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{{生物分類表
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'''オキサライア'''([[学名]]:'''''Oxalaia'''''、「オクサラのもの」の意)は、[[ブラジル]]の[[後期白亜紀|上部白亜系]]で[[化石]]が産出した、[[スピノサウルス科]]に属する[[獣脚類]]の[[恐竜]]の[[属 (分類学)|属]]<ref name=松田2017>{{Cite book|和書|title=語源が分かる 恐竜学名辞典 |pages=338-339 |publisher=[[北隆館]] |author=松田眞由美 |others=[[小林快次]]、藤原慎一(監修) |date=2017-01-20 |isbn=978-4-8326-0734-7}}</ref>。タイプ種'''''Oxalaia quilombensis'''''が知られており、属名はアフリカの神であるオクサラに由来し、種小名はアフリカ出身の奴隷の子孫が居住するQuilomboで標本が発見されたことにちなむ<ref name=松田2017/>。全長は約12 - 14メートル<ref name=松田2017/>。
'''オキサライア'''(オシャライア<ref>[[小林快次]]『恐竜2最新研究』[[講談社]]〈[[講談社文庫]]〉、2023年6月25日、夏</ref>とも、[[学名]]: {{snamei|Oxalaia quilombensis}}、アフリカの天空神 "Oxalá"<ref>[[小林快次]]『恐竜2最新研究』[[講談社]]〈[[講談社文庫]]〉、2023年6月25日、夏</ref> 名前の後半部分は、ブラジルにあるの村の名前に由来する)は、[[後期白亜紀]][[チューロニアン]]期から[[セノマニアン]]期(1億50万年前から9390万年前)の間に生息していた[[スピノサウルス亜科]]の恐竜の[[属]]<ref>[[小林快次]]『恐竜2最新研究』[[講談社]]〈[[講談社文庫]]〉、2023年6月25日、夏</ref>。1999年に発見された頭蓋骨の2つの骨からのみ判明している。2011年にブラジルの古生物学者のグループであるアレクサンダー・ケルナー、エレイン・マチャド、セルジオ・アゼベド、デイズ・ヘンリケス、ルチアナ・カルバリョが命名した。[[化石]]は[[ブラジル]]の北東部にある[[島]]から産出している。島のこの部分は、[[満潮時]]には[[海]]に覆われてしまう。[[浸食]]を引き起こす波の作用で、化石はほとんど失われてしまった。またこの2つの骨は、2011年にブラジル国立博物館に展示されていたがこの博物館は2018年の大火事で焼失しており、オキサライアの化石も破壊されている可能性がある。
[[File:Spinosauridae Size Diagram by PaleoGeek - Version 2.svg|thumb|left|他の[[スピノサウルス科]]との大きさの比較]]
同じ場所で他にも数百の歯の化石が発見されている。推定全長は約12〜14メートル、推定体重は約5~7トンだか、[[頭蓋骨]]の一部しか発見されていない為[[化石]]が不完全であり、この推定値は確かなものではない。これは、[[ブラジル]]の肉食恐竜としては最大のものです。鼻の先端は[[前顎]]と呼ばれ、長さは201mmだった。オキサライアの頭蓋骨の長さはおそらく1.35メートル。これは、[[スピノサウルス]]の頭蓋骨の長さが1.75メートルだったことと比較すると短い。オキサライアの鼻には、左右に7つの歯のソケットがあった。各ソケットには1本の歯があり、その下には2本の歯があり、歯が抜けた場合にはそれを補うようになっていた。この特徴はサメにはよく見られるが、ほとんどの獣脚類の恐竜には見られない。また、オキサライアの歯は、他の獣脚類のようにやや横長ではなく、断面が楕円形だった。オキサライアの上あごの前部はスプーンのような形をしており、前端が後端よりも大きい。鼻先の下部は内側に曲がっている。この形は、下顎(マンディブル)と結合していたと思われるが、これもスプーン状であった。オキサライアの口の中には、第二口蓋と呼ばれる非常に複雑な骨の表面があった。この構造により、上あごがより頑丈になり、摂食時の曲がりが少なくなった。鼻の化石には、広くて深い穴が残っている。この穴には[[血管]]や[[神経]]が通っていたのだろう。オキサライアと[[スピノサウルス]]の違いは、顎の骨の違いである。例えばオキサライアは[[スピノサウルス]]よりも鼻が丸く、歯の間隔が狭かった。また、1つのソケットに2本の差し歯があることや、第二口蓋が滑らかでないことも、他の[[スピノサウルス]]の中ではユニークである。
オキサライアは、これまでに[[ブラジル]]から命名された3つ目の[[スピノサウルス科]]です。他の2つは[[イリタトル]]と[[アンガトラマ]]([[イリタトル]]と同じ種かもしれない)です。この2つの種は[[ブラジル]]の別の地域で知られており、オキサライアより900万年から600万年前に生息していました。


