ゴリアテ (兵器)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ゴリアテ(Goliath)は、第二次世界大戦でドイツ軍の使用した、遠隔操作される軽爆薬運搬車輌のドイツ軍内での通称。大きく分けて電気モータータイプ (Sd.Kfz.302) とガソリンエンジンタイプ (Sd.Kfz.303) の2種類が存在した。
最高で100kgの高性能爆薬を内蔵し、有線で遠隔操作され無限軌道で走行し、目標に到達したらやはり遠隔操作によって自爆する。英語ではTracked mineすなわち移動地雷とも呼ばれていた。 主な使用目的は、地雷原の啓開もしくは敵固定陣地の破壊である。
目次 |
[編集] 歴史
ゴリアテは、その原型が1939年にフランスの乗り物デザイナーであるアドルフ・ケグレスによって設計され、試作されていたが、ドイツ軍の侵攻により川に沈められ隠匿された。しかしフランス占領後にこれを引き揚げ調査したドイツの兵器局は、その設計図を基にして最低50kgの火薬を搭載出来る兵器の開発を、ドイツのブレーメンにある自動車会社のボルクヴァルト社(Borgward)に命令した。こうして完成したのがSd.Kfz. 302 Sonderkraftfahrzeugである。基本的にケグレスのものと同じ機能であったが、履帯はゴム製から金属板製に変更されていた。
Sd.Kfz.とはドイツ軍が戦車などの特殊車輌につけていた特殊車輌番号と呼ばれるもので、Sd.Kfz.302はドイツ軍内で非公式に「ゴリアテ」の通称で呼ばれた。
SdKfz.302は最大60kgの爆薬を搭載し、内蔵した12Vバッテリー2個でボッシュ社製モーターを駆動、本体後部のドラムから繰り出される、三本の電線を結わえたリモートケーブルに接続された、ジョイスティック型のコントローラーによって遠隔操作される。 しかしこのSd.Kfz.302は1台300ライヒスマルクと高価であり、戦場で故障した場合モーター駆動であったためにその場で修理するのが困難だったため、その後代わりにバイクメーカーであるツュンダップ社[1]により、ガソリンエンジンによって駆動するSd.Kfz.303aが開発された。これは搭載出来る爆薬の量が最大で75kgに増加し、また同時に走行性能も向上している。さらに1944年にはSd.Kfz.303aの改良型としてSd.Kfz.303bが開発され、これは爆薬が最大100kgまで搭載出来るよう拡張された。
ゴリアテはこのように大きく分けて3タイプに分類されるが、電気モーターのゴリアテSd.Kfz.302をゴリアテE、エンジンのゴリアテSd.Kfz.303aとbをゴリアテVと呼ぶこともある。
これらのゴリアテは、1942年から主に突撃工兵部隊によって使用された。1944年のワルシャワ蜂起にも使用されたが、ポーランド国内軍兵士の銃撃などによって破壊されたりケーブルが切断されたりして、行動不能になるものも多かった。またこれ以前にノルマンディー上陸作戦のユタ・ビーチでの使用も記録されている。この時も砲爆撃の振動が原因で誘導装置がダメージを受けており、途中で故障し擱座したが、戦闘中に米兵が面白半分に手榴弾を放り込んで誘爆、数十名の死傷者を出す「大戦果」を挙げたという。
後にケッテンクラートの部品を用いたシュプリンガー(正式名称:Mittlerer Ladungsträger Springer, Sd.Kfz. 304)やボルクヴァルトIVなど同様の任務を行うゴリアテの拡大版とも呼べる兵器が開発されている。
[編集] 性能
| Goliath E Sd.Kfz. 302 |
Goliath V | ||
|---|---|---|---|
| Sd.Kfz. 303a | Sd.Kfz. 303b | ||
| 生産 | ボルクヴァルト | ボルクヴァルト・ツュンダップ・ツァッヒャーツ | |
| 運用期間 | 1942年4月 - 1944年1月 | 1943年1月 - 1944年9月 | 1944年11月 - 終戦 |
| 生産台数 | 2.650 | 4.604 | 325 |
| 価格(ライヒスマルク) | ~ 3.000 | ~ 1.000 | |
| 重量 | 370 kg | 365 kg | 430 kg |
| 最大積載量 | 60 kg | 75 kg | 100 kg |
| 全長 / 全幅 / 全高 | 1,50 m / 0,85 m / 0,56 m | 1,62 m / 0,84 m / 0,60 m | 1,63 m / 0,91 m / 0,62 m |
| 原動機 | 2.5kW 直流モーター | 2気筒 703cc 4500rpm 9.3kW(12.5馬力)ガソリンエンジン |
|
| 最高速度 | 10 km/h | 11,5 km/h | |
| 燃料タンク容量 | - | 6 L | |
| 最長走行距離 | 0,8 - 1,5 km | 6 - 12 km[2] | |
| 越えられる高低差 | 11,4 cm | 16 cm | 16,8 cm |
| 越えられる溝の長さ | 60 cm | 85 cm | 100 cm |
| 装甲(前部) | 5 mm 鉄板 | 10 mm 鉄板 | |
[編集] 評価
ゴリアテは各型合計7,564台も生産されているが、兵器として成功作であるとは認識されていない。
その理由としては
- 使い捨ての兵器としては高い単価(300ライヒスマルク)
- 時速9.5kmと言う低速な移動速度と、越えられる段差が11.4cmまでと言う低い走行性能
- ケーブルを切断されるとコントロールできなくなる
- 機関銃などで容易に撃破可能な弱い装甲
- 振動や衝撃に弱く、保守点検が大変なコントロール装置
が主な理由に挙げられる。
これらに対しSd.Kfz.303a、Sd.Kfz.303bでは改良が加えられていったが(上記性能表参照)、それでも十分とは言えなかった。
全ての型の共通の弱点として、ケーブルを切断されると停止してしまうと言うのは致命的であり、前述したようにワルシャワ蜂起で用いられたゴリアテも、これによって多くが目的を果たせなかった。映画『地下水道』では、スコップによりケーブルを叩き切られ、停止してしまう様子が描かれてる。なお無線誘導型も試作されていたらしく、クビンカ軍事博物館に展示されているが、詳しい資料は確認されていない。
しかし、遠距離から操縦できるという安全性などから前線での評判は悪くなかったとされ、ワルシャワ蜂起の際にはポーランド国内軍兵士たちから恐れられていた。

