スナメリ
スナメリ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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スナメリ Neophocaena phocaenoides
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保全状況評価 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
VULNERABLE (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Neophocaena phocaenoides (G. Cuvier, 1829) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
スナメリ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Finless porpoise |
スナメリ(Neophocaena phocaenoides)は、ネズミイルカ科スナメリ属に属する小型のイルカである。
呼称
漢字では砂滑と表記する[1]。
中華人民共和国(中国)では江豚(Jiangtun、「河の豚」の意)と呼ばれている。長江(揚子江)に棲息するスナメリ(下記参照)は中国国家一級重点保護野生動物に指定されている[3]。
分類
現在、スナメリ属(Neophocaena)には3つの亜種が認められている[4]。
- N. phocaenoides ssp. phocaenoides G. Cuvier, 1829 - 中東などのインド洋沿岸から香港沖に分布(英語版)
- N. phocaenoides ssp. asiaeorientalis Pilleri and Gihr, 1972 - 長江(揚子江)一帯に分布(英語版)、絶滅危惧IB類(Endangered /EN)[5]
- N. phocaenoides ssp. sunameri Pilleri and Gihr, 1975 - 東アジア沿岸に分布(英語版)
ネズミイルカ科の現生群の中では比較的早期に分岐した群である[要出典]。
形態
成体の体長は1.5-2m[6]、体重は50-60kgであり、現生のクジラ類では最も小型の種の一つとされる。
口吻の突出はほとんどなく、噴気孔の後ろに僅かな陥没が見られる[7]。背びれはほとんどなく、背面正中線上の皮膚が盛り上がった隆起が尾びれ間際まで続く。尾びれの両端は尖り、中央にはっきりとした切れ込みがある。頸椎の前方3個が癒合しているが[8]、後頭顆のRが大きく平面に近い形状であり、頭部のすぐ背後に長い棘突起も無いため、頭骨の可動範囲が大きい。マイルカなどが上下に5°程度しか動かないのに対し、スナメリは40°前後まで動かす事が可能である。とは言えあくまでもクジラとしてで有り、他の哺乳類と比較すると頭部の可動範囲は狭小である[9]。
成体は全身が明るい灰色である。生まれた直後は背の隆起付近は灰色で大部分は黒いが、4ヶ月から6ヶ月で全身灰色になる。
生態と分布
魚類、甲殻類、頭足類などを食べる。雄は4歳半から9歳で、雌は3歳から7歳で、それぞれ性成熟する。
中東からアジアの沿岸海域、特にインド、中国、インドネシア、韓国、日本の沿岸に生息する。生息域は海岸に近い水深50m以内の浅い海域で、海底が滑らか、もしくは砂地になっている場所を好む。 東シナ海や黄海において、例外的に海岸から150km以上離れた海域での目撃例があるが、これも水深の浅い海域である。
長江ではヨウスコウカワイルカと分布を共有する淡水性の亜種が見られる。生息域の北端は日本沿岸海域で、西端はインドの西岸からペルシア湾内まで続いている。日本沿岸では、仙台湾から銚子市沖や東京湾、伊勢湾・三河湾、瀬戸内海、長崎県沿岸(大村湾、有明海、橘湾等)[1][10]などでの生息が確認されている。大都市近郊では個体数は少ないが、2015年の須磨水族館と朝日新聞の共同調査では、大阪湾の関西国際空港周辺にて20頭以上の群れや体長1mの子供含むスナメリが140回以上確認され、関空周辺がスナメリの子育て海域になっている可能性の高いことも判明している[11]。このほか、藤前干潟への定期的な出現も確認されており、現代日本において、鯨類が干潟域にまで進出するという意味では珍しい生態である[12][13]。
中国の馬祖列島沿岸では、N. sunameri と N.phocaenoides の分布が重複するとされる[14]。
生息数と保護
スナメリは、中国の長江流域では絶滅が危惧されているが[5]、その他の生息域では絶滅危惧種のリストに載せるための十分なデータがない。大河に棲息したり、河口や海岸近くに留まったりする性質のため、毎年多数のスナメリが魚網などによって混獲される。
生息数に関する良い推計は無い。しかし、1970年代後半に行われた調査結果と、1999年から2000年にかけて行われた調査結果を比較すると、生息数も生息域も減少していることがわかる。多くの専門家は、生息数は数十年に渡って減少し続けており、現在の生息数は昔に比べるとわずかなものにすぎないだろうと考察している。
日本においては、スナメリはシロナガスクジラやホッキョククジラ等とともに、水産資源保護法施行規則(昭和二十七年六月十六日農林省令第四十四号)第一条に基づき保護され、特別の事由があり農林水産大臣の許可を得た場合を除き、採捕することは禁止されている。また、1930年に広島県竹原市高崎町阿波島周辺の「スナメリクジラ回遊海面」が天然記念物に指定された。これはスナメリを目印にスズキなどを釣る伝統漁法が行われていたことから指定されたものである。鯨類に関連する天然記念物の指定としては唯一のものであり、海洋哺乳類全般においても、他にはジュゴンが指定されているのみである。現在ではスナメリの減少の為に伝統漁法は行われていない。
