電球形蛍光灯
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/0/07/02_Spiral_CFL_Bulb_2010-03-08_%28black_back%29.jpg/230px-02_Spiral_CFL_Bulb_2010-03-08_%28black_back%29.jpg)
電球形蛍光灯(でんきゅうがたけいこうとう、同音異字:電球型蛍光灯)とは白熱電球用ソケットに直接装着して使用できる蛍光灯のである。
蛍光灯器具同様のインバータ点灯回路と小型の蛍光灯を曲げたものを一体化し、白熱電球用口金を備えてそのまま白熱電球器具で使用できる形状にしたものが市販されている。
世界的に低消費電力を武器に白熱電球からの置き換えが進められているが、LEDの発達に伴い登場しつつあるLED照明の低価格化との関係や、脱水銀の動きの影響が注目される。
主な特徴
- 従来の蛍光灯と同じく白熱電球と比べて光量の割に消費電力が低い[1]ので長時間連続で点灯する用途に向いているが、寿命が短くなるので点滅を頻繁に繰り返す用途には不向きである。発光効率では15lm/Wの白熱電球に対して60-70lm/Wである。
- 白熱電球と比べて長寿命である。[2009年発売のもので寿命は6000 - 13000時間]。
- 白熱電球と同じE26口金や灯屋形状に合わせた製品が販売されており、簡単に置き換えられるようになっている。
- 点灯までに一拍空き、また点灯直後は暗く、本来の光量になるまで少し時間(1~数分)がかかる。詳しくは「白熱電球から交換した場合の欠点」の項を参照。
歴史
第一次石油ショックを受け、1973年に「ワット・マイザー」という高効率蛍光管を発明したエドワード・ハマー(en)が率いるゼネラル・エレクトリックの開発チームが1976年に二重螺旋構造の電球形蛍光灯を発明したとされる[2]。しかし製造工程に必要な巨額の投資が見送られ、商品化されなかった。
その後、1980年7月に東芝が世界初の電球形蛍光灯を発売した[3]。1984年には密閉形ガラスグローブ、電子点灯回路を組み込んで軽量化した商品を発売した。それからも従来の白熱電球と同様に使用できるよう、明るさの向上、コンパクト化が図られ、より軽量なインバータによる点灯回路を採用した方式も商品化された。特にE17口金を持つミニタイプでは、マイクロチップ化した電子回路を口金部分に収納したことで、形状が従来の白熱電球とほぼ同一になり、重量も約60gになっている。
なお、21世紀の社会的動向については後述の「白熱電球からの切替を促す世界的な動き」および「環境への配慮」の項を参照。
利点と欠点、それに関わる情勢
白熱電球から交換した場合の利点
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/e/e1/Energiesparlampe.jpg/90px-Energiesparlampe.jpg)
蛍光灯の特徴として、白熱電球に比べて製品寿命が長く、省電力である。白熱電球比約20-25%の電力消費量で同等の照度が得られ、結果として発熱も少ない。
1個あたりの価格は高いものの、これらの利点から長期間の標準的な利用状況下[4]では経済面とエネルギー問題の両面で負担を軽減させられる(具体的には、経年劣化による交換の頻度が低くなる。電力消費量が少なくて済み、エネルギー消費量と電気料金が軽減される)。2000年代末の時点で大手メーカー製品は日本円にして800円程度からの販売となっているが、中国製や東南アジア製を主とする100円程度[5]の低価格商品も流通している。なお、最近では消費電力量で白熱電球比20%を切るものもある。
白熱電球から交換した場合の欠点
- 点滅寿命
- 蛍光灯の特性上、(特殊なものを除いて)頻繁に点滅を繰り返すことによって寿命が低下する[6]。なお、近年の製品では電源投入時に即点灯せずに0.5秒ほどの電極予熱時間を確保することによって点滅耐性を向上させたものが主流であり、一部では点滅寿命が4万回を超えるものもある。
- 点灯時間差
- メーカーや製品によって点灯するまでの時間に差があり、所要時間の長い製品をトイレ等で使用した場合、体感上気になる場合がある。パナソニックはこの問題を克服するために、2008年6月に発売した「パルックボールプレミアQ(クイック)」で、蛍光管の内側に小型の白熱電球を収めた「ハイブリッド点灯」と呼ぶ方式を採用した。室温25℃では点灯後約1秒で60%、60秒後に90%の明るさを得ている。ただし、室温5℃ではそれぞれ30%と65%になる(照度も参照)[7]ほか、この白熱電球は電球型蛍光灯の消費電力を上回る欠点がある。
- 照度
- 蛍光灯の特性上、点灯直後や低温時にはかなり照度が低い。先述の「パルックボールプレミアQ」でも低温時の照度不足は避けられない。そのため、(電球色で支障がない場合は)春夏秋は蛍光灯・冬季は白熱電球と使い分けることもある。
- 調光回路との互換性
- 電子回路を内蔵しているため、調光回路などの白熱電球の特性を利用した回路を備えた器具には、対応した電球形蛍光灯が必要である。
- 密閉型機器・断熱型機器への対応の問題
- 門灯やポーチライトといった密閉型の機器や、天井に断熱材が入っているところに使用するダウンライトなどの断熱型機器に使用する場合には注意が必要である。電球型蛍光灯は白熱球と異なり、蛍光管の制御機器が電球内に入っているため高温に弱い傾向があるので、熱がこもる機器では極端に寿命が縮んでしまうことがある。そういった機器のために購入する際には、必ず密閉型機器にも使えるという旨が記されている対応品を選択する必要がある。
