ダクテッドファン

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ダクテッドファンとは、円筒形のダクトやナセルの中にプロペラ状のファンを据え、それを回転させることによって推力を生み出す推進器の一種である。もともと航空機用に研究されてきたが、ホバークラフトラジコン飛行機[1]の推進器としてよく採用される。

仕組[編集]

ダクテッドファンを装備した実験機であるベル X-22

プロペラ状のファンに円筒状の覆い(ダクトまたはナセル)を被せたような構造が特徴であり、推進力を得る基本的な仕組みは通常のプロペラと大差ない。しかし、この円筒によっていくつかのメリットが発生する。

まず、通常のプロペラ推進では進行方向だけでなく、それと直交する平面内にもプロペラ端から気流が発生している。(渦流)これは推力とならないため、エネルギーの無駄になってしまうばかりか、衝撃波(音波)となって騒音の原因にもなっている。しかし、プロペラの外側を筒で覆ってやればプロペラ先端部から発生する気流を全て進行方向側に整流することができ、エネルギーを無駄にしなくてすむ。同時に、衝撃波の発生を抑えて騒音を減らすこともできる。

円筒状のナセルをうまく使うことでさらなる効果を得られる。このナセルは空気取入れ口が排出口に比べて広い、“ハ”の字型の断面をしていることが多いが、このようにしてさらに円筒壁面の断面形状(翼形)を工夫するとナセル自体が進行方向側に揚力を生み出すようになる[2]。また、ナセルを偏向させることで気流の向きを変え、ある程度の推力偏向能力を持たせることも可能である。

デメリットとしては、ナセルによる抗力が大きく高速化に適さないことが挙げられるが抗力は速度に比例して大きくなるため逆に低速のホバークラフトなどにおいては問題とならない。 多くの場合、エンジンから離れた場所にファンがあり、ギアシャフトを介した駆動系が必要になるため、機構が複雑になりがちである。

ホバークラフト等ではプロペラが露出して回転すると危険なので防護壁を兼ねている場合もある。また、ヘリコプターのテールローターでもフェネストロンとして使用される。

なお、共振を防ぐためにファンのブレード数は奇数であることが多い。

利用例[編集]

カプロニ社のスティパ・カプロニ
正面からの写真
アメリカ海軍のLCAC-1級エア・クッション型揚陸艇(ホバークラフト)。後部に2基のダクテッドファンが設置されている。

1932年スティパ・カプロニや、VTOL機向けに研究されてきたアメリカベル X-22のように、実験の域を出ることはあまりなく、有名な実用例としてはホバークラフト用の推進器がある。ただしラジコン飛行機用の小型推進器としては比較的ポピュラーな存在である。特にモデルとした実機がジェット機である場合に、プロペラが外から見えないようにするため、小型かつ安価なモデルでは模型用ジェットエンジンの代わりに搭載される. 電動モーター駆動のファンの後に燃料噴射装置とバーナーを備えた燃焼室を設け、ジェット排気による推力を付与するものもある[3]

ヘリコプターに代わるダクテッドファン方式のリモコン輸送機なども登場している。ツインダクテッドファン方式の超小型の乗り物が幾つか登場している。Springtail Exoskeleton Flying Vehicle (EFV-4A)やDragonfly Unmanned/Manned/Remote Vehicle (UMR-1)などが有名である。空飛ぶ乗用車として注目されているスカイカーも、ダクテッドファン方式の乗り物の一種である。

また、一部の風力発電(風レンズなど)でも使用される。

類似の機構として船舶のダクテッドプロペラがタグボート潜水艦魚雷深海潜水艇等に使用される。スクリューの先端から生じる渦流を減らす事が出来る為、潜水艦等の静粛化に役立つ。

飛行船のプロペラには良く用いられる。 これは、プロペラに着氷した氷が遠心力で飛ばされ、船体を破る危険があるからである。 ダクテッドファンはプロペラが覆われているので、その危険は極めて小さくなる。

脚注[編集]

  1. ^ ラジコン飛行機の場合、安全性を確保する目的で採用される。
  2. ^ 似たような円筒構造を持つ航空機に円筒翼機があり、その場合は円筒で発生する揚力が機体を持ち上げる方向に働くのだが、一般的なダクテッドファンにそのような効果があるかどうかは一概には言えない。
  3. ^ これはモータージェットと同様の仕組である。ジェット排気による推力付加の効果はそう高いものではなく、現実のジェット機を模倣する演出的効果を狙ったものである。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]