リコーダー

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ソプラノ・リコーダー
アルト・リコーダー(上)
ソプラノ・リコーダー(下)

リコーダー: recorder)はエアーリード(無簧)の木管楽器。日本語では主に古楽の領域で、ドイツ名のブロックフレーテ(Blockflöte)で呼ばれることもある。

概要[編集]

リコーダーの名は「記録するもの」(recorder) の意で、小鳥の声を模して演奏する習慣があったためという。同じエアーリードである現代のフルート横笛であるのに対し、縦笛である。フィップル歌口の一種)と呼ばれる構造を持つため、奏者が自らの口形によって吹き込む空気の束を調整をしなければならない横笛に対し、空気の束が一定に保たれ、吹奏が比較的に容易である。また構造もシンプルで安価に量産できるため、日本では教育楽器として多用されるようになった。

リコーダーの頭部管(とうぶかん)の断面図。図の左の端に口をつけて吹くと、空気はBを流れ、C付近で流れが不安定になり、空気が振動する。

現在一般的なリコーダーは、全体を三分割して保存・携帯できるように、頭部管(とうぶかん)・中部管(ちゅうぶかん)・足部管(そくぶかん)の3つの部品から構成されている。子どもの手でも、工具なしで簡単に分解・組立ができる。

音孔の開け方にはバロック式とジャーマン式の2種がある。バロック式は古くからある正統の運指で、ジャーマン式は20世紀はじめ、幹音の運指が少し容易になるようにドイツでもっぱら教育用に開発されたものである。このため日本でも公教育に取り入れている。しかし、ジャーマン式は派生音(シャープやフラットつきの音)を出すのが困難なのと高音域を安定して発音できないため、初心者に使われるだけで他ではほとんど使われない。

様々な長さの楽器があるが、移調楽器としては扱われない。ただし、一般に音域の高い楽器(下記に示すソプラノからガークライン)では1オクターヴ低く記譜される。また、グレートバス・リコーダーもしばしば1オクターヴ低く記譜される。一方、バス・リコーダーは1オクターヴ高く記譜されるのが一般的。このため、リコーダーアンサンブルのスコアでは、バス・リコーダーがヘ音記号で実音は1オクターヴ上、グレートバス・リコーダーがト音記号で実音は1オクターヴ下に記載されていることが多く、慣れないうちは注意が必要である。

リコーダーの音域は、ジャーマン式の場合は楽器の最低音から2オクターヴ強、バロック式の場合には個々の楽器によって異なるが、運指を工夫することによって約3オクターヴの音を出すことができる。なお、テナーより小さな楽器は、全ての音孔を指で閉じながら足部管の開口部(楽器の一番下)を腿でふさぐことで、さらに半音低い音を出すことが可能である(例えば、アルトの場合中央ハの上のホ音を出すことができる)。

歴史[編集]

西ヨーロッパでは中世から存在が知られ、ルネサンス音楽頃には盛んに用いられていた。

バロック期までは単にフルートと言った場合、フラウト・ドルチェ(伊)、英語ではリコーダー(バロック期では特にアルトリコーダー)のことを指し、現在のフルートの原型である横笛はフラウト・トラヴェルソ(横向きのフルート)と呼ばれた。

バロック期前半の17世紀には現在用いられるものとほぼ同じ形に完成された。この時代には重要な楽器となり、ソナタ協奏曲の独奏楽器として、また管弦楽群の合奏楽器として、数々のリコーダーのための作品が作られた。テレマンが自ら得意に演奏したことでも知られる。

しかし、音量が小さいこと、また音量の強弱がそのままピッチに影響すること、発音が容易であることの裏返しとして音色の表情をつけにくいこともあり、バロック期後半の18世紀頃からは次第にフラウト・トラヴェルソに主流の座を譲った。古典派音楽に至っては全く顧みられなくなった。

20世紀初頭になり、古楽復興運動の中でイギリスのアーノルド・ドルメッチが復元し、古楽演奏の場面ではフランス・ブリュッヘンらにより過去の奏法が研究された。古楽では欠かせない楽器であるほか、現代音楽での使用も多いが、吹奏楽古典派以降のオーケストラで使用されることはほとんどない。古楽奏者としてのリコーダー奏者の中には、フラウト・トラヴェルソあるいはツィンク奏者を兼ねるものが多い。

生産が簡易なことと、初心者でもなんとか音を出すことは容易であるため、ドイツや日本で多少の改造の上、教育用の簡易楽器として普及した。

日本の音楽教育での活用[編集]

日本小学校音楽の時間では、ソプラノ・リコーダーが定番である。1・2年生の音楽の時間では、まだリコーダーは用いられず、ハーモニカ鍵盤ハーモニカが中心で、リコーダーの演奏歌唱とともに3年生から導入される。高学年では、鼓笛が行われる場合もある。

中学校の音楽教育では、アルト・リコーダーが使われる事もある。以上述べられている事には、地域差がある。また、学習指導要領に記載の範囲内で、各学校の特色や音楽専科の教諭の方針などによっても、歌唱とリコーダーその他の楽器の扱いに軽重は出てくる。

前述のように、日本の初等教育現場ではジャーマン式運指のリコーダーがバロック式に比べて圧倒的に多く使われており、ヤマハの推計によれば80%がジャーマン式である。これは、ジャーマン式のほうが(ハ長調音階の)最初の1オクターヴの運指が単純・規則的なことがもっぱらの理由である。なお、ジャーマン式ではハ長調音階以外の音および高音域の音が出しづらく、プロの演奏者やアマチュアの愛好家は事実上バロック式のみを用い、ジャーマン式は皆無といってもよい。ジャーマン式の運指が単純といっても、バロック式が格別難しいわけではなく、いったん覚えてしまえば両運指方法の間に優劣はないといってもよく、些細な「容易さ」のために発展性を犠牲にしたことに対する批判も多い。最初からバロック式を採用したり、5年次でアルトを導入する小学校もある。最近は日本の学校でも音楽の盛んな都市を中心に、バロック式が広まろうとする傾向にある。

