マーキュロクロム液

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メルブロミン
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識別情報
CAS登録番号 129-16-8 (二ナトリウム塩), 55728-51-3 (メルブロミン)
日化辞番号 J8.593F
EINECS 204-933-6
KEGG D00861
特性
化学式 C20H8Br2HgNa2O6
モル質量 750.65 g mol−1
外観 暗緑色固体
融点

> 300 °C[1]

への溶解度 1500 g L−1(20 °C) (二ナトリウム塩)[2]
危険性
主な危険性 毒性、環境への危険性
Rフレーズ R26 R27 R28 R33 R50 R53
Sフレーズ S13 S28 S36 S45 S60 S61
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
マーキュロクロム液

メルブロミン(merbromin)は、皮膚・キズの殺菌・消毒に用いられる局所殺菌剤である。メルブロミンは有機水銀二ナトリウム塩化合物であり、フルオレセイン骨格を有する。

メルブロミンの水溶液(メルブロミン液)は暗赤褐色の液体であり、商品名のマーキュロクロム液あるいは通称の赤チン(あかチン)として知られている。通称の赤チンは「赤いヨードチンキ」の意味で、同じ殺菌・消毒の目的で使われる希ヨードチンキが茶色なのにたいして本品の色が赤いことからつけられた。マーキュロクロム液は水溶液である。

アメリカ合衆国での商品名は、Mercurochrome、Merbromine、Sodium mercurescein、Asceptichrome、Supercrome、Brocasept、Cinfacrominなど。

用途[編集]

メルブロミンは局所殺菌剤としての用途が最も良く知られている。傷に処置した場合、皮膚は鮮やかな赤色に染まる。アメリカ合衆国では、メルブロミンの使用は他の殺菌剤(ポビドンヨード塩化ベンザルコニウムクロロキシレノールなど)によって置き換わっている。メルブロミンはその「異常な価格の安さ」のため、特に発展途上国では未だに重要な殺菌薬である[3]

また、メルブロミンは組織の境界を記すための生物学的染料としてや、金属破断を検出するための工業的浸透探傷検査での金属染料としても使用されている。

性質[編集]

メルブロミン (C20H8Br2HgNa2O6) は青緑色から帯緑赤褐色の小葉片または粒状の物質。水には溶けやすいが、不溶分が残る事もある。エタノールアセトンエーテルクロロホルムなどの有機溶媒にはほとんど溶けない。メルブロミン自体は劇薬であるが、その溶液は劇薬ではない。

2%メルブロミン液は100 mL中に2 gのメルブロミンを含むため、水銀を0.42–0.56 w/v%含む。メルブロミン液に含まれる水銀は有機水銀化合物であるが、皮膚浸透性が低く、濃度が薄い希釈液のために毒性は小さいので、外用剤として使う限りにおいては安全とされている。

遮光した気密容器に保存する。pHは約8。

歴史[編集]

メルブロミンの殺菌作用は1918年にジョンズ・ホプキンス病院のヒュー・ヤング医師によって発見された[4]。ヨードチンキなどより傷にしみないとされ、全世界の家庭の常備薬の一つとして長く使われていた。しかし、1998年10月19日にアメリカの食品医薬品局 (FDA) によって、マーキュロクロム液の分類が「一般に安全と認められる」から「未検証」に変更されたことによってアメリカ国内での流通が事実上停止した[5]。その後、ドイツでは2003年、フランスでは2006年に販売が停止された。

日本では、製造工程で水銀が発生するという理由から1973年頃に製造が中止されたが、常備薬として求める声は多く、海外で製造した原料を輸入することで現在も販売されている。


脚注[編集]

  1. ^ Sigma-Aldrich. “水銀ジブロモフルオレセイン 二ナトリウム塩”. 2013年10月22日閲覧。
  2. ^ ドイツ法的損害保険・労働安全研究機関 (IFA). “Merbromin”. 2013年10月22日閲覧。
  3. ^ Mohite, P. N.; Bhatnagar, A. M. (2009). “Mercurochrome 1% as an Antiseptic for Burns: Economical - but is it Efficacious and Safe?”. The Internet Journal of Surgery 21 (2). ISSN 1528-8242. http://www.ispub.com/journal/the-internet-journal-of-surgery/volume-21-number-2/mercurochrome-1-as-an-antiseptic-for-burns-economical-but-is-it-efficacious-and-safe.html. "Apart from these qualities, still the most important factor for which mercurochrome has remained the favorite of the physicians in the developing countries is its attractive price. The compound is being sold at unbelievably low cost ... the reasons being the low manufacturing cost, longer shelf life, use in diluted form and importantly less propaganda about its medical use." 
  4. ^ Wilner, I. (2006). The Man Time Forgot: A Tale of Genius, Betrayal, and the Creation of Time Magazine. Harper Collins. p. 230. ISBN 0-06-050549-4. 
  5. ^ Quantitative and Qualitative Analysis of Mercury Compounds in the List”. Federal Food, Drug, and Cosmetic Act (FD&C Act). アメリカ食品医薬品局 (2009年4月30日). 2013年10月21日閲覧。

関連項目[編集]