綺麗な海でしか確認できないことから、東京湾[15][15]や周防灘、大村湾など閉鎖的海域の環境再生の目安とされている種である。前述のように、大阪湾においては南東部、関西国際空港周辺で生息が確認されている[16]。
人間との関係
日本では、幾つかの水族館で展示されている。スナメリの人工飼育下の繁殖は古くから試みられており、1976年には鳥羽水族館が交尾から出産まで水族館内で行うことに世界で初めて成功している[17]。
また、自然状態下では九州の有明フェリー船上から見られることがある。近畿地方の南海淡路ライン(フェリー)船上からも見られた。スナメリをモチーフにしたキャラクターも様々な分野に存在する。
日本での捕獲は2004年11月に伊勢湾で、水族館での学術研究及び教育展示を目的に、鳥羽水族館、のとじま水族館、宮島水族館が共同で、9頭の特別採捕が行われた[18][19]。
徳山競艇場では近海に生息し、稀に競争水面に入り込むこともあったことからマスコットに採用され、スナメリに因んだ「すなっちカップ」が行われたり、場外舟券場が「すなっちゃ徳山」と名付けられたりしている。
韓国では食用とされ、他のイルカ類と同様に漁港での競売などにより取引される[20]。韓国では鯨類が混獲により水揚げされるが、捕獲数の半分以上が本種である。韓国でのスナメリの食用としての価値(値段)はあまり高くないとされる[21]。 2008年には韓国での混獲の故意性を疑い、韓国の環境保護団体が国際的な調査を要請した。理由は、スナメリは群れを作らないが、一日に30頭以上も捕まるのは不自然だというものであった[22]。
参考画像
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東京湾で保護されたスナメリの子供
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スナメリの骨格
参考文献
- ^ a b 白木原国雄 生き物図鑑 - スナメリ (pdf)
- ^ 石川創「山口県におけるスナメリの地方名の研究」『日本セトロジー研究 Japan Cetology』 (23):1-5、2013年
- ^ 「スナメリ固有種の生態調査」『日経産業新聞』2022年11月25日イノベーション面
- ^ Reeves, R.R., Collins, T., Jefferson, T.A., Karczmarski, L., Laidre, K., O’Corry-Crowe, G., Rojas-Bracho, L., Secchi, E.R., Slooten, E., Smith, B.D., Wang, J.Y. & Zhou, K. 2008. Neophocaena phocaenoides. In: IUCN 2009. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2009.2. <www.iucnredlist.org>.
- ^ a b Cetacean Specialist Group 1996. Neophocaena phocaenoides ssp. asiaeorientalis. In: IUCN 2009. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2009.2. <www.iucnredlist.org>.
- ^ 『鯨類学』図鑑 / 世界の鯨類53
- ^ ジュリエット・クラットン・ブロック 著、渡辺健太郎 訳『世界哺乳類図鑑』新樹社〈ネイチャー・ハンドブック〉、2005年、図鑑 / 世界の鯨類53 183頁頁。ISBN 4-7875-8533-9。
- ^ 『鯨類学』 103頁
- ^ 『鯨類学』100 - 101頁
- ^ 長崎大学竹村暘・白木原国雄(1989年) 長崎県沿岸に生息するスナメリの生活史に関する研究 科研費
- ^ 「スナメリ、子育てには関空沖が最適? 豊かな藻場・エサ」『朝日新聞』2015年10月23日
- ^ “イベント情報 : Green Giftプロジェクト 早春の生きもの観察&クリーンアップ”. NPO法人 藤前干潟を守る会 (2014年). 2015年10月27日閲覧。
- ^ “スナメリを目撃!”. NPO法人 藤前干潟を守る会 (2012年). 2015年10月27日閲覧。
- ^ Jefferson A.T., Wang Y.J., 2011年, Revision of the taxonomy of finless porpoises (genus Neophocaena): The existence of two species, Journal of Marine Animals and Their Ecology, Vol.4 (1), The Oceanographic Environmental Research Society
- ^ a b http://www.yumekuzira.com/club.asp?div=tokyo
- ^ 「大阪湾東部でスナメリ繁殖か 専門家が本格調査[リンク切れ]」神戸新聞
- ^ 「わたしスナメリ、純粋な水族館っ子 人工飼育では世界初めてです」『朝日新聞』夕刊1976年(昭和51年)4月17日3版7面
- ^ [1]
- ^ 「スナメリ20年ぶり捕獲・農水省許可で9頭 鳥羽水族館」『中日新聞』2004年11月13日
- ^ 통영서 이틀간 상괭이 35마리 그물에 잡혀 : 네이버 뉴스2008-10-31 10:39
- ^ 「仁川海域でクジラ類混獲が急増 今年1377頭」聯合ニュース 2012/10/25 14:19 KST
- ^ 환경운동연합 "상괭이 혼획 국제진상조사 요청" : 네이버 뉴스2008-11-04 15:54
関連項目
外部リンク
- 水産資源保護法に関る鯨類の取り扱い 鯨ポータル・サイト
- 海棲哺乳類図鑑「スナメリ」国立科学博物館 動物研究部
- スナメリと会える水族館