瀬戸川猛資

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瀬戸川 猛資(せとがわ たけし、1948年7月5日 - 1999年3月16日)は、日本のミステリー評論家映画評論家、編集者。筆名に、宅和宏[1]、藤崎誠[2]などがある。

映画評論家の瀬戸川宗太は弟。

経歴・人物[編集]

東京都出身。早稲田大学文学部卒業。在学中は「ワセダミステリクラブ」に所属し、海外ミステリ評論を手掛けていた。1年後輩の北村薫や、2年後輩の折原一らと親交があった。卒業後は東宝に入社し、テレビ部に配属されてテレビ番組の制作にたずさわり、7年後に退社[3]

1973年紀田順一郎荒俣宏が創刊した雑誌『幻想と怪奇』に、鏡明とともに編集同人として参加。

1980年、自身の個人出版社「トパーズプレス」を設立。

また、1982年に読書人向けの雑誌『BOOKMAN』を創刊。当時の読書界では『本の雑誌』流の「エンターテインメント作品を面白く紹介する」風潮が、一世風靡していたが、創刊号ではあえて「なぜかいま岩波文庫が読みたくなった!!」という特集を組む。まだメジャー化する前の呉智英、荒俣宏を起用し、岩波文庫から刊行されている、「知られざる名著・奇書」を紹介した。その後も、「新書特集」や「古書店カタログ」などの個性的な特集を組み、本好きの間でカルト的な人気を博すが、1991年に30号で終刊[4]

一方、1987年には初の著書であるミステリ論、『夜明けの睡魔―海外ミステリの新しい波』を刊行。「新しい形の名探偵」を創造したコリン・デクスターの魅力を語り、また「ハードボイルド作家として分類されているロス・マクドナルドは、本格ミステリ的作家である」ことを指摘するなどした。

1993年には第2評論集、『夢想の研究―活字と映像の想像力』を刊行。同書の文庫化時の解説は、刊行時から同書を絶賛していた丸谷才一が担当している。

また、編集者としては、自身の出版社トパーズプレスから、1988年から1997年にかけて、映画評論家の双葉十三郎が、前から雑誌「スクリーン」に連載し続けていた膨大な映画評『ぼくの採点表』(外国映画約8900本)を、全5巻+索引1巻の大部の本として刊行した。

並行して、自身も映画評論等を行った。1999年に50歳で死去。

著書[編集]

  • 刑事コロンボ 二枚のドガの絵(1974年8月 二見書房 サラ・ブックス) - 著:W・リンク、R・レビンソン。訳:藤崎誠。刑事コロンボのノベライゼーション[5]
  • 五十一人勢ぞろい 世界名探偵図鑑(1975年5月 立風書房 ジャガーバックス) - 藤崎誠名義
  • 夜明けの睡魔 海外ミステリの新しい波(1987年10月 早川書房 / 1999年5月 東京創元社 創元ライブラリ)
  • 夢想の研究 活字と映像の想像力(1993年2月 早川書房 / 1999年8月 東京創元社 創元ライブラリ)
  • ミステリ・ベスト201(1994年8月 新書館 / 2004年12月 新書館【新装版】) - 編:瀬戸川猛資
  • ミステリ絶対名作201(1995年12月 新書館) - 編:瀬戸川猛資
  • シネマ古今集(1997年7月 新書館)
  • シネマ免許皆伝(1998年4月 新書館)
  • 世界古本探しの旅(1998年4月 朝日新聞社) - 荻野アンナ和田忠彦池内紀浅野素女越川芳明野谷文昭と共著
  • 今日も映画日和(1999年9月 文藝春秋 / 2002年9月 文春文庫) - 和田誠川本三郎と共著
  • 二人がかりで死体をどうぞ 瀬戸川・松坂ミステリ時評集(2021年11月 盛林堂ミステリアス文庫) - 松坂健と共著

脚注[編集]

  1. ^ 『ユリイカ』2001年12月号・特集山田風太郎P.186日下三蔵「山田風太郎中毒患者記録」
  2. ^ 町田暁雄編『刑事コロンボ読本』洋泉社 P.186
  3. ^ 田中文雄『猫窓』集英社文庫・解説
  4. ^ なお、のちにライターの南陀楼綾繁は、自分が主宰する「本好きの人たちの集まり」を、この雑誌をリスペクトして「BOOKMANの会」と命名した。
  5. ^ 町田暁雄編『刑事コロンボ読本』洋泉社 P.186

外部リンク[編集]