== 発見と命名 ==
[[File:Spinosaur Taxonomy Map.png|thumb|left|'''オキサライア'''、[[イリタトル]]、[[アンガトラマ]]の発見場所。]][[File:Oxalaia Size Chart.svg|thumb|left|'''オキサライア'''が泳いでいるときの大きさの推定。]]
[[File:Spinosaur_Taxonomy_Map.png|thumb|left|[[南アメリカ大陸]]で発見されたスピノサウルス亜科の恐竜とその発見地を示す図。オキサライアとアンガトラマおよび[[イリタトル]]が図示されている。]]
オキサライアはブラジル北東部に位置する São Luís-Grajaú Basin に分布するItapecuru層群のAlcântara層で発見された。地層の年代は[[後期白亜紀]]の[[セノマニアン]]である<ref name="medeiros2014" />。Itapecuru層の北部の露頭である Laje do Coringa locality は主に[[砂岩]]と[[泥岩]]からなり、[[植物]]化石と[[脊椎動物]]化石の断片を含む[[礫岩]]層を伴う<ref>{{Cite journal|last1=Elias |first1=Felipe |last2=Bertini |first2=Reinaldo |last3=Alfredo Araújo Medeiros |first3=Manuel |date=December 2007 |title=Pterosaur teeth from the Laje do Coringa, middle Cretaceous, São Luís-Grajaú basin, Maranhão state, Northern-Northeastern Brazil |url=https://www.researchgate.net/publication/286657403 |journal=Revista Brasileira de Geociências |volume=37 |issue=4 |pages=668–676 |doi=10.25249/0375-7536.20073744760668676 |doi-access=free}}</ref>。これらの堆積層は[[スピノサウルス]]の化石が発見された[[エジプト]]の{{仮リンク|バハリヤ層|en|Bahariya Formation}}と類似した海洋・河川環境で堆積した<ref name="medeiros2014" /><ref>{{Cite journal|last1=Catuneanu |first1=O |last2=Khalifa |first2=M.A |last3=Wanas |first3=H.A |date=August 2006 |title=Sequence stratigraphy of the Lower Cenomanian Bahariya Formation, Bahariya Oasis, Western Desert, Egypt |journal=Sedimentary Geology |language=en |volume=190 |issue=1–4 |pages=121–137 |doi=10.1016/j.sedgeo.2006.05.010 |issn=0037-0738 |bibcode=2006SedG..190..121C}}</ref>。オキサライアの化石は1999年にLaje do Coringaで発見された<ref name=DescOxalaia />。[[ブラジル国立博物館]]の古生物学者 Elaine Machado は化石の保存の良さに衝撃を受けた<ref name="ultimo_segundo">{{Cite news|url=http://ultimosegundo.ig.com.br/ciencia/museu-nacional-anuncia-descoberta-de-maior-dinossauro-brasileiro/n1238173011806.html|title=Museu Nacional anuncia descoberta de maior dinossauro brasileiro – Ciência – iG|last=Janeiro|first=Priscila Bessa, iG Rio de|date=March 2011|work=Último Segundo|accessdate=2018-06-12|language=pt-BR}}</ref>。この産地の堆積物は潮による顕著な浸食を受ける。波の作用で地層から除去された化石は発見されず、保存された化石も断片化する傾向にあるため、このように保存の良い化石が発見されることはレアケースであった<ref name=DescOxalaia />。一般に、Alcântara層で発見される化石の大部分は[[歯]]や単離した骨格要素からなり、Laje do Coringaにはそうした化石が夥しく埋没していた<ref name=medeiros2014 /><ref name=DescOxalaia /><ref name="medeiros2007">{{Cite book|url=https://www.researchgate.net/publication/257881549 |title=Paleontologia: Cenários De Vida |last1=Medeiros |first1=Manuel |last2=Carvalho Freire |first2=Pedro |last3=Pereira |first3=Agostinha |last4=Anderson Barros Santos |first4=Ronny |last5=Lindoso |first5=Rafael |last6=Flávia Amaral Coêlho |first6=Ana |last7=Brandão Passos |first7=Emanuel |last8=Sousa Melo Júnior |first8=Emilio |date=2007 |isbn=9788571931848 |volume=1 |pages=413–423}}</ref>。
[[File:Oxalaia quilombensis.PNG|thumb|right|既知の骨を示したオキサライア頭部のシルエット]]
オキサライアはブラジルで発見されたスピノサウルス科の恐竜の1つであり、他の例には[[イリタトル]]とアンガトラマが居る。後者2属はいずれも部分的な頭蓋骨が発見されており、{{仮リンク|アラリペ盆地|en|Araripe Basin}}に分布する{{仮リンク|サンタナ層群|en|Santana Group}}の{{仮リンク|ロムアルド層|en|Romualdo Formation}}から回収されている。[[微化石]]の年代から地層の堆積年代は[[アルビアン]]期と推定されており、これはオキサライアよりも600万年から900万年古いものとなる<ref name="DescOxalaia" /><ref name="Martill96">{{Cite journal|last1=Martill|first1=D. M. |last2=Cruickshank |first2=A. R. I. |last3=Frey |first3=E. |last4=Small |first4=P. G. |last5=Clarke |first5=M. |year=1996 |title=A new crested maniraptoran dinosaur from the Santana Formation (Lower Cretaceous) of Brazil|journal=Journal of the Geological Society |volume=153 |issue=1 |pages=5–8 |doi=10.1144/gsjgs.153.1.0005 |bibcode=1996JGSoc.153....5M |s2cid=131339386 |url=http://doc.rero.ch/record/14940/files/PAL_E2087.pdf }}</ref><ref name="angaturama1996">{{cite journal|last1=Kellner|first1=A. W. A. |last2=Campos |first2=D. A. |year=1996 |title= First Early Cretaceous theropod dinosaur from Brazil with comments on Spinosauridae |journal= Neues Jahrbuch für Geologie und Paläontologie - Abhandlungen |volume=199 |issue=2 |pages=151–166 |doi=10.1127/njgpa/199/1996/151}}</ref>。スピノサウルス科の化石記録は他の獣脚類のグループと比較して乏しい。既知の体の化石は非常に少なく、大部分の属は[[椎骨]]や歯といった単離した要素に基づいて設立されているのである<ref name="hone2017" /><ref>{{Cite journal|last=Bertin|first=Tor|date=2010|title=A catalogue of material and review of the Spinosauridae |url=https://www.researchgate.net/publication/235679976 |journal=PalArch's Journal of Vertebrate Palaeontology |volume=7 |issue=4 |pages=1–39}}</ref>。''Oxalaia quilombensis'' のホロタイプ標本 MN 6117-V は、左側の部分が母岩に埋没した状態で発見された。標本は大型個体に由来する癒合した[[前上顎骨]]からなる。単離した不完全な[[上顎骨]]の断片 MN 6119-V もスピノサウルス科の一般的な特徴を示したことからオキサライアに分類された。この上顎骨は岩の表面で発見されており、侵食によって元来の位置から移動した可能性がある。いずれの骨もブラジル[[北東部地域 (ブラジル) |北東部地域]]の[[マラニョン州]]の Cajual Island で発見されており、[[リオデジャネイロ]]の国立博物館に所蔵された<ref name=DescOxalaia />。2018年に発生した{{仮リンク|ブラジル国立博物館の火災|en|National Museum of Brazil fire}}により<ref>{{Cite web|url=https://www.theguardian.com/world/2018/sep/03/fire-engulfs-brazil-national-museum-rio|title=Brazil museum fire: 'incalculable' loss as 200-year-old Rio institution gutted|last=Phillips|first=Dom|date=September 2018|website=The Guardian|language=en|access-date=2018-09-03}}</ref>、おそらくオキサライアの標本もブラジル国内で発見された他の様々な標本と共に焼失したとされる<ref>{{Cite news|url=https://www1.folha.uol.com.br/cotidiano/2018/09/entenda-a-importancia-do-acervo-do-museu-nacional-destruido-pelas-chamas-no-rj.shtml|title=Entenda a importância do acervo do Museu Nacional, destruído pelas chamas no RJ|last=Lopes|first=Reinaldo José|date=September 2018|work=Folha de S.Paulo|accessdate=2018-09-03|language=pt-BR}}</ref>。部分的な頭蓋骨の他には、無数のスピノサウルス科の歯がLaje do Coringaから報告されている<ref name="DescOxalaia" />。同じ地層から産出した2個の部分的な[[尾椎]]は[[シギルマッササウルス]]に分類されており<ref name="medeiros2014" />、アメリカの古生物学者ミッキー・モーティマーはこれらがオキサライアのものである可能性を指摘している<ref>{{Cite web|title=Megalosauroidea|url=http://theropoddatabase.com/Megalosauroidea.htm#Sinopliosaurusfusuiensis |last=Mortimer |first=M. |website=theropoddatabase.com |accessdate=2018-11-06}}</ref>。


2011年3月、オキサライアは後期白亜紀の爬虫類である{{仮リンク|ペペスクス|en|Pepesuchus}}と{{仮リンク|ブラジリグアナ|en|Brasiliguana}}と共に{{仮リンク|ブラジル科学アカデミー|en|Brazilian Academy of Sciences}}の発表で発見が報告された<ref name=ciencia /><ref name=pictures />。MachadoはオキサライアについてCajual Island の支配的な爬虫類として言及し、『[[ジュラシック・パーク]]』シリーズにも登場するスピノサウルス科は肉食恐竜の中でも別格であり、国内外から関心を集めると主張した<ref name=ciencia />。オキサライアはブラジルの古生物学者{{仮リンク|アレクサンダー・ケルナー|en|Alexander Kellner}}らが記載し、2011年3月にアカデミーから公表された<ref name=ultimo_segundo />。タイプ種 ''Oxalaia quilombensis'' はブラジルから産出した獣脚類恐竜としては8番目に早く命名された種となった。属名は奴隷貿易時代にブラジルへ導入されたアフリカの神であるオクサラに由来し、種小名は逃亡奴隷が居住したQuilombo にちなむ<ref name=DescOxalaia />。
オキサライアは[[頭蓋骨]]のみ発見されているが、その歯と頭蓋には[[獣脚類]]には見られない特徴があった。オキサライアは[[熱帯]]の[[森林]]に生息していた。オキサライアがいた当時の環境は[[湿潤]]な気候で、[[針葉樹]]や[[シダ]]などの[[植物]]が生い茂る[[熱帯林]]が広がっていました。この[[森林|森]]の周りには、[[乾燥]]した風景が広がっていました。[[スピノサウルス]]と同じく歯列の特徴は現在の[[ワニ]]に似ており、主に[[魚]]を食べていたものと見られる。[[File:Gavialis gangeticus, ZOO Praha 045 (Flipped and Cropped).jpg|thumb|left|[[スピノサウルス]]などの仲間は顔の形はこのように[[ワニ]]に似ていた]]

