米崎町 (陸前高田市)

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米崎町
普門寺
米崎町の位置(岩手県内)
米崎町
米崎町
米崎町の位置
北緯39度1分36.703秒 東経141度46分10.91秒 / 北緯39.02686194度 東経141.7696972度 / 39.02686194; 141.7696972
日本
都道府県 岩手県
市町村 陸前高田市
人口
(2021年9月30日時点[1]
 • 合計 2,920人
郵便番号
029-2206[2]
市外局番 0192(大船渡MA[3]
ナンバープレート 岩手
運輸局住所コード 03510-0054[4]

米崎町(よねさきちょう)とは、岩手県陸前高田市の地名。郵便番号は029-2206。住民基本台帳によると2021年9月30日の住民は2,920人、世帯数は1,138世帯である[1]

地理[編集]

米崎町の水田地帯の様子。

北で大船渡市猪川と、東で大船渡市大船渡町や大船渡市末崎と、南東で小友町と、西で高田町と接し、南にて広田湾に面する。

集落は散在しているが、松峰に陸前高田市内最大規模の住宅団地である松峰住宅団地が所在する。

また、米崎町は農漁業地域である。農業では、明治時代から特産物として米崎りんごがある[5][6]。これは米崎町が傾斜地の多いことから水はけが良く、日照時間が長いためである。2015年平成27年)時点では、米崎町の樹園地のある農家数は85戸(陸前高田市全体では116戸)、面積は43ha(陸前高田市全体では55戸)と陸前高田市内でも特出して、樹園地が多いことが窺える[7]。漁業は小型定置網の他に様々な種類の海産物の養殖を行っている。

河川[編集]

[編集]

  • 水上山(874.7m)[8]
  • 箱根山(464.8m)[8]

小字[編集]

域内の小字は以下の通りである[4]

  • 神田
  • 川内
  • 川崎
  • 川西
  • 川向
  • 佐野
  • 地竹沢
  • 高畑
  • 樋の口
  • 堂の前
  • 中島
  • 中田
  • 西風道(ならいみち)[9]
  • 西之沢
  • 糠塚沢
  • 沼田
  • 野沢
  • 松峰
  • 道の上
  • 和方
  • 脇の沢
  • 和野

歴史[編集]

施設[編集]

普門寺の外観。

交通[編集]

鉄道[編集]

2020年まで、JR大船渡線脇ノ沢駅が所在していたが[15]、現在は存在せず、代わりにBRTの停留所(後述)が存在する。

なお、最寄駅は盛駅三陸鉄道リアス線岩手開発鉄道赤崎線・日頃市線)などが挙げられる。

道路[編集]

バス[編集]

統計[編集]

人口[編集]

住民基本台帳によると2021年9月30時点での米崎町の人口は以下の通りである[1]

世帯数
日本人 1,136世帯 1,418人 1,492人 2,910人
外国人 2世帯 3人 7人 10人
合計 1,138世帯 1,421人 1,499人 2,920人

労働[編集]

2015年10月1日時点での米崎町の15歳以上の産業別労働者人口は以下の通りである(なお、単位は人)[7]

第一次産業[編集]

就業者人口 農業 林業 漁業
総合 155人 5人 42人
83人 4人 29人
72人 1人 13人

第二次産業[編集]

就業者人口 鉱業
採石業
砂利採取業
建設業 製造業
総合 0人 330人 181人
0人 301人 96人
0人 29人 85人

第三次産業[編集]

就業者人口 水道
電気
ガス
情報通信 運輸
郵便
小売
卸売
金融
保険
不動産
物販賃貸
学術研究
専門サービス
技術サービス
宿泊
飲食サービス
生活関連サービス
娯楽
教育
学習支援
医療
福祉
複合サービス サービス 公務 その他
総合 3人 5人 58人 214人 21人 8人 35人 79人 36人 64人 208人 24人 76人 65人 1人
3人 4人 55人 101人 6人 4人 21人 22人 16人 25人 56人 18人 46人 42人 1人
0人 1人 3人 113人 15人 4人 14人 57人 20人 39人 152人 6人 30人 23人 0人

東日本大震災[編集]

