小西徹郎

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小西徹郎
Tetsuroh Konishi
生誕 (1968-06-06) 1968年6月6日(55歳)
日本の旗 日本 山口県下松市
ジャンル
職業 演奏家作曲家随筆家
担当楽器 トランペット
活動期間 2005年 -
レーベル
公式サイト tetsuroh-konishi.wixsite.com

小西 徹郎(こにし てつろう、1968年6月6日 - )は山口県生まれの演奏家作曲家随筆家

来歴[編集]

1968年生まれ、育ちは山口県下松市。幼少期からトランペットを始める。父親の薦めでジャズを聴いていたが思春期になるとロックにも目覚めていった。吹奏楽をしていたことから高校時代に聴いたドビュッシーをきっかけに近代フランス音楽に惹かれていった。その後、現代クラシックアバンギャルド電子音楽へと傾倒していった。高校二年生の時に旺文社主催 学芸科学コンクール音楽部門で「アルトリコーダーのための音楽」が銅賞受賞した。審査結果が学校に届いた日の夕方にコンクール事務局長から直接電話があり、審査員だった冨田勲が「この子の将来を楽しみにしていましょう」と小西の作品を推したことを知り、シンセサイザーや電子音楽に興味を持つようになった。その後電子音楽のための作曲をするようになり、DAWによる作曲の始まりとなった。このことは季刊音楽の世界2016年夏号にて語られている。1987年、高校卒業後、上京し作曲の勉強に励んでいたが、父が病の為一年で山口県に戻り1988年に徳山大学経済学部経営学科に入学。1992年の大学卒業後は音楽の道には進まずセブン&アイ・ホールディングスに就職するが2005年に退社し音楽家へと転向した。

経歴[編集]

本格的な活動に入ったのは2005年。2006年に渡独しフランクフルト、ベルリンで演奏活動を行った。DAWによる作品が多く、2007年から現代舞踊、舞踏など、舞台作品の音楽を手がける。2010年からは、DAWによる音楽制作のみならず、トランペットを演奏しながら舞台の一演者となることが増える[1]。その他では、楽曲提供や、雑誌などでの執筆活動も行う。また、現代美術家との交流やコラボレーションから音以外の視覚や空間も音楽と捉えるようになった。コラボレーションに於いては、海外の音楽制作者との作品がベルギーのOff-Record label、ドイツのPeacelounge recordings、Jazz-O-Tech Records等、ヨーロッパを中心とした海外のレコードレーベルからリリースされている。また、舞台の音楽のみならずNHKラジオ第1NHKスペシャルなどラジオやテレビ番組にも楽曲提供している。フィンランド映画監督 ミカ・カウリスマキ(Mika Kaurismäki)の2020年公開映画「Gracious Night(原題:Yö armahtaa)」と2022年公開の「The Grump: In Search of an Escort」(原題 : Mielensäpahoittaja Eskorttia etsimässä)へ楽曲提供した。

2011年、小西は日本音楽舞踊会議 作曲部会の会員となった。きっかけはサロンコンサートの録音現場で仕事をしていた小西が、作品を出品していた作曲家、橘川琢と出会ったことだった。意気投合した小西と橘川は交流を深め、理事であった橘川の推薦を経て会員となった。日本音楽舞踊会議発刊の月刊音楽の世界、季刊音楽の世界で執筆を始めたのも橘川の計らいによる助川敏弥の勧めからであった。また、コンサートや録音でも小西はトランペット奏者として橘川作品の初演をしており、アンビエント・トランペットとピアノによる「想風歌」Op.65(2015)をすみだトリフォニーホール(小ホール)日本音楽舞踊会議「作曲部会コンサート」にて演奏している(2015年5月14日 初演)。ベルギーのOff-Record labelからリリースされた橘川作品「橘川琢ー四季響花Ensemble/風の四季Vol.1《夏》」の演奏と録音も担当している。

演奏スタイル・音楽性[編集]

