軽水炉

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

軽水炉けいすいろ)は、減速材軽水(普通の水)を用いる原子炉である。

水は安価で大量に入手でき、高速中性子の減速能力が大きく、冷却材を兼ねることも出来る。しかし、中性子吸収量が大きいため、運転に必要な余剰反応度を確保するには、濃縮ウランを燃料とする必要がある。

アメリカで開発され、現在、世界の80%以上のシェアを占めている(原子炉基数ベース、1999年現在)。2007年現在、日本で商用稼動している原子力発電所は全て軽水炉。

主な軽水炉[編集]

ただし、沸騰水型と加圧水型は冷却材としての水に基づくので、重水炉黒鉛炉にも同じ分類がある。

特徴[編集]

軽水炉は現在、商用発電用原子炉の主流を占めている。これは幾つもの特長によるが、課題もある。

  • 小型大出力で、出力当たりプラント建設費が安価
水の大きな減速能力により、減速材を薄く燃料棒を密に配置でき、黒鉛炉重水炉に比べて優れている。特に加圧水型は格納容器を要さず、コンパクトな設計が可能。このため、軍事用を含め船舶用原子炉は全て軽水炉である
  • 核兵器の製造に適さない(核拡散防止に有利)
使用する低濃縮ウラン燃料は直接材料にならず、使用済み燃料も、兵器級プルトニウムの材料に適さない。使用済み燃料は、核兵器に使用されるプルトニウムの同位体Pu239を含むが、逆にこれを妨げ不完全核爆発の原因となるPu240も多く含む。爆縮型原子爆弾(長崎型)の原料プルトニウムにPu240が8%以上含まれると自発核分裂を生じやすく、主成分のPu239が臨界に達する前に小爆発で弾頭を破壊し、威力は著しく低下する(過早爆発)。
軽水炉は運転中に燃料集合体を交換できず、燃焼度が高くなるため、Pu239が中性子を吸収してPu240になる。このため、使用済み燃料に含まれるプルトニウムではPu239は60%程度で、Pu240は20%を超える。両者を分離精製するのは極めて困難で(技術面、コスト面とも)、軽水炉使用済み燃料を再処理して製造したプルトニウムは、原子炉級プルトニウムと呼ばれる。兵器級プルトニウム(Pu239含有量93%以上)の製造には、ウラン燃料を短期間燃焼して取り出せる黒鉛炉が必要。[要出典]
  • 蒸気温度の制限から熱効率が低い
ボイラーの熱効率は蒸気温度が高いほどよく、火力発電所では600℃を超えて運転されている。一方、原子炉内の冷却水は最高でも300℃前後に留まる。これは、燃料被覆管には軽水の大きな中性子吸収量を補うため吸収断面積が小さいジルコニウムジルカロイ合金)が使用され、これが450℃以上の高圧下で、クリープ変形するためである。[1]このため、熱効率も火力の43%に対し30%に留まり、建物・人員被曝や燃料消費量・放射性廃棄物排出量の割りに発電出力が低い原因になっている。
  • 負荷追従運転が困難
電力需要は昼夜で差があるが、軽水炉の運転出力を短時間で増減させると、古い燃料被覆管に熱衝撃ピンホールを生じるおそれがある。燃料被覆管は酸化水素脆化により、次第に延性が低下する。また、300℃前後で運転しても、局所的に高温で減径する可能性もある。一方、中の燃料ペレットはスエリング核分裂反応#核分裂生成物により膨張し、やがて内壁に接触する。こうなると被覆管は内部から広げられ、壁面は引張応力を受けるため、[2]温度変化による膨張収縮を繰り返すと、亀裂を生じる。これを避けるため、原子力発電所は主にベース需要を受け持ち、変動部分は火力発電所が担っている。
  • 再立ち上げに時間がかかる
軽水炉を低負荷で運転すると、原子炉の制御に影響(キセノンオーバーライド)する放射性キセノンのXe135が発生・蓄積しやすい。Xe135は半減期が約9時間で消える(10%未満)まで36時間ほど要する。この間、余剰反応度がないと再立ち上げがしにくい(出来ないわけではなく、対策が進んでいる)

日本における導入[編集]

日本では戦後に軽水炉による原子力発電が導入されることが決まり、自主開発と海外(主に米国)からの技術導入の2つの方針が採られた。電力会社による商用炉についてはPWRとBWRの併用による海外技術の導入と決まり、電力会社・プラントメーカー・サポートする大学の組み合わせは以下の通りとなった。

この枠組みは現在でも変わらず、後年原子力発電に取り組んだ電力各社もこのどちらかのグループに従っている。

出典[編集]

  1. ^ ジルコニウム合金の圧縮クリープ 西原正夫,西原守,山本俊二 日本材料学会 材料試験(1961年)
    • 出典引用
    (5P)450℃では14,17,20kg/mm2の公称応力下で圧縮クリープ試験を行い,更にMo-Cu-Zr合金の引張りクリープ試験も行った。(中略)ジルカロイ2およびMo-Cu-Zr合金はともにクリープが著しく,これに対し18-8ステンレス鋼はほとんどクリープによるひずみ増加が見られない。
    (6P総括3項)18-8ステンレス鋼は室温において一種の遷移クリープを示し、温度が上昇するにつれて却ってクリープしがたくなる傾向があり、瞬間ひずみも室温において他よりも大だが、温度による増加は他より小さい。
    • 引用者注釈
    ジルカロイ2被覆管は450℃加圧水中では圧縮クリープで減径するが18-8ステンレスは減径しないという事
  2. ^ 用語解説 核燃料サイクル開発機構 研究開発課題評価委員会 平成13年度研究開発課題評価(事後評価)報告書
    • 出典引用
    PCMI(Pellet Cladding Mechanical Interaction)ペレット-被覆管機械的相互作用の意味で、ペレットの膨れ、被覆管の外圧クリープによってペレットと被覆管が接触し、相互に力を及ぼす作用のこと。出力急昇時には熱膨張したペレットが被覆管を押し広げることで被覆管が破損する場合がある。

関連項目[編集]