船舶工学

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船舶工学(せんぱくこうがく、英語:marine engineering)とは、船舶に関する工学である。特に設計理論や造船工作に関わる領域を指して造船学とも言う。

本項目では水上船舶の工学について説明する。潜水艦ホバークラフト水上での表面効果を利用した航空機などは別記事を参照のこと。

目次

概要[編集]

船舶工学は船舶の建造(造船)、安全な航行方法や運航にかかわる人間の育成、検査、補修、合理的な海上物流などを取り扱う工学である。船舶はまず水上において航行する能力が求められるが、これを効率的で安全に行うために、波や浮力についての物理学的知識と、具体的な船体設計のための構造力学及び機械工学が必要となる。船舶は貨物や旅客の輸送などさまざまな用途に用いられるため、その目的に適した設計が研究されている。

船型[編集]

船舶は大分類として以下の3つ船型とそれらの分類外のその他の特殊な船型に類別できる。

  • 単胴船(モノハル・シップ)
  • 双胴船(カタマラン・シップ)
  • 三胴船(トリマラン・シップ)
  • その他 水中翼船など

単胴船、双胴船、三胴船の違いは水面下に沈む下部船体の数である。 また、双胴船や三胴船での高速船用の船型としてウェーブ・ピアーシング型(波浪貫通型、Wave-piercing)の船舶が2000年代前半から実用化されている。

単胴船[編集]

代表的な船型

水面下に沈んで水と直接接する船体が1つである船型である。 多くの船が単胴船であり、船舶の歴史においても最も古く、船舶設計や造船技術の基本となった。 双胴船や三胴船は単胴船からの派生デザインといえる。 1人乗り手漕ぎボートから大型タンカーまでの船舶が単胴船であり、特に高速航行や波浪に対する非常に高い安定性、幅広い甲板を求めない場合には、燃費や建造コストの点で有利である。 水と接する船底部の形によって「ラウンドビルジ型」と「ハードチャイン型」に分かれる。多くの単胴船は船底が丸くスムースなラウンドビルジ型となっているが、船底での揚力を得て水面を滑走するモーターボートのような小型艇は鋭角的な船底を持つハードチャイン型である。また、はしけの仲間は流線型をとらずに四角い箱型の「バージ船型」というものもある。

単胴船での甲板上の上部構造物(上構)の配置によって、更にいくつかの船型に分けられる。上甲板上の建造物の内で左右の両舷に渡って占めているものを「楼」(ろう)や「船楼」(せんろう、Erection)と呼びその位置によってそれぞれ、船首楼(Forecastle)、船橋楼(Bridge)、船尾楼(Poop)と呼ばれる。この楼の配置によって以下のように分かれる。

  • 平甲板型:大型タンカーに多い
  • 凹甲板型:ウェル甲板型とも呼ばれ、小型の貨物船に多い
  • 三島型:昔の貨物船の標準形、またはタンカーに多い
  • 全通船楼型:客船フェリー、PCC(自動車専用船)などに多い

双胴船[編集]

ポリネシアで使われていた双胴船

水面下に沈んで水と直接接する下部船体が細長く左右2つに平行している船型である。上部船体部分はほぼ四辺形に広く取れるため車輌用フェリーや海上作業用プラットフォームに適している。波浪に対しては特に左右方向の揺れ(ローリング)が単胴船に比べて小さくなる利点がある。このことから、ブローチングに対する危険度が減じられる。しかし横波による揺れ(ローリング)の固有振動数が高く、少しの短波長の横波でも波に追従して激しく揺れるという問題点がある。

曳き波の発生が単胴船に比べて小さいことも、高速航行時にも周囲への影響が少ない点で有利となる。センターバウがあればバウダイビングに対する安全性の確保に貢献する。

双胴船は古くから考案されていたが、単胴船に比べて水中表面積が増加し摩擦抵抗や粘性圧力抵抗が大きくなる点や、下部船体を左右に分ける事による強度確保のため船体重量が増すことで造波抵抗と他の2つの抵抗を増やしてしまうなどの不利な要素が排除出来ずにいたが、軽量なアルミ合金の普及により実用的な双胴船が建造されるようになった。

三胴船[編集]

海上自衛隊の高速小型水上標的1形
三胴船の中央断面図
三胴の外洋レース帆船
水面下に沈んで水と直接接する下部船体が中央に1つ、左右に2つ、細長く平行している船型である。中央船体(センターハル)が大きく、左右の船体(サイドハル)はいくぶん小さく構成されていることが多い。双胴船と同じく上部船体部分は左右方向にも広く取れ、中央船体で主要な重量を支えられるために重量配分が双胴船と比べれば単純となる。

オーストラリアの超高速カーフェリー「トリウムファント」(後に「ドルフィン・ウルサン」と改名)が最初の実用船であったが1年ほどで引退し、さらに大きく早い「ベンチジグア・エキスプレス」(127m, 40kn)がカナリー諸島で就役している。

三胴船は双胴船の欠点である横波による揺れを解決するために、左右の下部船体を小さくすることで横波による揺れの固有振動数を長くして、少しの横波ぐらいでは揺れないようにしている。

双胴船と同様に、センターバウがバウダイビング(後述)に対する安全性の確保に貢献する。 中央船体の大きな三胴船は単胴船の左右にアウトリガーを付けて左右復原力を確保した船型とも考えられるため、別名「スタビライズド・モノハル」とも呼ばれている。

双胴船と比べて三胴船はまれであり、主に高速フェリーや外洋レース用として利用されている。

また軍用艦艇ではアメリカ海軍のインディペンデンス級沿海域戦闘艦や、海上自衛隊の水上標的に採用されている。

ウェーブ・ピアーサー[編集]

双胴船や三胴船での下部船体を特に細長くすることで造波抵抗を減少させ、超高速航行を可能にした船型。

単胴船では船体を極端に細くすると横波に対する十分な復原力が得られず容易に転覆する危険があるため、ウェーブ・ピアーサー(Wave piercer)は多胴船に採用される。

水中翼船やホバークラフトでは排水量と水中翼の大きさや船底の広さの関係が2乗3乗の法則に縛られてしまい、実用可能な船体規模が制約を受けるが、排水量型であるウェーブ・ピアーサーでは2乗3乗の法則が制約することはないため、超高速航行が可能な大型船舶は必然的にウェーブ・ピアーサー型になる。

船体が細長くなるため貨物の量や幅に制限が生じることから、主に積載量より速度を重視する超高速フェリーや高速航海記録に挑戦する特殊なレース船など、外洋を超高速で航行する船に採用されている。

軍用艦では中国人民解放軍海軍で運用されている紅稗型ミサイル艇中華民国海軍で2015年3月末より運用開始した沱江級コルベットに採用されている。

オーストラリアインキャット社は主にウェーブ・ピアーサー方式の船を建造している造船会社である。

ナッチャンWorld(双胴式の高速フェリー) 
アースレース(三胴式の速度記録挑戦船) 
アディ・ギル(アースレース)の後部 
沱江級コルベット 

その他の船型[編集]

その他の船型として水中翼船、表面効果船(地面効果翼機)、ホバークラフトなどがある。

船体線図[編集]

船体線図の構成
3方向から見た船型を3枚の図面で示す(色は説明を見やすくするために付けた。)[1]

水面下の船体の形は船型(せんけい)と呼ばれ、流体力学的に最適の船型が求められる。船型を表す図面は船体線図(せんたいせんず、Lines)と呼ばれ、正面正図(Body Plan)、側面図(縦裁線図、Sheer Plan)、水線面図(半幅平面図、Half Breadth Plan、Water Line)の3方向から見た図で示される。正面正図では右側に最大船幅より前側の形状を示し、左側には後側の形状を示すのが普通である。船体線図はいくつかに区切りられた図面であり、これを3次元的に拡大しても曲面にはならない。3次元的な曲面にする作業はフェアリングと呼ばれ、近年ではコンピュータ上で行なえるようになっている[2]

浮力による分類[編集]

船舶は最も一般的な排水量型の船の他にも浮力によっていくつか特殊なものがあり、以下のように分類される。

排水量型(Displacement)
最も一般的な船体下部が水面下に沈むことで浮力を得る船である。航行時と停船時のいずれでも浮力を得る方法に変りはない。
滑走型(Skimmer)
高速艇やモーターボートなど、低速度では排水量型のように水面下に沈む部分で浮力を得ているが、高速時には船体が浮き上がり水面上を滑るように進む船である。
水中翼型(Hydrofoil)
水中翼が水中で発生する揚力によって船体を水上に持ち上げて進む船である。停止すれば排水量型の船と同じように船体下面が水面下に沈む。
  • 半没翼型
  • 全没翼型
エアクッション型
完全浮上型
ホバークラフト(Hover craft、エアクッション艇)、地面効果翼機(例、エクラノプラン
側壁型
側壁型(表面効果船、Surface Effect Ship、SES)の浮揚原理はホーバークラフトに近く、船体下部の側壁と水面・船底で囲まれた空気をクッションとして船体を持ち上げて進む船である。船体の一部は水面下にあり、推進力は水面下の側壁後端の推進器で得る。停止すれば排水量型の船と同じように船体の下半分が水面下に沈む。

船体運動[編集]

主に波による船体の揺れの6自由度を、次の成分で定義する。

回転運動[編集]

  • 船首揺れ(ヨーイング; Yawing)……垂直を中心軸に、水平面で時計廻り反時計廻りに回転する。
  • 横揺れ(ローリング; Rolling)……船首船尾を中心軸に、右廻り左廻りに回転する。
  • 縦揺れ(ピッチング; Pitching)……左右を中心軸に、前転と後転に回転する。

平行運動[編集]

  • 左右揺れ(スウェイング; Swaying)
  • 前後揺れ(サージング; Surging)航行中は船体の速度の増減となる。
  • 上下揺れ(ヒービング; Heaving)

トリム[編集]

船首喫水と船尾喫水との差をトリムと呼ぶ。

  • バウトリム:船首喫水が大きい時
  • イーブンキール:船首喫水と船尾喫水との差がないとき
  • スターントリム(またはアフトトリム):船尾喫水が大きい時

水の抵抗を最小にするにはイーブンキールが良いが、貨物船などでは空荷の時に船尾のプロペラが水面上に出てしまう場合には、わざとスターントリムにして船尾を下げることがある。コンテナ船では少しでも燃費を改善するために、積載時のコンテナ配置と運航中の燃料の消費に合わせて前後のトリムタンクの注水量を加減し、いつでもイーブンキールになるようにしている[3]

各部の名称[編集]

船の各部の名称
船体の各部

船は船本体である「船体」(せんたい)とその上に設けられた「上部構造物」(じょうぶこうぞうぶつ)から構成される。 船は前から後ろに向かって、船首部、中間部、船尾部と分けられるが、どこから分けるのか厳密な区別は無く、船体の曲線がほぼ直線的な部分が中間部とされているが、かなりあいまいである。

船体・上部構造物[編集]

船からさまざまな機械類・装備類を取り外して水面に浮かんでいられる器だけの船の本体を「船体」(Hull)と呼ぶ。船体は造船技術用語では船殻(せんこく)と呼ばれる。船体の左右側面は「」(げん)や「舷側」(げんそく)と呼ばれ、その上縁部もまた「舷」「舷側」や「船縁」(ふなべり)「船端」(ふなばた)」などと呼ばれる。船体の上面は、上甲板と呼ばれる強度を備えた単一平面の甲板で覆われることが一般的である。船体より上の構築物は上部構造物や上構(じょうこう)と呼ばれ、船室などに当てられることが多い。上構の中でも横方向に占める構造物の幅が左右舷一杯に達しているものは「楼」と呼ばれる。 船に取り付けられた機械類・装備類は「艤装品」(Equipment)や「艤装」(Rig)と呼ばれる。

船首部[編集]

日本語での「舳先」(へさき)に相当する船首の先端部は特にStemと呼ぶ。 船首(Bow、バウ)は「おもて」(艏、舟偏に首)に相当する。 船首部の、上が広がった形態はフレア(Flare)と呼ばれる。 船首部の上甲板が船首方向に行くに従ってなだらかに持ち上がっている形態はシアー(Sheer)と呼ばれる。シアーによって船首部の乾舷(かんげん、水面からデッキまでの高さ)を高くとることでバウ・ダイビングや青波(Green water)を減らす効果が期待できる。 シアーや船首楼とは別に、船首上端にフレアの一部として付けられた波除けの板はブルワーク(Bulwark)と呼ばれる。

船体外板はシェル・プレイティング(Shell plating)とも呼ばれる。 甲板は船の主要な構成部分で強度部材の1つであり、船体上にあって水平に広く取り付けられた金属製、FRP製の板材であるとともに、上部構造物を含む全ての船内空間の床板である。ただし船底の床だけは甲板とは呼ばない。見張り台の様な足場は甲板には数えない。

上甲板(上部甲板、Upper deck)は水密構造となっている船体のすぐ上にあって船首から船尾まで続く甲板であり、浮体としての船体のフタを構成している甲板といえる。上甲板は他の多くの甲板と同じく船体強度を保つ重要な構造材の1つである。船全体を地上のビルに例えれば上甲板は地上1階の床面に相当し、上甲板より下の部分は地階に、上部構造物のそれぞれの階はビルの地上階に相当する。
風雨に曝される甲板は露天甲板(ろてんかんぱん)と呼ばれ、多くの貨物船などでは上甲板は通常、露天甲板であるが、自動車運搬船や大型客船などは上甲板の露天部分はほとんどない。
  • 上甲板から水面までを乾舷(Freeboard)と呼び、水面から船底下面までを喫水(きっすい)と呼ぶ。
  • 錨を繋ぐ鎖を入れておく鎖錨庫はチェイン・ロッカー(Chain Locker)と呼ばれる。
  • 錨鎖(ホーサー、Hawser)を通す管は錨鎖管(ホースパイプ、Hawsepipe)と呼ばれ船首側面や、まれに船首正面の錨鎖孔(Hawsehole)に開口している。小型船を除けば、錨鎖孔は錨を引き込んで格納するベルマウス(Bell mouth)となっている。
  • 船首部上甲板には多数の係船用装置類が並んでいるのが普通である。詳しくは本項目の#係船装置を参照のこと。
  • 船首部の上甲板上にある両舷に渡ってつながった構造物は、船首楼と呼ばれる。
  • 船首楼の上甲板より上に位置する部屋は、ボースンズ・ストア(Boatswain's Store)と呼ばれる。
  • 船首部の上甲板より下に位置する空間のタンクは、フォア・ピーク・タンク(Fore Peak Tank)と呼ばれる。
  • 船首部とそれに続く船体とを隔てる船首隔壁はコリジョン・バルクヘッド(Collision Bulkhead)と呼ばれる。船首隔壁は同時に第一隔壁である。

中間部[編集]