[[魚]]以外に他の[[恐竜]]や[[翼竜]]を食べていた可能性もある。<ref>[[小林快次]]『恐竜2最新研究』[[講談社]]〈[[講談社文庫]]〉、2023年6月25日、夏</ref>[[サメ]]のように予備の[[歯]]が備わっていたと考えられる{{Sfn|小林快次|2020|p=61}}。オキサライアは、この生息地でさまざまな動物と共存していました。この地層で発見された他の恐竜には、[[カルカロドントサウルス]]や[[スピノサウルス]]のような巨大な肉食動物がいました。また、[[ドロマエオサウルス]]や、[[マシアカサウルス]]によく似た小型の肉食動物も生息していました。また、[[草食恐竜]]の一種である大型の[[竜脚類]]も生息していました。[[魚類]]では、[[骨]]のある[[魚]]、[[エイ]]の仲間、[[肺魚]]などが生息していました。巨大な[[シーラカンス]]や[[ノコギリザメ]]もいました。[[恐竜]]以外にも、[[翼竜]]や[[ワニ]]などの[[爬虫類]]がいました。また、[[蛇]]や[[軟体動物]]の[[化石]]も見つかっている。
ブラジルの{{仮リンク|アルカンタラ層|en|Alcantara Formation}}からは遠位の尾椎 UFMA 1.10.240 が発見されており、これは2002年にシギルマッササウルスに分類されている<ref>Medeiros and Schultz, (2002). A fauna dinossauriana da Laje do Coringa, Cretáceo médio do Nordeste do Brasil. ''Arquivos do Museu Nacional''. 60(3), 155-162.</ref>。

== 特徴 ==
[[File:Oxalaia Size Chart.svg|thumb|left|alt=遊泳するオキサライアのダイアグラム]]
ホロタイプ標本の前上顎骨は左右ともに長さ約201ミリメートルで、保存されている幅は115ミリメートル(最大推定幅は126ミリメートル)、高さは103ミリメートルに達する。関連するスピノサウルス科の骨格要素に基づき、オキサライアの頭蓋骨長は1.35メートルと推定されている<ref name=DescOxalaia />。これは2005年にイタリアのクリスティアーノ・ダル・サッソらが推定したスピノサウルスの頭蓋骨長1.75メートルよりも短い値である<ref name="dalsassoetal05">{{cite journal|last=dal Sasso|first=C.|author2=Maganuco, S.|author3=Buffetaut, E.|author4=Mendez, M.A.|year=2005|title=New information on the skull of the enigmatic theropod ''Spinosaurus'', with remarks on its sizes and affinities|journal=Journal of Vertebrate Paleontology|volume=25|issue=4|pages=888–896|doi=10.1671/0272-4634(2005)025[0888:NIOTSO]2.0.CO;2|s2cid=85702490 |issn=0272-4634}}</ref>。2011年にケルナーと彼のチームはダル・サッソが用いた標本 MSNM V4047 とオキサライアの元々の吻部を比較し、オキサライアの全長を12 - 14メートル、体重を5 - 7トンと推定した。これによりオキサライアは既知の範囲内ではブラジルで最大の獣脚類となり<ref name=DescOxalaia />、全長8.9メートルと推定される{{仮リンク|ピクノネモサウルス|en|Pycnonemosaurus}}を第2位に降格させた<ref name="ciencia">{{Cite news|url=https://noticias.uol.com.br/ciencia/ultimas-noticias/redacao/2011/03/16/museu-nacional-anuncia-descoberta-do-maior-dinossauro-carnivoro-do-brasil.htm|title=Museu Nacional anuncia descoberta do maior dinossauro carnívoro do Brasil – Notícias – Ciência|work=Ciência|access-date=2018-06-12|language=pt-BR}}</ref><ref name="grillo2016">{{cite journal|last1=Grillo|first1=O. N.|last2=Delcourt|first2=R.|date=2016|title=Allometry and body length of abelisauroid theropods: ''Pycnonemosaurus nevesi'' is the new king|journal=Cretaceous Research|volume=69|pages=71–89|doi=10.1016/j.cretres.2016.09.001}}</ref>。

吻部の先端は大型化し、後端が狭窄され、スピノサウルス科を区別するロゼット状の終端をなす<ref name="DescOxalaia">{{cite journal|last1=Kellner|first1=Alexander W. A.|first2=Sergio A. K. |last2=Azevedo|first3=Elaine B.|last3= Machado|first4=Luciana B.|last4= Carvalho|first5=Deise D. R.|last5= Henriques|year=2011|title=A new dinosaur (Theropoda, Spinosauridae) from the Cretaceous (Cenomanian) Alcântara Formation, Cajual Island, Brazil|url=http://www.scielo.br/pdf/aabc/v83n1/v83n1a06.pdf|journal=Anais da Academia Brasileira de Ciências|volume=83|issue=1|pages=99–108|doi=10.1590/S0001-37652011000100006|pmid=21437377|issn=0001-3765|doi-access=free}}</ref>。この構造は同じく拡大した[[歯骨]]の最前部と組みあう役割があったとされる<ref name=milner2007 />。オキサライアの吻部には幅広で深い孔が存在しており、これは[[血管]]と[[神経]]が通る[[栄養孔]]の可能性がある。オキサライアの上顎はMSNM V4047やMNHN SAM 124のように急角度で下側へ向くスピノサウルスの上顎よりも丸みを帯びる。上顎骨は口蓋の正中線に沿って前側へ延びる長く薄い1対の突起を持ち、この突起は左右の前上顎骨に挟まれ、その前端には複雑な三角形の穴が存在する。同様の突起は[[スコミムス]]や[[クリスタトゥサウルス]]およびMNHN SAM 124にも存在するが、露出してはいない<ref name=DescOxalaia />。これらの構造はスピノサウルス科の[[二次口蓋]]を構成する<ref name=DescOxalaia /><ref name="sales2017">{{Cite journal|last1=Sales|first1=M. A. F.|last2=Schultz|first2=C. L.|year=2017|title=Spinosaur taxonomy and evolution of craniodental features: Evidence from Brazil|journal=PLOS ONE|volume=12|issue=11|pages=e0187070|doi=10.1371/journal.pone.0187070|pmid=29107966|pmc=5673194|bibcode=2017PLoSO..1287070S|doi-access=free}}</ref>。オキサライアの前上顎骨の下側は顕著な修飾があり、これは他のスピノサウルス科の滑らかな状態とは対照的である<ref name=DescOxalaia />。
[[File:Oxalaia_quilombensis_by_PaleoGeek.png|thumb|right|近縁属に基づく思弁的なパレオアート]]
前上顎骨には左右それぞれに7個の[[歯槽]]が存在しており、アンガトラマ、クリスタトゥサウルス、スコミムス、MNHN SAM 124と一致する。スピノサウルスの別の上顎の化石であるMSNM V4047の歯槽は6個であり、これとは一致しない。この歯槽の数が個体発生の段階に起因するものであるかは判断ができず、さらなる標本数が求められる。第III歯槽と第IV歯槽を隔てる大型の離開は、スコミムスでは小型であるものの、他の全てのスピノサウルス科にも認められる。第V歯槽と第VI歯槽の間にもほぼ等しい長さの離開が存在しており、これはMNHN SAM 124やMSNM V4047に認められるが、スコミムスとクリスタトゥサウルスには存在しない。オキサライアに分類された上顎骨断片MN 6119-Vには2つの歯槽と、部分的な歯を含む破損した3個目の歯槽が存在する。前上顎骨と同様に、上顎骨には栄養孔が存在する。また中央部に浅い窪みがあることから、上顎骨は外鼻孔の付近に位置したことが示唆される。残された歯槽の内側にある小さな破片から、前期白亜紀のスコミムスやクリスタトゥサウルスとは異なり、オキサライアは歯に鋸歯が存在しなかったことが示唆される。それぞれの歯槽では、1本の機能的な歯とは別に、生え変わりを待つ2本の置換歯が存在する<ref name=DescOxalaia />。ケルナーによるとこれは[[サメ]]やいくつかの爬虫類に共通する特徴であるが、獣脚類では普遍的に見られるものではないという<ref name=pictures />。歯の断面は他の獣脚類に見られる薄い形状ではなく、スピノサウルス科に典型的な楕円形である<ref name=DescOxalaia />。

