えちご (巡視船)

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えちご
基本情報
船種 巡視船 (ヘリコプター1機搭載型)
クラス JG/NK
船籍 日本の旗 日本
所有者 国土交通省
運用者  海上保安庁
建造所 三井造船玉野造船所
母港 新潟
船舶番号 131947
信号符字 JNII
IMO番号 8800731
経歴
発注 昭和62年補正予算
起工 1988年3月29日
進水 1989年7月4日
竣工 1990年2月28日
要目
総トン数 3,133トン[1]
全長 105.0メートル
15.0メートル
推進器 CPP×2軸
詳細な要目表はつがる型巡視船を参照
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えちご」(Echigo)は、海上保安庁ヘリコプター1機搭載型巡視船つがる型巡視船の7番船にあたり、PLH-08の記号・番号を付されている。本記事は、本船の船暦について主に取り扱っているため、性能や装備等の概要についてはつがる型巡視船を参照されたい。

船歴[編集]

1990年2月28日に竣工し、新潟海上保安部第九管区)に配属された。船名は越後国に由来する。

2023年1月18日6時25分ごろ、新潟県柏崎市椎谷鼻の北西約1.1kmの海上にて座礁。船体を損傷し油の流出が発生したが、転覆や沈没の恐れはないと判断された。また、乗組員33名に怪我はなかった。新潟海上保安部は、「えちご」が椎谷鼻灯台の灯光が消えていたことを確認し、状況を確認するため沿岸に近づいたところ座礁したと発表。当時は雨天で風速約11m視程10kmと、やや荒天であった。新潟海上保安部は、巡視船艇3隻を現場に向かわせると共に、機動救難士をヘリコプターより降下させ、船底の状況などを確認した[2][3][4]

同19日6時過ぎからサルベージ会社の技師8名が乗船し、船内の状況を確認。11時ごろには潜水調査を行い船外も確認した。なお、浸水したのは測深儀が装備されている区画で、さらなる浸水の恐れはないと発表された[5]

スクリュープロペラの破損により自力航行不能であり、中央部船底に損傷を認めたが、浸水区画のハッチを閉めることで浸水拡大を防いでいるうえ、船底と海底の接触状況がそれほど深刻でないことなどから離礁作業は可能と判断されたため、21時ごろに日本サルヴェージの海難救助船「航洋丸」が現場に到着し離礁作業を開始、同20日1時45分までに作業を完了し曳航を開始、15時25分頃に新潟西港中央埠頭に入港した。第九管区海上保安本部は本事故を回の事故を業務上過失往来危険容疑で捜査しており、着岸後、同保安本部の捜査官が船内に入り、乗員から事故当時の状況などについて聴取を始めた。同保安本部によれば、潜水調査では浸水の原因となった箇所を発見できなかったほか、現場の水深は約5mで、ごつごつとした岩場で起伏に富んでいるが、岩が船体に突き刺さるような深刻な状況ではなかったという。また新潟海上保安本部は、一連の離礁・曳航作業に6600万円の費用を要したと発表した[6][7]

今後は、応急処置をしたうえで修理業者による詳細な船体調査を実施、県外の造船所に運び、本格的な修理を行うとされた。同保安本部は「1カ月以内には造船所と修理の契約を結べるのではないか」との見通しを示した[8]

2023年2月3日、破損部の調査を行うジャパン マリンユナイテッド舞鶴事業所へ回航のため、曳航されて新潟西港を出港[9]

2023年3月17日、第九管区海上保安本部は「えちご」航海長を業務上過失往来危険の疑いで新潟地方検察庁に書類送検した。同海上保安本部の捜査による送検理由は、「航海長は、灯台が消灯していることを本部に連絡するため操船指揮を離れる際、責任者として他の乗組員に適切な指示を怠り、残った乗組員がレーダーや海図などで船の位置や水深を確認するのを怠ったため、船を座礁させた疑い」[10][11]。6月12日、新潟区検察庁は業務上過失往来危険の罪で前航海長を略式起訴した[12]。同月20日付で新潟簡易裁判所は罰金30万円の略式命令を出した[13]

2023年10月8日、深田サルベージ建設による曳航により舞鶴を出航。同月12日室蘭へ到着し、函館どつく室蘭製作所で本格的な修理が実施されることとなっている[14][15]

海賊対策派遣[編集]