米崎町での東日本大震災の犠牲者は86人で域内の字館が16.4m浸水し、字高畑に所在する一等三角点は58cmの地盤沈下が確認された[21][22]

域内各地の様子[編集]

  • 陸前高田市立米崎中学校
    • 東北地方太平洋沖地震が発生した3月11日当日は卒業式の準備や掃除を行っており、地震が発生すると、ひとまず校庭へと集合したが、津波が防潮堤を越えたことを確認したため、裏山へと避難した[22]
    • その後、校庭へと一旦戻ったが、時刻は午後5時を過ぎ、気温が氷点下3度から5度と冷え込みはじめたため、体育館へと移動し、灯油式ストーブ4台と灯油200Lを用いて、暖房とした[22]
    • 食料はPTAに要請をして、100kg以上の米を集め、炊き出しを行い、避難者におにぎりを提供した。電力は発電機と車から調達したガソリンを用いて調達した[22]
    • 3月12日、体育館に亀裂を確認したため、これ以上は避難所としての機能を果たせないと判断し、避難者は米崎小学校と神田公民館へと移動した。なお、体育館は岩手県警察へと引き渡し、遺体安置所として使用されることになった[22]
    • なお、生徒は全員無事であった[23]
  • 陸前高田市立米崎小学校
    • 全学年の生徒が学校にいる中、地震が発生し、生徒らは机の下に隠れ、戸を開けて、避難経路を確保した[22]。事前に作成されていたマニュアルには「地震がおさまってから避難する」という旨が記載されていたが、揺れが長かったため、副校長と用務員が生徒に校庭へ避難するように指示した[22]
    • 防災行政無線で「防潮堤を越えた」と聞こえ、海の方面で水しぶきを確認したため、1kmほど北上し、岩根会館へと避難した[22]
    • 翌日、避難者が米崎小学校に集まり始めたため、小学校の体育館と一部の教室を開放し、自治体が運営する形で避難所として運用された[22]
  • 米崎地区コミュニティセンター
    • 震災が発生した当日、米崎地区本部と避難所が開設され、米崎町内の避難所である米崎小学校と米崎中学校の状況を把握しながら、約150人の避難者を受け入れた[22]
    • 近隣の自主防災会が毛布やストーブ、カップ麺を備蓄していたため、分け与え食べた[22]
    • 翌日になると、岩手県立高田病院の職員を受け入れて、一部を県立高田病院救護所として開設し、救護所を併設した米崎地区本部は各避難所の巡回や支援物資の仕分け、配給を行った[22]
  • 米崎保育園
    • 地震が発生した時、児童は昼寝の時間であった。地震が発生し、庭へと移動したが、防災行政無線から津波の襲来を聞き、上浜田構造改善センターへと逃れた。しかし、建物は地震による倒壊の可能性を孕んでいたため、より高台にある岩根会館へと移動し、最終的に民家の離れを借りて宿泊した[22]

被害統計[編集]

2012年11月30日時点の米崎町の世代・男女別の犠牲者・死亡率は以下の通りである[21]

世代と性別 死者 死亡率 当時の人口
男性 39 3.12% 1,289
女性 47 3.03% 1,465
15歳未満 3 3.21% 370
15 - 64歳 45 0.81% 1,485
65歳以上 38 3.03% 899
合計 86 4.23% 2,754

建物の被害は以下の通りである(一部数値を四捨五入し、また、住民票を移さずに被災した世帯も統計に含まれているために被害割合が100%を超過する場合がある)[22]

全壊 大規模半壊 半壊 一部損壊 合計
世帯数 津波被害 303 11 14 6 334
地震被害 4 0 6 594 604
合計 307 11 20 600 938
被害割合 津波被害 32.3% 1.2% 1.5% 0.6% 35.6%
地震被害 0.4% 0.0% 0.6% 63.4% 64.5%
合計 32.8% 1.2% 2.1% 64.0% 100.1%

文化財[編集]

米崎町内の文化財は以下の通りである[22][24][25][26][27][28]

