』(la mer/三重県)に就職。高橋忠之に師事。1996年、東京都渋谷区のフレンチレストラン『カーエムCUISINE KM FRANÇASE)』に入社し、シェフの宮代潔に師事。2000年、30万円の資金だけでフランスに渡る[1]。2003年にパリ16区の『アストランス(Astrance)』で働きはじめ、2歳年上のシェフのパスカル・バルボに師事。最初は前菜を担当し、そのあとは魚担当[2]。2004年には『アストランス』のスーシェフ(副料理長/シェフに次ぐポジション)に就任し3年間勤務した。

5年間のフランス修行で共に働いた本城昂結稀 等と共におまかせコース1つのみのレストラン「カンテサンス」を開店[3]。2007年、ミシュランガイドで三つ星を獲得(当時の現役最年少)。2011年に独立し[4]、東京都渋谷区北品川フレンチレストラン「Quintessence(カンテサンス)/34席 80坪」のオーナーシェフに就任[5]。2013年「ASIA’S 50 BEST RESTAURANTS 2013」16位を獲得。2017年、海洋資源保全活動団体「シェフス・フォー・ザ・ブルー」の立ち上げに参加し理事に就任[6]。2020年、ミシュランガイドに新設された「グリーンスター」も獲得。ドラマ『グランメゾン★東京』の監修[7][8]を担当した。

年表[編集]

  • 1993年:志摩観光ホテルに入社[9]。(19歳)
  • 1996年:レストラン『カーエム』に入社。(23歳)
  • 2000年:単身、フランスへ。(26歳) 約2年間は、一ツ星から三ツ星まで4つの店で修業。
  • 2003年:パリ『アストランス』で働く。
  • 2004年:スーシェフに就任。
  • 2005年:スペインで開催された、料理界でもっとも権威のあるガルシア・サントス主催の学会<LoMejor de la Gastronomia>に招かれ、シェフのパスカルと共にデモンストレーションを披露。
  • 2006年:東京にレストラン『カンテサンス』をオープン。(32歳)[10]
  • 2007年:「ミシュランガイド東京 2008」で三ツ星を現役最年少(33歳)で獲得。[11]
  • 2011年:運営会社から独立、オーナーシェフに。
  • 2013年:東京・北品川(御殿山)にレストランを移転。
  • 2017年:「シェフス フォー ザ ブルー」の立ち上げに参加。
  • 2020年:日本航空(JAL)ファーストクラス機内食の監修[12]。通販(ガトーオーコンテ/ガトー アルマニャッケ)を実施

スタイル[編集]

「プロデュイ:素材を尊重する」「キュイソン:火入れの追及」「アセゾネ:味付けへの配慮」の3つを徹底し、所々にユーモアや詩的なものを組み込む料理。新しい形の「キュイジーヌ・コンテンポレーヌ(現代的な料理)」を創造するとともに「次世代のスタンダード」を目指す「おまかせの1コース」。来店履歴は、一人ひとりのファイルをつくり、パソコンに入力。来店日、時間、人数、苦手なものなどから出した料理までを記録する。次に予約が入ったときには、そのファイルをもとにコースを考えるので、以前出した料理とダブることはない。[13]

  • 6名の個室であれば「料理の写真撮影」OKだが、ダイニングはNG。
  • ハーフパンツやジャージ等のスポーツウェア、サンダルタンクトップやTシャツ姿はNG。
  • 旬に拘り、ギリギリの仕入れしかしない(料理のクオリティーを上げるため、素材の発注は前日にぴったり人数分だけ)。
  • ランチ前、ディナー前の賄いに合わせて全員でミーティング。それぞれが客の情報を共有。

スペシャリテ[編集]

  • 「山羊乳のバヴァロワ」:京都の山羊乳で作ったバヴァロアに、料理の主役は、味の基本となるオリーブオイルと塩。オリーブオイルは年毎の作柄で味が異なるため、銘柄が固定ではない。塩はゲランド産フルール・ド・セル。トップに百合根とノワゼット(ヘーゼルナッツ)を散らす。一期一会を大切に、客の過去のデータを管理して、同じメニューは出さない方針の岸田が作り続ける、数少ない定番のひと皿。
  • 「メレンゲのアイスクリーム」:焼きたてのメレンゲを粉々に砕いた粉をグラニュー糖がわりに使ったアイスクリームデザート。

新たな挑戦[編集]