船体内部の左右に浮力を調整する水タンクは、バラスト・タンク(Ballast tank)と呼ばれる。バラスト・タンクは船内に多数あり、多くが船体左右や前後の外板にそって配置されている。

  • 船体の甲板は上甲板の下は中甲板と呼ばれ、多層の場合には第一・第二と番号が振られる。
  • 船体を前後方向に貫く壁は縦隔壁と呼ばれ、船の用途によって位置や数が全く異なる。
  • 横隔壁と縦隔壁は合わせて水密隔壁と呼ばれ、水密隔壁と船体外板や船体外板に沿って設けられたバラスト・タンクで区切られた空間は、水密区画と呼ばれる。

船体内部を横に仕切る隔壁はバルクヘッド(Bulkhead)と呼ばれ、船首隔壁を便宜上第一と数えて第二隔壁、第三隔壁と呼ばれる。隔壁の強度が要求される箇所では波型隔壁(Corrugated Bulkhead)と呼ばれる縦方向に多数の折り目が付けられた鉄板によって隔壁が作られる。

  • 貨物船では貨物を船内へ収容する空間を船艙(せんそう、ホールド、Hold)と呼ぶ。
  • 普通、船艙は縦隔壁と横隔壁で区切られ、それぞれに番号が振られている。
  • 貨物船では上甲板や中甲板にハッチが設けられ、各船艙毎に1-4つ程度の開口部となる。
  • ハッチの周囲はハッチ・コーミング(Hatch Coaming)と呼ばれる立ち上がり部を持ち、ハッチカバー(Hatch Cover)で覆われている。
  • 上甲板の手すり柱はスタンチョン(Stanchion)と呼ばれる。
  • 船体の側面は船腹(せんぷく)と呼ばれる。船腹の窓は舷窓(げんそう、Porthole)と呼ばれ確実に閉鎖して水密が保てるように作られる。

船内でも最下層の船底部左右舷に計2本ある前後に長い窪みはビルジ(Bilge)と呼ばれ、そこに溜まる汚れた水も同じくビルジと呼ばれる。ビルジ部の船体外面にある減揺のための鋼鉄板はビルジ・キール(Bilge keel)と呼ばれる。船底を船首から船尾まで貫く太い構造部材はキール(keel)や竜骨と呼ばれる。

船の右側は右舷(うげん、Starboard)、左側は左舷(さげん、Port、Port side)と呼ばれる。

船体中央と機関室前端とを隔てる隔壁は機関室前端バルクヘッド(Machinary Fore Bulkhead)と呼ばれる。何も使用していない空き空間は、コファダム(Cofferdam)と呼ばれる。機関室後端とそれに続く後部船体とを隔てる隔壁は機関室後端バルクヘッド(Machinary Aft Bulkhead)と呼ばれる。

  • 船橋のある部分の上甲板の上に建つ構造物で両舷に渡りつながったものは、船橋楼と呼ばれる。
  • 船橋は船首にあるものや、中央やや後ろにあるもの、船尾にあるものなど、船の種別や役割、大きさ、利便性、安全性、居住性などを考慮して決められるため、船それぞれで多様な配置をとる。
  • 船橋部分は上階から順に、コンパス甲板(Compass Deck)、船橋甲板(Navigation Bridge Deck)、船長甲板(Captain's Deck)、ボート甲板(Boat Deck)、上甲板(Upper Deck)と呼ばれる場合や、Aデッキ、Bデッキと呼ばれる場合、1番デッキ、2番デッキと呼ばれる場合などがある。
  • 船橋甲板には一般に船橋(ブリッジ、Bridge)とも呼ばれる操舵室があり、船長をはじめ航海士が操船に当っている。機関室の一角にはエンジン・コントロール・ルームがあり、機関長をはじめ機関士が主機関と多種の補機類の運転操作を行なっている。
  • 20世紀末からは多くの船で、エンジンのコントロールは操舵室でも行なえるように変わりつつあり、機関長をはじめ機関員が船橋に詰めることが珍しくない。

多くの船では、船橋の両脇にウイング(Wing)と呼ばれる左右に突き出て人が立てるようになっている部分があり、主に岸壁への接岸時や水路通航時に舷側(げんそく)と陸との距離を目視によって確認するのに使用される[4]

煙突はファンネル(funnel)とも呼ばれる。 上甲板や楼などにマスト(Mast)が立っている。

船尾部[編集]

船尾部はStern(艉、(舟偏に尾と書く)、とも、スターン)と呼ばれる。

  • 船尾部の露天甲板には係船用のロープを繋ぐ設備が備わっており、船によっては投錨設備も付いている。
  • 船尾部の上部甲板上にある両舷に渡ってつながった構造物は、船尾楼と呼ばれる。
  • 後部船体と船尾部を隔てる隔壁は船尾隔壁(Aft Peak Bulkhead)と呼ばれる。
  • 船尾部の上甲板より下に位置する空間のタンクは、アフト・ピーク・タンク(Aft Peak Tank)と呼ばれる。
  • 船尾が丸くなっておらず、切り落としたように平面で構成されている場合の垂直板をトランサム(Tramsom、船尾肋板、せんびろくばん)と呼ぶ。トランサムが無く、船首も船尾も丸みを帯びてとがっている船は「ダブルエンダー」(Double ender)と呼ばれる。
  • 大多数の船では船尾船底部にスクリューが備わっている。

船体規模[編集]

船舶はその大きさがトン数によって示される。トン数による表記には大きく分けて、船体そのものの重量を示すものと船体内部の容積を示すものとがある。

トンとは酒樽のことであり、トン数で船の大きさを示すのは、15世紀におけるイギリスでは酒樽によって商船が課税されていたことに由来する。トン数と課税には関係が深く、現代でも船への課税は船の大きさを示すトン数を基準に行なわれるため、船主にとっては課税計算に使われるトン数は出来るだけ小さいほうが経済的である。

たとえば、日本では政府の政策としてトラック輸送を陸路ではなくフェリーによる海上交通へ誘導したいために、課税のもとに使われる「国内総トン数」の計算ルールを車輌デッキを2層備えるRORO船では特に小さくしているため、こういった日本国内のフェリー船が海外へ売却されたとたんに総トン数が倍にもなる場合がある。

載貨能力[編集]

多くの貨物船では貨物の積載能力を重量、または容積で表す。

  • 重量:載貨重量トン
  • 容積:立方フィート、または立方メートル

運搬する対象に特化した貨物船では、それぞれの貨物をいくつ運べるかで船の大きさを表現する方法も一般に用いられる。

  • コンテナ船では運べる最大のコンテナ数を20フィートコンテナの数であるTEU(Twenty Feet Equivalent Unit)という単位で表す。
  • LNG船は備えるタンクの合計容量を138,000m3のように立方メートルで表す。
  • 自動車専用船では乗用車が何台積載できるかで表す。

重量[編集]

船舶としての規模を示す場合には貨物などを積まない状態での船体の重量を示す「軽荷重量」と、貨物、乗客、飲料水、燃料などすべての搭載可能な貨物の総重量を示す「載可重量」がある。

軽荷重量と載可重量を足せば満載排水量になる。船体側面の喫水付近にはその船の設計された満載排水量での喫水高が「満載喫水線円環」や「満載喫水線」[5]として明示されている。水の密度は水温や塩分濃度で変わるため、場所ごとに数種類の喫水が記号で表示されている。

容積[編集]

船舶の容積は、総トン数、純トン数、責任トン数、パナマ運河トン数、スエズ運河トン数、載貨容積トン数などがある。

長さ[編集]

船の長さ

船の長さを表すには、いくつかの異なった方法がある。

全長(LOA、Length over all)
最も簡単に船首の先端から船尾後端までの長さ
水線長(LWL、length waterline)
満載喫水線での船体前後の長さ
登録長(Registered length)
上甲板の下面における船首材前面から船尾材後面までの水平距離
垂線間長(英国式=LPP、米国式=LBP、Length between perpendiculars)
満載喫水線における船首材前端(前部垂線)から舵柱もしくは舵頭材の中心(後部垂線)までの距離 垂線長とも呼ばれる


[編集]

船の幅、深さ、喫水

船の幅を表すのにもいくつかの方法がある。

最大幅(Breadth extreme)
船体の最も幅のある部分での長さ
型幅(Molded breadth)
左右の外板の内側同士の距離の最大のもの、つまり船の内側の最大幅
登録幅(Registered breadth)
数値としては型幅と同じ 型幅が造船用語であるのに対して、登録幅は法律用語として使用される。

型幅と型深さと言う「型」が付く呼び方は、古典的な造船方法での竜骨や肋骨等の骨材を組み立てた後で外板を張っていった時代の名残りの測り方といえる。

深さ[編集]

近海以上を航行する船舶に付けられる満載喫水線円環
満載喫水線の表示
喫水(きっすい、Draft)
水面から船底の最下端までの垂直距離であり、水の密度や船の重量によって変化する。「吃水」とも書き、船脚(ふなあし)とも呼ばれる。
型深さ(Molded depth)
垂線間長(LPP)の中央部で舷側において基線、つまりキール(竜骨)の上面から上甲板の下面までの垂直距離。

船体中央部舷側に満載喫水線マーク(満載喫水線標、フリーボードマーク、乾舷標)を付け、船首などに喫水表示を付ける。

船型[編集]

上記以外に世界各地を航行するとき利用する国際運河海峡などの規模により制限されることもあり、以下に主な船型制限値を記す。

運河などによる船型制限値
名称 全長 全幅 喫水 最大高 備考
シーウェイマックス
226.0m
24.0m
7.92m
35.5m
セントローレンス海路(北米五大湖)における制限値
パナマックス
294.1m
32.3m
12.0m
57.91m
ニューパナマックス
336.0m
49.0m
15.2m
59.91m
2016年6月26日以降運用開始の新運河のみ航行可能制限
ほかにポストパナマックス、ネオ〜、オーバー〜とも表記されるが
いずれもパナマックス制限超過の意味合いが強い
スエズマックス
77.5m
20.1m
68.0m
閘門のため全長制限は無
全幅、喫水は制限最大値
幅、喫水の制限値は比例して変わる
マラッカマックス
333.0m
60.0m
20.5m
海峡のため高さ制限は無
チャイナマックス
360.0m
65.0m
24.0m
中国の主要貨物ターミナル港で運用できる制限

船体形状の係数[編集]

1.方形肥痩係数 2.柱形肥痩係数 3.中央横裁面係数 4.水線面積係数

船型によって細長い船体や太い船体といった違いがある。これらの違いは以下の係数によって数値的に表現される。

方形肥痩係数
排水容積 V と、喫水 d を高さとし、水線部分の船体幅 B と船体長さ L で構成された直方体との体積比を「方形肥痩係数」(Block coefficient, Cb)と呼ぶ。
柱形肥痩係数
排水容積 V と、最大横裁面積を船体長さ L で乗じた直柱体との体積比を「柱形肥痩係数」(Prismatic coefficient, Cp)と呼ぶ。
中央横裁面係数
喫水線以下の中央横裁面の面積とこれに外接する矩形の面積 B × d との比を「中央横裁面係数」(Midship section coefficient)と呼ぶ。
水線面積係数
喫水線で囲まれた水線内の面積 Aw とこれに外接する矩形の面積 L × B との比を「水線面積係数」(Waterplane coefficient, Cw)と呼ぶ[1]


速度[編集]

船舶の速度は一般にノット(knot:kn)で表される。

1ノットは1時間あたり1海里(かいり、1,852m、ノーティカル・マイル、Nautical Mile:nm)を進む速度である。 1海里は陸上での1マイル(1,609m)とは異なる。 古くは地球の円周部、つまり同一子午線上の海面での地球中心からの角度で1分(ふん、1度の60分の1)に相当する子午線弧長を1海里として使用していたが、地球が真でなく回転楕円体に近い事や国などによって複数の異なる距離の「海里」が存在していた。その後、20世紀中には地球の平均円周を4万kmとしてこれを360x60で割った距離(の小数点以下を四捨五入して丸めた値)である1,852mに統一された。

代表的な船舶の速度に「最大速力」と「航海速力」がある。

最大速力とはまさにその船の最も速い速度であり、普通は公試の時にエンジンを「最大出力」で運転し全力で疾走した時の速力となる。 航海速力とは実際の航海時に常用される速力であり最適なエンジン状態を考慮して設定された値である。 この航海速力時のエンジン出力は「常用出力」と呼ばれ、常用出力と最大出力との差の比は「シーマージン」と呼ばれる。シーマージンは15-20%程度に設定されるため、常用出力は最大出力の80-85%程度になる。

航続距離[編集]

燃料を無給油のまま航海できる最長距離のことを「航続距離」と呼ぶ。大きな燃料タンクに燃料消費率の良いエンジンと効率の良い推進器を備え、船体の抵抗が小さい船が低速で走ればそれだけ航続距離は伸びるが、航続距離を求める場合は常用出力での距離を用いる。 1日・1万馬力あたりの燃料消費量はディーゼル・エンジンで30数トン、蒸気タービンで45トン程である。燃料消費量の多い軍艦を除いて、大きさの割りに燃料消費量の多いのは高速で航行するコンテナ船やフェリーである。

具体的には、

  • 20万重量トン級石油/原油タンカー:約150トンの消費で17,000nm
  • 6万重量トンの撒積船(ばらづみせん):約50トンの消費で15,000-25,000nm
  • 2万重量トン級の貨物船:30数トンの消費で約15,000nm
  • 1,000トン程度の漁船で20,000nm

といったところになる。

馬力[編集]

ワット
従来、船舶エンジンの出力を表すのには「馬力」が使われてきたが、国際単位系と呼ばれる「ワット」(Watt)が国際的な取り決めや公式な場で使用される事で、公式な記載方法では普及が進みつつある。しかし、これまで慣れ親しんだ馬力は21世紀初頭の今でも日常的な使用としてはワットよりも主流で使われている。
馬力
馬力にはメートル馬力と英馬力がある。
メートル馬力
1PS = 約735.5 watt
「メートル馬力」は別名「仏馬力」とも呼ばれ、現在の日本を初め多くの国で採用されている。昔の「日本馬力」とはまた違うことに注意すること。
英馬力
1HP = 約745.7 watt
「英馬力」:ヤード・ポンド法を使用する国で使われている。
図示馬力(Indicated Horse Power, IHP)
機関内部で発生する馬力
制動馬力(Brake Horse Power, BHP)
機関外部に取り出すことの出来る馬力
軸馬力(Shaft Horse Power, SHP)
スクリューを回す軸での馬力
蒸気レシプロ・エンジンでは図示馬力を使い、ディーゼル・エンジンでは制動馬力を、タービン機関では軸馬力を使うのが慣例である。

浮力[編集]

