アンダーソン–ダーリング検定

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アンダーソン–ダーリング検定(アンダーソン–ダーリングけんてい、: Anderson–Darling test)は統計学における仮説検定の一種である [1]。有限個の標本帰無仮説で提示された分布と異なっているかどうかを調べるために用いられる。同様の検定としてコルモゴロフ–スミルノフ検定(KS検定)があるが、アンダーソン–ダーリング検定では、分布の裾での一致性(テール分布の一致性)がより強く反映されるため、金融分野などのテールリスクが重要なモデルの検定に使われる。他方、KS検定と異なり、帰無仮説の分布によって統計量の基準値が変わることに注意が必要。

検定統計量[編集]

を標本データ(ただし昇順にソート済み)とし、帰無仮説の与える分布をとする。このとき検定統計量 は、

ただし

で与えられる。

正規性検定[編集]

まず帰無仮説で与える分布(ここでは正規分布を仮定している)を求める必要がある。この際、(1)平均・分散とも既知、(2)分散は既知、平均は未知、(3)平均は既知、分散は未知、(4)平均・分散とも未知、の4ケースが考えられるが、それぞれのケースによって検定量の棄却域が変わることに注意。

次に検定量を上述の式に従って求める。平均・分散とも未知のケース(上記ケース(4))の場合、修正統計量としてを用いることがある。

次に検定量(または)を基準値CVと比較する。基準値CVは(n>5のとき)次の数表で与えられる [2]

基準値CVの値
有意水準 ケース(1) ケース(2)* ケース(3) ケース(4)
15% 1.610 ? ? 0.576
10% 1.933 0.908 1.760 0.656
5% 2.492 1.105 2.323 0.787
2.5% 3.070 1.304 2.904 0.918
1% 3.857 1.573 3.690 1.092

(*) ケース(2)の数値は分布が非対称な場合。

ケース(4)でn>8の場合については、修正前のA2に対するCVとして、以下に示す近似公式が与えられている [3]

の値
有意水準 10% 5% 1%
0.631 0.752 1.035

またはのとき帰無仮説は棄却される。すなわち、標本分布は正規分布F(x)とは異なる可能性が示唆される。

正規分布以外の検定については、ことなる基準値が適用されることに注意。

参考文献[編集]

  1. ^ Anderson, T. W.; Darling, D. A. (1952). “Asymptotic theory of certain "goodness-of-fit" criteria based on stochastic processes”. Annals of Mathematical Statistics 23: 193–212. doi:10.1214/aoms/1177729437. 
  2. ^ Stephens, M. A. (1974). “EDF Statistics for Goodness of Fit and Some Comparisons”. Journal of the American Statistical Association 69: 730–737. doi:10.2307/2286009. 
  3. ^ Ralph B. D'Agostino (1986). “Tests for the Normal Distribution”. In D'Agostino, R.B. and Stephens, M.A.. Goodness-of-Fit Techniques. New York: Marcel Dekker. ISBN 0-8247-7487-6 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]