パウダルコ

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パウダルコ
アルゼンチンにあるパウダルコ
保全状況評価[1]
LOWER RISK - Least Concern
(IUCN Red List Ver.2.3 (1994))
シノニム Tabebuia impetiginosa で掲載。
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : キク類 asterids
階級なし : シソ類 lamiids
: シソ目 Lamiales
: ノウゼンカズラ科 Bignoniaceae
: Handroanthus
: パウダルコ H. impetiginosa
学名
Handroanthus impetiginosus (Mart. ex DC.) Mattos[2]
シノニム
  • Handroanthus avellanedae (Lorentz ex Griseb.) Mattos[2]
  • Tabebuia avellanedae Lorentz ex Griseb.[2]
  • Tabebuia impetiginosa (Mart. ex DC.) Standl.[2]
  • ほか多数
和名
イペー[3][4]、イッペイ[5][6][7]、イッペー[7]、モモイロイペー[3]、モモイロイッペー[7]
英名
Ipê[4]、Pau d'arco[8]、Ipe-roxo[8]

パウダルコ学名Handroanthus impetiginosus、英名:Ipê[4]、Pau d'arco[8]、Ipe-roxo[8])は、中南米原産のノウゼンカズラ科樹木である。ブラジル国花[3][6]


特徴[編集]

メキシコからコスタリカブラジルアルゼンチンにかけて分布する[1][3][4][7][9]。高さ8mから、最大20mにもなる高木[3]。冬季に落葉する[3][9]

牧草地から熱帯雨林まで、様々な環境で見ることができる[1]

花季は冬季(落葉期)で、12〜14cm程度の花序の先に、長さ5cm程度の細い鐘上のを球上につける[3][4][9][6]。花色は紫だが、咲き始めは淡く、薄紫や桃色である[3][4][9]

果実は、長さ30〜35cmにもなり、下垂する[3]

利用[編集]

パウダルコの花序
花の拡大図

木材[編集]

国花にもなっているブラジルにおいては、彫刻や建設用の材として利用されており、個体数が減少している[1][3]

日本においても、本種を含む Tabebuia 属の植物[注 1] の木材を「イペ」と名称して利用している[10][11]。耐腐食性が高く、建築用材フローリング船舶甲板材などを主な用途とする[10][11]。その詳細については、イペを参照のこと。

植栽[編集]

日本では、沖縄県において、街路樹などとして植栽されている[4]。沖縄での開花期は2〜4月[4][3][7]。日当たりの良く、風当たりの弱い場所を好み、実生・挿木・取木なので殖やす[3][4]。沖縄で植栽が行われたのは、南米移民が沖縄に戻る際に、本種を持ち込んだのが起源と考えられている[7]

薬用[編集]

パウダルコの樹皮を乾燥させたラパチョ (: Lapacho)

利用部位は樹皮の内側の層で[12]、パウダルコはラパチョの原料として、昔からマラリア、貧血、大腸炎、呼吸器障害、風邪、咳、真菌感染症、熱、喘息、リウマチ等に利用されていた。南米ではパウダルコを強壮、抗炎症、抗細菌、抗真菌(カンジタ症など)、緩下、梅毒、消化器機能不全、ガン、糖尿病、前立腺炎、便秘やアレルギーに効果があるとして、民間療法に使用されてきた。

米国や欧州では、ハーブ治療としてパウダルコは鎮痛薬、抗酸化、緩下、駆虫薬、抗細菌、抗真菌、抗ウイルス、抗炎症として用いられている。またその緩下作用は消化管に吸着している毒性物質を一緒に排除すると考えられている。また発熱(風邪、インフルエンザ)、梅毒、ガン、呼吸器障害、腫脹、皮膚潰瘍形成、赤痢、消化器系不全、関節炎、前立腺炎、循環器系障害等には、内服、外用の両方で用いられている。[要出典]