アルキメデスの原理から、液体や気体といった流体中の物体にはそれが押し退けた流体分の重量と等しいだけの上向きの力が作用する。これが浮力の原理であり、浮力は流体(船舶の場合には水)の密度重力加速度、物体が流体中に占める体積の積として算出できる。

船が正しく設計・造船されていれば、浮力を利用することで、波浪等で船体が傾いても復原性を発揮することが可能となる。

物体の重量が浮力より小さければ、流体上に浮いていられるが、物体の重量が浮力を上回れば物体は流体中に沈んでしまう。ヨットが大嵐にいくら揉まれても簡単に沈まないのは、船体が比較的強固に造られているため、たとえ180度上下が逆さまになっても船体の気密性が保たれている限り、内部の空間が十分な浮力を生み出すためである。

水の密度と喫水[編集]

海水では塩が溶けている分だけ淡水に比べて密度が高くなる。流体の密度が高くなると浮力も増えるため、淡水と海水では船の浮力の違いによって喫水が変化する。 アラビア半島死海は塩分が多く溶け込んでいるため、海水浴客の体が良く浮かぶことで有名である。

波の特性[編集]

波高[編集]

波の高さは ビューフォート風力階級 0-12 で表す。 0では0-0.2m/s 12では32.7m/s以上になる。

波岨度[編集]

波の山と山の最高点間の水平距離を「波長」、波の山と谷の最高点と最低点の垂直距離を「波高」と呼んでいる。波の波高を波長で割った数値を「波岨度」(なみそど)と呼んで、波の斜面の急峻さを示す。

波岨度 = 波高 ÷ 波長

波岨度の理論上の最大値は7分の1程度とされるが、実際は10-15分の1程度が最大となる。

波周期[編集]

水上の一定箇所で1つの波が山から山まで通過する場合の時間が「波周期」であり、単位は秒で表される。

波長 = 1.56 × (波周期)2
波の移動速度(m/s) = 1.56 × 波周期

不規則波[編集]

嵐によって成長した海上の波は、波高も周期もバラバラで不規則な波によって構成されており「不規則波」と呼ばれている。 不規則波の大きさは高い順の上位3分の1の平均値で表され「有義波高」(Significant wave height)と呼ばれる。 不規則波の中で遭遇する可能性がある最も高い波は、有義波高の2倍であることが分かっている。

大きな波の成長[編集]

嵐の中では強く吹く風が原因で大きな波が生まれる。風速が速ければ大きな波が生じるが、風が吹く時間と距離も波の大きさに関係する。この風が吹いている時間を「吹送時間」、吹いている距離を「吹送距離」と呼んでいる。

波の大きさはSMB法(Sverdrup, Munk, Breschneider、スベルドラップ、ムンク、ブレットシュナイダーの3名によって開発された有義波高の計算手法)によって有義波高が求められる。

長時間、風が吹き続けばそれだけ波も成長するが、無限に大きくなる訳ではなくある程度の大きさで成長は頭打ちとなる。この成長しきった状態を波の「完全発達状態」と呼んでいる。

3つの抵抗成分[編集]

船舶の航行時には、造波抵抗、粘性圧力抵抗、粘性摩擦抵抗という3種類の抵抗成分が生じ、船の速力に応じて推進エネルギーは失われ速度は減殺される。

造波抵抗
水面に波を立てることで失われるエネルギーである。
造波抵抗はほぼ船の速度二乗に比例して増加するため、高速船の設計ではこの削減が特に考慮される要素となる。
この波は「曳き波」として知られ、1990年代のヨーロッパでは初期の高速カーフェリーの登場時に港近くの砂浜で遊んでいた子供が引き波にさらわれる事故が起きたため、今では曳き波が周囲に与える影響も考慮する必要がある。
粘性圧力抵抗
粘性圧力抵抗。AとBでは同じ粘性圧力抵抗を受ける。
船体後方の渦流が生み出す水流による圧力低下によって後方へ引かれることで失われるエネルギー。
船体表面の水の流れが剥離して渦を作ると発生するために、船体が流線型であれば粘性圧力抵抗は極小化できる。


粘性摩擦抵抗
船体表面が水と接しながら移動する時に擦れることで失われるエネルギー。
単純に流れる水との接触面積の大きさと水流の速さに比例して粘性摩擦抵抗は表れる。
水もわずかながら粘性があり、船体表面に接触している水の層は船体に張り付くように振舞うが周囲の水は流れるために、速度に違いがある水の層が生まれる。この層は「境界層」と呼ばれ、境界層内で失われるエネルギーが粘性摩擦抵抗や単に摩擦抵抗と呼ばれる。

風の抵抗[編集]

推進エネルギーの損失を考える場合には、空気の密度は水の約800分の1であるため、水による損失のみが検討され、空気による抵抗成分は従来はあまり考慮されなかった。ただ横風による船体の動揺や横滑りが操船に無視できない影響を与えることが生じている。

接岸時と離岸時の危険性[編集]

純自動車専用船(Pure car carrier, PCC)のような上部構造物の巨大な船では船首部や船尾部を丸く作る事で風の抵抗を出来るだけ受けないようにする工夫も行なわれるようになった。

PCCに限らず、巨大コンテナ船や超大型フェリーも運搬対象がかさばる割に重量が軽い。このため、水面上の船体が水面下の船体に対して非常に大きい。これは空荷状態か満載状態によらない。いずれの場合も水に浮かぶサッカーボールのように風に簡単に流されてしまう。この現象は広い公海上ではそれほど問題とならないが、港での接岸と離岸時には危険を生む。実際に、これらの船が風に吹かれて流され、たびたび事故が発生している[6]

抵抗の低減[編集]

船底[編集]

航海時に水流と接する船の底の表面の粗さは、直ちに摩擦係数の増大となって船足を下げ燃費の悪化を招くため、可能な限り平滑な状態を維持しなければならない。 船底には自己研磨性防汚ポリマー剤が塗装されており、これが水中へと徐々に溶け出すことでフジツボなどの海洋生物の付着を防止して平滑度を維持している。

バルバス・バウ[編集]

バルバス・バウ。錨鎖の出ているベルマウス部分の下にバルバス・バウのマークが描かれている。バウ・スラスターとそのマークも見える。

近年21世紀初頭でのほとんど全ての大型で単胴の船舶の造船では、水中の船首部をバルバス・バウ(球状船首)とすることで造波抵抗を最小化する工夫を取り入れている。

バルバス・バウも設計時の喫水では最適の効果を発揮するが、空荷の時の貨物船やタンカーではバルバス・バウが水面上まで出てしまってかえって効率を悪くすることがある[7]

バルバス・バウは水面下で船の前方に大きく突き出ているため、港に停泊中に小さなボートなどがこれらの船の前を横切ろうとする場合などに、誤って船底を擦ってしまう恐れがある。他船からバルバス・バウであることが判るように船首の両側面にバルバス・バウを備えているという印が描かれている。

シーマージン低減型船首[編集]

斧の形をしたAx-Bow(アックスバウ、シップ・オブ・ザ・イヤー2001受賞)、鋭角な形をしたLEADGE-Bow(レッジバウ)[8]、Whale Back Bowは、船首端での水線面形状がシャープで、波から受ける抵抗が小さく、波浪中での船速低下が少ない。実海域でのシーマージンが小さい技術として、実用化されている[9]

トリムタブとインターセプター[編集]

トリムタブとインターセプター

モーターボート程の大きさの滑走船では、凪いだ水面を高速で航走すると船首が上がって船尾が下がる(船尾トリム)状態になってしまい滑走一歩手前でそれ以上加速できなくなることがある。船尾のトランサム英語版の船底角に取り付けられた「トリムタブ」や「インターセプター」[2]と呼ばれる板を下方へ押し下げることで船尾に揚力を作り、過度な船尾トリム状態を解消して船底で発生していた抵抗を無くすことで滑走へと入ることが出来る。ただし、追求しすぎると速度低下をまねく。大型の高速船でもコンピュータ制御のトリムタブを持つ船がある。

エンジン[編集]

船舶用のエンジン、つまり「主機関」としては、ディーゼルエンジンを使用するのが最も一般的であり、ガスタービンエンジンも使用されている(主として艦船や高速船)。船外機も含めて、小型ボートではガソリンエンジンが多い。ただし、船舶ではガソリンの使用は避けられる傾向にある。これは、ガソリンが燃費が悪く、可燃性のリスクが高く船上火災事故が多いためである。

核物質の核分裂反応を利用した原子炉も利用されている。ただし、空母潜水艦などの艦船用やロシアの砕氷船と数えるほどでしかない。

エンジンの回転方向は特に規定は無いが、一軸推進の場合に前進で右回転のものがほとんどであり、2軸では右が右回転、左が左回転のものが多い。

エンジン出力は次の式で求められる。

有効馬力 = 船の抵抗 × 船速 ÷ 75

実際にはプロペラシャフトの回転摩擦時のロスやプロペラの効率などによって必要な出力は2倍程度が求められる。

ディーゼルエンジン[編集]

ディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べれば重くかさばるが、燃料には低品質で廉価ながら引火リスクが小さく高カロリーな重油や軽油が使用できるため船舶用エンジンとしては最も代表的なものである。ディーゼルエンジンの原理により高圧力に耐えるだけの重く分厚いエンジン・ブロックが必要となり重く場所を取るだけでなく、ピストンやシリンダーのサイズに比例して燃焼時の騒音や振動を抑制することはかなり困難となっている。出力増大のために過給器インタークーラーが補機として備わっているのが普通である。始動時には、あらかじめ電動ポンプによって蓄えられた起動用圧搾空気タンクからの高圧空気をシリンダー内に抽気してピストンを動かす。また、後進時にはギヤーではなくエンジンを逆回転させる。

船舶に用いられているディーゼルエンジンもいくつかの種類に分けられる。

低速回転ディーゼルのプラント
1.空気 2.空気加圧ポンプ 3.始動用高圧空気タンク 4.低速回転ディーゼル・エンジン 5.燃料(A重油、C重油) 6.燃料ポンプ 7.燃料加熱器 8.冷却水 9.冷却水ラジエーター 10.潤滑油 11.潤滑油ラジエーター 12.-14.冷却用海水 15.高温排ガス 16.船内水排気ボイラー 17.排ガス 18.燃焼用空気 19.給排気タービン 20.プロペラ・シャフトと推進器 21.発電機(複数)
低速回転ディーゼル・エンジン
300回転/分以下で回転するものと分類される低速回転ディーゼルエンジンは、一般に巨大であり大直径で長尺のシリンダーを複数備えている。2サイクルのものが多く、4サイクルに比べて圧縮比を少し下げることで燃焼時のガス圧を下げてエンジン・ブロックの厚みを軽減している。
水中での物理を考えれば、大きな翼面を持つプロペラを低速で回した方がエネルギー効率が良い。その点、低速回転のエンジンでは減速歯車が不要でプロペラ・シャフトに直結できるため、重量、保守、故障、騒音振動などの面で有利であるが、エンジン本体の重量とその大きさが帳消しにしており、歯車がなければ1本のプロペラ・シャフトに1台のエンジンしか接続出来ないという制約が生じる。
回転数も100-300回転/分程度のものが多く使われており、シリンダー当り3,000馬力以上の出力のもので75-110回転/分、シリンダー当り1,000馬力程度のもので150-180回転/分となっている。
このため、タンカーやコンテナ船などの大きく比較的速度も遅い船は大きく低速回転のディーゼルエンジンを搭載している。気筒ピストンシリンダー)のロングストローク化が進んでいるが、さらに機関室の高さを求めることになる。
中速回転ディーゼルエンジン
中速回転ディーゼルエンジンは300-1,000回転/分が分類上の回転数だが、実際は380-600回転/分のものが多い。4サイクルのものが多く圧縮比を高められるので燃料消費が少なくて済む。減速歯車(ギヤー)を備えるために、エンジン回転数とプロペラの特性に最も適した設定を選べるので燃費が向上し、また、複数のエンジンを1本のプロペラシャフトに接続できるため、エンジン選択の幅も広がる。減速歯車を持つディーゼルエンジンをギヤードディーゼルと呼び、複数のエンジンを1本のプロペラシャフトに接続したものはマルチプル・エンジンと呼ばれる。複数のエンジンを接続するためにそれぞれにクラッチを備える。また、エンジンとクラッチの間に弾性継手を介することによってエンジンからの回転変動によって歯車が傷むのを防いでいる。
こういった中速回転のものは機関室の高さが抑えられるので、カーフェリーやRORO船に向く。
高速回転ディーゼルエンジン
高速客船や小型の漁船プレジャーボートなどではディーゼル・エンジンを使用していても1,000-2,000回転/分程度の高速回転のコンパクトなエンジンを使用しており燃料も軽油を使用する。4サイクルのものが多い。
ユニフロー掃気方式のディーゼルエンジン
ターボ過給器によって加圧された空気はシリンダー下部の吸気ポートから押し込まれ、排ガスは上部のポペット・バルブから出てゆく。

船舶用ディーゼルエンジンでも2サイクルのもののほとんどは、排気用のポペット・バルブをシリンダーの上に持ち、掃気を一方向にして掃気性能を高めた「ユニフロー掃気方式」をとっている。

排気用ポペット・バルブの駆動は一般に油圧空気バネが使われている。

低速回転域での効率を優先しているため、ピストンはストロークとボアの比率が3前後の超ロングストロークになっている。

長いストロークをそのままクランクで受けずに、ピストンとコンロッドの中間に側圧を受け止める潤滑部のあるクロスヘッド機構を持ち、コンロッドの長さを抑えている。 超ロング・ストロークのピストン・シリンダーとクロスヘッド機構のためにエンジンの背は高くなる。

船体の大型化と推進力の大出力化を阻むもの[編集]

21世紀初頭現在、大きなディーゼルエンジンは、ボアは90cm、ストロークは3mほどになり、12気筒ほどが最大である。これ以上の出力を求めると燃費の良い低速回転ディーゼルでも、ギヤード・ディーゼルでマルチプル・エンジンにしないと、エンジンルームが前後にばかり場所をとってしまう。

また一軸推進のままだと、出力に見合ったプロペラを製作する工場がないと言う問題と共に、通過する海峡、水路などの深さから喫水に制約を受けることによってあまり大きなものは付けられない。

ガスタービンエンジン[編集]

小型軽量で比較的大出力が得られるガスタービンエンジンは艦船や高速客船や高速カーフェリーなどで使用される。

ディーゼルエンジンのような大きな振動も発生せず、使用燃料の灯油は大型ディーゼルエンジンの重油と異なり比較的良質なため、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)といった有害な排気ガスは少なくて良いが、燃費は悪くなり、エンジンそのものとメンテナンスのコストがディーゼルエンジンに比べて高い。ガスタービンエンジンには航空機用のものと陸上での発電などで使う産業用のものがあるが、船舶に使われるものは航空機用エンジンの転用品がほとんどである。 ガスタービン・エンジンは陸揚げしての整備が可能なように取り付けられている[2]