2004年からトランペットによる即興演奏に於いてデジタルリヴァーブとディレイ等のエフェクターを使用し始める。トランペット独奏スタイルで世界観を追求し始めるとDAWによる制作から離れていった。それと同時に、サウンドスケープへの興味からトランペット独奏とサウンドスケープという音楽への取り組みを始める。その後、サウンドスケープへの関心は更に深まり、サウンドスケープ研究・音楽学者、田中直子のワークショップに積極的に参加している。小西は田中直子のワークショップから感性の更なる可能性[2]に気づき、自身の音楽を更に深めていった。また演奏技術においては、マウスピース(歌口)による鳥や動物の鳴き声、マウスピースを楽器に装着した状態でマウスピースを掌で叩く、下唇の代わりに舌を使用し尺八のような音にする、楽器の抜き差し管を外して演奏する、楽器に息を吹き込み風の音を表現する、など単旋律の音楽から特殊奏法を使用した音楽にも音楽性を広げていった。2012年3月12日、日本音楽舞踊会議主催公演 「動き、所作、舞踊と音楽」にて自作品「Talk to me for Trumpet Solo」[3]を彼自身の演奏で初演。調性のある旋律は存在せず、特殊奏法をふんだんに盛り込み、深い残響を取り入れた作品であった。この公演の懇親会の席で助川敏弥は小西の作品と演奏について「地獄のトランペット、悪魔の小西」と冗談交じりに揶揄ったが、小西はそのことが嬉しく、高く評価されたと捉えている。また、北條直彦は「今まで聴いたことがないアプローチだ」と述べた。助川の「地獄、悪魔」という言葉は特殊奏法とデジタルリヴァーブによる音響効果がそう感じさせたからである。2016年からは現行のスタイルを継続しながら2018年5月26日に神田川で行われた都市楽師プロジェクト[4]等、アンプラグドでの演奏も再開している。また、コラボレーション作品に於いてはアンビエントテクノラウンジ・ミュージック等の電子音楽にトランペットの即興演奏を加えていくスタイルで行われており、録音に於いてもデジタルリヴァーブとディレイを取り入れたサウンドになっている。

2020年からは映画の音楽制作をきっかけに、トランペット独奏スタイルの音楽から再びDAWによる音楽制作を盛んにするようになった。それらの作品は映画を意識したものとなっており、ポストミニマル、アンビエントとポップ、民族音楽や民謡が融合した音楽世界になっているものが多い。小西が再び録音作品に力を入れ始めた背景には新型コロナウイルス感染拡大によるライブ・パフォーマンスの機会が無くなってしまったことが大きな原因であると、小西も季刊「音楽の世界」2020年春号、夏号、秋号[5]でも執筆を通じて語っている。

活動[編集]

  • 2007年
    • 韓国 大邱 啓明大学校 張有環ダンスカンパニーの第21回の音楽[6](作曲・出演)。
    • 韓国第38回Gumi City Dance Company(Kim Yong Chul 主宰)公演の音楽(作曲)。
  • 2010年 フランス大使館 "No Man's Land"枯山水サラウンディング×KENZOKIライブ出演。
  • 2011年 文化庁平成23年度時代の文化を創造する新進芸術家育成事業現代舞踊新進芸術家育成 Project 2「時代を創る」 現代舞踊公演 清水フミヒト振付作品「FLOWER」の音楽、舞台出演
  • 2012年 福島現代美術ビエンナーレ2012”SORA”にパフォーマンスアート作品を出展(作曲・演奏・演出)
  • 2013年
    • 新宿リビングデザインセンターOZONE パイオニア株式会社「私の家時間〜秋を楽しむ5つのヒント」の会場音楽。(楽曲提供)
    • 公益財団法人 東京都歴史文化財団トーキョーワンダーサイト トーキョーエクスペリメンタルフェスティバル8にパフォーマンス作品を出展。[7](作曲・出演)
    • コシノヒロコ 2014 Spring & Summer 東京コレクションの音楽(楽曲提供)
  • 2014年
    • 文化庁(社)現代舞踊協会主催の「新進舞踊家海外研修員による現代舞踊公演」の音楽、(作曲・出演)
    • 枯山水サラウンディング 蟲聴きの会2014展示会編 (五感で感じる都市のなかの自然)への出演[8]
  • 2015年
    • 公益財団法人 岡山市スポーツ・文化振興財団/岡山市主催
      • 岡山市芸術祭「駅舞」の音楽制作と音楽監督(作曲・監修)。
      • 水と緑のアートプロジェクト出演(作曲・トランペット演奏)。
  • 2018年
    • 東京ワンダーアンダー ミズベリングプロジェクト 出演(トランペット演奏)。
    • 都市楽師プロジェクト 名橋たちの音を聴く 出演(トランペット演奏)。
プロデュース
  • 2010年 平成22年度文化庁芸術祭参加公演「花岡陽子フラメンコ公演”Pasa la vida”」とKENZOとのコーディネート[9]
  • 2013年 公益財団法人 岡山市スポーツ・文化振興財団/岡山市主催「水と緑のアートプロジェクト25AIR」。
ワークショップ・講演
  • 2011年 ワークショップ「伝え合う喜び 自分を楽しく表現してみよう」[10]
映画・映像への楽曲提供、制作
  • 2014年 NHKラジオ第1番組「ドキュメント 熱投1398球~中京VS崇徳50イニングの攻防~」(ドキュメンタリー)
  • 2015年 NHKスペシャル阪神・淡路大震災20年目の警告」(ドキュメンタリー)
  • 2020年 ミカ・カウリスマキ監督「Gracious Night」(原題:Yö armahtaa)への楽曲提供(映画)
  • 2022年 ミカ・カウリスマキ監督「The Grump: In Search of an Escort」(原題:Mielensäpahoittaja Eskorttia etsimässä)への楽曲提供(映画)
執筆
  • 2011年 - 月刊音楽の世界、季刊音楽の世界への執筆。「福島日記」「人・アート・思考塾」「風の放浪記」「The Eyes」「音楽と私」(連載)。
  • 2014年 管楽器マガジン ブラストライブ「THE ART WALL」連載。
  • 2015年 音楽之友社 「これでOK! 打楽器メンテナンス〜コンサートパーカッションのチューニングと調整〜」田中覚:著の執筆協力[11]