Laje do Coringaから報告されたスピノサウルス科の歯は、2006年にブラジルの古生物学者Manuel Medeirosにより2つの主要なモルフォタイプに分類された。両者とも典型的なスピノサウルスの歯列を示すが、モルフォタイプIIはモルフォタイプIよりも歯のエナメル質が滑らかである<ref name="medeiros2006">{{cite journal|last1=Medeiros|first1=M. A.|year=2006|title=Large theropod teeth from the Eocenomanian of northeastern Brazil and the occurrence of Spinosauridae|journal=Revista Brasileira de Paleontologia|volume=9|issue=3|pages=333–338|doi=10.4072/rbp.2006.3.08|doi-access=free}}</ref>。オキサライアの歯はモルフォタイプIに近い形態を示す。2番目の歯のグループはモルフォタイプIの磨耗した歯か、アルカンタラ層産の未記載のスピノサウルス亜科の歯である<ref name=DescOxalaia />。

== 分類 ==
[[File:Spinosauridae_Size_Diagram_by_PaleoGeek_-_Version_2.svg|thumb|left|upright=1.3|ヒトとスピノサウルス科恐竜の大きさ比較。オキサライアは緑色]]
オキサライアのタイプ標本の骨は''Spinosaurus aegyptiacus''の標本 MSNM V4047 および MNHN SAM 124 と類似する。ケルナーらはオキサライアを他のスピノサウルス科から区別する[[固有派生形質]]として、くっきりとした前上顎骨の口蓋部や、1か所に2本存在する置換歯を挙げている<ref name=DescOxalaia /><ref name=sales2017 />。[[シアモサウルス]]やシノプリオサウルスといったより断片的なスピノサウルス科は歯だけに基づいて記載されており、分類群を正しく理解する前提条件である骨格の重複が欠如しているため、他の分類群から区別することが困難である<ref name=sales2017 /><ref name="BuffetautandOuaja20022">{{cite journal|last1=Buffetaut|first1= Eric|last2=Ouaja|first2= Mohamed |date= 2002|title=A new specimen of Spinosaurus (Dinosauria, Theropoda) from the Lower Cretaceous of Tunisia, with remarks on the evolutionary history of the Spinosauridae|journal= Bulletin de la Société Géologique de France |volume=173 |issue=5|pages= 415–421| doi=10.2113/173.5.415|s2cid= 53519187|url= https://semanticscholar.org/paper/6a6bc75193e387c71e1ee068e3f68d4851cdee6c|hdl= 2042/216|hdl-access= free}}</ref>。
[[File:Spinosaurus_skull_en.svg|thumb|right|近縁なスピノサウルスの骨格ダイアグラム]]
2017年にブラジルの古生物学者 Marcos Sales と Cesar Schultz が実施した系統解析では、オキサライアはアンガトラマやアフリカのスピノサウルス亜科と近縁な位置に置かれた。これは前上顎骨の背側に[[矢状稜]]を欠くことと、吻部が幅広であることからも示唆される。ブラジルのオキサライアとアンガトラマはスピノサウルスに近い位置に置かれ、特にオキサライアはスピノサウルスと[[姉妹群]]をなした。スピノサウルスとオキサライアを区別する形質は、歯槽の間の広さ、第III歯槽と第IV歯槽の間隙の狭まりの存在、吻部の傾斜の鋭さである。断片的ではあるものの、ブラジルの標本はスピノサウルス亜科が従来考えられてきたよりも派生的であったことを示唆している。スピノサウルス亜科に共通する特徴は、[[バリオニクス亜科]]には典型的に存在する歯の細かな鋸歯が存在しないことであり、これはオキサライアにも共通する<ref name=DescOxalaia /><ref name=sales2017 />。以下はSales と Schultz の研究に基づくクラドグラムである<ref name=sales2017 />。


