頭取

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頭取(とうどり)とは、主に銀行において使われる肩書の一つで、一般の会社社長に相当する役職である。銀行以外での「頭取」については後述する。

概要

語源については、雅楽演奏における「り」に由来するという説と「筆頭取締役」の略称に由来するという説がある[1]幕末明治初期に様々な機関の長の名称に使用されたが[注 1]、次第に使われる場所が減り、主に銀行で使われるようになった。

代表者が「頭取」を名乗るものは都市銀行地方銀行及び第二地方銀行普通銀行であり、それ以外の銀行や金融持株会社は社長と名乗る。例えば、かつての相互銀行では「社長」を名乗っていたものの、普通銀行に転換するにあたって多くが「頭取」に変更した。ただし第二地銀の中には「社長」の名称に戻したところも一部存在する。日本における中央銀行である日本銀行財務省所管の認可法人であるため「総裁」が代表権者に相当し「頭取・社長」のような法律上の用語でない職名は用いない。

例外として、りそなホールディングス傘下の3銀行やかつての三井銀行や地方銀行のスルガ銀行では1998年から現在に至るまで「社長」の名称を用いている。また信託銀行ネット銀行など(金融庁の分類による「新たな形態の銀行」)では、ふくおかフィナンシャルグループ傘下のみんなの銀行だけが「頭取」と、同行以外は全社が「社長」と名乗っている。

これに関連して、信託銀行のトップは伝統的に「社長」と名乗り、旧長期信用銀行新生銀行あおぞら銀行も「社長」を使用している(かつての長銀日債銀は「頭取」の呼称を用いていた)。またかつての三井銀行は都市銀行の中で唯一トップが「頭取」ではなく「社長」を名乗っていた(さくら銀行三井住友銀行は「頭取」)。現在ではりそなホールディングス傘下の銀行の内、設立時から「社長」を使用していたりそな信託銀行を除く4つの銀行は、2003年10月から呼称を「社長」に変更している。

歴史

頭取の称は、江戸時代前期から見られる。たとえば、田沼意次が勤めた「扈従頭取」などの役の称、「防火頭取」、諸にも「近習頭取」、「勘定頭取」などの役の称として散見される。また百姓一揆の代表者も頭取と呼ばれた例が多い。

1920年代まで存続していた大坂相撲では、現在の大相撲でいう年寄のことを頭取と称していた。

その他の頭取

銀行以外での「頭取」の例としては、北海道檜山郡江差町姥神大神宮渡御祭における、各山車(ヤマ)所属の最高責任者が「頭取」と呼ばれ、現在でも使われている例がある。祭りが370年以上[注 2]の歴史を誇る、江戸時代から続いているという歴史の中で、頭取の歴史に基づく呼称を今も留めている希有な例と言える。

脚注

注釈

  1. ^ 例として、1861年(文久元年)7月に長崎に開所した西洋式病院養成所の「頭取」や、同年に幕府が開いた西洋医学所の「頭取」が存在する[2][3]
  2. ^ 2017年現在

出典

  1. ^ 白石亘 (2011年11月18日). “【経済Q&A】銀行のトップなぜ頭取? 「音頭取り」…法令で定着”. 東京新聞. http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/economic_confe/list/CK2011111802000035.html 2018年2月10日閲覧。 
  2. ^ 梅溪昇『洪庵・適塾の研究』思文閣出版、1993年、608頁。ISBN 978-4784207664全国書誌番号:93038803 
  3. ^ 西洋医学所(せいよういがくしょ)”. コトバンク. 朝日新聞社. 2018年2月10日閲覧。

関連項目