2000年頃から、海上保安庁では、海賊対策のため巡視船を派遣しており、ここ数年は、「えちご」および同型船「つがる」が派遣されている。

2021年1月8日から約1か月間の予定で、フィリピン周辺海域向け派遣中のところ、「えちご」に乗船する職員2名が新型コロナウイルスに感染していることが確認され、派遣を中止した[16]

搭載機の変遷[編集]

機種 機番 愛称 配属期間 備考
ベル 212 MH930 日本海 1990年2月28日-2015年7月7日
シコルスキー S-76D MH916 みさご 2015年6月30日-

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ 海人社 2001.
  2. ^ “海保巡視船が座礁、浸水 新潟県柏崎市沖の日本海”. 産経新聞. (2023年1月18日). https://www.sankei.com/article/20230118-JABPHTLLJJM4DB7NAZSV75HSFM/ 2023年1月21日閲覧。 
  3. ^ “【フォト】巡視船が座礁し浸水 新潟・柏崎沖、油流出”. 産経新聞. (2023年1月18日). https://www.sankei.com/article/20230118-J77QFWFNEFKFDOZ3XAD7IEI2TY/ 2023年1月21日閲覧。 
  4. ^ “巡視船の座礁、灯台消灯を確認しようとして浅瀬に…”. 産経新聞. (2023年1月18日). https://www.sankei.com/article/20230118-TYLL5KMEMVKLHCKT46TKTFAGZI/ 2023年1月21日閲覧。 
  5. ^ “えい航に向け潜水調査 新潟海保の巡視船座礁”. 産経新聞. (2023年1月19日). https://www.sankei.com/article/20230119-6ZK5OKULMRLRXGJ4AVPYKBFG4Q/ 2023年1月21日閲覧。 
  6. ^ “離礁を終えて曳航開始 新潟海保の巡視船座礁”. 産経新聞. (2023年1月20日). https://www.sankei.com/article/20230120-2J7BOGTT3ZNXFIPMXDANUX2BFU/ 2023年1月21日閲覧。 
  7. ^ “離礁・曳航に6600万円 新潟海保の巡視船座礁”. 産経新聞. (2023年1月20日). https://www.sankei.com/article/20230120-TLA3UOUT5NPF7CHNMXIQHIPWLU/ 2023年1月21日閲覧。 
  8. ^ “新潟西港に着岸 新潟海保の巡視船座礁”. 産経新聞. (2023年1月20日). https://www.sankei.com/article/20230120-VYRMFRCH65OSZNIZ5QAZOHPP54/ 2023年1月21日閲覧。 
  9. ^ “座礁の巡視船「えちご」、京都舞鶴にえい航へ 荒天のため2月3日以降に延期”. 新潟日報デジタル. (2023年1月30日). https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/169653 2023年4月6日閲覧。 
  10. ^ “巡視船「えちご」航海長を書類送検へ、業務上過失往来危険の疑い・新潟柏崎市沖座礁”. 新潟日報デジタル. (2023年3月12日). https://www.niigata-nippo.co.jp/articles/-/187659 2023年4月6日閲覧。 
  11. ^ “巡視船座礁 航海長を業務上過失往来危険容疑で書類送検”. NHK 新潟NEWSWEB. (2023年3月17日). https://web.archive.org/web/20230321150533/https://www3.nhk.or.jp/lnews/niigata/20230317/1030024582.html 2023年4月6日閲覧。 
  12. ^ “巡視船座礁事故で略式起訴 前航海長を新潟区検”. 産経新聞. (2023年6月12日). https://www.sankei.com/article/20230612-GWYYDDKFEBIMTJIKT6TBMCITLM/ 2023年6月12日閲覧。 
  13. ^ “前航海長に30万円略式命令 巡視船座礁事故で新潟簡裁”. 産経新聞. (2023年6月29日). https://www.sankei.com/article/20230629-J5SBYRMTBVK6JHAXJRHI2LWKHA/ 2023年6月30日閲覧。 
  14. ^ 入札公告 巡視船曳航作業”. 第九管区海上保安本部. 2023年9月10日閲覧。
  15. ^ 第一中間軸1個買入 仕様書”. 第九管区海上保安本部. 2023年9月10日閲覧。
  16. ^ 海保庁、巡視船の比派遣 中止。船内コロナ感染者確認で」『日本海事新聞』、2021年1月21日。

参考文献[編集]

  • 海人社(編)「海上保安庁 PLHの全貌」『世界の艦船』第590号、海人社、2001年12月、53-59頁、NAID 40002156202 

関連項目[編集]