二次構造

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生化学において二次構造(にじこうぞう、: Secondary structure)は、タンパク質核酸といった生体高分子の主鎖の部分的な立体構造のことである。

ペプチド結合の構造[編集]

trans-ペプチド結合構造。長さの単位はÅ
cis-ペプチド結合構造。長さの単位はÅ

1930〜40年代、L .PaulingとR.B Coreyはポリペプチド鎖内においてアミノ酸ペプチド結合がどのような形状をしているのかを調べるためX線構造解析を行い、右図のような平面構造を取っていることを突き止めた。ペプチドのC-N結合はCα-N結合より0.13Å短く、C=O結合がアルデヒドケトンのC=Oよりも0.02Å短い事から次のように共鳴していると考えられている。

Peptide Resonance.PNG

ペプチド結合の共鳴エネルギーは平面のとき最大値(約85kJ/mol)をとり、平面から90度ねじれると共鳴エネルギーはゼロとなることからも平面構造が非常に強いことが分かる。ペプチド結合は普通トランス型をとり、隣接するCα同士は点対称の関係になる。シス型をとった場合、立体障害のためトランス型より約8kJ/molだけ不安定になる。しかし、プロリンの手前のペプチドでは少しだけ安定化する。このためプロリンの手前のペプチドの約10%はシス型をとっている。

ポリペプチド主鎖の二面角[編集]

ポリペプチド鎖は平面構造のペプチド結合が繋がっている。したがって、ポリペプチドの構造はそのペプチド結合面同士の二面角(ねじれ角)で表すことができ、Cα-N結合角はφ、Cα-C結合角はψで、それぞれの角度はCαから見て時計回りに回ると値が大きくなると決めている。二面角とφ、そしてψは立体障害のために様々な制約を受ける。

ラマチャンドランダイアグラム[編集]

核内増殖抗原(PCNA)のラマチャンドランダイアグラム。縦軸はψ、横軸はφ。青領域はふつう許容される範囲、緑領域は限界範囲。このグラフからもφ、ψのとりうる範囲は全体の25%程度であることが分かる。

ラマチャンドランダイアグラム(Ramachandran diagram)またはラマチャンドランプロット(Ramachandran plot)、ラマチャンドランマップ(Ramachandran map)とは、φ、ψ値、各原子間距離の計算によって立体的に許容されるペプチドの構造の範囲を図示したものである。

二次構造のφ、ψ値
二次構造 φ(°) ψ(°)
右巻きαヘリックス -57 -47
平行β構造 -119 113
逆平行β構造 -139 135
右巻き310ヘリックス -49 -26
右巻きπヘリックス -57 -70
2.27リボン -78 59
左巻きポリグリシンII、ポリ-L-プロリンIIヘリックス -79 150
コラーゲン -51 153
左巻きαヘリックス 57 47

ラマチャンドランダイアグラムの示す構造可能範囲は各アミノ酸の側鎖の大きさによって変化する。例えばグリシンはCβが無いため他のアミノ酸に比べて許容範囲はずっと広い。また、プロリンの側鎖は環状であるため許容範囲は極端に制限される(φ=-60°±25°)。

ヘリックス構造[編集]

αヘリックス

ポリペプチド鎖の各Cα炭素が同じようにねじれるとヘリックス(螺旋)構造をとる。ヘリックス構造はφ、ψではなく、1回転あたりの残基数(n:右巻きは正、左巻きは負)、1回転で軸方向に進む距離(ピッチ:p)で表される。p=0のとき閉環となり、p=2のときは平面リボン構造をとる。

αヘリックス[編集]

ポリペプチドのヘリックス構造の中で二面角と水素結合形成の双方を満足する構造はαヘリックスだけで、L-アミノ酸で作られるαヘリックスはφ=-57°、ψ=-47°、n=3.6、p=5.4Åである。αヘリックスではすべてのN-H基が4残基離れたアミノ酸のC=O基へ水素結合をしている。このときのN…O間の距離は2.8Åで、水素結合には適当であり、会合エネルギーも最大となる。右巻き構造では側鎖は外側を向いており主鎖にとっても相互にも障害にならない。しかし左巻き構造では側鎖が主鎖に近すぎるため作られることは少ない。

その他のヘリックス[編集]

2.27リボン、310ヘリックスのようなnmという表示のnはヘリックス1回転あたりのアミノ酸残基数、mは水素結合で閉環した構造の水素原子を含む構成原子数を表している。αヘリックスをこの表記で書くと3.613ヘリックスとなる。

右巻き310ヘリックスは、p=6.0Åで、二面角はラマチャンドランダイアグラムでは禁制領域に入り、側鎖にも立体障害がある。このため、310ヘリックスはあまり見られることはなく、普通はαヘリックスの終端に1回転だけできる。また、2.27リボンは二面角が完全に禁制領域にあるためタンパク質中には存在しない。πヘリックス(4.416ヘリックス)も二面角が禁制領域にあるため、ヘリックスの途中にたまに見られる程度である。

β構造[編集]

βシート構造(βプリーツシート構造)は、φとψが同じ角度で繰り返し、水素結合が2本のポリペプチド鎖の間にある構造である。βシートには平行βシートと逆平行βシートがある。水素結合が適切にできるためには完全な平面構造(φ=180°=ψ)ではなく襞(プリーツ)状をとる。襞の周期は7.0Åである。

非繰り返し構造[編集]

球状のタンパク質においてヘリックスやシート構造は全体の半分ほどで、それ以外の部分はループと呼ばれるひも状の状態をとる。球状タンパクでは二次構造の間にペプチド鎖が急にターンする場所があり、この部分はβターン(逆ターン)と呼ばれる。βターンにはI型とII型が存在し、両方ともアミノ酸4残基で構成されている。βターンは3残基離れたアミノ酸と水素結合して安定化するが、構造がずれて水素結合できないこともある。また、II型βターンでは2番目のアミノ酸残基の酸素原子が3番目のアミノ酸残基のCβと衝突するため、ほとんどの3番目のアミノ酸はグリシンである。

参考文献[編集]

  • 『ヴォート生化学 第3版』 DONALDO VOET・JUDITH G.VOET 田宮信雄他訳 東京化学同人 2005.2.28

関連項目[編集]