ほかの分野では、ループス腎炎、糖尿病、消化性潰瘍、白血病、アレルギー、肝疾患等に使用したことが報告されている。すでに真菌症(カンジタを含む)の治療に用いられていることはよく知られている。[要出典]

ただし、アメリカ癌協会は、パウダルコから作られたラパチョについて、癌を抑制する効果がないばかりか、重大な副作用を懸念するとして、使用しないように報告している[13]。日本の国立栄養研究所は、人での有効性について信頼できるデータが無く、過剰摂取では激しい吐き気、嘔吐、めまい、下痢、貧血、出血傾向、場合によっては重篤な悪影響を引き起こすとしている[8]。また妊娠中・授乳中の経口使用も危険性が高いとしている[8]

日本ではタヒボの名で健康飲料として焙煎用の乾燥品が販売されている。

トリビア[編集]

かつて1991年にJR東海が「タヒボベビーダ」の名で缶飲料として新幹線の駅構内で販売したが、短期間で市場から姿を消した[14][出典無効][15][16]

画像[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 本種や Tabebuia serratifolia 等の一部の Tabebuia 属の植物は Handroanthus 属に移されている。

出典[編集]

  1. ^ a b c d World Conservation Monitoring Centre 1998. Tabebuia impetiginosa. The IUCN Red List of Threatened Species. Version 2014.3.
  2. ^ a b c d http://www.theplantlist.org/tpl1.1/record/kew-317146 Handroanthus impetiginosus」『The Plant List』(2019年5月22日閲覧)
  3. ^ a b c d e f g h i j k l 坂崎信之著『トロピカル・ガーデニング・マニュアル 日本で育つ熱帯花木植栽事典』アボック社、1998年5月10日、987-988頁、ISBN 4-900358-44-4
  4. ^ a b c d e f g h i 建設省土木研究所環境部緑化生態研究室監修・財団法人海洋博覧会記念公園管理財団編集『沖縄の都市緑化植物図鑑』沖縄出版、1997年4月1日、45頁、ISBN 4-900668-63-X
  5. ^ 初島住彦・天野鉄夫 『増補訂正 琉球植物目録』 沖縄生物学会、1994年11月1日、201頁、ISBN 4-900804-02-9
  6. ^ a b c 多和田真淳監修・池原直樹著 『沖縄植物野外活用図鑑 第2巻 栽培植物』 新星図書出版、1979年12月1日、102頁
  7. ^ a b c d e f 沖縄県環境部自然保護・緑化推進課「イッペイ」『おきなわ緑と花のひろば』(平成25年5月7日閲覧)
  8. ^ a b c d e f 独立行政法人国立健康・栄養研究所「健康食品」の素材情報データベース
  9. ^ a b c d アルウィン・ジェントリー「キリモドキ」『週刊朝日百科 植物の世界17 ハマウツボ ノウゼンカズラ ゴマ』岩槻邦男ら監修、朝日新聞社、1994年8月7日、2-143頁。
  10. ^ a b イペ」『木材博物館
  11. ^ a b 府中家具工業協同組合「イペ」『世界の銘木 木材図鑑
  12. ^ Tabebuia avellanedae - サンパウロ大学のウェブサイトより
  13. ^ Pau d'arco”. American Cancer Society (2013年1月). 2013年9月閲覧。
  14. ^ https://web.archive.org/web/20161103085156/http://homepage3.nifty.com/yuyat/nagoya/tahibo.htm
  15. ^ 電波新聞社の「マイコンBASICマガジン」1992年頃の欄外投稿に「タヒボを崇めよ、タヒボこそ我らの始祖。(中略)タヒボ・ベビーダ。」という文章が掲載され、編集部のコメントとして「ちなみにタヒボとはジュースの名前です」と但し書きがついていた。
  16. ^ 横浜市営交通のLED字幕広告サービスが開始された1991年当初、23系統十日市場駅(JR横浜線)停留所の広告として「南米のお茶タヒボ」が停留所案内と共に字幕で宣伝されていた。

参考文献[編集]

名称、特徴、木材、植栽[編集]

薬用[編集]