浸透探傷検査

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1. 材料表面に肉眼では見えない微小な亀裂が発生
2. 浸透液を塗布
3. 表面に残った不要な浸透液を除去
4. 現像液を塗布して亀裂箇所を明らかにする

浸透探傷検査(しんとうたんしょうけんさ、英語:penetrant inspection、略称:PI)は、材料非破壊検査法の一種。浸透探傷試験英語:penetrant testing、略称:PT)とも呼ばれる。材料表面に開口した傷(クラック[1])を探し出すことができる。吸水性の良いものやポーラス(多孔質)なもの以外のほぼ全ての材料に使用できるが、検出できるのは表面の開口している傷のみである。

浸透探傷検査は、以下に挙げる観察方法・余剰浸透液の除去方法・現像方法の組み合わせでひとつの検査方法となる:

  • 観察方法による分類(Type): 染色浸透探傷検査とType1蛍光浸透探傷検査
  • 余剰浸透液の除去方法による分類(Method): MethodC溶剤除去性浸透探傷検査・MethodA水洗性浸透探傷検査・MethodD後乳化性浸透探傷検査
  • 現像方法としては、速乾式現像法・湿式現像法・乾式現像法・無現像法

たとえば、「溶剤除去性・染色浸透探傷検査・速乾式現像法」などとなる。特に、浸透液の除去に溶剤を使用する染色浸透探傷検査はダイ・チェック (dye check) と呼ばれることもある。

染色浸透探傷検査[編集]

染色浸透探傷検査の大きな流れは次の通り:

  1. 前処理 - 表面の洗浄
  2. 浸透処理 - 浸透液の塗布、浸透
  3. 洗浄処理 - 浸透液の除去
  4. 現像処理
  5. 観察
  6. 後処理 - 現像液の除去

まず被検査材料の表面を清浄にし、乾燥させた後、検査用の浸透液(赤色など)を塗布してクラックに染みこませる。塗布にはスプレーのほか刷毛塗りなどの方法もある。浸透時間は浸透液の種類や被検査物の材質・温度などにより決める(一般的に5~10分程度でそれより長い場合もある)。適当な浸透時間経過後に、材料表面からいったん浸透液を除去する。既述したように、これには水洗と溶剤による方法とがある。このとき、クラック内にのみ浸透液が残るような、適度な洗浄が必要とされる(たとえば、洗浄液を直接スプレーするのではなく、ウエスに含ませて拭う、等)。表面が乾燥したら現像液(白色など)を塗布する。これにより、クラック内にしみこんでいた浸透液が材料表面ににじみ出し、指示模様を描く。所定の時間内に、目視により観察・判定を行ったら、材料表面の浸透液や現像液を除去して終了する。

蛍光浸透探傷検査[編集]

蛍光浸透探傷検査(en:Fluorescent penetrant inspection)は、浸透剤として蛍光液を使用し、検査には暗室でブラックライト(正式名称:紫外線照射灯)からの紫外線を当ててその蛍光を見るものである。一般的に染色性よりも高感度であるため、航空分野で主に使用されている方法である。

利点と制限[編集]

他の非破壊検査と同様、材料を破壊せずにクラックの検出を行うことができるため、出荷物の全品検査などに用いることができる。特に染色浸透探傷は、特別な設備を必要とせず現場で手軽に実施できるという大きな利点がある。また、磁粉探傷検査や電磁誘導による渦電流検査等の電気/磁気を用いる方法と違い、非金属材料にも一般に適用できる点が優れている。

一方で、いずれの浸透探傷検査法も、表面に露出したクラックしか検出できないという欠点をもつ。さらに、原理上、液体を吸いこむ性質を持つ多孔質の表面をもつ材料(ある種の金属材料や複合材料木材スポンジ発泡材料など)には適用できない。材料内部にクラックが存在すると思われる場合には、超音波探傷検査や放射線透過検査といった、別の非破壊検査方法を用いる必要がある。

規格[編集]

  • ASTM:ASTM E1417/E1417M
  • 日本: JIS Z2343

脚注[編集]

  1. ^ クラックは大きな応力のかかる場所などに生じる亀裂である。クラック端は半径の非常に小さいため応力が集中し、クラックは次第に進展して材料の強度低下や破壊を招く。

参考文献[編集]

  • 日本航空技術協会編 『航空機の基本技術 (Rev.2-2)』 日本航空技術協会、395 - 398頁、ISBN 4930858364

関連項目[編集]

外部リンク[編集]