ディスコグラフィー[編集]

以下、参加作品含む

  • 2007年
    • Kra / "Creatures" (King Records)
    • 関 俊彦 / ”SANZO SONG COLLECTION RELOADED” (Frontier Works Inc)
  • 2010年
    • Firo / "Tender grain" (涼音堂茶舗)
    • Echolocation / (Compilation)"Early morning breaks Vol.2" (Peacelounge recordings)
  • 2011年 Echolocation / (Compilation)"Early morning breaks Vol.3" (Peacelounge recordings)
  • 2012年 Echolocation/ "Platinum Wunderland" (Peacelounge recordings)
  • 2013年
    • Echolocation / "Klassik Lounge werk 11"(Klassik Radio)
    • MINDEX / "Integrity" (Loodma Recordings)
  • 2014年 Why Sheep? / "Real times" (U/M/A/A Inc)
  • 2015年
    • MORGEN WURDE / "LETZTEN ENDES" (Off-Record label)
    • Tetsuroh Konishi / "Sleep On The Sofa" (Off-Record label)
    • Tetsuroh Konishi / "nanso"[12][13] (OKUNI Co.Ltd)
  • 2017年 Ai Kisaragi×Tetsuroh Konishi / "Moment Flow" (Off-Record label)
  • 2018年
    • Tetsuroh Konishi / "Breathing of the wind"[14](Off-Record label)
    • MORGEN WURDE / "Als Je Zuvor" (Off-Record label)
    • Ai Kisaragi×Tetsuroh Konishi / "Atmosphere" (Off-Record label)
  • 2020年
    • MORGEN WURDE / "Fur Immer"[15](Off-Record label)
    • Morgen Wurde&Tis / "Vermacht" (MixCult Records)
    • "Grenzwellen"/(Compilation)"Grenzwellen Sieben" (Radio Hannover Grenzwellen)
    • Tetsuroh Konishi / "Inner winds"[16]Off-Record label)
  • 2021年
    • Tetsuroh Konishi / "Tokyo Mindscape"(Off-Record label)
    • Morgen Wurde & Tis feat. Tetsuroh Konishi / "Deutet" EP [17][18](Jazz-O-Tech Records)
    • Tetsuroh Konishi / "Scenes"[19](Off-Record label)
  • 2022年
    • Morgen Wurde&Tis feat Tetsuroh Konishi "Visions20/21"(Compilation)(Jazz-O-Tech Records)
    • Morgen Wurde&Tis feat Tetsuroh Konishi "This is Techno Jazz vol.2"[20](Compilation)(Jazz-O-Tech Records)
    • Morgen Wurde Tetsuroh Konishi "Pop Ambient 2023 (Compilation)(KOMPAKT)
  • 2023年
    • Tetsuroh Konishi / "Flight From Tokyo"[21][22](Off-Record label)
    • “Jazz On/Off-An Extensive Reminder “by Various Artist(Off-Record label)
    • Alinovsky Tetsuroh Konishi “A Way” EP(Off-Record label)
    • “Apoptose 2” (Compilation)(Off-Record label)
    • Shabaaz Mystik Tetsuroh Konishi “Find The River”(Off-Record label)
    • “Apoptose 3” (Compilation)(Off-Record label)
    • “Pop Ambient 2024“ (Compilation)"Hiernach" Morgen Wurde Tetsuroh Konishi(Kompakt)
    • Tetsuroh Konishi “Peak Of Resonance”(Off-Record label)
    • “Apoptose 4” (Compilation)(Off-Record label)