焼玉エンジン[編集]

従来漁船に多く用いられた焼玉エンジン(Semi-diesel engine)はディーゼル・エンジンに代わった[10]

蒸気ピストン・エンジン[編集]

蒸気ピストン・エンジン(Steam reciprocate engine)を使用する船は21世紀の現在、全くない[10]

蒸気タービン・エンジン[編集]

21世紀の今でも液化天然ガス(LNG)タンカーでは蒸気タービン・エンジンを使うものが多い。運搬中のLNG(液化天然ガス)が少しずつ気化するためにこれをエンジンの燃料として利用できるためである。 蒸気タービンでは前進時とは別に後進用にタービンを備え、前進時に常に空転している無駄を小さくするために後進用タービンの大きさは半分程度としているのが普通である。このため、船のブレーキに相当する「後進全速一杯」(クラッシュ・アスターン)の時のエンジン出力も小さくなるという弊害がある。 原子力航空母艦や原子力砕氷船に使われている原子力機関も、核燃料の核分裂エネルギーを熱源とする蒸気タービン・エンジンの仲間である。

機関補機[編集]

エンジン(主機関)にはエンジン本体とは別に、エンジンを運転させるために必要なさまざまな機械類が取り巻いている。 これらの機械は機関の補機と呼ばれ、エンジンの種類によって異なったものが必要とされる。以下では大型船の搭載機関としては主流の低速回転ディーゼル・エンジンの補機について説明する。

低速回転ディーゼル・エンジンの補機[編集]

燃料系
(燃料の流れに沿って記述。燃料タンク(Fuel Oil Tank)より)
燃料移送ポンプ(Fuel Oil Transfer Pump)
燃料油沈降タンクへ燃料油を送るとともに、トリムやヒールの調整のために燃料タンク間の移送にも使用される
燃料油沈降タンク(Fuel Oil Settling Tank)
タンク内で燃料を加熱して固形物を沈降させ、水分も分離させて取り除く
清浄機(Purifier)
遠心力によってさらに不純物を取り除くとともに、安価だが重質のC重油を130-135℃に加熱して使いやすいがやや値が高いA重油と同じ粘度程度にする
燃料油常用タンク(Fuel Oil Service Tank)
燃料を一時的に溜める
燃料油ブースター・ポンプ(Fuel Oil Booster Pump)
燃料を加圧して主機関に送る
(主機関内の燃料油噴射ポンプ(Fuel Injection Pump))
吸排気系
過給器(ターボチャージャー、Turbo charger)
シリンダーから排出される排ガスの圧力を使って、新たな空気をシリンダー内に加圧して送り込む装置。
インタークーラー(Intercooler)
過給器によって加圧された空気は温度が上昇するため、これを冷却することで燃焼時の膨張効率を改善するための装置。
排気ボイラー
船内で使用する水を高温排気を利用して温める装置。
潤滑油・冷却水系
潤滑の必要性
エンジン内部には金属同士が接触しながら動くため、何もしなければ摩擦によって発熱が生じてトラブルの原因となり、また接触点が削られて必要な強度が保てなくなる恐れがある。
潤滑油は金属同士の間に入り込んで両者の直接の接触を避けて摩擦を減らし、発熱や損耗を最小限に抑える。潤滑油が奪う熱は冷却の役割も果たす。
冷却の必要性
アルミ合金は300度以上で、鋳鉄も400度以上になれば急速に強度が低下する。これらが使用されている主機関は冷却されなければ強度不足が起きる。主機関内のエンジン・シリンダーは内部で燃料が燃焼するため高温になり、冷却しなければ強度不足によって変形がおきて、最悪の場合は亀裂が生じる。また、高温は熱歪みを生み各部がゆがみ、また膨張によってピストンがシリンダーと固着する「焼き付き」を起こす場合がある。潤滑油が焼けて機能を失い、やはりエンジン内部での摩擦抵抗が増して出力低下が起き、やがて摩擦そのものが発熱を生み出して焼き付きを起こす。
シリンダー内下部にはシリンダー油が供給され、燃料弁、ピストンは冷却清水と潤滑油によって冷却する。冷却清水と潤滑油は機関室に取り込まれた海水によって冷却される。
  • 主海水ポンプ
  • 主冷却水ポンプ
  • 潤滑油ポンプ
  • 燃料弁冷却ポンプ
  • 潤滑油清浄機
  • 高圧エアー・タンク
  • コンプレッサー
パイプとバルブのハンドルの識別色
  • 燃料管:赤
  • 清水管:青
  • 海水管:緑
  • 蒸気管:銀
  • 圧縮空気管:ねずみ色
  • ビルジ管:黒

その他の補機[編集]

補助ボイラー
補助ボイラー(Auxiliary Boiler)は補機や加熱装置へ蒸気を供給するための装置である。
丸ボイラー(スコッチ・ボイラー、Scotch Boiler)か、乾熱式丸ボイラー(Dry conbustion Boiler)が使用され15気圧程度の比較的低い圧力である。
清海水用ポンプ類
雑用水ポンプ
多目的に使用される海水を供給するポンプ。
清水用ポンプ
飲料水(清水)を供給するポンプ。
バラスト・ポンプ
船のトリム、ヒール、浮力を調節するためのバラスト水の注排水を行うポンプ。
造水装置
大型船ではさまざまな用途に水が使用され、一部は海水のような外部自然水でも用をまかなえるが、清浄な水も大量に必要とされる。機関にボイラーを備える蒸気タービン船では、毎日数回のボイラー内部の蒸気洗浄(スート・ブロー)を行わねばならず、内部の蒸気も漏れにより徐々に失われるために補わなければならない。意外なことにボイラー内の水は高純度が求められ、不純物があると徐々にスケール(水垢)がたまって熱効率が落ち、そのまま放置して熱の不均一な状況が悪化すると事故が発生するリスクがある。また、客船では生活水が必要であり、貨物船であっても船体から塩分を洗浄するには清水が必要となる。
蒸気タービン船ではその蒸気を、ディーゼル船ではエンジンの冷却を兼ねた高温の清水をそれぞれ利用した造水装置(Distilling Plant)が備えられていて、大量の清水の需要に応えられるようになっている。造水装置は、水を100℃以上に加熱して清水を得るのではなく、抜気ポンプによって水タンク内の圧力を700mmHg程度にまで下げて温かい水を沸騰させる。その蒸気を別の清水タンク内で冷やすことで清水を作り出している。
その他の補機
通風装置、空気圧縮機、発電機(Generator, Dynamo engine)

[5][11]

推進器[編集]

船の用途などに応じてさまざまな推進器が開発されている。

一般にスクリュー・プロペラは大きな物をゆっくりと回すことがもっとも効率が良いが、あまり大きな物では船が軽くなった時や波で揺れた時に、スクリューが水面上に出てしまい空回りを起こしたり、水面近くで気泡を作るのにエネルギーを無駄に消費するために上端の位置には限度があり、船底より下に突き出ると浅い海での破損のリスクがあるために下端も船底より高い位置を守る必要がある。20世紀末からは「ハイスキュー・プロペラ」と呼ばれるキャビテーションの発生を低減して、より高回転での使用を可能にしたプロペラも登場している。

スクリュー・プロペラ[編集]

スクリュー・プロペラ(screw propeller)は最も一般的な形式の推進器である。

固定ピッチと可変ピッチ[編集]

固定ピッチ・プロペラ
プロペラの取り付けが固定されているもので、可変ピッチ・プロペラの登場によって固定と強調されるようになった。プロペラの一回転する間に進む距離の理論値をピッチ(Pitch)と呼ぶ
可変ピッチ・プロペラ
可変ピッチ・プロペラ(Controllable Pitch Propeller):プロペラの取り付け角度を任意に変えることでピッチが変更できるため、プロペラ・シャフトの回転数を変えずに、前進、中立、後進や前進と後進でも任意の微速へと迅速に変更出来る。可変ピッチ・ハイスキュー・プロペラもある
可変ピッチ・プロペラはギア部分を含む軸中央のボス部が少し膨らむために水流の邪魔になってこの点では少し推進効率が低下するが、船の状況に応じてピッチが最適に出来るため総合的には推進効率は良くなる。
可変ピッチ・プロペラそのものの製造単価が高い。

二重反転プロペラ[編集]

プロペラの回転によって生み出される水流そのものの回転運動によって、プロペラが生み出すエネルギーの3分の1が推進力に寄与せずに失われる。二重反転プロペラ(Contra Rotating Propeller, CRP)では、前のプロペラで生じる回転水流とは逆方向に回転する後ろのプロペラによって受け止めることで、後ろのプロペラの回転力に加えて前からの水の回転力も推進力に転化できるため、一重プロペラに比べてエネルギーの無駄が少なくなる。

25万トン級のVLCCタンカーに採用された例では、約15%ものエネルギー効率の改善が報告されている。

ノズル・プロペラ[編集]

ノズル・プロペラの一種であるコルト・ノズル

ノズル・プロペラはプロペラの周囲をノズルと呼ばれる整流板で囲った形式であり、プロペラのエネルギー効率の改善を狙っている。

1934年に登場したコルト式ノズル・プロペラ(Kort nozzle)では低速高加重での大推力が得られ、推力が30-45%増大するが、キャビテーションの発生が激しくノズル側面に穴が開くなど問題もあるため、砕氷船を除けばあまり採用されない傾向がある[12]

ポッド推進[編集]

アジマススラスターは水平方向に360度回転するポッドにノズル・プロペラを装備して推進軸を任意に向けられるもの。タグボートや海底電線敷設艦、海底・海洋調査船のように細かな操船を必要とされる船に使われている。舵は必要ない。バトックフロー船型と組み合わせられる例が多い。

Dのエンジンの力はCとBのギヤによって直角に変えられAのスクリューに伝えられる。AとBは軸を中心に回転出来るため、希望する方向へ推力を向けられる。
Zドライブ
動力を船内からポッドへとシャフトとギヤーを経由してプロペラまで導くもの。商品名の「ゼットペラ」、「ダックペラ」、「レックスペラ」、「Tドライブ」などとも呼ばれる。
電気ポッド推進
AZIPOD(Azimuthing Electric Propulsion Drive)と呼ばれるポッド内に電動機を備えてプロペラを駆動するもので、もともとは砕氷船用に開発され、その後、低騒音・低振動のため大型客船にも採用されている。2004年に建造された「はまなす」「あかしあ」の2隻の高速フェリーは通常位置のプロペラに加えて、その後部の本来なら舵がある位置に電動推進ポッドを持つことで、通常の航海時には向き合った2つのプロペラが二重反転プロペラとなり効率のよい推進器となり、港での細かな操船が必要な場合には、360度自由に向きを変える電動推進ポッドが活躍する。「はまなす」は「シップ・オブ・ザ・イヤー'04」を受賞した。

ポッド推進の利点[編集]

  • 機関の配置に自由度が高まる
  • サイドスラスター、舵、これらが不要
  • 電動機との相性がよく、電動機であれば以下の点も利点となる
    • 逆転も含めた回転速度が自由
    • 低速トルクが強力
  • エンジンからプロペラまでの推進軸が不要、これは同時に軸心見通し作業が不要となり、その他の船体建造作業も単純化できる

砕氷船や砕氷タンカーに電動機を内蔵するポッド型推進器が多く使用されるのは、通常の船が受けるこれらの利点だけではなく、通常航行時にはバルバス・バウを備えた船首を前にして進み、氷を割って進む時には船体を逆に使って通常の船尾を前にしてポッドの向きを180度変えて「後進」状態で氷を割ってゆく「Double Acting」という推進方法を用いるためである[10]

シュナイダー・プロペラ[編集]

シュナイダー・プロペラは2つのローターより突き出たそれぞれ4-6枚のブレードの取り付け角を連続的に変えて任意の方向への推力を与えることが出来る推進器である。「フォイト・シュナイダー・プロペラ」「トロコイダル・プロペラ」「サイクロイダル・プロペラ」とも呼ばれる。従来はタグボートなどで使用されていたが、21世紀になってからはポッド推進の登場によって、幾分効率の悪いこの方式は減っている。舵は必要なく、その場での回転を含めて自由な操船が行なえた。

ウォータージェット推進[編集]

ウォータージェット。2つの噴射方向を組み合わせれば前進、後退、横移動、その場旋回が行なえる。

ウォータージェット推進は船底から水を取り込み、導入流路を絞り幾分加圧された環境下でプロペラによって高圧にして吐出ノズルから後方に噴き出すしくみである。ノズルを可変にすると舵の機能を持たせられ、前方へのリバースドア(後進バスケット)を備えれば逆進も可能になる。

通常のプロペラ推進ではキャビテーションの発生による高速回転域での制限があるが、この方式では流路を狭めることで40-50ノットでの高速航行時にも高回転・高圧力が維持できる。高速船での使用だけでなく、岩場でスクリューを傷めたり魚網を巻き込んだりしないため浅瀬や河川を航行する船にも使われる。沿岸警備において不審船や密漁船が故意にロープ漁網を絡ませ進行を妨害することを防止可能であることから採用されることもある。

外輪(外車)[編集]

大きな水車(外輪)を回転させて水をかいて進む。パドル式とも呼ばれる。スクリュー・プロペラの登場によって推進効率が低く破損しやすい外輪船(外車船)は時代遅れとなり、琵琶湖汽船の「ミシガン号」のような一部の観光用途を除いては使用されていない。外輪を船体の左右側面に備えるものと、船体後部に1つ備えるものの2つの形式がある。

1845年4月3日にイギリス海軍が当時登場したスクリュー・プロペラの能力を試すため、800トンで200馬力同士の外輪船「アレクト」とスクリュー船「ラトラー」に綱引きさせた実験が有名である。2.5ノットでスクリュー船が引き勝ったことや、外輪は大きく重く、また、敵の砲撃や強い波浪によって容易に破損するなど、多くの点でスクリュー・プロペラに劣っていたため、イギリス海軍は以降、スクリュー・プロペラを軍艦の推進器に採用した。(詳しくは蒸気船を参照。)

アルキメディアン・スクリュー[編集]

アルキメデスのねじの原理を応用した「アルキメディアン・スクリュー」は砕氷船のガリンコ号のような特殊な船で使われている。ガリンコ号では大きな4本のねじ型回転部が砕氷器と推進器を兼ねていて、流氷や氷上、雪上、柔泥地でもそのまま進むことができる [13]

推進軸の周辺[編集]

船の主機関からプロペラまでの船の推進軸に関わる装置類はまとめて軸系装置と呼ばれる。 以下に主機関から順に列記する。

  • 主機関
  • 減速歯車
    • スラスト・ブロック(推力軸受)
  • 中間軸
  • 中間軸受け
  • 軸継ぎ手
  • プロペラ軸
  • 船尾管
    • 船尾管軸受
    • 軸封装置(シール装置)
  • シャフトブラケット
  • シャフトブラケット軸受
  • プロペラ

