総合研究大学院大学
総合研究大学院大学 | |
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葉山キャンパス 共通棟 | |
大学設置/創立 | 1988年 |
学校種別 | 国立 |
設置者 | 国立大学法人総合研究大学院大学 |
本部所在地 | 神奈川県三浦郡葉山町(湘南国際村) |
学部 | なし |
研究科 |
文化科学研究科 物理科学研究科 高エネルギー加速器科学研究科 生命科学研究科 先導科学研究科 |
ウェブサイト | http://www.soken.ac.jp/ |
総合研究大学院大学(そうごうけんきゅうだいがくいんだいがく、英語: The Graduate University for Advanced Studies)は、神奈川県三浦郡葉山町(湘南国際村)に本部を置く日本の国立大学。1988年創立、1988年大学設置。大学の略称は総研大(そうけんだい)。
概要
総合研究大学院大学は、他大学卒業者、あるいは他大学大学院修士課程(博士前期課程)修了者のみを対象とする、日本初の博士課程のみの大学院大学である。前者に対しては5年一貫制博士課程、後者に対しては博士後期課程となる。6研究科で構成され、各研究科はさらに幾つかの専攻に分かれている。各専攻における研究指導は、基盤機関(大学本部(葉山キャンパス)、4つの大学共同利用機関法人に属する16の研究所)、独立行政法人メディア教育開発センター、及び独立行政法人宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部)で行われる。
目的
国立大学法人法に定められているところの、国立大学院大学である。国立大学院大学の目的は、時代の先を見据え、専門的かつ視野の広い研究者を育成し、公共の利益に資すること。
学術研究の新しい流れに先導的に対応し、創造性豊かな視野の広い研究者を養成することが目的である[1]。5年一貫制博士課程の新設は、高いポテンシャルを持った人材を早めに確保することによって、より高度な学術研究の実施を行う人材を発掘し養成することである。
参考までに、総合研究大学院大学以外の(国立大学法人の)大学院大学には、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)、奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)、そして2008年現在、設置準備が続く沖縄科学技術大学院大学(OIST)がある。各大学院大学は博士前期課程及び博士後期課程を持ち、地域産業への人材輩出と地域産業振興を目的とした産業基盤強化のための学術研究センターとして、産学及び地方自治体の協力によって設立されたものである。これらの大学院大学開設時の経験に基づき、一部の国立大学法人、公立大学法人では、大学院重点化が行われている。
沿革
- 1988年(昭和63年)10月 - 総合研究大学院大学が開学(数物科学研究科、生命科学研究科。共に博士後期課程)。本部は神奈川県横浜市緑区長津田町の東京工業大学長津田キャンパス(現・すずかけ台キャンパス)内
- 1989年(平成元年)4月 - 文化科学研究科(博士後期課程)設置。3研究科で学生受入開始
- 1995年(平成7年)2月 - 本部を神奈川県三浦郡葉山町に移転
- 1997年(平成9年)4月 - 先導科学研究科(博士後期課程)設置
- 1999年(平成11年)4月 - 先導科学研究科で学生受入開始
- 2004年(平成16年)4月 - 国立大学法人法により国立大学法人総合研究大学院大学となる。数物科学研究科を物理科学研究科、高エネルギー加速器科学研究科、複合科学研究科の3研究科(共に博士後期課程)に改組。生命科学研究科に5年一貫制博士課程を併設
- 2006年(平成18年)4月 - 物理化学研究科、高エネルギー加速器科学研究科、複合科学研究科に5年一貫制博士課程を併設
- 2007年(平成19年)4月 - 先導科学研究科に5年一貫制博士課程を併設
構成
総合研究大学院大学は、以下の研究科、専攻、及び各専攻に対応する基盤機関で構成される。研究科によっては、研究分野の専門性のために異なる基盤機関にまたがっている。
- 文化科学研究科
- 地域文化学専攻 - 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国立民族学博物館
- 比較文化学専攻 - 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国立民族学博物館
- 国際日本研究専攻 - 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国際日本文化研究センター
- 日本歴史研究専攻 - 大大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国立歴史民俗博物館
- メディア社会文化専攻 - 独立行政法人 メディア教育開発センター
- 日本文学研究専攻 - 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 国文学研究資料館
- 物理科学研究科
- 高エネルギー加速器科学研究科