リコーダーは、プラスチック製のものが1000円台から市販されている。構造が単純で堅牢であり、ヴァイオリンギターのように調律に手間がかからないので、年少者の入門楽器として適している。 しかし、小学校低学年でも演奏を習得し始められることの反動として、日本社会の一部ではリコーダーをおもちゃ楽器として見下す風潮もある。しかしその表現力を極める技能を修得するためにはそれなりの才能と努力を必要とすることは他のすべての楽器と共通である。特に音程を一定に保つ事が難しい楽器とされ、プロの奏者との違いが顕著に現れる。

種類[編集]

以下はドルメッチ(Dolmetsch)社の呼称に基づく。

現在は主にF管とC管で、音域の高い方から、

  • ガークライン(クライネソプラニーノ)・リコーダー(C管) - ソプラノ・リコーダーより1オクターヴ高い
  • ソプラニーノ・リコーダー(F管) - アルト・リコーダーより1オクターヴ高い
  • ソプラノ・リコーダー(ディスカント)(C管) - テナー・リコーダーより1オクターヴ高い ※主に小学校の児童達が授業で使用するのがこのタイプ。
  • アルト・リコーダー(トレブル)(F管) - 最低音は中央ハの上のヘ音 ※主に中学生が授業で使用するのがこのタイプ。
  • テナー・リコーダー(テノール)(C管) - 最低音は中央ハ
  • バス・リコーダー(F管) - アルト・リコーダーより1オクターヴ低い
  • グレートバス・リコーダー(C管) - テナー・リコーダーより1オクターヴ低い
  • コントラバス・リコーダー(F管) - バス・リコーダーより1オクターヴ低い
  • サブ・コントラバス・リコーダー(C管) - グレートバス・リコーダーより1オクターヴ低い
  • サブ・サブ・コントラバス・リコーダー(F管) - コントラバス・リコーダーより1オクターヴ低い

がある。このほかに、ヴォイスフルート(D管、最低音は中央ハのすぐ上のニ音、フラウト・トラヴェルソと同音域)がある。また、G管やB管等も存在している。

多くの場合、テナー・リコーダーから下の楽器には音穴を押さえるためのキーが装備される。

ソプラノ、アルト、テナー、バスの4本による四重奏曲は、バロック以前の時代にポピュラーで、数多くの作品が残されている。バロック期では特にアルト・リコーダーが代表的だった。

材質として教育用には大量生産が可能なプラスチックABS樹脂)製のものが用いられるが、本来は基本的に木製である。主な使用材としてはメープル洋梨つげなど材質の比較的柔らかいものから、紫檀黒檀のような堅い素材までさまざまなものが用いられる。素材の材質と音質との関連が高く、柔らかな素材のリコーダーは上述のアンサンブル用として、また堅い素材のものは主として独奏用に用いられることが多い。なお、現在よく見られるプラスチック製の製品で、黒地に白のアクセントを付けたデザインは、黒檀材の管に象牙の部品を用いたバロック期後半の一形式をモデルにしたものである。

リコーダーのための音楽作品[編集]

作曲家の誕生年順

  • ヘンリー・パーセル (1659生まれ)
    • 3つのリコーダーと通奏低音のためのシャコンヌ
  • フランチェスコ・マンチーニ (1672)
    • リコーダー・ソナタ 12曲
    • リコーダー協奏曲 12曲
  • ヴィヴァルディ (1678)
    • リコーダーとオーケストラのための協奏曲ハ長調、同ハ短調
    • リコーダー(フルート)協奏曲集(『』、『ごしきひわ』他)
    • ソプラニーノ・リコーダー(ピッコロ)協奏曲集
  • テレマン (1681)
    • リコーダーと管弦楽のための組曲イ短調
    • 2つのフルートとリコーダーと通奏低音のための四重奏曲
    • リコーダーとフルートと通奏低音のための協奏曲ホ短調
  • J.S.バッハ (1685)
  • ヘンデル (1685)
    • リコーダーと通奏低音のためのソナタハ長調、同イ短調
  • クヴァンツ (1697)
    • リコーダーとフルートと通奏低音のためのトリオソナタ

リコーダー奏者[編集]

外国人

日本人

関連文献[編集]

  • 朝岡聡『笛の楽園 僕のリコーダー人生』東京書籍、2002年3月6日、ISBN 4487797713
  • 安達弘潮『リコーダー復興史の秘密 ドイツ式リコーダー誕生の舞台裏』音楽之友社、1996年11月、ISBN 4276124611
  • ジョン・トムプソン、高田さゆり訳『リコーダーの世界』全音楽譜出版社、1974年
  • ハンス・マルティン・リンデ、矢沢千宜、神谷徹訳『リコーダー・ハンドブック』音楽之友社、1983年11月、ISBN 427612462X
  • 藤本祐三『初心者のリコーダー入門 0からはじめる音づくり』オンキョウパブリッシュ、1999年7月、ISBN 4872257014
  • エドガー・ハント、西岡信雄訳『リコーダーとその音楽』日本ショット社、1985年1月25日、ISBN 4118301008
  • A. ロウランド・ジォーンズ、西岡信雄訳『リコーダーのテクニック』音楽之友社、1967年11月10日、ISBN 4276145554

外部リンク[編集]