主な受賞歴(音楽・エッセイ)[編集]

  • 1985年 旺文社主催 全国学芸科学コンクール 作曲部門 銅賞
  • 2007年 ハルモニア杯音楽コンクール バンドアレンジ部門 審査員特別賞
  • 2016年 第12回 文芸思潮 現代詩賞に”ピアニストの背中” “黄土の声” “記憶の葉”の3作品[23]がノミネートされた。
  • 2016年 第12回 文芸思潮 エッセイ賞に”ネコ理論” [24]がノミネートされた。

所属団体[編集]

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ 月刊音楽の世界2010年10月号 P38~P40「対談:明日の歌をー楽友邂逅点ー」
  2. ^ 季刊音楽の世界2019年新春号P.48-50 The Eyes(4)空間認知力、気づき、音と向き合う : 三宝寺池sense of wonderさんぽを受講して
  3. ^ 季刊音楽の世界2019年冬号The Eyes(8・最終回)自作品について : Talk to me for Trumpet solo P.53-55
  4. ^ 2018年6月10日 読売新聞に記事掲載
  5. ^ 季刊音楽の世界2020年春号、夏号、秋号の連載「音楽と私」
  6. ^ Dance forum(韓国)2008年2月号P26~P43
  7. ^ ブラストライブ 2014年Vol.30 P110「族々通信~アートな喇叭、発見~」
  8. ^ HiVi別冊Foyer(ホワイエ)Vol.68 P30 「楽しい記憶を求めて集う」~東洋と西洋、今と昔を五感でたゆたう「蟲聴きの会」~
  9. ^ 月刊音楽の世界 2010年11月号 P34~P39
  10. ^ ブラストライブ2012年Vol.23「"先輩発見"言葉にして吹いてみる」P36~P37
  11. ^ 季刊音楽世界2015年秋号 P31 書評
  12. ^ ブラストライブ 2015年 Vol.37 P82「楽器生活向上委員会通信弐」
  13. ^ STAR PEOPLE Vol.57 Winter 2015 P9 「SP news スターピープル編集部がお届けする最旬スピリチャルニュース~3 おくにの夜~」
  14. ^ CDジャーナル レビュー掲載 2018年5月号 P140
  15. ^ イタリアのmusic won't save youにてレビューが掲載された
  16. ^ 2021年11月14日オランダのConcertzender Nederlandの"DreamScenes"で放送された。
  17. ^ イギリスの"theletter” ”Magazine Sixty"にてレビューが掲載された。
  18. ^ スウェーデンの音楽誌"Profet Musik"でインタビューが掲載された。2021年10月3日公開
  19. ^ オランダのAmbient Blogにてアルバム"Inner Winds"と"Scenes"がレビューされた。2022年3月
  20. ^ Parkett Webzineでのレビューが掲載された。
  21. ^ オランダのConcertzender Nederlandの"DreamScenes"で放送された。
  22. ^ 2022年3月3日オランダの音楽評論サイトAmbient Blogにて評論された。
  23. ^ 「文芸思潮」第65号(2016年6月28日発売)に掲載。
  24. ^ 「文芸思潮」第65号(2016年9月25日発売)に掲載。

外部リンク[編集]

  • 公式サイト「TETSUROH KONISHI It's artistic life [1]