MOX燃料

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MOX燃料(モックスねんりょう)とは混合酸化物燃料の略称であり、原子炉使用済み核燃料中に1%程度含まれるプルトニウム再処理により取り出し、二酸化プルトニウム(PuO2)と二酸化ウラン(UO2)とを混ぜてプルトニウム濃度を4-9%に高めた核燃料である[1]。主として高速増殖炉の燃料に用いられるが、既存の軽水炉燃料ペレットと同一の形状に加工し、適切な核設計を行ったうえで適切な位置に配置することにより、軽水炉のウラン燃料の代替として用いることができる。これをプルサーマル利用と呼ぶ。MOXとは(Mixed OXide 「混合された酸化物」の意)の頭文字を採ったものである。

特徴[編集]

利点[編集]

普通のウラン核燃料と比べ高出力である。クリープ速度が速いため、PCMI(核燃料と被覆管の間の相互作用)の影響も緩和される。使用済み核燃料から再処理・群分離でプルトニウムを含む超長半減期核種を分別抽出し、MOX燃料として燃焼させてしまえば比較的半減期の短い核分裂生成物に変換できる。もしプルトニウムを抽出せず埋没処分をするワンススルーにするならば、使用済み核燃料は数万年にわたる管理が必要となる。プルトニウムを消滅させつつエネルギーを取り出す手段として、プルトニウムと劣化ウランの混合焼結燃料が考案された。また、ロシアでは解体した核兵器から取り出したプルトニウムをMOX燃料に加工して高速炉で燃焼させることで処分しており、日本も協力している[2]

問題点[編集]

作業員への被ばくの危険性[編集]

新品のウラン燃料に比べ放射能が強い(特にアルファ線、中性子線が著しく強い)ため、燃料の製造については遠隔操作化を行い、作業員の被曝防止に十分配慮して行う必要がある。

再処理の困難[編集]

二酸化ウラン中に二酸化プルトニウムを混ぜることによって燃料体の融点が上がるが、一方で熱伝導率が下がるため燃料温度が上がりやすくなり、炉心溶融の危険性が高くなる(酸化物燃料ではなくプルトニウム・ウラン窒化物燃料にすれば熱伝導率はウラン酸化物燃料と比べても大幅に改善する)。また、核分裂生成物に占める貴金属の割合が多くなり、またプルトニウム自体もウランより硝酸に溶解しにくいため、再処理が難しくなる。

管理の問題[編集]

ガス状核分裂生成物(キセノン、クリプトン等)とアルファ粒子(ヘリウム原子核)の放出が多いため、燃料棒内の圧力が高くなる。性質の違うウランとプルトニウムをできる限り均一に混ぜるべきであるが、どうしてもプルトニウムスポット(プルトニウム濃度が高い部分)が生じてしまう。国は基準を設けて制限しているが、使用するペレット自体を検査して確認することはできない。

各国での利用[編集]

MOX燃料(40集合体)は1960年代からベルギー、アメリカ、ドイツ、イタリア、オランダ、スウェーデン、フランス、スイス、日本、インドの原子力発電所で装荷された[3]

ベルギー[編集]

ベルギーでは1963年から原子力発電所でのMOX燃料の装荷が行われている[3]。ベルギーでは2019年現在、デッセルにあるFBFCインターナショナル社のプラントでPWR用燃料とMOX燃料の組み立てが行われている[4]

アメリカ[編集]

アメリカでは1965年から1985年まで原子力発電所でのMOX燃料の装荷が行われた[3]。国内再処理についてはカーター政権が核不拡散の観点から無期延期とし、レーガン政権で解除されたものの再処理に参入する企業はなくプルサーマルも行われなかった[4]

ドイツ[編集]

ドイツでは1966年から原子力発電所でのMOX燃料の装荷が行われてきた[3]。ドイツでは1990年代半ばまで国内でのクローズドサイクルの実現を目指していたが、コストの高騰や反対運動があり、バッカースドルフ再処理施設やハナウMOX燃料加工プラントの計画が相次いで中止となった[4]

2019年現在、ドイツ国内にウラン転換施設はないが、濃縮はグローナウにあるウレンコ社のプラントで濃縮、リンゲンにあるANF社のプラントで軽水炉用燃料加工が実施されている[4]

イタリア[編集]

イタリアでは1968年から1982年まで原子力発電所でのMOX燃料の装荷が行われた[3]。1987年の国民投票後に原子力発電が全廃されたが、国内に貯蔵された使用済核燃料の再処理契約をフランスのAREVA社(現在のオラノ社)と結びフランス国内で再処理が行われている[4]

オランダ[編集]

オランダでは1971年から1993年まで原子力発電所でのMOX燃料の装荷が行われた[3]。その後、2011年にボルセラ原子力発電所がMOX燃料装荷の許可を取得しており、2014年からMOX燃料の装荷が実施されている[4]

フランス[編集]

フランスでは1974年から原子力発電所でのMOX燃料の装荷が行われている[3]。フランスでは国が株式の大半を所有するオラノ社がウランの資源調達から再処理まで行っておりクローズド燃料サイクル政策が採用されている[4]

スウェーデン[編集]

スウェーデンでは1974年から1979年まで原子力発電所でのMOX燃料の装荷が行われた[3]

スイス[編集]

スイスでは1978年から原子力発電所でのMOX燃料の装荷が行われている[3]。スイスでは2005年の原子力法により2006年7月から10年間再処理が凍結されたが、福島第一原子力発電所事故により政策が転換され、2018年の改正原子力法により再処理が禁止された[4]。国内に再処理工場はなくイギリスやフランスに再処理を委託しており、既契約分は2014年末までに全て再処理され、MOX燃料に加工されてスイス国内の原子炉に装荷されることになっている[4]

インド[編集]

インドでは1994年から原子力発電所でのMOX燃料の装荷が行われている[3]。バーバ原子力研究センター(BARC)の各地の再処理プラントでPHWR使用済燃料の再処理が行われている[4]

日本での搭載実施状況[編集]

新型転換炉への搭載[編集]

  • ふげん(実験を終了し、現在は廃炉)

高速増殖炉への搭載[編集]

軽水炉への搭載[編集]

既存の熱中性子炉を使用することができる。軽水炉濃縮ウランの代わりにMOX燃料を使用する。

試験運転が実施された軽水炉[編集]

1986年-1995年にかけて、少数のMOX燃料を使用して、健全性を確認する試験運転が実施された。

本格運転が実施された軽水炉[編集]

搭載が計画されている軽水炉[編集]

参考文献[編集]

  • 小林圭二・西尾漠『プルトニウム発電の恐怖』創史社

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ MOX燃料とは:日本原燃
  2. ^ 鈴木美寿,他 (2012年11月12日). “ロシア余剰核兵器解体プルトニウム処分協力 (pdf)”. JAEA-Review 2012-044. 日本原子力研究開発機構. p. 3. 2016年1月11日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j 核燃料サイクルについて”. 原子力委員会. 2021年1月9日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j 令和元年度原子力の利用状況等に関する調査(海外における原子力政策等動向調査)実績報告書(三菱総合研究所)”. 経済産業省. 2021年1月9日閲覧。
  5. ^ 福島第一原子力発電所3号機におけるプルサーマル開始について