司法試験予備試験

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

司法試験予備試験(しほうしけんよびしけん)は、法科大学院を修了した者と同等の学識を有するかどうかを判定し、もって司法試験の受験資格を付与するために行われる国家試験である。通称は予備試験。この試験に合格した者は、司法試験の受験資格を得ることができる。旧司法試験の完全廃止に伴い、2011年から実施されている。

概説[編集]

2006年より制度を一新して新たに行われている司法試験の受験資格を得るためには、原則として法科大学院を修了しなければならない。しかし、時間や金銭上の都合その他の理由により法科大学院を経由しない者に対しても司法試験の受験資格を得る道を開くために、2011年から予備試験が実施されている。この予備試験に合格すると、法科大学院を修了した者と同等の学力があるものと見なされ、司法試験の受験資格を得ることができる。

予備試験に合格した者に付与される司法試験の受験資格は、法科大学院を修了した者と同じであり、予備試験に合格した日の後の最初の4月1日から5年を経過するまでの期間に限り司法試験の本試験を受験できる[1]。予備試験の受験資格について、学歴や年齢などの制限はなく、受験料を払えば誰でも予備試験を受験することができる。2014年現在の受験料は17500円(電子出願の場合は16800円)。出願手続等の詳細については、『法務省:司法試験予備試験』を参照のこと。

予備試験の試験科目[編集]

予備試験の試験科目は以下の通りである。

短答式による筆記試験は5月中に行われ、合格者に対しては論文式による筆記試験が行われる。
論文式による筆記試験は7月中に行われ、合格者に対しては口述試験が行われる。
口述試験は10月中に行われ、合格者に対しては司法試験の受験資格が付与される。
短答式による筆記試験
  1. 憲法
  2. 民法
  3. 刑法
  4. 商法
  5. 民事訴訟法
  6. 刑事訴訟法
  7. 行政法
  8. 一般教養科目(人文科学社会科学自然科学英語
論文式による筆記試験
  1. 憲法
  2. 民法
  3. 刑法
  4. 商法
  5. 民事訴訟法
  6. 刑事訴訟法
  7. 行政法
  8. 一般教養科目(人文科学、社会科学、自然科学)
  9. 法律実務基礎科目(民事実務、刑事実務、法曹倫理)
口述試験
  1. 法律実務基礎科目(論文式と同様)

問題点[編集]

予備試験の制度は本来、経済的事情などの理由により法科大学院に通えない者に対する救済措置であり、その合格率は旧司法試験並みの狭き門であるが、それでも大学在学中に予備試験に合格できれば卒業後に法科大学院に入る必要がなく早期に司法試験を受験することも可能であり、実際にも受験者の中には大学2年生の時に予備試験に合格して3年生の時に本試験に合格した例も存在する(2013年の時点における最年少合格者)。そのため、司法試験合格を目指す学生達の間では、法科大学院へ行くよりもむしろ予備試験を受験する方が合格への近道と見なされる傾向が強くなり、制度の開始から3年後の2014年には早くも予備試験の受験志願者数が法科大学院の志願者数を上回る状態となっている。そのため、法科大学院側からは「法科大学院の設立当初の理念が軽視され、大学院の学生離れが進む」と危惧する声が上がっており[2]、法曹養成制度改革顧問会議においては予備試験の受験資格に制限を求める意見が出され[3]経済同友会は予備試験自体の廃止を主張している[4]。一方、そのような予備試験の制限や廃止を求める勢力は法科大学院の関係者の既得権益を守ることを目的としているに過ぎず、法科大学院の制度が既に破綻していることは明らかであるから法科大学院の方を廃止するべきとする意見も根強い[5][6]

もっとも、司法試験予備試験の志願者が増加して法科大学院の志願者が減少しているといっても、現行制度における予備試験の合格率は極めて低く、予備試験を受験する学生達の大部分が大学在学中に合格できないまま法科大学院に入っている現実に変わりはない。そうした現実を踏まえた上で、司法試験予備試験と法科大学院(ロースクール)のそれぞれの長所と短所とを比較し、司法試験予備試験と法科大学院は決して二律背反するものではないとする意見も存在する[7]

これらの問題について、政府の法曹養成制度改革推進室は2014年6月12日、司法試験予備試験の受験資格に制限を設ければ法曹志望者の減少につながる恐れがあるとして、現時点では予備試験の受験資格に制限を設けることは困難との見解を表明した[8]

過去の司法試験予備試験の結果[編集]

司法試験予備試験の結果[9]
実施年 出願者 短答式受験者 短答式合格者
(括弧内は合格点)
論文式受験者 論文式合格者
(括弧内は合格点)
口述式受験者 口述式合格者 合格率[10]
平成23年(2011年) 8,791 6,477 1,339(165) 1,301 123(245) 122 116 1.79%
平成24年(2012年) 9,118 7,183 1,711(165) 1,643 233(230) 233 219 3.05%
平成25年(2013年) 11,255 9,224 2,017(170) 1,932 381(210) 379 351 3.8%
平成26年(2014年) 12,622 10,347 2,018(170)          

脚注[編集]

  1. ^ 2014年(平成26年)までは予備試験合格から5年以内に3回までしか本試験の受験が認められなかったが、同年5月に司法試験法が改正されてからは、合格から5年以内であれば回数の制限なく本試験を受験できるようになった。
  2. ^ 時事通信:2014年5月18日記事「『予備試験』人気が過熱=狭き門、エリート扱いも - 法科大学院離れに拍車」
  3. ^ 法曹養成制度改革顧問会議第6回会議議事録 2014年2月25日
  4. ^ 社会のニーズに質・量の両面から応える法曹の育成を経済同友会公式ホームページ 2014年5月9日
  5. ^ 司法試験予備試験をどのように位置付けるのか 法科大学院を守るための予備試験制限は許されない
  6. ^ 経済同友会の提言 予備試験の廃止と法科大学院制度
  7. ^ 辰巳法律研究所 ロースクール(法科大学院)進学・予備試験に興味を持っていますか?
  8. ^ 司法予備試験の受験制限「困難」政府見解、法曹志望者減を懸念
  9. ^ 表中においては、短答式試験を「短答式」と略した。なお、論文式試験及び口述式試験に関しても同様の略記をした。
  10. ^ 短答式試験受験者比の合格率。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]