推進器が通常のプロペラと異なり、ポッド推進器やウォータージェット推進、シュナイダープロペラ、外輪車の場合はこれらのいくつかや、多くが不要となり他の形式を必要とするものが多い。

プロペラで発生した推進力を船体に伝える働きをするスラスト・ブロックは主機関や減速歯車に一体となって取り付けられる場合が多い。エンジン回転数が遅い場合は減速歯車は不要となる。

大きな船で推進軸が長い場合には1本またはそれ以上の中間軸とそれを保持する軸受けを備えるが、推進軸が短い場合には中間軸を持たずにプロペラが取り付けられるプロペラ軸だけを備える船がある。中間軸とプロペラ軸とは軸継ぎ手で接続される。基本的には、船舶での推進軸は自在継ぎ手によって途中の角度が変えられることはあまりなく、角度の変更が必要な場合には歯車が使用される。

船尾管は船体を貫くプロペラ軸を通すための管であり、軸封装置(シール装置)によって船体外部の水が内部に侵入しないようにしながら、プロペラ軸を保持して円滑な回転を助ける働きを持つ。 シャフトブラケットは多軸推進船に固有の部品であり、プロペラまで水中に長く突き出たプロペラ軸を保持する。1軸推進船ではシャフトブラケットは不要となる。

中間軸やプロペラ軸は、小型船では中まで詰った中実の軸が使われるが、大型船では内部がカラの中空軸が使われる。金属製の中間軸やプロペラ軸は電気を通さない潤滑油等で覆われているために、そのままでは海水と接する面で電気的な腐食が生じる。この腐蝕を防ぐために船体と軸を金属ブラシなどで電気的に接続して、電位を同一にすることで、腐蝕を船尾の防蝕アノードに限定するようになっている。

プロペラは推進軸によって機関室のエンジン、又は減速機と接続されており、このプロペラと推進軸が1組のものが1軸推進と呼ばれ、2組や3組のものが2軸推進、3軸推進と呼ばれる。2軸推進以上では水中での推進軸の露出部が長いために、シャフトブラケットと呼ばれる推進軸の支持構造を持つ船が多い。1軸推進では舵はプロペラ直後に1つだけ持つのが一般的であるが、2軸推進以上では、プロペラ直後に備える他にも船体中央に備える方法もある。

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船体構造[編集]

単胴船での船体構造について説明する。

構造材[編集]

多くの場合、外から見える船体のほとんどは外板(Shell Plate)であるが、大型船でも外板は薄く最も厚いものでも3cmでありほとんどのものはせいぜい数ミリメートルしかない。中大型船で主に船体を支えているのは構造材と呼ばれる骨組みであり、外板は強度の支えとしては補助的なものでしかない。

船体を支える構造材を組み合わせ配置する形式には、横式構造(Transverse Framing System)、縦式構造(Longitudinal framing System)、縦横混合方式の3種類がある。

横式構造
横式構造船体断面
1.梁(ビーム) 2.肋骨(フレーム)3.ビルジ 4.内底板 5.竜骨(キール) 6.フロア板 7.外板 8.甲板 9.隔壁
昔から用いられている構造で、今でも中小型船舶では横式構造で作られているものが多いが、大型船舶では船体が長いので折り曲げようとする力(曲げモーメント)に対して十分な縦強度が確保できないために採用されない。メイン・フレーム、リバース・フレーム、フレーム、デッキ・ビーム等が主な構造材であり、この支えが船の内部に竹の節のように間隔をあけて取り付けられる。例えば1万トン級の船では、船首から船尾までびっしりと60-80cm間隔で200ほどのフレームが船体を支える。


縦式構造
縦式構造船体断面
1.梁(ビーム, Box trans.) 2.肋骨(フレーム)3.ビルジ 4.内底板 5.竜骨(キール) 6.フロア板 7.外板 8.甲板 9.隔壁 10.内壁(Inner hull plating) 11.横縦通材(Side stringer) 12.中央桁(Center girder)[14]
船首船尾方向に走る多数の縦通材(Longitudinal)によって強度を確保する構造である。船体外板(甲板、側面、船底)と内部を仕切るいくつかの縦隔壁(Longitudinal Bulkhead)の内側表面に多数の縦方向の構造部材が張り付き内部から船体を支える。一般貨物を積むには適さない船倉となるが、横式構造よりは軽く出来る。


縦横混合方式
横式構造と縦式構造の両方式を取り入れた方式である。

船体を支える構造部材は強力部材とも呼ばれ、以下のような部分が各船でほとんど共通の強力部材である。船底部のキールも太い強力部材であるが、木造船の竜骨と異なり現代の鉄鋼船では他の外板より分厚いだけの板になっている。

  • 強力部材
    • 縦強力材:外板、甲板、船底、ガーダー(ロンジ)、竜骨(キール)
    • 横強力材:デッキビーム、フレーム、メインフレーム、横隔壁[5]

縦強度[編集]

サギングとホギング

船体構造でいえば縦強度が重要である。

曲げモーメント
細長い一本の船体である船舶は大波によって縦方向に折り曲げられる力(曲げモーメント)が働くため、縦方向での強度が十分に確保されていないと船体が真っ二つに折れて大事故になる。
大波の波長が船の長さと同じ時に最悪の条件になり、船首と船尾が波の頂上に持ち上がられ船体中央が波の谷間に浮かぶ「サギング」と呼ばれる状態と、これとは逆の船体中央だけが持ち上げられる「ホギング」という状態をひと波ごとに繰り返すことになる。
また、船体が波乗りのような状態で波の山から谷に向けて加速しながら滑り降りて、そのまま船首が波の谷に突っ込んだまま、谷から船首が持ち上がる前に次の波の山に襲われる「バウダイビング」(後述)と呼ばれる状態も、船体の、特に船首部を下方へ折り曲げもぎ取る大きな力がかかるため、縦強度が求められる要素である。
船底中央を縦貫する太い構造部材であるキール(Keel、竜骨)や多数の縦隔壁によってかなりの強度が確保される設計がなされているが、船体が折れ曲がる事故は船体の一部が金属疲労や建造時の欠陥、就役後の腐食によって、部分的に強度を失い、やがて変形が全体へと波及することで起こることが知られている。
このため、構造部材の一部に応力が集中することで起こる金属疲労を排除するために、設計・建造時に応力の分散に配慮するようになっており、腐食にもメンテナンスで対応するようになっている。
船体横方向の断面を示した「中央横断面図」という設計図の合格検査によって縦強度の確保が担保されている。
船体側壁は比較的薄い金属板から作られているため、フレームや横隔壁が存在する船体側部の場所がタグボートで押して良いポイント「プッシュライン」として示されている。
剪断力(せんだんりょく)
船にかかる剪断力の例
物体にある面に平行に加わった力によって、面に沿って滑り断つように働く力。貨物がいっぱい入っている船倉と空の船倉の間に浮力と貨物の重量などが働き、船体を断つような力が生じる。剪断力は設計時に考慮されていなければならない。


局部加重
波が船首に当る場合や船底に当る場合。船倉内の石油やバラスト水が船体の揺れによって内壁を打つ場合、などの船体の一部に働く力。

1960年後半に船体の鋼材を減らした経済的な船型の船が争って多数作られ、その後に船体各部に亀裂が多数生じてからは、経済性と安全性に対する最適化が慎重に考えられている。 リベットから溶接へ船体を構成する技術が大きく変更された当初はさまざまな問題が生じたが、その後は解決された。鋼鉄についても低温脆性(ていおんぜいせい)についての知見が得られてからは、安全になっている。

船体の材料[編集]

船体を構成する材料には、木材、鉄船、鋼鉄繊維強化プラスチックFRP)、アルミニウムセメント、フェロセメントがある。

鋼鉄
軟鋼
20世紀後半からはほとんどの大型船が鋼鉄である軟鋼で作られている。軟鋼は炭素含有率が0.13-0.20%であり鋼鉄の中では比較的低含有なため、名前の通り柔らかいので加工が容易であり、座礁や衝突等の外力によっても破断までに変形する量が多く、被害程度の軽減が期待できる。
高張力鋼(High-Tensile Steel)
軟鋼に比べて価格が高いが、船の重心を低くするために、強度を保ちながら出来るだけ重量を軽くすることが求められる上部構造物には以前から炭素とマンガンを多く含む高張力鋼が使われてきたが、21世紀初頭の現在、超大型コンテナ船をはじめとして船体の主要部に使われ始めている。一般的には1センチ前後の厚みの鋼材が使用されるが、超大型タンカーでは主要部分に5センチ厚の鋼材が使用される。
FRP
FRP船に使われている繊維強化プラスチック(FRP、Fiber Reinforced Plastics)が「鋼鉄より強い」というのは、引張強さを比重で割った比引張強さだけが鉄よりも勝っているだけであり、その他の機械的な強度は鋼や耐腐食アルミ合金の方が優れている。ただ、FRPは腐食に強いので保守の手間が掛からない点で金属材料より優れている。FRPはガラス繊維などのマットをポリエステルなどのプラスチックで固めて作る。船の形をかたどった木製のオス型より一度FRP製のメス型を作り、これを元に目的のFRP製船体を造る工程となる。ポリエステルなどはよく燃え、一度火事になると簡単には消せないため、火の気には特に注意を要する。また、製作中は火気厳禁であるだけでなく、臭いがきつく作業環境を選ぶ。
海外ではファイバーのFではなくガラス繊維のGを使ってGRPと呼ばれることもある。滑走艇や小型漁船、ヨットなどの小型船の多くに使われている。
アルミニウム
鋼鉄の比重は7.85であるのに対してアルミニウムは2.7と軽いため、錆びにくい長所と共に軽量化が求められる高速船に使用されている。鋼鉄同様に溶接によって接続するが、薄い場合には外板が波打つのでパテで修正する必要がある。
セメント
広島県呉市安浦漁港の防波堤に転用されたコンクリート船第二武智丸。左側に見えるのは第一武智丸。
セメント船は鉄筋コンクリートの一種のプレストレス・コンクリートで作られ、1920年前後には荒天にも十分耐えて航洋性があるため多数が作られ、7,200重量トンのタンカーも出現した。最近でも海上作業用の浮体構造物やはしけとして建造されており、アメリカ合衆国では排水量68,000トンのLPG貯蔵船が建造されている。フェロセメント船は金網を補強材にセメント・モルタルで船体が構成されている。貨物船から、漁船、はしけ、作業船、上陸用舟艇、タグボート、ヨットが作られている[15]


スラミングへの対策[編集]

ディープブイ型の船型
バウダイビングとは逆に船首船底が水中から躍り出てしまい、一瞬の後に水面に叩きつけられる「スラミング」と呼ばれる現象がある。スラミングの直後には「ホイッピング」と呼ばれる船体全体が大きく振動する現象も起きることがある。

スラミングによってバウダイビングと同様に船首部が折れる大事故が過去に発生している。

この対策として、船首部船底をV字型にして水面から受ける衝撃を斜め方向に受け流すようにする設計が高速船に行なわれている。

船体設計に関わる特殊な例[編集]

6種類の専用船の横断面図
1.鉱石専用船 2.穀物専用船 3.フルコンテナ船 4.純自動車専用船 5.LNGタンカー(モス式) 6.LNGタンカー(自立角型タンク式)[16]
純自動車運搬船
PCC(Pure car carrier)やPCTC(Pure car & truck carrier)とも呼ばれる純自動車運搬船では船内が日本の自動車用の立体駐車場のように何層にも分けられており、出来るだけ多くの車輌を搭載出来るように上部構造物も目一杯高く、船幅と前後にも一杯に作られ、各階毎の高さも低く抑えられている。この状態で他の貨物船のように分厚い甲板を設けると重心が高くなりすぎてたちまち転覆するので、甲板は薄く作られており、普通の貨物船では2-3ton/m2であるのにPCCでは150-200kg/m2しかない。
大型のPCCでは9-13層にもなる各階ごとの高さは最も多い乗用車に合わせて1.7-2.1m程度となっているが、トラックやバスなどの搭載スペースとして一部は高さが可動式のリフタブル・デッキ(Liftable Deck)またはホイスタブル・デッキ(Hoistable Deck)とよばれる構造になっていて、車輌の重量に合わせて甲板も強化されている。船内での車輌の上下移動は過去にはエレベータも使われたが、21世紀初頭の現在は、船倉内のスロープを自走によって上り下りしている。
たとえば世界最大の総トン数2万トン級PCCでも搭載できる自動車は6,000台で、満載しても約6,000トンが増えるにすぎない。このままではスクリューが水面に近くになりすぎるため、他の貨物船より水面下の形状を細くしてスクリューの位置をわざわざ深くしている。
大きな上部構造物によって水線上の面積が大きいため、風の影響を強く受ける。自動車専用岸壁への接岸時の利便性と安全性に配慮して、大きな舵を備え、大型PCCではバウ・スラスターを搭載している。大型のPCCでは上部船体がほとんど矩形の鋼鉄製構造物によって付けられているのにたいして、21世紀になってからの特に大型のPCCでは、風の影響を出来るだけ避けるために船の前後が丸く曲線や曲面で構成される船が現れている。
自走による積み下ろし時の排ガスや搭載車のガソリンタンクからのわずかな蒸発による火災のリスクを考慮して強力な換気装置が備わっている。車輌デッキは水密隔壁で細かく区切るという事が出来ないので、比較的小さな損傷による浸水でも沈没に至りやすい。過去には、波浪によってランプウェーが破損し、そのための浸水によって極めて短時間に沈没した船が多数存在するが、現在の新造船では内部に防水ドアを設けるなどの対策が施されている。


