イスパーン賞

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イスパーン賞
Prix d'Ispahan
開催国 フランスの旗フランス
主催者 フランスギャロ
競馬場 ロンシャン競馬場
2014年の情報
距離 芝1850メートル
格付け G1
賞金 賞金総額25万ユーロ[1]
出走条件 サラブレッド4歳以上
負担重量 定量戦(58kg、牝馬1.5kg減)
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イスパーン賞Prix d'Ispahan)はフランスパリにあるロンシャン競馬場で開催される芝1850メートル競馬競走である。グループ制ではG1に類される。出走条件は4歳以上馬。

小史

ペルシャ皇帝ナーセロッディーン
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ペルシャ皇帝ナーセロッディーン
イスファハン(イスパーン)の宮殿
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イスファハン(イスパーン)の宮殿
ドガの「ロンシャン競馬場」(1873-1875年頃の作品)
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ドガの「ロンシャン競馬場」(1873-1875年頃の作品)

レース名の由来

「イスパーン賞(Prix d'Ispahan)」という競走が最初に行われたのは1873年7月13日である。本来その時期はロンシャン競馬場の開催時期ではないのだが、パリを訪問したイラン皇帝(ガージャール朝シャーナーセロッディーン・シャーを歓待するために特別に開催が行われた[2]

この開催のメインレースとして3000メートルの平地競走が行われた。そのレースの名称は、当時のガージャール朝(ペルシャ)の首都エスファハーンにちなんで、「エスファハーン賞」を意味するフランス語「Prix de Ispahan」(フランス語では「de Ispahan」はエリジオンの結果「d'Ispahan」と綴る)として行われた。これが今のイスパーン賞の起源とされている。このときは同年のディアヌ賞(フランスオークス)に優勝馬したカンペシュ(Campêche)という3歳牝馬が勝っている[2]

なお、この日は午前中に平地競走を済ませたあと、昼休みを利用して置き障害が設置され、午後は障害レースが行われた。午後の障害レースのメインレースが「ファリスタン賞(Prix du Faristan)」といった[2]

変遷

翌年からは2400メートルに距離を短縮して行われるようになり、1891年から2200メートル、1903年から2100メートルと徐々に距離は短くなっていった。その間、第一次世界大戦(1914年7月から1918年11月)があり、フランスはドイツ軍に攻め込まれて競馬開催ができなくなり[注 1]、1915年から1918年の4年はイスパーン賞も行われなかった[2][3]

戦後に競馬が再開してまもない1921年からは1850メートルに短縮になり、以後は代替開催を除いてこの距離で行われている。1939年夏にはじまった第二次世界大戦では、当初はフランス国内の競馬も平穏に行われていたが、1940年春にドイツ軍がフランスへ侵攻、6月にはパリも落城して競馬どころではなくなった。翌1941年からは占領軍であるドイツ軍の許可のもとでロンシャン競馬が再開されたが、1943年には連合軍側の空襲が激しくなり、特に対空砲が設置されたロンシャン競馬場は空爆の標的となった。そのため1943年・1944年は近隣のトランブレー競馬場で代替開催になり、2000メートルで行われている。このほか1991年と2016年にもシャンティイ競馬場(1800メートル)で代替開催になった[2][3]

1960年代までは夏(主に7月)に行っていて、3歳馬を含めて春競馬で活躍した馬が集うレースだった。1988年に条件が大きく変わり、開催時期は春(主に5月)に変わり、それまでの「3歳以上」から「4歳以上」となって古馬のレースに様変わりした[2][3]

過去の主な勝ち馬

過去のイスパーン賞優勝馬の中でも特筆されるのが1889年優勝のルサンシー(Le Sancy)、1923年のエピナール(Épinard)、1988年のミエスク、2003年のファルブラヴだとされている。これらはイスパーン賞優勝を契機に世界的な名馬へと飛躍していった[2]。ほかにも、1974年のアレフランスや1985年のサガスは、春にイスパーン賞を勝ち、その秋に凱旋門賞を制している[2]

フランス国外からの挑戦は珍しいが、2014年までに10頭が優勝している[2]。2016年には日本のエイシンヒカリが優勝した[4]。このときエイシンヒカリは2着に10馬身差をつけており、これは21世紀のG1競走のなかで歴代9位(2016年5月時点)のものである[5][注 2]