== 系統 ==
{{clade| style=font-size: 85%; line-height:85%;
|label1=[[スピノサウルス科]]
|1={{clade
|1=''[[イベロスピナス]]''[[File:Iberospinus natarioi by PaleoGeek.png|80px]]
|label2=[[バリオニクス亜科]]
|2={{clade
|1=''[[バリオニクス]]'' [[File:Baryonyx_walkeri_restoration.jpg|middle|80px]]
|2=''[[スコミムス]]'' <div style="{{MirrorH}}">[[File:Suchomimus_tenerensis_by_PaleoGeek.png|80px]]</div>
|3=''[[クリスタトゥサウルス]]''
[[File:Cristatusaurus lapparenti by PaleoGeek.png|80px]]
|4=''[[リパロヴェナトル]]''
[[File:Riparovenator milnerae by PaleoGeek v2.png|80px]]
|5=''[[ケラトスコプス]]
[[File:Ceratosuchops inferodios by PaleoGeek.png|80px]]
}}
|label3=[[スピノサウルス科]]
|3={{clade
|1=''[[シモサウルス]]'' <div style="{{MirrorH}}">[[File:Siamosaurus_suteethorni_by_PaleoGeek.png|80px]]</div>
|2={{clade
|1=Eumeralla taxon<ref>{{cite journal |last1=Barrett |first1=Paul M. |last2=Benson |first2=Roger B. J. |last3=Rich |first3=Thomas H. |last4=Vickers-Rich |first4=Patricia |title=First spinosaurid dinosaur from Australia and the cosmopolitanism of Cretaceous dinosaur faunas |journal=Biology Letters |date=23 December 2011 |volume=7 |issue=6 |pages=933–936 |doi=10.1098/rsbl.2011.0466 |pmid=21693488 |pmc=3210678 }}</ref>
|2={{clade
|1=''[[イクティオヴェナトル]]'' <div style="{{MirrorH}}">[[File:Ichthyovenator_laosensis_by_PaleoGeek.png|80px]]</div>
|2={{clade
|1=''[[イリタトル]]'' <div style="{{MirrorH}}">[[File:Irritator_challengeri_by_PaleoGeek.png|80px]]</div>
|2='''''オキサライア''''' <div style="{{MirrorH}}">[[File:Oxalaia_quilombensis_by_PaleoGeek.png|80px]]</div>
|label3=[[スピノサウルス亜科]]
|3={{clade
|1=Gara Samani taxon
|2=''[[シギルマッササウルス]]'' <div style="{{MirrorH}}">[[File:Sigilmassasaurus_brevicollis_by_PaleoGeek.png|80px]]</div>
|3=''[[スピノサウルス]]'' <div style="{{MirrorH}}">[[File:Spinosaurus_aegyptiacus_by_PaleoGeek.png|80px]]</div> }} }} }} }} }} }} }}
{{clade| style=font-size:85%; line-height:85%
{{clade| style=font-size:85%; line-height:85%
|label1=[[スピノサウルス科]]
|label1=[[スピノサウルス科]]
|1={{clade
|1={{clade
|1=''[[バリオニクス]] ''[[File:Baryonyx walkeri restoration.jpg|80px]]
|1=[[バリオニクス]][[File:Baryonyx walkeri restoration.jpg|80px]]
|2=''[[スコミムス]]'' <div style="{{MirrorH}}">[[File:Suchomimus_tenerensis_by_PaleoGeek.png|80px]]</div>
|2=[[クリタトゥサウルス]] <div style="{{MirrorH}}">[[File:Cristatusaurus_lapparenti_by_PaleoGeek.png|80px]]</div>
|3=[[スコミムス]] <div style="{{MirrorH}}">[[File:Suchomimus_tenerensis_by_PaleoGeek.png|80px]]</div>
|3={{clade
|4={{clade
|1=''[[アンガトラマ]] <div style="{{MirrorH}}">[[File:Irritator_challengeri_by_PaleoGeek.png|80px]]</div>
|1=アンガトラマ <div style="{{MirrorH}}">[[File:Irritator_challengeri_by_PaleoGeek.png|80px]]</div>
|2={{clade
|2={{clade
|1='''''オキサライア''''' <div style="{{MirrorH}}">[[File:Oxalaia_quilombensis_by_PaleoGeek.png|80px]]</div>
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|2=[[スピノサウルス]] <div style="{{MirrorH}}">[[File:Spinosaurus_aegyptiacus_by_PaleoGeek.png|80px]]</div>
}} }} }} }}
}} }} }} }}

==脚注==
2020年、ケムケム層群のスピノサウルス亜科を評価したロバート・スミスらは、オキサライアには十分な児湯派生形質が無く[[個体差]]の範疇に収まると主張し、オキサライアを''Spinosaurus aegyptiacus'' のジュニアシノニムとした。この見解が後の研究に支持された場合、''Spinosaurus aegyptiacus'' はより広範な分布を示したことになり、また[[セノマニアン]]期に南アメリカとアフリカとの間で動物相の交換が起きたことを意味する。当時、アフリカと南アメリカを隔てる[[大西洋]]の規模は小さく、''Spinosaurus aegyptiacus'' は短距離の海路を渡って南アメリカへ上陸可能であったと目される<ref>{{Cite journal|last1=Smyth |first1=Robert S. H. |last2=Ibrahim |first2=Nizar |last3=Martill |first3=David M. |date=2020-05-23 |title=Sigilmassasaurus is Spinosaurus: a reappraisal of African spinosaurines |url=http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0195667120302068|journal=Cretaceous Research |language=en |volume=114 |pages=104520 |doi=10.1016/j.cretres.2020.104520 |s2cid=219487346|issn=0195-6671}}</ref>。
{{reflist}}

== 古生態 ==
[[File:Spinosaurid fossils palaeogeographic map.png|thumb|upright=1.3|[[アルビアン]]から[[セノマニアン]]にかけてのスピノサウルス科の化石の分布]]
アルカンタラ層の後期白亜紀の堆積物は、[[球果植物]]や[[シダ類]]および[[トクサ類]]が優占する熱帯林が生育した湿潤環境であったと解釈されている。これらの森林は乾燥気候から半乾燥気候の地形に囲まれており、短期間の著しい雨季に続いて長期間の乾季が訪れたと推測される<ref name="medeiros2014">{{Cite journal|last1=Medeiros|first1=Manuel Alfredo |last2=Lindoso |first2=Rafael Matos |last3=Mendes |first3=Ighor Dienes |last4=Carvalho |first4=Ismar de Souza |date=August 2014 |title=The Cretaceous (Cenomanian) continental record of the Laje do Coringa flagstone (Alcântara Formation), northeastern South America |journal=Journal of South American Earth Sciences |language=en |volume=53 |pages=50–58 |doi=10.1016/j.jsames.2014.04.002 |issn=0895-9811 |bibcode=2014JSAES..53...50M}}</ref><ref>{{Cite journal|last1=Toledo |first1=Carlos E. V. |last2=Sousa |first2=Eliane P. de |last3=Medeiros |first3=Manuel A. A. |last4=Bertini |first4=Reinaldo J. |date=December 2011 |title=A new genus of dipnoiformes from the Cretaceous of Brazil |journal=Anais da Academia Brasileira de Ciências |volume=83 |issue=4 |pages=1181–1192 |doi=10.1590/S0001-37652011000400006 |pmid=22146953 |issn=0001-3765 |doi-access=free}}</ref>。動物の分類群は多様性に富んでおり個体数も多く、恐竜や[[翼竜]]、[[ヘビ]]、[[軟体動物]]、[[ワニ]]、[[ノトスクス科]]、[[魚類]]が地層から発見されている。この堆積層から知られる水棲生物には[[シーラカンス]]の[[マウソニア]]や、[[トビエイ科]]、[[ガンギエイ目]]、[[条鰭類]]や[[ハイギョ]]の種が居る<ref name=medeiros2014 /><ref>{{cite journal|last1=Pereira |first1= A. A. |last2=Medeiros |first2= M. A. |year=2008|title=A new sclerorhynchiform (Elasmobranchii) from the middle Cretaceous of Brazil |journal=Revista Brasileira de Paleontologia |volume=11 |issue=3 |pages=207–212 |doi=10.4072/rbp.2008.3.07 |doi-access=free}}</ref>。{{仮リンク|イタペウアサウルス|en|Itapeuasaurus}}のような[[ディプロドクス科]]や、基盤的な[[ティタノサウルス類]]、[[カルカロドントサウルス]]属未定種、[[マシアカサウルス]]に近縁な[[ノアサウウルス科]]、[[ドロマエオサウルス科]]の恐竜も知られる。加えて、スピノサウルス属未定種に分類された特徴的な歯と[[椎体]]も発見されている<ref name=medeiros2014 /><ref>{{Cite journal|last1=Lindoso |first1=Rafael Matos |last2=Medeiros |first2=Manuel Alfredo Araújo |last3=Carvalho |first3=Ismar de Souza |last4=Pereira |first4=Agostinha Araújo |last5=Mendes |first5=Ighor Dienes |last6=Iori|first6=Fabiano Vidoi |last7=Sousa |first7=Eliane Pinheiro |last8=Arcanjo |first8=Silvia Helena Souza |last9=Silva |first9=Taciane Costa Madeira |date=July 2019 |title=A new rebbachisaurid (Sauropoda: Diplodocoidea) from the middle Cretaceous of northern Brazil|url=http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0195667118302064|journal=Cretaceous Research |language=en |volume=104 |pages=104191 |doi=10.1016/j.cretres.2019.104191 |s2cid=201321631 |issn=0195-6671}}</ref>。

