ファンタジスタ
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ファンタジスタ(イタリア語:Fantasista)とは、主にイタリアなどで使われているサッカー用語の一つであり、サッカー選手にとっては最高の賛辞にあたるとされる言葉である。
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[編集] 概要
イタリアのサッカー界(カルチョ)では、よくサッカー界を代表する選手に対して特定のポジションに関係なく、イタリア語で「規格外(並外れて優秀な)」という意味のフオリクラッセ(Fuoriclasse)という賛辞にあたる言葉を用いる。しかし、その中でも、シュートやパス、ドリブル等において、極めて高度な「閃き」や「創造性」に溢れた、誰もが予想も出来ないような芸術的なプレーで観客を魅了するスーパースター級の選手に対しては、「讃える」という意味の“ファンタジー”(Fantasy)を捩ったファンタジスタ(Fantasista)と呼ぶ伝統がある(イタリア語におけるファンタジスタの原意は「多芸多才な人」)。
ただ、この「ファンタジスタ」という言葉は余程の選手でなければ使われない言葉であり、あまたのサッカー選手の中でもこの言葉で形容される選手はごく僅かに限られている。なお、イタリアでは主に攻撃的なポジションであるFWの選手に対してこの言葉が使われる傾向がある。また、日本国内においては1990年代に『セリエA』の試合中継が衛星放送を介してリアルタイム中継されるようになり、日本人選手が同リーグに在籍する様になった1998年の後半頃から急激にサッカー雑誌やサッカー番組などを中心にこの言葉が多用・乱用されるようになった。
なお、FWの「ファンタジスタ」に対して、1,5列目の選手などといったMFにはトレッカンテ(Treccante)と呼んでいる。これは、イタリアのあるサッカー番組でACミランの来季の移籍動向について語っているときに出来た言葉で、『ミランに3人のトレッカンテが必要か?』というテーマで、カカ、アレシャンドレ・パト、ロナウジーニョの起用法を議論していた時にイタリア国内のマスコミによって生まれた。また、それらの中間の位置づけでFWとMFに対して広く使われるのがトレクアリスタ(Trequarista)である[1]。
ところで、スペインやポルトガル語圏では「名手」という意味のクラッキ(Claque)という類義語を用いる事がある。ただ、こちらはDFなどの守備的なポジションの選手でも呼ばれる事があり、意味としてはフオリクラッセの様にファンタジスタよりも若干広い範囲で使われている。
[編集] 語源
元々はイタリア国内でアドリブの上手い役者や芸人を指す言葉として使われていたが、ロベルト・バッジョのプレーぶりを見たイタリア国内のマスコミが彼に対して「ファンタジスタ」と称したのが始まりだとされている[2]。この為、用語として使用されている歴史はかなり浅いが、現在ではこの用語が誕生する以前の選手に対しても書物などで頻繁に使用されている。
[編集] 変遷
1986年のW杯メキシコ大会において、当時のアルゼンチン代表監督のカルロス・ビラルドが、自身はあくまで「黒子」(悪役)に徹してディエゴ・マラドーナ一人の為のチーム作りをし、優勝した例がある。
ただ、特にイタリアでは1990年代後半から以前にも増してサッカー戦術の組織化が進み、プレッシングを多用するコンパクトなチーム戦術が重要視される様になったので、ファンタジスタにとっては以前よりもスペースが無くなり、相手からのプレッシングも厳しくなった。また、以前はファンタジスタが担っていた役割のほとんどは周囲のポジションの選手へと分担化が進み、ファンタジスタの存在自体が以前よりもそれほど重要視される事がなくなった。その為、ファンタジスタにとっては以前よりも攻撃で存在感を発揮する余地が失われ、それに加えて守備的貢献度の低くさもあってか、一時期は不要論さえも上がる程に冷遇される時代がしばらく続いた。
しかし、ジネディーヌ・ジダンやカカなどの様に従来のファンタジスタが持っていた要素に加えて、現代サッカーの厳しいプレッシングにも十分に耐えられる程の身体的屈強さを合わせ持つファンタジスタの登場や、コンパクトな戦術は守備陣がプレッシングを強めれば強める程に逆サイドとディフェンスラインの裏に大きなスペースを相手に与えてしまうという弱点、攻撃に関してはどんなに攻めてもゴールから20メートルから30メートル辺りからは個人の独創性に頼らなければならないという理由で、W杯ドイツ大会の前後からファンタジスタの存在価値が冷遇されていた一時期と比べるとかなり見直される様になった。
[編集] 役割