フェリー
小型カーフェリーの接岸図
1.フェリー本体 2.バウバイザー 3.船首と船尾のランプ 4.2つに分かれたエンジン 5.並列2本煙管 6.L型岸壁
図のような小型で比較的穏やかな内海等を航行するフェリーは、波の打ち込みを考慮する必要が無いため、船体側面に開口部が多く開いている。
カーフェリーの最も特徴的な他船との構造上の違いは、船体内部に1層から3層程度の広い車輌甲板を持ち、大きなランプウェイ(斜路)を備えることである。運搬される車輌は、船の前後部や左舷に1-3つ程度の備えられたランプウェイを自走して車輌甲板内に搭載される。
こういった構造は純自動車運搬船(PCC)も似た状況であるが、いずれも、船体の喫水線近くに大きなランプウェイによるドアを持ち、荒天状況下で万が一ドアが破損すればこの開口部より波浪が大量に侵入して、広く平坦でなければならないために余裕を持って水密区画を設けることが出来ない船内に大量の水の浸入を招く恐れがある。このため、中大型のカーフェリーで船首ランプウェイを持つものは、波浪が直接、ランプウェイに当って破損されるの防ぐために、バウバイザー(Bow visor)と呼ばれる装置が船首部に備わっている船が多い。船首ランプウェイを持つ場合でも小型で航路が短いものではバウバイザーを備えず、荒天時には運休することで対応する船もある。
多くのカーフェリーでは、船首と船尾、または船首近くと船尾近くの左舷側にランプウェイを持つことで、車輌甲板内での自動車の前後方向を転換するという時間と手間の掛かる方法を避けて、車輌用の入口と出口を両方備えることで車輌甲板内では一方通行で済むようにしている。さらに、小型で航路長が極めて短いルートの船では、ランプウェイを船首と船尾の両方備えるだけでなく、スクリュー・プロペラを船の前後に備え、さらに操船用のブリッジも2箇所に持つことで、接岸時の船の転回の必要をなくしているものがあり、このような船は「両頭カーフェリー」と呼ばれる[17]
大型のカーフェリーでは上部構造物がクルーズ客船並みに大きい船もあり、そういった船はサイドスラスターを備えることで強風に流されることを防ぐ必要がある。


タンカー(油槽船)
LNG船
貨物船一般
貨物船の船倉ハッチはその多くが、レールにそって左右のいずれか片側に、または中央から左右2つに分かれて、電動モーターによって開閉するようになっている。
FOFO船
FOFO船
1.船体中央の乾舷が低い 2.上甲板を水面下に沈めて、重量物を浮かべて搭載位置へ移動させる。3.船を浮かべ直して運ぶ。
FOFO船(Float on Float off Ship)では重量物が搭載されるため、特に高強度な船体が要求される。船を水面下に沈めるための大きなバラスト・タンクを備える点でも特殊であり、平たく低い中央甲板を備える。


砕氷船

船体設計での重要事項[編集]

復原性[編集]

復原力
転覆させる力

単胴船での船体設計時に最も重要な要素に「復原性」(Stability) がある。復原性とはたとえ一度は船体が傾いても、転覆せずに正常位置に復帰出来る性能である。

搭載物を含めた船体重心の位置が浮力の中心より低いことで復原性が生じる。大きな帆を備えるヨットでは船底の最も下部に重い重りとなるキールを持つために横風を受けて傾いてもすぐに元に戻ることが出来るのも重心が浮力中心に比べて十分に低い為である。 ヨットのような特殊な船型をしていない場合には、船の長さを幅に対してあまりに長細くすると容易に転覆してしまい復原する前に浸水する危険があるため、細長い船型には限界がある。

復原力曲線 縦軸(GZ):復原てこの長さ 横軸(θ):横傾斜角 A.青い面積が動復原力 B.角度Bまで船体を横に傾けるのに必要なエネルギー(動復原力)が面積Aである。C.復原力消失角 復原力曲線が GZ=0 となる角度以上では船は転覆へと向かう。

復原力曲線[編集]

設計した船体が復原する力は復原力曲線によって表される。復原力曲線は船体の復原てこ(GZ)が縦軸に傾斜角度が横軸になり、それぞれの傾斜ごとでの復原てこがいくらになるかが示され、船体の戻りやすさと転覆の危険度が読み取れるようになっている。

復原力曲線のグラフ上の面積が排水量当りの動復原力を示し、船を転覆させるには復原てこ(GZ)が正の値をとる面積分のエネルギー(動復原力)が波浪などから船体に加えられる必要がある。

復原性に対する自由水影響[編集]

浸水時などで船内に流動性のある水があると船体の傾きによって低いほうへとその水が流れるためにさらに復原性を失わせるため転覆する可能性が増すことになる。こういった現象を復原性に対する「自由水影響」と呼ぶ。タンカーでのスロッシング (Sloshing) もローリングを増幅することがあり危険であるため、油槽内はいくつかに仕切られている。


荷崩れによる危険性[編集]

船艙内での荷崩れ1.船体が傾く 2.船艙内の荷が崩れる 3.崩れたことによって片側の側壁面に力が掛かり、その後船体が傾きをとり取り戻しても、一方に寄った荷によって常に重心は片側によってしまい、その後の船体の傾きを助長する。

貨物船などでは、搭載物が船の揺れや傾きによって片舷に寄ると、設計時の意図しない形で重心が偏るため、搭載物の固定は復原性を確保するのに重要である。特に穀物や粉体等の擬似的に流動性を持つ貨物は、船艙内であまり自由な運動を許すと船が波浪などで傾いた時に突然流動性を帯びて荷崩れを起こし復原性に対する「自由水影響」と同様の効果によって船の安定を著しく損なう場合がある。

専用運搬船では設計段階から船艙上部の隅をあらかじめ三角形の壁面で構成して荷崩れでの影響をあまり受けないようにしているが、それも8-10割程度の積載時の場合にしか効果はなく、全船艙に半分ずつ均等に積載するようなことはなるべく避けて、満載と空虚を交互に配置するような方法をとるのが普通である。これにより安全と共に、積み卸しとその後の清掃の手間がいくぶん省けるが、船体に剪断力が加わることになる。

水密区画[編集]

21世紀現在、新たに建造されるすべての大型船では、船体内部は船底から上甲板へ達する水密隔壁により多数の水密区画に分割されていて、浸水時にも浸水範囲を限定することで浮力を大きく失わないようにしている。また、船底は「二重底」(Double Bottom)になっており、万が一、座礁などで浸水が始まっても沈没しないだけの必要な浮力を温存することや、たとえ多数の水密区画が浸水するような重大な事故においても出来るだけ長い避難時間を稼げるように考慮されている。
タンカーの二重船殻構造
二重底は鉄鋼船になって早くから取り入れられてきたが、大型タンカーに限っては一時期、二重底から「単底」(Single Bottom)に変更されていた時期があった。大型タンカーは他の船舶と比べても区画が多数に分割されているためや、油は水より軽く油で満たされた油槽に万が一、穴が空いても少しずつしか漏れ出さない事もあって浸水に対して比較的安全であることや、二重底にして油槽付近に空隙を放置すると石油や原油から発生したガスが二重底内部に溜まって危険であるなどがその理由であったが、1989年のエクソン・バルディーズ号が起こしたアラスカ沖での座礁による原油流出事故の後、環境保護の観点から船底と側壁を二重にする二重船殻構造(Double Hull)が国際条約(海洋汚染防止条約、MARPOL条約の改正)によって1992年以降、義務付けられている。

振動対策[編集]

船体に振動が起きると金属疲労による安全性の低下や居住性の悪化を招くため、船体起振力(Hull vibration)は出来るだけ抑えなければならない。

船体起振力は「プロペラ誘導起振力」と「機関誘導起振力」より成る。

プロペラ誘導起振力
プロペラ誘導起振力の内、サーフェスフォース(Surface force)はプロペラ翼面に起因する振動であり、プロペラ翼の圧力波が船体表面に伝わることで生じ、キャビテーションによって増大する。これは、プロペラ翼を船体表面や舵から離す、キャビテーションを抑制する、などで低減できる。
もう1つはベアリングフォース・モーメント(Bearing force and moment)で、船尾水流が不均一になることで発生する。これは、船尾部水流の動きがプロペラ翼、プロペラ軸からプロペラ軸軸受けなどを経由して船体に伝わる振動である。
船尾部の形状を整えて伴流を滑らかにすると共に、プロペラの枚数×プロペラ回転数 の整数倍で表される翼周波数(Blade frequency)を船体の固有振動数から出来るだけ離す設計が求められる。
機関誘導起振力
機関誘導起振力はディーゼル・エンジンのようなレシプロ・エンジンの気筒ごとのピストン運動によって生じる。気筒数とエンジン回転数の関係から起振周波数が求められる。
客船ではエンジンをゴム等の緩衝材で保持することで振動が船体に伝わるのを防ぐ工夫が行なわれている。

係船装置[編集]

「係船装置」(Mooring arrangement)や係船のための設備には、ウィンドラス、ムアリング・ウインチ、キャプスタン、ビット、ムアリング・ホール、フェアリーダー、クリート等がある。

ウィンドラス
「揚錨機」とも呼ばれる「ウィンドラス」(Windlass)は錨を降ろし・巻き上げる機械である。電気、油圧、蒸気で駆動される。揚錨機の「ホーサー・ドラム」または「ホーサー・リール」(Hawser reel)はロープをそのまま巻き取っておく部分。
ムアリング・ウインチ
「ムアリング・ウインチ」(Mooring Winch)は甲板上にあり、主に係留策の巻き込みを行う装置。回転軸が水平になっている。ホーサーやワイヤーを巻き取っておくドラムが中央にあり両端に「ワーピング・エンド」(Warpping end)が付いていることが多い。ワーピング・エンドではロープは数回からめるだけで巻取らず、別に収納するために甲板から持ち去る。
キャプスタン
キャプスタンビット
「キャプスタン」(Capstan)は甲板上のロープや鎖の巻き込み器の回転部分。回転軸が垂直になっている。ホーサー・ドラムと異なり、ロープは数回からめるだけで巻取らず、別に収納するために甲板から持ち去る。
ビット
「ビット」(Bitt)は船の甲板上にあるロープを繋ぎ止めておくための円柱状の柱で、多くが2本1組で用いられる。小型船で使われる十字形をしたものは「クロス・ビット」と呼ばれる。
ムアリング・ホール
「ムアリング・ホール」(Mooring Hole)または「チョック」は甲板の端でロープを通す円形の穴を持つ金具である。ロープが甲板の角に直接あたって擦り切れるのを防ぐと同時に、勝手に甲板上を動き回らないようにする。
フェアリーダー
「フェアリーダー」(Fair Leader)はムアリング・ホールと同じ機能を持ち、下、または上下にローラーを備えて、ロープが動くのに合わせて回転し、擦り切れるのを防止する。ユニバーサル・フェアリーダーは上下左右の井桁状にローラーが付いている。
クリート
「クリート」はムアリング・ホールとほぼ同じであるが、穴ではなく上部が開いているので穴を通さずに上からロープをかけられる反面、なにかの弾みでロープが外れる恐れもある。
ボラード
岸壁のボラード(Bollard)
「ボラード」(Bollard)や「係留ボラード」(Mooring Bollard)と呼ばれるものは、埠頭にある鋼鉄製の大きな突起物である。船の係留時に係留索(もあい綱、Mooring line、ホーサー(Hawser、直径40mm以上の係留索))の先の輪(ボラードアイ、Bollard Eye)を掛ける。簡単には外れないように上部が陸側に湾曲しているものが多い。木の「幹」を意味する「Bole」が語源である。ホーサーを使う場合には、ヒービング・ライン(Heaving Line) という細いロープを投げてから太いホーサーを手繰り寄せる。
日本ではJIS(日本工業規格)で誤って、海外でのBollardのことをビットと、Bittのことをボラードとしてしまったため、区別がつかなくなっている。


係船方法[編集]

操縦・操舵装置[編集]

操舵装置
船橋にあって、舵を動かす様に船尾に伝える装置を「操縦装置」または「操舵制御装置」といい、機械式、水圧式、電気式の3つの方式がある。
機械式では歯車やロッドによって伝えられるもので、小型船に多い方式である。
中大型の船でも、古い汽船では水圧式と電気式の両方式を備えていたが、その後、水圧式は廃止されて21世紀の現在は電気式を2系統備えている。
動力操舵装置
船長が60m以上の汽船は機械式の「動力操舵装置」(Steering Geer)を備えなければならないと定められている。
動力操舵装置には、蒸気圧式、電気式、電気油圧式の3つの方式があるが、大部分は電動モーターで油圧を作り、電気信号によって制御弁を操作して、ピストン/シリンダーによって舵を動かす電気油圧式によって操舵されている。

荷役装置[編集]

貨物を船に搭載したり、おろしたりする作業を「荷役」と呼び、荷役を行う機械設備が荷役装置(にえきそうち、Cargo Gear)である。

デリック
デリック
デリック(Derrick)は比較的小型の貨物船の荷役で使用される最も一般的で基本的な荷役装置である。デリックは一般的な意味でのクレーンの仲間であり、通常は1本のポスト、1本のブーム、2個のウィンチ、数個の滑車、2本のワイヤーからなる簡単な構造をしている。
クレーン
クレーン(Crane)は陸上で使うものとほとんど変りなく、ジブ・クレーンとガントリー・クレーンの2種類に分類できる。
ジブ・クレーン
ジブ・クレーン(Jib crane)は形が似ているために三角帆のジブ(Jib)から来た名前を持つジブ・クレーンは、多様なタイプの貨物船の上に複数台が搭載されることが多い。
ガントリー・クレーン
ガントリー・クレーン(Gantry crane)は橋のようにハッチをまたいで船の前後にほぼ端から端まで移動する大型のクレーンである。大型貨物船でも、特にコンテナ船やラッシュ船に備わっていることが多い。

腐蝕対策[編集]

アルミは鋼鉄に比べて腐蝕を起こしにくいため、水に浸かり続ける船体には適した金属であるが、長い時間の経過と共に少しずつ腐蝕は進行するため、やはり塗装は必要となる。

異種金属腐蝕[編集]

鋼鉄の船体では塗装は必須であるが、特に異種金属腐蝕も問題となる。電解質溶液中にイオン化傾向の異なる金属をつなげて浸しておくと、一方の低電位の金属が激しく腐蝕を受ける現象である。

この現象はボルタ電池として利用されることもあるが、船ではほとんどのプロペラに銅合金が使われているため、陽極(+極)となる船尾の鋼鉄を激しく腐蝕する。このため、犠牲となって溶ける亜鉛などの「アノード」(Anode)と呼ばれる金属片をプロペラの周囲に貼り付けて、船体の腐蝕を防ぐ。この方法を「犠牲防蝕」と呼ぶ。

航海計器[編集]

航海に使用する測定器や計器類、航法装置は航海計器と呼ばれる。

船舶用レーダー等[編集]

船舶が備える航海用レーダーには、Sバンド(3GHz/波長10cm)とXバンド(9GHz/波長3cm)の2種類のパルス・レーダーがある。

Sバンドは比較的探知距離が長いが分解能が低い。このため大型船では分解能は高いが雨天時の減衰や海面による乱反射による影響を受けやすいXバンド・レーダーを併用することで弱点を補う使い方している場合が多い。

  • レーダー・アンテナはアンテナ・マストなどの船の高い位置に取り付けられている。
  • 大型船で船首部のシアー(船首の波除け形状)が高かったり、LNG船やコンテナ船で積荷が高く積まれて、前方手前がレーダー・アンテナから死角になる場合には、船体中央のアンテナ・マストとは別に船首部にレーダー・アンテナを備える船もある。
  • ほぼ同様の理由で後部に別のレーダー・アンテナを備える船もある。
ARPA
通常は、探知情報をレーダー・スクリーンにそのまま表示するだけだが、ARPA(Automatic Radar Plotting Aids)と呼ばれる装置によって探知対象を記憶することで運動方向や航跡を表示する機能が提供されるようになっている。
AIS
ARPAに似た装置にAIS(Automatic Identification System、自動船舶識別装置)があり、半径15-42nm程度の距離で、船名、大きさ、位置、針路、船速等の情報を知らせあう。2002年からは大型外航船でのAISの取り付けが義務付けられた。