アルカンタラ層で発見される植物相と動物相の大部分は[[セノマニアン]]階にあたる北アフリカ・[[モロッコ]]のケムケム単層にも存在する。アフリカに生息しないアルカンタラ層の生物はオキサライアのほか、ガンギエイ目の{{仮リンク|アトランティコプリスティス|en|Atlanticopristis}}や[[中正鰐類]]の{{仮リンク|コリンガスクス|en|Coringasuchus}}が居る。Laje do Coringaの生物群集は[[スピノサウルス]]や[[カルカロドントサウルス]]および[[オンコプリスティス]]といった重要な分類群を抱えるエジプトのバハリヤ層と同時代である可能性もある。ブラジルとアフリカとの間でのこの極端な生物相の類似性は、巨大な[[ゴンドワナ大陸]]の一部としての接続に起因する。この接続は約1億3000万年前から1億1000万年前ごろの[[リフト (地質) |リフティング]]や海洋底拡大によって開裂し、その後海に隔てられた両大陸では独立した進化が起こり、分類群間に僅かな差異が生じることとになった<ref name=medeiros2014 /><ref name="candeiro2015">{{Cite journal|date=August 2015 |title=Middle Cretaceous dinosaur assemblages from northern Brazil and northern Africa and their implications for northern Gondwanan composition |journal=Journal of South American Earth Sciences |language=en |volume=61 |pages=147–153 |doi=10.1016/j.jsames.2014.10.005 |issn=0895-9811 |last1=Candeiro |first1=Carlos Roberto A. |bibcode=2015JSAES..61..147C}}</ref>。Machado 曰く、Cajual Island はセノマニアン期においていまだアフリカ大陸と接していた<ref name=ultimo_segundo />。同様に Medeiros らは、[[諸島]]の存在や他の陸の接続の継続によって動物相の類似性の説明ができると指摘した<ref name="medeiros2014" />。
[[File:Gavialis_gangeticus,_ZOO_Praha_045_(Flipped_and_Cropped).jpg|thumb|left|スピノサウルス科の吻部先端に見られるロゼット状の形状を示す[[インドガビアル]]]]
スピノサウルス類の属として、オキサライアには大型で頑強な前肢、比較的短い後肢、背部で帆や稜を形成する長く伸びた胴椎の[[神経棘]]、ワニと同様に遊泳時の補助となる高い尾椎の神経棘を有した<ref name="hone2017" /><ref>{{Cite journal|last1=Arden|first1=Thomas M.S. |last2=Klein |first2=Catherine |last3=Zouhri |first3=Samir |last4=Longrich |first4=Nicholas R. |date=2018 |title=Aquatic adaptation in the skull of carnivorous dinosaurs (Theropoda: Spinosauridae) and the evolution of aquatic habits in spinosaurus|url=https://www.researchgate.net/publication/326507888|url-status=live |journal=Cretaceous Research |volume=93 |pages=275–284 |doi=10.1016/j.cretres.2018.06.013 |s2cid=134735938 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20181023120104/https://www.researchgate.net/publication/326507888 |archivedate=2018-10-23 |accessdate=2018-10-22}}</ref>。スピノサウルス科は他の大型の捕食動物との競争を避け、水辺あるいは水中で生活し、水棲動物を捕食した可能性が高い。ただし、必要であれば陸上でも行動したと目される。このような行動は[[バリオニクス]]の腹腔中に[[イグアノドン科]]の恐竜の幼体の死骸が発見されていること、また[[翼竜]]の死骸にイリタトルの歯が挿入されていたことから見て取ることができる<ref name="hone2017">{{Cite journal|last1=Hone|first1=David William Elliott|last2=Holtz|first2=Thomas Richard|date=June 2017|title=A century of spinosaurs – a review and revision of the Spinosauridae with comments on their ecology|journal=Acta Geologica Sinica – English Edition|language=en|volume=91|issue=3|pages=1120–1132|doi=10.1111/1755-6724.13328|s2cid=90952478 |issn=1000-9515|url=http://qmro.qmul.ac.uk/xmlui/handle/123456789/49404}}</ref><ref name="RMetal10">{{cite journal|last1=Amiot|first1=R.|last2=Buffetaut|first2=E.|last3=Lécuyer|first3=C.|last4=Wang|first4=X.|last5=Boudad|first5=L.|last6=Ding|first6=Z.|last7=Fourel|first7=F.|last8=Hutt|first8=S.|last9=Martineau|first9=F.|year=2010|title=Oxygen isotope evidence for semi-aquatic habits among spinosaurid theropods|journal=Geology|volume=38|issue=2|pages=139–142|bibcode=2010Geo....38..139A|doi=10.1130/G30402.1|last10=Medeiros|first10=A.|last11=Mo|first11=J.|last12=Simon|first12=L.|last13=Suteethorn|first13=V.|last14=Sweetman|first14=S.|last15=Tong|first15=H.|last16=Zhang|first16=F.|last17=Zhou|first17=Z.}}</ref>。円錐形で横方向に楕円形の断面を持つオキサライアの歯と、他の獣脚類と比較して頭部の奥に後退した外鼻孔は、スピノサウルス科に特徴的な形質状態である。これはいずれも魚類の捕食に有用な適応である<ref name=DescOxalaia /><ref name=hone2017 /><ref name="milner2007">{{Cite journal|last1=Milner|first1=Andrew|last2=Kirkland|first2=James|date=September 2007|title=The case for fishing dinosaurs at the St. George Dinosaur Discovery Site at Johnson Farm|url=https://www.researchgate.net/publication/285906225|journal=Utah Geological Survey Notes|volume=39|pages=1–3}}</ref>。スピノサウルス類の拡大した組み合う顎の前端と鋭い歯は、現生のワニの中で最も魚食に適した[[インドガビアル]]にも見られる特徴である。これは魚類の捕獲に効率的な機構として機能した<ref name=milner2007 />。ケルナーはスピノサウルス科の頭蓋骨の一般的な外見を[[アリゲーター属]]のものと対比している<ref name="pictures">{{Cite news|url=https://news.nationalgeographic.com/news/2011/03/pictures/110330-new-dinosaur-crocodile-cousin-brazil/|title=Pictures: New Dinosaur, Crocodile Cousin Found in Brazil|date=March 2011|work=National Geographic|access-date=2018-06-12}}</ref>。
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== 出典 ==
{{Reflist|2}}

== 関連項目 ==
*[[スピノサウルス科]]
*[[恐竜一覧]]


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[[Category:ブラジル産の化石]]
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[[Category:2011年に記載された化石分類群]]
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==関連項目==
*[[スピノサウルス科]]
*[[恐竜一覧]]

==外部リンク==
*https://ja.alegsaonline.com/art/73786

2023年6月27日 (火) 19:59時点における版

オキサライア
Oxalaia
ホロタイプ標本の吻部
地質時代
後期白亜紀
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
亜綱 : 双弓亜綱 Diapsida
下綱 : 主竜形下綱 Archosauromorpha
上目 : 恐竜上目 Dinosauria
: 竜盤目 Saurischia
亜目 : 獣脚亜目 Theropoda
下目 : テタヌラ下目 Tetanurae
: スピノサウルス科 Spinosauridae
亜科 : スピノサウルス亜科 Spinosaurinae
: オキサライア属 Oxalaia
学名
Oxalaia Kellner et al., 2011
シノニム