- 加速器科学専攻 - 大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構加速器研究施設
- 物質構造科学専攻 - 大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所
- 素粒子原子核専攻 - 大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所
- 複合科学研究科
- 統計科学専攻 - 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構統計数理研究所
- 極域科学専攻 - 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構国立極地研究所
- 情報学専攻 - 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構国立情報学研究所
- 生命科学研究科
- 先導科学研究科 - 大学本部(葉山キャンパス)
- 生命体科学専攻
- 光科学専攻
- 生命共生体進化学専攻
教育の特徴
基本構成
総合研究大学院大学本部を中心として、各専攻を構成する基盤機関との間で協定を締結し、研究者及び所属学生の受け入れを実施している。総合研究大学院大学では、国立大学法人法の規定により、大学院大学長を中心に各専攻を構成する機関の長が理事として大学理事会に参画している。大学本部における教育研究に関する重要事項は、葉山教授会にて審議される[2]。
各研究科は独立しており、それぞれは複数の専攻で構成されている。各専攻は各基盤機関に対応しており、各機関の教員は、各人の培ってきた専門分野に応じた各専攻に配属されている。研究科の教育研究に関する重要事項は、各研究科教授会にて審議される[2]。
葉山キャンパス
葉山キャンパスには大学本部が置かれ、入学式および学生対象のオリエンテーションが行われたり、国際シンポジウムや学術研究会及び学術成果発表会などが実施されている。大学本部の教員の研究組織として機能することを目的として葉山高等研究センターが設置されており、ここでは学際的な研究を目的にして各研究計画を実施したり、他大学や研究所の研究者との共同研究の機会の提供、通常の科研費等にはなじまない先進的な研究課題や基盤機関においてできにくい研究課題を推進している。
また、葉山キャンパスには先導科学研究科が設置されているので、先導科学研究科に所属する学生や教職員もここを利用する。他に、総合研究大学院大学付属図書館もある。
教職員
各基盤機関における教員組織は大学と同じであり、教授、准教授、講師、助教、助手で構成される。他に、客員教員、各種の研究員(機関研究員、外来研究員、外国人研究員、プロジェクト研究員、上級研究員、招聘研究員、客員研究員、特任研究員、特別研究員など)からなる。教員は、各機関に雇用されているが、同時に総合研究大学院大学の教員でもある。
教員及び研究員の受け入れに関しては各機関毎によって異なるが、おおむね履歴書、研究業績書、研究業績に示された論文(別刷りも可)を2部、また前に勤務した組織上において信頼できる上司や研究指導者の推薦書によって書類選考が実施される。その後求人を行った機関において、求人担当者及び関係研究者が面接を実施する。それらを総合的に判断して、最終的に採否が決定される。なお、准教授以上の場合には、さらに各基盤機関の教授会の議決を経て、最終的に採否が決定される(公募職のため)。
各国立大学法人及び大学共同利用機関法人における技術系職員並びに事務系職員採用に関しては、2008年度より統一試験が実施されることになっており、この試験を通過したものが、その後面接を経て採用となる。なお、応募に関しては、各地域毎の採用となるため、各基盤機関及び国立大学法人の本部所在地域毎で採用試験が実施される。なお、本籍所在地での受験でも現住所での受験でも可能だが、両方を選択することはできないことに留意が必要である。
技術系職員は各研究機関における装置開発、装置設計、装置発注業務などの実務を担当し、事務系職員は事務処理業務実務を担当する。
学生
入学希望者は、自らの興味分野に応じて専攻を選択し、専攻別に行われる大学院入学試験に加えて、各人の研究テーマに応じた研究計画書を提出する。試験合格後、研究計画書に示された研究テーマによって、各専攻(基盤機関)へ配属され研究指導を受ける。
研究の特徴
上記に記述する設置専攻科から明らかなように、文部科学省が所管していた各研究所からなる。各国立研究所は、大学共同利用機関法人として、もしくは設立の目的からして、民間の研究センターとして(経済産業省や総務省管轄の独立行政法人のように)の役割を担ってきた理化学研究所のように独立行政法人として運営が変わったものもある。しかしながら、本大学院大学の場合には、大学共同利用機関法人と同じ機関にメディア教育開発センター、宇宙航空研究開発機構が加わり、産官学の連携を踏まえた運営がなされている[3]。
具体的には、研究成果の発信、学術研究分野における研究成果の高度化、高度な研究を行う人材の養成及び輩出が目的である。各分野は、日本を代表する研究所としての役割を担う研究機関が担当しているため、高度かつ精密な装置利用研究なども行われている。文化科学研究専攻科においては、科学的成果の活用によって、これまでは文献学的もしくは資料的な研究が中心であった文化研究をさらに進めて、科学的見地からの歴史学的かつ地域学的な研究へと発展させることを目的に運営が行われている。