GPS装置[編集]

2008年現在では、おそらくほぼ全ての船舶がGPS装置を備えるようになっている。

GPS衛星の利用が世界的に一般化した21世紀初頭の現在では、これまで航海に使用されてきたデッカは2001年4月1日、ロランCは2015年2月1日、に日本での運用を停止した。磁気コンパスは、緊急時の六分儀による航海技術と同様に今でも使用されている。GPSの位置情報はDGPSによってさらに高精度になっている。

GPS装置による自船位置の情報はECDISと呼ばれる航法装置によって、さらに有効に利用できるようになっている。

ECDIS
ECDIS(Electric chart display and information system、電子海図表示システム)はCD-ROMに記録されたENC(Electric navigational chart、航海用電子海図)のデータとGPSによる自船位置情報、自船レーダー情報に基づいて、周辺海図、自船位置、自動航路保持、監視、航跡記録、自動船速制御、航路逸脱警報、変針点接近警報、避険線接近・侵入警報、安全等深線接近・侵入警報、気象情報提供、海象情報提供、航行警報情報提供、などの高度な航行支援機能を備えている。危険水域の警報機能とともに海図室(Chart room)への出入りに時間を割くことなく前方警戒に集中できることで航海の安全性が高められる。従来手間のかかった海図の修正も修正データCD-ROMをセットするだけで済むようになった。CD-ROMとは別にICメモリカードに収めたERC(Electric reference chart、電子参考図)も発行されるようになった[6]
国際水路機関(IHO)でENC上での表記法が統一されている。1995年から日本の海上保安庁が世界に先駆けてENCでの海図情報の提供を開始し、他の先進国もこれに続いて提供を始めているが、後進国ではデータ整備が進まないため、世界の海をECDISだけでカバーするには至っていない。東アジアでは日本が水路情報整備を主導している。
CD-ROMに記録されたENCは、国際的には英国とノルウェーで有償提供されており、暗号化された1枚のCD-ROMに圧縮暗号化され収められた各海域ごとのデータは、1年間の使用権利を持つ解読キーの購入によってECDIS上で解読・使用が可能となり、最新の更新データはインターネット経由で入手できる[18]

ジャイロスコープおよびジャイロコンパス[編集]

一度設定した方位を保持し続けて針路の決定に利用する装置であるジャイロスコープと、地球の自転ジャイロ効果の作用により方位を自己修正するジャイロコンパスがある。

物理的なコマの回転を利用するジャイロコンパスから、精度が高くコンパクトなレーザーリング型やレーザーミラー型のジャイロスコープへとかわって来ている。しかし、ジャイロスコープには方位を自己修正する能力がなく、また、いずれも停電時に使用できなくなるため、磁気コンパスとの併用が規則によって定められている。機能上、自動操舵装置とのつながりが深いので、自動操舵装置に含まれているものも多い。

ジャイロスコープのみで方位を示す場合、いくら精度が高くても、時間と共に誤差が蓄積してくるため、時々は修正が必要になる。

流圧式ログ・電磁式ログ[編集]

ともに水に対する速度を測る装置である。流圧式ログはピトー管による圧力によって、電磁式ログでは水の電磁誘導によって速度を測る。GPSの利用が進んだ21世紀初頭現在では、大型船を中心に海流の影響を受け測定誤差も大きなこれらの測定器に代わって、GPS装置が描く自らの航跡に基づいた速度の利用が多くなっている。

ドップラーソナー[編集]

航海計器としてのドップラーソナーは、船底から前後に向けて発射した水中超音波の反射波を測定し周波数のずれから、水底までが近ければ対地速度を、遠ければ対水速度を測る装置である。側方に発射・測定すれば港での岸壁までの距離が測れる。

音響測定器[編集]

航海計器としての音響測定器は、船底から下に向けて発射した水中超音波の反射波を測定し、船底から水底(海底など)までの距離を測るものである。

自動操舵装置[編集]

自動操舵装置(オートパイロット)はジャイロコンパスや航法支援装置からの情報によって設定した方位から針路がずれると、自動的に舵を操作することで針路を保持する。風や潮流によって横に流されるズレには対応できず、他船舶との回避運動も行なえないので、人間が常に船橋(ブリッジ)から見張り(Look out)をして適切に操船する必要がある。[13]

安全設備[編集]

航海灯[編集]

航海灯の見え方
航海灯の配置

白赤緑の3色の「航海灯」が夜間航海時の船舶の互いの視認に役立てられている。 これら3種類5個の航海灯の配置は万国共通で決められており、レーダーに頼らなくても、夜間に船体が見えなくても船の方向や大きさがほぼ判るようになっている。 後進した場合については法的に決められていないが、左右の赤と緑を逆にできるように左右とも赤緑両方が付いている場合と後部マストに左右逆に航海灯が付いている場合があり。後進している状態でも進路を誤認させないように工夫されていることが多い。

消火設備[編集]

「海上における人命安全会議」(SOLAS : Safety of lofe at sea)で1914年にSOLAS条約が13ヶ国で調印され海運の国際秩序と海上における人命及び財産の安全確保のために「IMCO」(政府間海事協議機関)が1958年に発足した。これらの機関によってその後、さまざまな案設備に関する決まりが定められた。

船舶では防熱上や構造上の境界によって40mを越えない仕切られた区域に区分されている。特に居住部分は他の部分から隔離されている。船内は可燃性材料の使用を控え、火災探知、警報、消火、脱出の各装置が備えられている。持ち運べる消火器も多数が用意されている。

消火設備は、消火専用のポンプの他に、普段はバラスト・ポンプ、雑用水ポンプ、衛生ポンプとして使用しているものを火災発生時に消火用に使用することが認められている。多くのポンプが機関室にあるため、機関室からの火災の場合を考えて機関室外の独立して働くポンプも備えられていて、通常は船尾舵機室にある。船内のどこから出火しても2条以上の放水が可能なように消火水配管と消火栓、消火ホースが配置されている。消火ホースは船長30mに付き主と予備の合わせて2組を備え、最低5組が用意される。

固定式の消火装置として、ガスによるもの、発泡水によるもの、霧状放水によるもの、スプリンクラーによるものがある。これらが火災探知機とともに、特性・効果を考慮して配置されている。 タンカーにはイナート・ガス発生装置が備わり、油槽からの火災を未然に防いでいる。

火災探知機は光の遮断を探知するものや、空気中のイオンを探知するもの、空気の膨張を探知するものなどがある。

救命胴衣[編集]

およそ船舶と名の付くものすべてに、乗船する乗員乗客の総数以上分の「救命胴衣」(ライフジャケット)の搭載が義務付けられている。 固体式(浮力材:発泡スチロール)、気体封入式(浮力:常圧のガス)、膨張式(使用時にボンベからのガスで膨張する)、固体膨張ハイブリッド式、等の救命胴衣がある。

救命浮輪(きゅうめいうきわ、Life Buoy)も露天デッキの各所に備えられている。

救命ボート[編集]

救命ボート

ある程度の距離を航海する船舶は、船体が沈没や火災などの危険な状態から乗員乗客が安全に避難できるよう、必要なだけの「救命ボート」の搭載が義務付けられている。 外洋客船では国際規則によって、片舷の救命ボートだけでも乗員乗客の避難に必要なだけの数を備えるように決められている。 救命ボートにはボート型の他にプラスチック・カプセルに収められた膨張式の「救命いかだ」(Life raft)もある。 救命いかだのカプセルはたとえ沈没する船に放置されたままでも4m以上の水深水圧が加われば自動的に離れて水中から浮かび上がり展張するようになっている。 救命ボート内には1人当り3リッター分の飲料水をはじめ、食料や発煙信号器、懐中電灯などいくつかの救命用備品が備えられている。

GMDSS[編集]

GMDSS(Global Maritime Distress and Safety System)は海上安全の為の包括的な遭難通信システムの全体構想の名称であり、1999年2月から完全実施が開始された。実際に船に搭載されるのは次に示す E-PIRB、DSC通信装置、インマルサット通信装置、SART という個別の通信装置である[6]

E-PIRB[編集]

大型船の露天デッキに備わっている「E-PIRB」(非常用位置指示無線標識装置、Emergency Position Indicate Radio Beacon、イーパブ)は沈没する船に放置されたままでも4m以上の水深水圧が加われば自動的に離れて浮かび上がり、船名や位置情報を含む救難信号を発信するようになっている。

1999年2月1日からは「SOS」で有名だった海上緊急通信としてのモールス信号は公式には廃止され、電子装置が発するデジタル信号を基本とするGMDSSに置き換わっている。E-PIRBもGMDSSを使用している。

DSC通信装置[編集]

DSC(デジタル選択呼出:Digital selective calling)通信装置は無線機に付加して特定の無線局との通信チャンネルを自動的に設定する機能である。ボタン一つで遭難信号を送信する機能も備える。

インマルサット通信装置[編集]

インマルサット(INMARSAT)通信装置は海上交通や航空・陸上の交通の安全のための緊急通信用インマルサット静止衛星を使って遭難信号を含む重要な通信を送受信する通信装置である。静止衛星であるためアンテナさえ安定できれば常に緊急通信によって音声を含む送受信が行なえるため、モールス符号による緊急通信の制約を過去のものにした。

インマルサットEGC放送
インマルサット静止衛星から海上安全情報を文字放送している。大型船舶では自動受信した放送をプリントアウトする[6]

SART[編集]

SART(Search and rescue radar transponder)は沈没などの事故時において、捜索航空機のレーダー電波に対して自動的に遭難信号を応答発信する装置であり、沈没前に海上に浮かべておけば救難捜索活動の短縮化に役立つ[6]

国際VHF[編集]

国際VHF(marine VHF band)は入出港時や遭難時などに使用される。総トン数が100トン以上の日本船舶には、DSC付き国際VHFの設置が義務付けられており、その他の日本船舶の設置は任意である。これらを使うには総合無線通信士海上無線通信士またはレーダー級以外の海上特殊無線技士の資格が必要である。ただし、第三級海上特殊無線技士は5Wをこえるもの及びDSCは操作できない。(無線従事者参照)

総務省は、2008年のイージス艦衝突事故を契機に、国際VHFを船舶共通通信システムと位置づけ[19]、設置義務の無い100トン未満の船舶に対し普及促進するため2009年10月に省令告示を改正[20]した。

アンカー[編集]

Fluke anchor-1-.gif

アンカー(錨)は比較的浅い沿岸海域などで停泊する場合に、海底に投錨することで船体の移動を抑制する機能を果たす。

特に台風などで強風や波浪の高まりが予想される場合には、大型船は港内での高潮によって岸壁に乗り上げたり係留索の断裂等による事故を避ける為、港から開けた沿岸海域に事前移動後、投錨して危険を避ける事が普通である。

21世紀はじめの近年では、使用しないときには余分な重量となるアンカーは軽量ものを1つだけ搭載する船もあり、いざとなればエンジンをかけて風に対抗することでアンカーの軽量化分を十分補えるとしている。

運動[編集]

船舶の運動は地上での自動車での走行とは異なり、いくつか特異な挙動を示す。以下に単胴船での特異な運動例を示す。

旋回[編集]

フェリーの舵とスクリュー
旋回運動

船舶では右旋回面舵(おもかじ)と呼び、左旋回取舵(とりかじ)と呼ぶ。例えば、面舵(右旋回)の開始直後の短時間だけいちど船は反対方向の左へ向かう。これは「キック」と呼ばれ、舵によって操向される船独特の挙動である。以下の説明では右旋回での例を示すが、左旋回でも左右が逆になるだけで同じである。

標準的な船舶の舵は、スクリュー直後の位置に取り付けられていて、面舵(右旋回)の時は舵面は右側に突き出される。スクリューによって生み出された水流が舵面の揚力によって右に偏向されるため、船体後部は左方向へ押される。船体後部の左方向への力は船の向きを右へと回転させるように働くが、回転する効果が現れる前に船体後部で生じた左方向への押す力が先に船体を左へと押し流す。これがキックである。キックは喫水の浅い船で強く現れる。

船舶が旋回する時に、舵によって生み出される回転力は実は実際の旋回に発揮される力の一部でしかなく、船体が旋回を始めて船に対する水流方向が斜めになるために生じる船体を押す力も回転力として効果を発揮している。

また旋回時にはまずキックが起きるのと同じ理由で、水面下で舵が左方向へ船体を押すために船は短時間だけ右側へ、つまり回転内向きに傾き(内方傾斜、ないほうけいしゃ)、少し遅れて船が右方向へと曲がりだすと遠心力で船体が左に、つまり回転外向きに傾く(外方傾斜、がいほうけいしゃ)。特に外方傾斜は大きく傾くため、強い旋回を行なえば、客船では快適性が損なわれ貨物船では荷崩れのリスクが高まる[2]

このように、舵によって船体が左右に傾くことを利用して、船の揺れを抑える減揺装置に利用しようという研究が進められている。

停止[編集]

通常の船舶ではブレーキは存在しないため、航走状態から停止するにはエンジンを逆回転するなり、ギヤを逆回転位置にするなり、可変ピッチプロペラ・スクリューを逆ピッチにするなりしてスクリューが生み出す水流を後進方向に変えることでブレーキの働きを行なわせている。

危険回避などでこのような全速後進を行うことを「クラッシュ・アスターン」と呼ぶ。大きな船ではクラッシュ・アスターンでも船の長さの十数倍の距離を進んでしまう。

スクリューが通常とは逆方向の水流を作る時には、舵はほとんど役目を果たさなくなる。

停止のための逆進を行なわずにいれば、大型船ではエンジンを切っても3km程は惰性で進む。

保針性能[編集]

船では旋回性能だけでなく直進する性能も重要である。まっすぐ進む性能を「針路安定性能」や「保針性能」と呼ぶ。船は常に波にさらされながら航海する場合がほとんどであり、波は船の針路を少しずつ曲げてゆく。

保針性能が低いと波の影響によって常に針路を修正しなければ正しい航路を維持できず、常に舵によって修正を続けることは操舵装置への負担と共に、抵抗も増えて燃費が悪くなる。

保針性能を測るには船をジグザグに走らせるジグザグ試験(Z試験)によってその反応から判定する。

特異な運動特性[編集]

シンケージ
シンケージ
シンケージとは滑走艇などが高速で水上を滑走(プレーニング)することにより、船底の圧力がベルヌーイの法則により下がり、船が下方へと引かれる現象。