常にチャレンジする精神を持ち、様々なチャレンジ・コラボレーションも行っている。

  • 2015年5月 - アンドレ・チャンシンガポール・レストラン・アンドレ)コラボディナー(ダイナースクラブ主催)[14] 2000年に南仏モンペリエにあるフランス料理の名店「ジャルダン・デ・サンス」でともに修業。[15]
  • 2016年2月 - 「台湾震災チャリティ・カレー」プータンノワール&スペアリブのポークカレー:大阪「ハジメ」米田肇、青山「フロリレージュ」川手寛康、神保町「傳」長谷川在佑
  • 2017年1月 - 「第5回チャリティ・カレー」スープ・ド・ポワソンのカレー(魚介の旨味が凝縮したピリ辛サラサラ):六本木「ラ・ブリアンツァ」奥野義幸、外苑前「フロリレージュ」川手寛康、銀座「ラール・エ・ラ・マニエール」小清水寛美
  • 2017年12月 - 【アストランスカンテサンス】コラボディナー(ゴ・エ・ミヨ主催)
  • 2018年9月 - 「西日本応援チャリティ・カレー」バターチキンカレー(オマール入り):大阪「ハジメ」米田肇、大手町「星のや東京」浜田統之、神保町「傳」長谷川在佑

言葉[編集]

  • 「小学生の頃、『じゃがいものグラタン』をつくったことを覚えています。母は料理が好きで上手でしたが、仕事をしていたこともあり、子どもたちに料理を手伝ってもらおうとしました。しかし男3人のうち兄2人は全く関心を示さず、末っ子の私1人が母の思惑通りに料理好きになって、最終的に我が家のコックになりました」[16]
  • 「変わることは、自分にとって成長を意味します。成長とは変わり続けること。『これでいい』と決めた瞬間から人は衰退していくものだと考えます。だから僕は現在に至るまで変わり続けているはずだし、そうでありたい」[17]
  • 食の流行は常に変化していくものですが、食の本質とは何であるかは常に忘れてはいけないと自分を戒めています。驚きや楽しさも大切ですけれど、僕は本物として残るものは、“おいしさ”だと思っています。そのためにいちばん必要なものが、自然から恵まれた食材なのではないでしょうか(ミツカン ZENB インタビュー)[18]

サスティナブルシーフード(水産資源保護)の活動[編集]

自分達が当たり前に使う食材にも限りがあることやそれをむやみに濫用せず後世までのこせるよう大切にしたいという思いから、「シェフス フォー ザ ブルー(Chefs for the Blue)」という団体の立ち上げに参加し理事として活動。東京のトップシェフ30人以上と、食を専門とするジャーナリストで構成されている。

メディア露出[編集]

テレビ番組[編集]

ラジオ

  • J-WAVE 『9 CHEFS』(HOLIDAY SPECIAL)2020年9月21日 ナビゲーターは望月理恵

新聞・雑誌[編集]

  • 「ブルータス」東京海洋大学の勝川先生とサスティナブルシーフードについて対談
  • GLOBE Breakthrough(突破する力 239) 朝日新聞 2021年10月3日[1]

[編集]

  • 「一流の本質~20人の星を獲ったシェフたちの仕事論」大和書房 (2017年3月16日)

岸田チルドレン[編集]

「カンテサンス」での修業を経て独立したシェフ・元スタッフたち [26][27]
  • 川手寛康 神谷町(麻布台ヒルズ)「フロリレージュ(Florilege)」
  • 春田理宏 赤羽橋「クローニー(Crony)」
  • 後藤祐輔 恵比寿「アムール(AMOUR)」
  • 根本憲一 表参道「ネモ(NéMo)」
  • 陣内翼 神楽坂「ジェフリー(Jfree)」
  • 目黒浩太郎 代官山「アビス(abysse)」
  • 深谷博輝 白金台「アルゴリズム(l'algorithme)」
  • 加山賢太 広尾「マルゴット エ バッチャーレ(Margotto e Baciare)」
  • 小笠原圭介 四谷三丁目「オガサワラレストラン」
  • 葛原将季 名古屋市(車道・千種)「レミニセンス(Reminiscence)」
  • 加瀬史也「オルグイユ(L'orgueil)」