オキサライア学名Oxalaia、「オクサラのもの」の意)は、ブラジル上部白亜系化石が産出した、スピノサウルス科に属する獣脚類恐竜[1]。タイプ種Oxalaia quilombensisが知られており、属名はアフリカの神であるオクサラに由来し、種小名はアフリカ出身の奴隷の子孫が居住するQuilomboで標本が発見されたことにちなむ[1]。全長は約12 - 14メートル[1]

発見と命名

南アメリカ大陸で発見されたスピノサウルス亜科の恐竜とその発見地を示す図。オキサライアとアンガトラマおよびイリタトルが図示されている。

オキサライアはブラジル北東部に位置する São Luís-Grajaú Basin に分布するItapecuru層群のAlcântara層で発見された。地層の年代は後期白亜紀セノマニアンである[2]。Itapecuru層の北部の露頭である Laje do Coringa locality は主に砂岩泥岩からなり、植物化石と脊椎動物化石の断片を含む礫岩層を伴う[3]。これらの堆積層はスピノサウルスの化石が発見されたエジプトバハリヤ層英語版と類似した海洋・河川環境で堆積した[2][4]。オキサライアの化石は1999年にLaje do Coringaで発見された[5]ブラジル国立博物館の古生物学者 Elaine Machado は化石の保存の良さに衝撃を受けた[6]。この産地の堆積物は潮による顕著な浸食を受ける。波の作用で地層から除去された化石は発見されず、保存された化石も断片化する傾向にあるため、このように保存の良い化石が発見されることはレアケースであった[5]。一般に、Alcântara層で発見される化石の大部分はや単離した骨格要素からなり、Laje do Coringaにはそうした化石が夥しく埋没していた[2][5][7]

既知の骨を示したオキサライア頭部のシルエット

オキサライアはブラジルで発見されたスピノサウルス科の恐竜の1つであり、他の例にはイリタトルとアンガトラマが居る。後者2属はいずれも部分的な頭蓋骨が発見されており、アラリペ盆地英語版に分布するサンタナ層群英語版ロムアルド層英語版から回収されている。微化石の年代から地層の堆積年代はアルビアン期と推定されており、これはオキサライアよりも600万年から900万年古いものとなる[5][8][9]。スピノサウルス科の化石記録は他の獣脚類のグループと比較して乏しい。既知の体の化石は非常に少なく、大部分の属は椎骨や歯といった単離した要素に基づいて設立されているのである[10][11]Oxalaia quilombensis のホロタイプ標本 MN 6117-V は、左側の部分が母岩に埋没した状態で発見された。標本は大型個体に由来する癒合した前上顎骨からなる。単離した不完全な上顎骨の断片 MN 6119-V もスピノサウルス科の一般的な特徴を示したことからオキサライアに分類された。この上顎骨は岩の表面で発見されており、侵食によって元来の位置から移動した可能性がある。いずれの骨もブラジル北東部地域マラニョン州の Cajual Island で発見されており、リオデジャネイロの国立博物館に所蔵された[5]。2018年に発生したブラジル国立博物館の火災英語版により[12]、おそらくオキサライアの標本もブラジル国内で発見された他の様々な標本と共に焼失したとされる[13]。部分的な頭蓋骨の他には、無数のスピノサウルス科の歯がLaje do Coringaから報告されている[5]。同じ地層から産出した2個の部分的な尾椎シギルマッササウルスに分類されており[2]、アメリカの古生物学者ミッキー・モーティマーはこれらがオキサライアのものである可能性を指摘している[14]

2011年3月、オキサライアは後期白亜紀の爬虫類であるペペスクス英語版ブラジリグアナ英語版と共にブラジル科学アカデミー英語版の発表で発見が報告された[15][16]。MachadoはオキサライアについてCajual Island の支配的な爬虫類として言及し、『ジュラシック・パーク』シリーズにも登場するスピノサウルス科は肉食恐竜の中でも別格であり、国内外から関心を集めると主張した[15]。オキサライアはブラジルの古生物学者アレクサンダー・ケルナーらが記載し、2011年3月にアカデミーから公表された[6]。タイプ種 Oxalaia quilombensis はブラジルから産出した獣脚類恐竜としては8番目に早く命名された種となった。属名は奴隷貿易時代にブラジルへ導入されたアフリカの神であるオクサラに由来し、種小名は逃亡奴隷が居住したQuilombo にちなむ[5]

ブラジルのアルカンタラ層英語版からは遠位の尾椎 UFMA 1.10.240 が発見されており、これは2002年にシギルマッササウルスに分類されている[17]

特徴

遊泳するオキサライアのダイアグラム

ホロタイプ標本の前上顎骨は左右ともに長さ約201ミリメートルで、保存されている幅は115ミリメートル(最大推定幅は126ミリメートル)、高さは103ミリメートルに達する。関連するスピノサウルス科の骨格要素に基づき、オキサライアの頭蓋骨長は1.35メートルと推定されている[5]。これは2005年にイタリアのクリスティアーノ・ダル・サッソらが推定したスピノサウルスの頭蓋骨長1.75メートルよりも短い値である[18]。2011年にケルナーと彼のチームはダル・サッソが用いた標本 MSNM V4047 とオキサライアの元々の吻部を比較し、オキサライアの全長を12 - 14メートル、体重を5 - 7トンと推定した。これによりオキサライアは既知の範囲内ではブラジルで最大の獣脚類となり[5]、全長8.9メートルと推定されるピクノネモサウルス英語版を第2位に降格させた[15][19]

吻部の先端は大型化し、後端が狭窄され、スピノサウルス科を区別するロゼット状の終端をなす[5]。この構造は同じく拡大した歯骨の最前部と組みあう役割があったとされる[20]。オキサライアの吻部には幅広で深い孔が存在しており、これは血管神経が通る栄養孔の可能性がある。オキサライアの上顎はMSNM V4047やMNHN SAM 124のように急角度で下側へ向くスピノサウルスの上顎よりも丸みを帯びる。上顎骨は口蓋の正中線に沿って前側へ延びる長く薄い1対の突起を持ち、この突起は左右の前上顎骨に挟まれ、その前端には複雑な三角形の穴が存在する。同様の突起はスコミムスクリスタトゥサウルスおよびMNHN SAM 124にも存在するが、露出してはいない[5]。これらの構造はスピノサウルス科の二次口蓋を構成する[5][21]。オキサライアの前上顎骨の下側は顕著な修飾があり、これは他のスピノサウルス科の滑らかな状態とは対照的である[5]

近縁属に基づく思弁的なパレオアート

前上顎骨には左右それぞれに7個の歯槽が存在しており、アンガトラマ、クリスタトゥサウルス、スコミムス、MNHN SAM 124と一致する。スピノサウルスの別の上顎の化石であるMSNM V4047の歯槽は6個であり、これとは一致しない。この歯槽の数が個体発生の段階に起因するものであるかは判断ができず、さらなる標本数が求められる。第III歯槽と第IV歯槽を隔てる大型の離開は、スコミムスでは小型であるものの、他の全てのスピノサウルス科にも認められる。第V歯槽と第VI歯槽の間にもほぼ等しい長さの離開が存在しており、これはMNHN SAM 124やMSNM V4047に認められるが、スコミムスとクリスタトゥサウルスには存在しない。オキサライアに分類された上顎骨断片MN 6119-Vには2つの歯槽と、部分的な歯を含む破損した3個目の歯槽が存在する。前上顎骨と同様に、上顎骨には栄養孔が存在する。また中央部に浅い窪みがあることから、上顎骨は外鼻孔の付近に位置したことが示唆される。残された歯槽の内側にある小さな破片から、前期白亜紀のスコミムスやクリスタトゥサウルスとは異なり、オキサライアは歯に鋸歯が存在しなかったことが示唆される。それぞれの歯槽では、1本の機能的な歯とは別に、生え変わりを待つ2本の置換歯が存在する[5]。ケルナーによるとこれはサメやいくつかの爬虫類に共通する特徴であるが、獣脚類では普遍的に見られるものではないという[16]。歯の断面は他の獣脚類に見られる薄い形状ではなく、スピノサウルス科に典型的な楕円形である[5]