バウダイビング(Bow diving)
バウダイビング
バウダイビングは、船首が波に突っ込んでそのまま沈み込んでしまうという、高速船で起こる危険な現象である。追波と向波の両方で発生するが、追波中の場合には波乗りのように加速が付くことがあり、より危険となる。
バウダイビングに似た現象に、青波(あおなみ、Green water)がある。青波は波そのものが大きく、船首に波がそのまま乗ってくる状態である。青波も大きなエネルギーを持っており、FRP製のコンバーチブルタイプのプレジャーボートでは、フライブリッジごと引き剥がされる場合がある。


ポーポイジング(Porpoising)
ポーポイジング
高速で水上を航走するモーターボート等の小型船では、船底で発生する揚力だけで船体を支える滑走(プレーニング)状態の時に飛び上がっては船底を水面に打ち付けることを繰り返して強い衝撃を乗員が受けて同時に舵が効かなくなる「ポーポイジング」という現象が発生することがある。
ポーポイジングという名前はネズミイルカの英語名「Porpoise」から来ており、ここであげたモーターボートの例以外にも、飛行機潜水艦などの同様の運動に対して使われる。


ブローチング(Broaching)
ブローチング
船が後方から強い波を受けて波の斜面を下る形の波乗り状態になり、船の速度と波の速度が同じになると舵が効かなくなる。そのまま波の谷底付近で船の方向が急旋回してしまい、90度横向きになると同時に遠心力で船体が横向きの力を受ける現象を「ブローチング」と呼ぶ。時には船体が横倒しになる事がある。
ブローチングを避けるため、後方から波を受ける時は速度を落とす必要がある。
また、帆船では、風による推進力が舵の制御能力を超えた場合、ブローチングに至る場合がある。


パラメトリック横揺れ
パラメトリック横揺れ
1.水線面積減少 2.水線面積増大 3.静水時水線 4.波浪による水線。波浪によって1.と2.の状態を繰り返す。
船体が水面と接している線を水線と呼び、その水線で囲まれた面は「水線面」と呼ばれる。言い換えれば、水線面は船体と水面の交差する面である。
水線面の面積は復原力にとって重要な要素であり、水線面面積の増減によって復原力係数が変化する。波浪によって水面が上下することでこの水線面の面積が減少・増大を繰り返し、波による水線面面積の周期的な変化は同時に復原力係数の周期的な変化をもたらす。
復原力係数の変動が船体固有の横揺れ周期の半分になった時、船体の横揺れが増幅されて「パラメトリック横揺れ」と呼ばれる強い横揺れが発生することがある。パラメトリック横揺れでは横揺れの周期1に対して縦揺れの周期は半分で同調するため、2回の縦揺れの間に1回の横揺れを起こすことになる。
追波を受ける状態ではパラメトリック横揺れの発生リスクが高くなるが、向波の中でも発生することがある。高速船のような水線面積の変化が大きな船型の船では発生しやすく、21世紀初頭の最近登場したバトックフロー船型の船では横波でも発生することが確認されている。


制限水路影響
制限水路影響
1-a,1-b:浅水影響 2-a,2-b:側壁影響 3.傾斜海底影響 4.船接近影響
制限水路影響とは水深が浅かったり水路幅が狭かったりする場合に起こる現象である。下記に示すようないくつかの典型的な状況例のいずれもが、その原理は1つであり、水面下の船体の近くに固定された平面や流水とは別の動きをする表面がある場合、船体とその面との間の流水だけが流れが早くなり、ベルヌーイの定理が示す効果によってその部分での圧力が周囲に比べて下がるため、船体が引かれて思わぬ動きをするというものである。
浅水影響
「浅水影響」は船底が水底に近いために、船底部周囲の水の流速が早くなり船体が下方へと引かれ喫水が大きくなることである。
側壁影響
「側壁影響」は運河などの通航時に船体が側壁に近い場所を航行すると船体と側壁との間の水が早く流れる場合に側壁に吸い付けられるように引かれることである。また、多くの船体は船首船尾に比べて細身であるため、側壁に引かれる力の中心は船の重心より少し後方側になり、船尾側がより強く引かれることになるため船体が回頭する。このため、当て舵をとるなど正しい操船には高度な技術が求められる。
傾斜海底影響
「傾斜海底影響」は浅水影響の特殊例であり、水底が水平ではなく傾いているとき、下方へと引かれる場所に左右での違いが生じて船体が浅い方へよっていくことである。浅水影響と同じく船尾側がより強く引かれるために船体が回頭する。水底の細かな水深の違いは船上からは判らないために、正しい当て舵量を予測するのはかなり困難となる。
2船接近影響
「2船接近影響」は側壁や水底ではなく、他の船との相互の干渉によって側壁影響とほぼ同じ現象がより強く起こることである。
長年の経験を積んだ大型船の船長でも離岸時に制限水路影響を考慮せずに岸壁から十分に離れないまま全速前進をかけてしまうことがある。この結果、「側壁影響」によって船体は岸壁に寄り、岸壁にこすり付けて船に穴を開け、ビットを壊してしまう事故が起こる[6]


快適性[編集]

減揺装置[編集]

船客の船酔いを防ぎたい客船はもとより、貨物の荷崩れ防止のために多くの貨物船でも、何らかの減揺装置は備わっている。下記の装置のほかにも、四角ばった船体横断面形を採用するのは揺れを抑える工夫である。

ビルジキール
小型船を除くほとんどの船では、ローリング(Rolling)を抑制して安定した航走の為に「ビルジキール」(Bilge Keel)と呼ばれるフィンが船体の2/3程の長さに渡って船底の両側面の角に取り付けられている。
フィン・スタビライザー
多くの大型船では、同様の理由で船体の動揺を減少するように電動で動く「フィン・スタビライザー」(Fin Stabilizer)と呼ばれる小さな金属製の翼、「フィン」が船底両側面に取り付けられていて、航海中の船の揺れをセンサーが感知して、フィンの角度を自動的にコントロールすることで、フィンの揚力によって揺れを抑える。速度が高いほど効果が表れ、横揺れ(ローリング)を減少させるが、船速が遅い場合は効果が低く、停船中は機能しない。水の流れがなくてもフィンを油圧によって上下に動かすことで減揺能力を発揮する「上下振動型フィン・スタビライザー」が考案されている。
アンチローリング・タンク
減揺水槽(アンチローリング・タンク)の水の移動によって左右の揺れ(ローリング)を抑制する。両舷の水タンクとそれらを結ぶかなり太いパイプにより構成される。簡単な装置の割には比較的有効に揺れを抑えられるが、必ずしも揺れに対応した最適な水の動きが生じる訳ではなく、このような受動型の減揺水槽では能力に限界がある。21世紀に入って水の移動に伴って動く空気の流れを電磁弁でコントロールすることで積極的に減揺特性を最適化させるアクティブ式の減揺水槽が一般化している。
船の重心から離せば効果が増すため比較的高い位置に置かれることが多いがそれだけ重心が高くなる。船の排水量の2-3%程度の水による重量も増し、場所も占めるために客船以外で使用されることはあまりない。
可動質量型減揺装置
可動質量型減揺装置では金属のかたまりのような重りをモーターの力で左右に動かすことでローリングを抑制する装置であり、減揺水槽での効果を最適にするようコントロールできるとされているが、まだ装備している船はない。
アンチピッチング・スタビライザー
揺れには横揺れ(ローリング)だけでなく縦揺れ(ピッチング、Pitching)や上下揺れ(ヒービング、Heaving)もある。縦揺れを抑制するために船首ビルジ部にフィン・スタビライザーを付けるアンチピッチング・スタビライザーが考えられているが、まだ装備している船はない。縦揺れと上下揺れは水から受けるエネルギーが横揺れに比べて大きく、有効な減揺装置の開発はなかなか困難であると考えられている
[2]

サイドスラスター[編集]

バウスラスター

大型船が港に入港する時には小回りが効かないためにタグボートで押したり曳いたりしてもらって接岸することがある。多くの大型船、特に大型客船では「サイドスラスター」と呼ばれる横方向に小さな推進力を備えた船が多い。サイドスラスターは水面下で船体を左右に貫くトンネルとその中で回転する電動スクリューにより構成される。

船首側にあるものは「バウスラスター」、船尾側にあるものは「スターンスラスター」と呼ばれる。

複数のサイドスラスターを持つ船も珍しくなく、大型客船では船首に3つ、船尾に3つ備える船も現れている。航行中に舵の代りに使おうとしても、前後方向の水流にじゃまされてスラスターの横推力が発揮できなくなり、5ノット程度を境に使用されない。推進器の方向が変えられるアジポッドなどを備える船は、それによって自由な操船が行なえるために、普通はサイドスラスターを持たない。

振動対策[編集]

船体の強い振動は人間にとって不快であり、船体構造材の金属疲労の原因にもなるため、船舶工学にとって振動軽減は重要なテーマとなっている。

エンジン
船舶で使用されるエンジンは多くが大きな騒音と振動を生み出すため、特に客船ではエンジンの基部をゴムを介して保持したり、客室がある上部船体をゴムによって浮かして保持するなどの工夫がある。騒音と振動の抑制が比較的簡単な高周波ノイズを主に生むタービン機関の採用も客船では多い。
プロペラ
プロペラの回転時に翼の1枚1枚が作る圧力波が船底部の外板を叩くために船体に強い振動が発生する。これを避けると同時に燃費を改善する方法として、ハイスキュード・プロペラの採用がある。
スキューによってプロペラが作る水中の圧力が連続的となり、振動が小さくなる。

燃費向上・コスト削減[編集]

エンジン[編集]

大まかに言えばディーゼル・エンジンの出力はシリンダー内の体積に比例するが、低速で航海する船体が受ける抵抗は水と接する表面積に比例する。このため、3乗の出力効率と2乗の抵抗成分によって船の大型化が輸送効率という意味での燃費効率の向上につながる。

船舶用のディーゼル・エンジンは長ストローク化や低回転化、排気タービン過給器やインタークーラーの装備によって大きく燃費が向上した。また、ディーゼル・エンジンで電子制御システムを採用して、燃料噴射と排気弁の制御タイミングを最適化することで、燃費を向上しながらNOx排出量を抑制している[2]

プロペラ[編集]

プロペラは出来るだけ大きなものを1つだけ水中でゆっくりと回すのが効率が良くなる。多軸推進は経済性の面では不利となる。2重反転プロペラは回転エネルギーが効率よく推進力に変換できるので燃費向上には有利となる[2]

高速化[編集]

排水量型船体の高速化は造波抵抗と粘性圧力抵抗の急速な増大化を招き、摩擦抵抗も比例して増大するが、ウェーブ・ピアーサーのような船型によって大きな抵抗の増大が避けられ、高速を生かして1隻で2隻分の働きを行なえるなら人件費や燃料費、船体購入費やメンテナンス費などの総合的なコストを勘案すれば必ずしも割高とは限らないといえる。

ただ、東京⇔小笠原航路に就役予定で東京都が三井造船に求めた高速船「スーパーライナーオガサワラ」号の事例では、14,500総トンの船体で最高速度39knを実現したものの、定員740人で運べる貨物はたった210トンであり、しかも往復で700トン以上の燃料を消費することから、計画は白紙に戻されて完成した船体の使い道がなくなってしまう事態となった。 このように、高速船を長距離航路で運用することはコスト的に引き合わない可能性が高い。

造船工程[編集]

造船は海や湖、河に面した造船所によって行なわれる。

脚注[編集]

  1. ^ a b 泉江三著 『日本の戦艦 上』 グランプリ出版 2001年4月20日初版発行 ISBN 487687221X
  2. ^ a b c d e f g 池田良穂著 「図解雑学 船のしくみ」 ナツメ社 2006年5月10日初版発行 ISBN 4-8163-4090-4
  3. ^ 渡辺逸郎著 「コンテナ船の話」 成山堂書店 18年12月18日初版発行 ISBN 4425713710
  4. ^ 伊藤雅則著 「船はコンピュータで走る」 共立出版 1995年1月15日第一版発行 ISBN 4-320-02915-1
  5. ^ a b c 池田宗雄著 「船舶知識のABC」 成山堂書店 第2版 ISBN 4-425-91040-0
  6. ^ a b c d e f 仲之薗郁夫著 「海のパイロット物語」 成山堂書店 2002年1月28日初版発行 ISBN 4-425-94651-0
  7. ^ 小野寺幸一著 「地球90周の航跡」 東京経済 1995年4月20日第一刷発行 ISBN 4-8064-0419-5
  8. ^ 「船の省エネ技術開発」『海の環境革命~海事社会と地球温暖化問題~』(PDF) 日本海事センター2010年3月、17頁。
  9. ^ ジャパン マリンユナイテッドホームページ TOP > 技術・研究開発 > 技術開発 > 流力技術 > 実海域性能
  10. ^ a b c 野沢和夫著 「船 この巨大で力強い輸送システム」 大阪大学出版会 2006年9月10日初版第一刷発行 ISBN 4-87259-155-0
  11. ^ 檜垣和夫著 「エンジンのABC」 ブルーバックス 講談社 1998年3月20日第6刷発行 ISBN 4-06-257129-3
  12. ^ 野沢和夫著 「氷海工学」 成山堂書店 2006年3月28日初版発行 ISBN 4-425-71351-6
  13. ^ a b 拓海広志著 「船と海運のはなし」 成山堂書店 平成19年11月8日改訂増補版発行 ISBN 978-4-425-911226
  14. ^ 恵美洋彦著 「Illustrations of Hull Structures」 成山堂書店 2006年11月28日初版発行 ISBN 4-425-71381-8
  15. ^ 佐藤忠著 「セメント船を造ろう」 パワー社 2001年9月25日発行 ISBN 4-8277-2277-3
  16. ^ 吉識恒夫著 「造船技術の進展」 成山堂書店 2007年10月8日初版発行 ISBN 978-4-425-30321-2
  17. ^ 池田良穂著 『内航客船とカーフェリー』 成山堂書店 平成20年7月18日新訂初版発行 ISBN 9784425770724
  18. ^ 満田豊他著 『海のなんでも小事典』 講談社ブルーバックス 2008年3月20日第1版発行 ISBN 9784062575935
  19. ^ 海上における船舶のための共通通信システムの在り方及び普及促進に関する検討会報告書p.14 (PDF) 「海上における船舶のための共通通信システムの在り方及び普及促進に関する検討会」報告書(案)に対する意見募集の結果及び最終報告書の公表 総務省報道資料別紙3 平成21年1月27日 (国立国会図書館のアーカイブ:2009年7月22日収集)
  20. ^ 船舶が任意に設置する安価な国際VHF機器の導入に伴う関係規定の整備 総務省報道資料 平成21年10月1日 (国立国会図書館のアーカイブ:2009年10月21日収集)

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]