たがや
たが屋(たがや)は、落語の演目の一つ。原話は不明だが、江戸時代から高座にかけられてきた非常に古い噺。主な演者として、3代目三遊亭金馬や5代目古今亭志ん生、5代目柳家小さん、5代目三遊亭圓楽などがいる。
概要
江戸の両国橋上で起こったドタバタを描いた作品で、「町人階級の侍に対するレジスタンス」と評される[1]。夏の寄席の定番として口演され、原話ではたが屋の首が飛ぶ内容だった[1]。幕末に入り、たが屋が武士に対して抵抗を見せる話へと変わった[1]。1855年(安政2年)、江戸の大地震の特需によって職人が寄席に集まるようになり、職人仲間のたが屋に花を持たせるように改作したとされる[1]。
あらすじ
花火を楽しもうとする大勢の人でごった返している両国橋。そこに馬に乗った侍がお供を連れてやってくると、町人達を無理やり掻き分けて通ろうとする。
そこに反対方向から道具箱を担いだたが屋が通りかかるが、人々に揉まれてあちこち振り回されたあげく道具箱を落としてしまう。その途端、中に入っていた箍(たが)が弾けてその先が侍の笠を弾き飛ばしてしまう。
お供の侍はいきり立ち、謝るたが屋を手討ちにすると言い出す。たが屋は平謝りに謝り、周りの町人達も許すように言うが侍たちは聞こうとしない。とうとうたが屋は「斬れるものなら斬ってみろ!」と開き直る。気圧された供侍が斬りかかってくるが、刀の手入れが悪い上に稽古もサボっていたせいで腕もガタガタ、あべこべにたが屋に刀を叩き落されてしまった。慌てて拾おうとするが、たが屋が手を伸ばすほうが早く、供侍は斬られてしまう。今度は主の侍が槍を構えて突きかかってくるがたたが屋は槍をつかんで離さない。侍は槍を放して刀に手をかけるが、たが屋が刀を振ると斬られた侍の首が中天に飛ぶ。見物人たちが思わず「上がった上がった上がった!たァが屋ァ〜」。
その他
光文社文庫から発行されている異形コレクションの1冊、『夏のグランドホテル』にこの落語が登場している。飯野文彦作の『お迎え』という作品で、主人公のライバルである烏亭閻馬という噺家が主人公と競い合うように高座にかけていた。