Laje do Coringaから報告されたスピノサウルス科の歯は、2006年にブラジルの古生物学者Manuel Medeirosにより2つの主要なモルフォタイプに分類された。両者とも典型的なスピノサウルスの歯列を示すが、モルフォタイプIIはモルフォタイプIよりも歯のエナメル質が滑らかである[22]。オキサライアの歯はモルフォタイプIに近い形態を示す。2番目の歯のグループはモルフォタイプIの磨耗した歯か、アルカンタラ層産の未記載のスピノサウルス亜科の歯である[5]

分類

ヒトとスピノサウルス科恐竜の大きさ比較。オキサライアは緑色

オキサライアのタイプ標本の骨はSpinosaurus aegyptiacusの標本 MSNM V4047 および MNHN SAM 124 と類似する。ケルナーらはオキサライアを他のスピノサウルス科から区別する固有派生形質として、くっきりとした前上顎骨の口蓋部や、1か所に2本存在する置換歯を挙げている[5][21]シアモサウルスやシノプリオサウルスといったより断片的なスピノサウルス科は歯だけに基づいて記載されており、分類群を正しく理解する前提条件である骨格の重複が欠如しているため、他の分類群から区別することが困難である[21][23]

近縁なスピノサウルスの骨格ダイアグラム

2017年にブラジルの古生物学者 Marcos Sales と Cesar Schultz が実施した系統解析では、オキサライアはアンガトラマやアフリカのスピノサウルス亜科と近縁な位置に置かれた。これは前上顎骨の背側に矢状稜を欠くことと、吻部が幅広であることからも示唆される。ブラジルのオキサライアとアンガトラマはスピノサウルスに近い位置に置かれ、特にオキサライアはスピノサウルスと姉妹群をなした。スピノサウルスとオキサライアを区別する形質は、歯槽の間の広さ、第III歯槽と第IV歯槽の間隙の狭まりの存在、吻部の傾斜の鋭さである。断片的ではあるものの、ブラジルの標本はスピノサウルス亜科が従来考えられてきたよりも派生的であったことを示唆している。スピノサウルス亜科に共通する特徴は、バリオニクス亜科には典型的に存在する歯の細かな鋸歯が存在しないことであり、これはオキサライアにも共通する[5][21]。以下はSales と Schultz の研究に基づくクラドグラムである[21]

スピノサウルス科

バリオニクス

クリスタトゥサウルス
スコミムス
アンガトラマ
オキサライア
スピノサウルス

2020年、ケムケム層群のスピノサウルス亜科を評価したロバート・スミスらは、オキサライアには十分な児湯派生形質が無く個体差の範疇に収まると主張し、オキサライアをSpinosaurus aegyptiacus のジュニアシノニムとした。この見解が後の研究に支持された場合、Spinosaurus aegyptiacus はより広範な分布を示したことになり、またセノマニアン期に南アメリカとアフリカとの間で動物相の交換が起きたことを意味する。当時、アフリカと南アメリカを隔てる大西洋の規模は小さく、Spinosaurus aegyptiacus は短距離の海路を渡って南アメリカへ上陸可能であったと目される[24]

古生態

アルビアンからセノマニアンにかけてのスピノサウルス科の化石の分布

アルカンタラ層の後期白亜紀の堆積物は、球果植物シダ類およびトクサ類が優占する熱帯林が生育した湿潤環境であったと解釈されている。これらの森林は乾燥気候から半乾燥気候の地形に囲まれており、短期間の著しい雨季に続いて長期間の乾季が訪れたと推測される[2][25]。動物の分類群は多様性に富んでおり個体数も多く、恐竜や翼竜ヘビ軟体動物ワニノトスクス科魚類が地層から発見されている。この堆積層から知られる水棲生物にはシーラカンスマウソニアや、トビエイ科ガンギエイ目条鰭類ハイギョの種が居る[2][26]イタペウアサウルス英語版のようなディプロドクス科や、基盤的なティタノサウルス類カルカロドントサウルス属未定種、マシアカサウルスに近縁なノアサウウルス科ドロマエオサウルス科の恐竜も知られる。加えて、スピノサウルス属未定種に分類された特徴的な歯と椎体も発見されている[2][27]

アルカンタラ層で発見される植物相と動物相の大部分はセノマニアン階にあたる北アフリカ・モロッコのケムケム単層にも存在する。アフリカに生息しないアルカンタラ層の生物はオキサライアのほか、ガンギエイ目のアトランティコプリスティス英語版中正鰐類コリンガスクス英語版が居る。Laje do Coringaの生物群集はスピノサウルスカルカロドントサウルスおよびオンコプリスティスといった重要な分類群を抱えるエジプトのバハリヤ層と同時代である可能性もある。ブラジルとアフリカとの間でのこの極端な生物相の類似性は、巨大なゴンドワナ大陸の一部としての接続に起因する。この接続は約1億3000万年前から1億1000万年前ごろのリフティングや海洋底拡大によって開裂し、その後海に隔てられた両大陸では独立した進化が起こり、分類群間に僅かな差異が生じることとになった[2][28]。Machado 曰く、Cajual Island はセノマニアン期においていまだアフリカ大陸と接していた[6]。同様に Medeiros らは、諸島の存在や他の陸の接続の継続によって動物相の類似性の説明ができると指摘した[2]

スピノサウルス科の吻部先端に見られるロゼット状の形状を示すインドガビアル

スピノサウルス類の属として、オキサライアには大型で頑強な前肢、比較的短い後肢、背部で帆や稜を形成する長く伸びた胴椎の神経棘、ワニと同様に遊泳時の補助となる高い尾椎の神経棘を有した[10][29]。スピノサウルス科は他の大型の捕食動物との競争を避け、水辺あるいは水中で生活し、水棲動物を捕食した可能性が高い。ただし、必要であれば陸上でも行動したと目される。このような行動はバリオニクスの腹腔中にイグアノドン科の恐竜の幼体の死骸が発見されていること、また翼竜の死骸にイリタトルの歯が挿入されていたことから見て取ることができる[10][30]。円錐形で横方向に楕円形の断面を持つオキサライアの歯と、他の獣脚類と比較して頭部の奥に後退した外鼻孔は、スピノサウルス科に特徴的な形質状態である。これはいずれも魚類の捕食に有用な適応である[5][10][20]。スピノサウルス類の拡大した組み合う顎の前端と鋭い歯は、現生のワニの中で最も魚食に適したインドガビアルにも見られる特徴である。これは魚類の捕獲に効率的な機構として機能した[20]。ケルナーはスピノサウルス科の頭蓋骨の一般的な外見をアリゲーター属のものと対比している[16]

出典

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関連項目