名称 指定 区分 指定年月日 備考
普門寺三重塔 県指定 有形文化財 1975年3月4日 三重塔は1809年に建立され、古くはないが、岩手県内では唯一の塔婆建築であるため、文化財としての価値は大いにあるとされる。
普門寺のサルスベリ 県指定 天然記念物 1981年12月4日 樹齢は約300年とされ、県内最大樹である。
絹本著色愛染明王画像 県指定 有形文化財 1974年2月15日 室町時代に作成され、縦は184cm、横は98cmである。
木造伝聖観音菩薩坐像 県指定 有形文化財 1974年2月15日 像高は55.1cmである。

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c 令和3年度人口・世帯数(住民基本台帳)”. 陸前高田市 (2021年10月5日). 2021年11月2日閲覧。
  2. ^ 郵便番号簿PDF(2020年度版) 岩手県” (PDF). 日本郵便グループ. 2021年11月7日閲覧。
  3. ^ 市外局番の一覧”. 総務省. 2021年10月15日閲覧。
  4. ^ a b 自動車登録関係コード検索システム”. 国土交通省. 2023年8月17日閲覧。
  5. ^ 米崎りんごって?”. 特定非営利活動法人LAMP. 2021年11月2日閲覧。
  6. ^ 米崎りんご(陸前高田市)”. JA岩手県中央会. 2021年11月2日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h i 陸前高田市統計書” (PDF). 陸前高田市. 2021年10月24日閲覧。
  8. ^ a b c 高田松原津波復興祈念公園 基本構想 参考資料”. 国土交通省東北地方整備局・岩手県・陸前高田市. 2021年11月3日閲覧。
  9. ^ 岩手県陸前高田市米崎町西風道”. NAVITIME. 2021年10月30日閲覧。
  10. ^ 米崎郵便局 (よねさきゆうびんきょく)”. 日本郵政グループ. 2021年10月30日閲覧。
  11. ^ ホームページ”. 陸前高田市米崎小学校. 2021年10月30日閲覧。
  12. ^ a b 小・中学校一覧” (2021年4月7日). 2021年10月30日閲覧。
  13. ^ 施設概要”. 陸前高田グローバルキャンパス. 2021年10月30日閲覧。
  14. ^ 漁港一覧”. 陸前高田市 (2021年6月29日). 2021年10月25日閲覧。
  15. ^ ただし、2011年3月11日より、東北地方太平洋沖地震の影響で休止していた。
  16. ^ 高木(陸前高田市)〔路線バス〕の時刻表”. NAVITIME. 2021年11月2日閲覧。
  17. ^ a b c d e イオンスーパーセンター陸前高田の時刻表”. NAVITIME. 2021年11月2日閲覧。
  18. ^ グローバルキャンパス前の時刻表”. NAVITIME. 2021年11月2日閲覧。
  19. ^ 普門寺前の時刻表”. NAVITIME. 2021年10月24日閲覧。
  20. ^ a b 松峰の時刻表”. NAVITIME. 2021年11月2日閲覧。
  21. ^ a b 谷謙二小地域別にみた東日本大震災被災地における死亡者および死亡率の分布」『埼玉大学教育学部地理学研究報告』第32号、埼玉大学教育学部地理学研究室、2012年、1-26頁、doi:10.24561/00016186ISSN 0913-2724NAID 1200063880162021年11月3日閲覧 
  22. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 陸前高田市東日本大震災検証報告書 資料編” (PDF). 陸前高田市. 2021年9月12日閲覧。
  23. ^ 飯田東中 支援先の陸前高田市米崎中校長来校”. 陸前高田市東日本大震災検証報告書 資料編. 南信州新聞 (2012年1月17日). 2021年11月7日閲覧。
  24. ^ 陸前高田市にある指定文化財”. 陸前高田市 (2021年4月1日). 2021年11月7日閲覧。
  25. ^ 普門寺三重塔”. 岩手県文化スポーツ部文化振興課 文化芸術担当. 2021年11月7日閲覧。
  26. ^ 普門寺(ふもんじ)<陸前高田市>”. 公益財団法人さんりく基金 (2021年3月23日). 2021年11月7日閲覧。
  27. ^ 絹本著色愛染明王画像”. 岩手県文化スポーツ部文化振興課 文化芸術担当. 2021年11月7日閲覧。
  28. ^ 木造伝聖観音菩薩坐像”. 岩手県文化スポーツ部文化振興課 文化芸術担当. 2021年11月7日閲覧。

参考文献[編集]