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b メニューはおまかせコースただ一つ 三つ星「カンテサンス」岸田周三シェフの哲学:朝日新聞GLOBE+”. 朝日新聞GLOBE+. 2022年9月24日閲覧。
  2. ^ [https://www.inshokuten.com/foodist/article/6658/ 三つ星シェフ『カンテサンス』岸田周三さんが学んだこと、目指していること] 「飲食店ドットコム」株式会社シンクロ・フード 、 2022年10月13日
  3. ^ 13年連続、三ツ星獲得! 日本トップシェフが推す3000円以下の激旨ワイン3選 OCEANS & LIGHTHOUSE MEDIA ,2020.05.03
  4. ^ 江藤詩文. “カンテサンス 三ツ星シェフの哲学”. Kai House(カイハウス). 2020年1月16日閲覧。
  5. ^ Takahashi, Koji. “ZENB イニシアティブ -「食べる」のぜんぶを、あたらしく”. ZENB イニシアティブ -「食べる」のぜんぶを、あたらしく. 2020年1月16日閲覧。
  6. ^ 海と山の旬がズレて、定番料理が変わってしまう? シェフから見た気候変動と食糧危機 2023 ヤフー株式会社 ,8/9(水) 12:03
  7. ^ 「木村拓哉さんのアイデアに助けられました」三ツ星シェフが明かす『グランメゾン東京』監修秘話 岸田周三シェフに有働由美子さんが迫る!「文藝春秋」編集部 文藝春秋 2020年6月号,2020/06/0
  8. ^ TBS (2019年12月26日). “日曜劇場『グランメゾン東京』”. TBSテレビ. 2020年1月16日閲覧。
  9. ^ Quintessence(カンテサンス)毎年連続三つ星を獲得し続ける若手フレンチの旗手 ヒトサラ(USEN Media)
  10. ^ トップであり続けるために必要なこととは。カンテサンス・岸田周三シェフがヴァシュロン・コンスタンタンに感じた共通項 プレジデントオンライン PRESIDENT STYLE 格好いいビジネス人生。, October.2022
  11. ^ 33歳でミシュラン三ツ星——「カンテサンス」オーナーシェフ・岸田周三を貫く挑戦の哲学致知出版社 人間力・仕事力を高めるWEB chichi,2022年04月05日
  12. ^ JAL機内食「空の上のレストラン」新たなスターシェフが登場 日本発ファーストクラス洋食に「カンテサンス」おまかせコースを提供 日本航空 2020年8月31日
  13. ^ 日本の食を支える水産資源が危ない PRESIDENT 2015年8月3日号 上島 寿子 フリーライター、2016/05/30 8:30
  14. ^ フランス料理界を牽引するふたりのシェフ、15年越しの競演ディナー開催|Diners Club web magazine "OPENERS",2015年7月8日
  15. ^ 刺激し合うトップシェフ二人のコラボ!岸田周三さん、アンドレ・チャンさん JFLA Holdings Inc.
  16. ^ 第464回 レストランカンテサンス/restaurant Quintessence オーナーシェフ 岸田周三氏」出演:岸田周三(『カンテサンス』オーナーシェフ),長谷川初範(俳優) in-職hyper(いんしょくハイパー) 飲食の戦士たち~飲食業界をリードする社長の軌跡 株式会社キイストン、14/12/2
  17. ^ 唯一無二の店!Part2 レストランカンテサンス 岸田周三さん 料理王国 食の未来が見えるウェブマガジン JFLA Holdings Inc. 、2021年9月20日
  18. ^ 日本の食を支える水産資源が危ない ミツカン ZENBサイト、2019年2月
  19. ^ 若き求道者、未踏の地へ 第77回 2008年2月5日 フレンチレストラン「カンテサンス」シェフ プロフェッショナル 仕事の流儀 公式ホームページ
  20. ^ レストラン カンテサンス Quintessence BSテレ東『未来EYES』,2017年5月28日
  21. ^ 「駿河湾の魚」出演:岸田周三(『カンテサンス』オーナーシェフ),長谷川初範(俳優) 【ロケ地】静岡県焼津市、テレビ朝日公式「ごはんジャパン」 2019年06月29日
  22. ^ 3月6日の「アナザースカイII」は岸田周三がフランス・パリへ 日本テレビ アナザースカイ 公式ページ,2020.02.28
  23. ^ 「緊急企画!プロのおうちごはん第2弾」 自宅で過ごす時間を楽しくするために『食』を究めたプロフェッショナルが簡単・絶品レシピを自撮りで紹介。日本人初の三ツ星フレンチシェフとなった岸田周三さんは「じゃがいもグラタン」,NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』 公式サイト
  24. ^ 焚き人 シェフ・岸田周三(「カンテサンス」) フジテレビ『石橋、薪を焚べる』第12回,2021年3月23日(火)
  25. ^ フレンチシェフ 岸田周三 自分流~“知”の探求者たち #31 BS Asahi,,2023年4月8日(土)
  26. ^ カリスマシェフと卒業生に森脇慶子が切り込む!”岸田チルドレン”が牽引するNEOフレンチ GQ Japan Condé Nast , 2018年7月3日
  27. ^ 高級フレンチレストラン カンテサンス (Quintessence)で修業を積んで独立した6店をご紹介 Pocket Concierge 2018

外部リンク[編集]