イタリア国籍を持つ選手における「ファンタジスタ」としては、古くはジャンニ・リベラが有名である。また、近年ではロベルト・バッジョやジャンフランコ・ゾラ、アレッサンドロ・デル・ピエロなどがいる。そもそも、イタリアのサッカーはカテナチオと呼ばれる守備戦術以来、ゴールを奪うことよりも守備を最重視する傾向があり、攻撃はカウンターアタックが主体であった。少人数で敵陣に切り込む際、数的不利な状況を閃きで一変させチャンスを創出するのがファンタジスタの仕事である。勝敗の結果や勤勉な守備能力が問われる中で、ファンタジスタには一定の自由が与えられ、プレーの創造性をチームへ還元する役割を担った。云わば『特例の存在』であり、攻撃の中心となる。また、チームの花形選手でもある。
[編集] 分類
ファンタジスタには様々なタイプの選手がいるが、主に以下の様な分類に分けられる[3]。なお、これは一つの目安である。
- コンダクター・タイプ
- 常にチームのハーモニーの発信源となり、渦の中心で全体の試合運びに影響を与え続けるタイプ。ドリブル、パスはもちろん、高い判断能力を備え、緩急を自在に変調し、一瞬の隙を突いて局面を変えてしまう。また、このタイプはボランチに位置して後方から良質のパスを駆使して試合を構築する事ができ、トップ下から直接フィニッシュに絡んでいく事も可能である。尚、このタイプは最も典型的なイメージのファンタジスタである。例えば、マヌエル・ルイ・コスタなどがこのタイプ。
- 半フォワード・タイプ
- イタリアなどでよく見られるタイプ。イタリアではしっかり守備を固めて効率よくゴールを奪う事を重視する為、2トップの一角に置かれる事が多い。主にワンタッチで前線の味方にパスを出したり、時には自分でフィニッシュを決める事もある。ただし、ポジションは試合やその時の状況に応じてFWとトップ下で併用される。例えば、ロベルト・バッジョなどがこのタイプ。
- 万能タイプ
- 得点力、戦術眼、スキルといった様々な能力をバランス良く兼ね備えているタイプ。融通が利く為にFWやMFといったポジションであればサイドや中央などに関係なく、どこでも難なくこなすマルチなタイプである。例えば、ヨハン・クライフなどがこのタイプ。
- 勤勉タイプ
- 豊富な運動量でチームの為に献身的なプレーを厭わないタイプ。自分が動き回る事で味方にチャンスやスペースを提供する。ただ、典型的に自己主張が強いファンタジスタの中でこの様なタイプの選手はかなり稀少な存在である。また、ファンタジスタのイメージから最もかけ離れているタイプでもある。例えば、ユルドゥライ・バシュテュルク、などがこのタイプ。
- 突破優先タイプ
- 極端にいえば、何があろうと自分がボールをキープし、自分が一番目立つ事を最優先するタイプ。観衆から見れば、スーパープレーを連発するので最も楽しませてくれるタイプではあるが、戦術重視の監督からすれば最も起用するのに厄介なタイプでもある。例えば、リバウドなどがこのタイプ。
- サイドアタッカー・タイプ
- スペインなどでよく見られるタイプ。サイドから直接ロングボールを蹴り込んだり、中央に切れ込みながら自分でフィニッシュやラストパスを狙っていく。ウィンガーや中盤のサイドの選手にこのタイプが多い。例えば、ガイスカ・メンディエタなどがこのタイプ。
- ストライカー・タイプ
- イングランドなどでよく見られるタイプ。90分間ひたむきにコミットするタフネスとスピードが求められるイングランドでは、自然にフィニッシュを決めるエースストライカーの選手にこのタイプが多い。ただ、イングランドでは前述にもあるように、人々を魅了する華麗なスーパープレーよりもどちらかといえばシンプルで確実なプレーが求められる点がイタリアやスペインとは正反対である。また、イタリアなどと違ってイングランドではそもそも「ファンタジスタ」という言葉はあまり使われない。例えば、マイケル・オーウェンなどがこのタイプ。
[編集] 背番号10との関係
ファンタジスタと背番号10(以下10番)の間には密接な関係があると言っても過言ではない。 古くはW杯スイス大会で活躍したフェレンツ・プスカシュは大会で10番を背負い、それから4年後のW杯スウェーデン大会では17歳ながらも大会のヒーローとなった「王様」のペレもやはり大会で10番を背負っていた。その他にもマラドーナやジーコがかつて背負っていた事は今更言うまでもない(ただし、9番を背負ったアルフレッド・ディ・ステファノや5番を背負ったフランツ・ベッケンバウアーの様な一部の例外も存在する)。つまり、歴代のファンタジスタによって10番のイメージが確立され、今日の様な「10番=ファンタジスタ」という代名詞になったのである[4]。
サッカーにおける背番号についての詳細はサッカーの背番号を参照
[編集] 関連項目
[編集] 参考書籍
- ワールドサッカーマガジン 『スターが選ぶ ベストプレーヤー2004』 2004年12月16日号 ベースボール・マガジン社
[編集] 脚注
- ^ 「中村俊輔は『ファンタジスタ』ではない?」 All About
- ^ 「ファンタジスタと、トレッカンテ」 ストライカーDX
- ^ Sportiva 「やっぱり『10番』がいなくちゃ!」 2003年3月号 集英社
- ^ 第12回「背番号10とファンタジスタ」 フットボールの壺 片野道郎 2006年10月26日 ウイニングイレブン サッカー情報