そのほか日本馬としては、1999年エルコンドルパサーが2着(優勝馬クロコルージュに入っている。

条件の変遷

開催競馬場 距離(メートル) その他
1873 ロンシャン競馬場 3000
1874 - 1890 ロンシャン競馬場 2400
1891 - 1902 ロンシャン競馬場 2200
1903 - 1914 ロンシャン競馬場 2100
1915 - 1918 中止   第一次世界大戦
1919 - 1939 ロンシャン競馬場 2100
1940 中止   第ニ次世界大戦
1941 - 1942 ロンシャン競馬場 1850
1943 - 1944 トランブレー競馬場 2000 第二次世界大戦
1945 - 1990 ロンシャン競馬場 1850
1991 シャンティイ競馬場 1800
1992 - 2015 ロンシャン競馬場 1850
2016 シャンティイ競馬場 1800

沿革

  • 1873年 - 創設。当時は出走条件3歳以上馬、開催時期は6月、7月だった。
  • 1915年1918年 - 第一次世界大戦のため中止。
  • 1940年 - 第二次世界大戦のにより中止。
  • 1971年 - グループ制の導入によりG1に格付け。
  • 1988年 - 出走条件が3歳以上から4歳以上に変更。
  • 2016年 - ロンシャン競馬場改修工事のため、代替としてシャンティイ競馬場で開催される。

近年の優勝馬

施行日 調教国・優勝馬 日本語読み 性齢 タイム 優勝騎手 管理調教師 馬主
第131回 2008年5月18日 フランスの旗Sageburg セージバーグ 牡4 1:53.70 O.ペリエ A・ド・ロワイエ=デュプレ アーガー・ハーン4世
第132回 2009年5月17日 フランスの旗Never on Sunday ネヴァーオンサンデー 牡4 1:57.20 C.ルメール J-C.ルジェ ダニエル=イヴ・トレヴィス
第133回 2010年5月23日 フランスの旗Goldikova ゴルディコヴァ 牝5 1:49.40 O.ペリエ F.ヘッド ヴェルテメール兄弟
第134回 2011年5月22日 フランスの旗Goldikova ゴルディコヴァ 牝6 1:51.00 O.ペリエ F.ヘッド ヴェルテメール兄弟
第135回 2012年5月27日 フランスの旗Golden Lilac ゴールデンライラック 牝4 1:51.85 M.ギュイヨン A.ファーブル ゲシュタット・アマーランド
第136回 2013年5月26日 フランスの旗Maxios マキシオス 牡5 1:56.55 S.パスキエ J.ピース ニアルコス・ファミリー
第137回[7] 2014年5月25日 フランスの旗Cirrus Des Aigles シリュスデゼーグル セ8 1:57.98 C.スミヨン C.バランド=バルブ ジャン-クロード-アラン・デュプイ
第138回[8] 2015年5月24日 フランスの旗Solow ソロウ セ5 1:51.30 M.ギュイヨン F.ヘッド ヴェルテメール兄弟
第139回[9] 2016年5月24日 日本の旗A Shin Hikari エイシンヒカリ 牡5 1:53.29 武豊 坂口正則 栄進堂

脚注

注釈

  1. ^ このときは、主にフランス国内の馬主の多くが、軍馬に挑発されることを嫌って所有馬を安全なイギリスやアメリカ、スペインなどに移してしまい、フランス国内は競馬をできるような状況ではなくなった。
  2. ^ 1位は2009年ドバイワールドカップでの14馬身(Well Armed)、2位は2008年アイルランドセントレジャーでの13馬身(Septimus)、3位に11馬身差が6頭いる[6]>。

出典

  1. ^ IFHA Prix d'Ispahan2014年12月5日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i (フランス競馬会)L'ENCYCLOPÉDIE DES NOMS DE COURSES TOUT SUR L'UNIVERS DU GALOP PRIX D’ISPAHAN 2016年5月25日閲覧。
  3. ^ a b c Galopp-Sieger Prix d'Ispahan 2016年5月25日閲覧。
  4. ^ ル・パリジャン 2016年5月24日付 Prix d'Ispahan. Le Japon à l'honneur 2016年5月25日閲覧。
  5. ^ Equidia 2016年5月24日付 Prix d’IspahanA Shin Hikari ridiculise l’opposition 2016年5月25日閲覧。
  6. ^ レーシング・ポスト 2016年5月24日付 A Shin Hikari books Royal Ascot spot in style 2016年5月25日閲覧。
  7. ^ 2014年レース結果 - racingpost、2014年5月28日閲覧
  8. ^ 2015年レース結果レーシングポスト、2015年7月1日閲覧
  9. ^ 2016年レース結果レーシングポスト、2016年5月24日閲覧

関連項目