- 有害物質の問題
- 白熱電球には含まれていない水銀が、2010年現在販売されている電球形蛍光灯には使われているため、過去に半田の成分から鉛が除かれたり水銀を使用する電池の利用が避けられたりしたのと同様に、今後電球形蛍光灯が廃棄物として廃棄される場合、環境への影響を考慮して脱水銀の対象に加えられることが予想される。
多くのメーカーが電球色、昼光色、昼白色といった3種類ほどの色調の蛍光灯を製造しており、用途や好みに応じて選ぶことができる。
白熱電球からの切り替えを促す世界的な動き
地球温暖化問題と絡み、電力消費量を抑える観点から電力消費量が大きく製品寿命が短いという欠点を持つ白熱電球の生産・販売を今後一切せず、電力消費量が小さく長寿命である電球形蛍光灯への切り替えをメーカーおよび消費者に促す動きが世界的に広がっている。特に米国、フランス、オーストラリアでは白熱電球の生産と販売を今後[いつ?]法律で禁止することが決まっている。日本においては、経済産業省と環境省が白熱電球の生産と販売を終了して電球形蛍光灯のみを生産することを電機メーカー各社に要請していく旨を2007年11月に申し合わせている。
また2008年4月には東芝ライテックが2010年度をめどに白熱電球生産・販売の完全終了を決定、2010年3月17日に生産を終了した。パナソニック(旧・松下電器産業)も、その後を追うようにして白熱電球の生産は困難・特殊用途[8]への対応だけに限定することとして点滅耐性を高めた電球形蛍光灯の生産量を増やす方針を発表した[9]。
種類
形状による違い
-
G形(当初の形状)
-
R形
ここでは、日本工業規格(JIS) C7710に基づく分類としてガラス球部分の形状種別を示す。
- A形 一般電球形状
- D形 発光管露出形状
- G形 ボール電球形状
- T形 円筒型電球形状
- R形 レフ形
D形は当初は点灯回路収納部から口金の回転軸と平行に直線で立ち上がっていたが、直線の部分が短く改良され、ついには立ち上がりから螺旋(らせん)状のものも登場した。より長くより細い発光管をコンパクトに巻き上げることで、光量を維持しつつ消費電力を抑えられるためである。
G形は当初は点灯回路収納部の縁に厚みがあり、ボールとの境目の段差が大きかったが、灯具によって干渉するため縁の厚みが薄く改良されていっている。
1998年に登場したT形(U字型をしたタイプ)は高所での交換がしやすい形状として開発されたものであるが、密閉型器具だと蓋が閉まらないという欠点があったため、2009年現在ではあまり売られておらず、販売をやめたメーカーもある。
その他に口金で分類できる。まず、白熱電球で多く用いられているE26口金タイプが登場した。その後E17口金タイプも登場したが、当初はE17口金の白熱電球より大きく器具によっては使用できなかった。しかし、2009年現在では白熱電球と同等の大きさのものも登場し、この問題は解消されつつある。
用途による色の選択肢
白色、昼白色、電球色などの色の違いの製品が販売されている。白色、昼白色の場合、特定の波長の色を強調してあるため、同じ電力消費量で比較すると視認性が高まり、勉強部屋やモダンなリビングの全体照明に適している。ただし、網膜に映る三波長を強調された画像を頭の中で色調を補正し直して認識する必要があるため、人体に対する負担は増大する[要出典]。そのため、勉強部屋の机のスタンド照明など、小さな活字を長い時間見つめたり、細かい作業をする用途には、白熱電球や電球色の蛍光灯が選ばれる場合も多い。もっとも、高齢者にはこれらの電球色は暗く感じられる場合がある。 水銀灯レベルで口金はE39の商品もインターネット上で販売されており、概ね電力使用量が1/3~1/4程度まで下がる。
無電極タイプ
無電極タイプはより長寿命で、頻繁な点滅の繰り返しにも対応するが、電極タイプに比べると高価である。
主なメーカー、ブランド名
- NECライティング:ホタルックボール
- オスラム:DULUX
- オスラム・シルバニア
- オスラム・メルコ(三菱オスラム):スパイラルピカ、ルピカボール
- オーム電機:省エネボール
- ゼネラル・エレクトリック:Spiral、Blax
- 東芝ライテック:ネオボール
- パナソニック:パルックボール
- パワーグリーン・ジャパン:スパイラル蛍光灯E39
- 日立ライティング:ナイスボール、ルミボール
- フィリップス:ESaver
脚注
- ^ 力率がかなり低いために、実際には2倍程度の電流を必要として電力網に負担をかけるとするレポートがある([1])。
- ^ [2]
- ^ 世界初の電球形蛍光ランプ「ネオボール」
- ^ 点滅の頻度が著しく高い場合などは、標準的でない(→白熱電球から交換した場合の欠点)。
- ^ 日本において100円ショップなどで売られているもの。
- ^ 頻繁な点灯を繰り返す場所にはLED電球が経済的である。
- ^ “業界初「ハイブリッド点灯方式」実現”. パナソニック. 2008年6月9日閲覧。
- ^ 白熱電球は内部の部品が発熱することで発光するのに対し蛍光灯は点滅の連続によって発光するため人体に対する負担は増し、勉強用のデスクのスタンド用などの用途の需要がある。
- ^ 2008年7月発売の「パルックボールプレミアQ」シリーズ以降は全て「パナソニック」ブランド。