今後は、文系・理系の枠組みにとらわれない総合学術研究発展を目指した総合科学大学院大学としての役割の継続が行われることになる。
職制
基本は参加基盤研究機関と同じであるが、国立大学法人総合研究大学院大学の内規による。基盤参加機関における役職は、以下のいずれかの役職にアサインされる。教授職・准教授職において、客員・招請はまだ無い。准教授職以上は、一般の大学と同じように学内選挙によって選出される。講師職以下は、公募によって選出される。理事会のうち、学長・副学長は学内選挙によって選出される。任期は、最大6年。理事は、事務系の長から選出される。
幹部職員
- 理事会(学長、副学長2名、理事)
- 評議員会(事務系役職者からなる、大学運営評議会)
- 基盤研究機関長会(総合研究大学院大学を構成する、各基盤研究機関長からなる会議)
常勤職員
研究系
- 教授(高等主任教授、主任教授、専任教授)- 客員・招請は非常勤
- 准教授(主任准教授、専任准教授)- 客員・招請は非常勤
- 講師(主任講師、常勤講師) - 客員・招請は非常勤
- 助教(主任助教、常勤教教) - 客員・招請は非常勤
- 助手(主任助手、常勤助手) - 客員・招請は非常勤
技術系
- 高等主任技術者 - 研究系相当役職:(准教授から講師相当)
- 主任技術者 - 同上:(講師相当から助教相当)
- 高等技術者 - 同上:(助教相当)
- 上席技術者 - 同上:(助教相当から助手相当)
- 技術者- 同上:(助手相当)
付記)研究系でも兼務が可能なため、基盤研究機関によっては、技術系の役職者が無い場合もある。なお、研究系の役職は技術系の役職名として兼務している。
事務系
- 評議官
- 高等主任事務官
- 主任事務官
- 上席事務官
- 高等事務官
- 事務官
非常勤職員
- 非常勤講師(博士研究員)
- 非常勤助教(修士研究員)
- 非常勤助手(学士研究員)
- 秘書・アシスタント
付記)客員・招請・特任・特別研究員は、非常勤職員に分類される。それぞれの学位や業績によって、上のいずれかの役職にアサインされる。常勤秘書・常勤アシスタントの場合には、プロジェクト研究員としてアサインされる。非常勤の場合でも、契約期間中に業績を挙げたり、公募応募に応募すれば常勤職員として登用される。
名誉職制度
国立である、大学利用機関法人及び独立行政法人の連合体である本学の場合には、名誉職の位置づけは退官後の年金権を有する教授及び准教授職に与えられる。講師以下の職に関しては、公的な官位としての職ではないため、名誉講師や名誉助教などの職は存在しない。
ただし、あくまでも教授職まで職務を完了したという位置づけであり、特に公的な特権が与えられているわけではない。諸外国において私立大学などの場合には、教授職などの売買が行われている場合もあるが、先進国の大学や研究機関の場合にはあくまでも学位を保有し、それ相応の学術的業績を挙げた場合にのみ授与される称号でもある。そのため、名誉教授職の最大の位置づけは、日本の場合には日本学士院に所属し、公的な活動を現在も行っている研究者などに限られている。
将来の計画
2008年2月現在、行政改革の都合によって、官庁主導による研究所の増設計画等はないため、その他の研究機関並びに大学共同利用機関が本学に加わる予定はない。しかし、今後も、大学や現在加わっていない大学共同利用機関との間で、人的交流や学術交流を始めとして、シンポジウムの共同開催や共同研究の実施を含めて強化する予定である[4]。
大学関係者一覧
総合研究大学院大学の人物一覧を参照のこと。
関連項目
- 国立大学一覧
- 大学院大学
- 北陸先端科学技術大学院大学 (JAIST)
- 奈良先端科学技術大学院大学 (NAIST)
- 沖縄科学技術大学院大学 (OIST)
- 政策研究大学院大学 (GRIPS)
外部リンク
参考文献
- 学術情報(総合研究大学院大学)
- 大学概要:データブック(総合研究大学院大学、2006年4月1日現在)※2006年6月21日の学校教育法改正前の職位に基づくデータ
- 交流規定(総合研究大学院大学)
脚注
- ^ 学長からのメッセージ(総合研究大学院大学、2008年4月1日)
- ^ a b 総合研究大学院大学学則(2008年3月14日現在)
- ^ 一部の大学共同利用機関法人に所属する研究所が加わっていない場合もあるが、そちらの場合には、複数の省庁との関連性があるためである。例としてRETIなどが挙げられる。
- ^ 2008年2月現在、文部科学省によって推進されている国際研究拠点形成における各機構との間では、研究成果の相互活用を始めとして、研究施設の相互利用を促進することで、人的交流ならびに研究成果交流などの推進を行うことが決定されている。これは、理化学研究所なども参加して実施している。現在、各種報道機関において質の高い教養番組の制作をはじめとして信頼の高い情報が提供されている状況に鑑み、独立行政法人メディア教育開発センターの廃止が議論されている。総合研究大学院大学では、既存専攻の存続を目的として、放送大学学園における後期大学院課程設立を支援する予定。