漢籍

孔子が弟子たちと欹器を調べる様子
漢籍(かんせき)とは、中国大陸において著された書籍であり、一般には漢文で書かれた書物を指す。また日本で著された和書(国書)に対応する分類として用いられる。漢書(かんしょ[注 1]、からぶみ)とも言う。類義語は中国古典
概要
[編集]
試験会場での不正行為に使用したとされる
定義は諸説あり、広義には前述の通り漢文で書かれたあらゆる書物を指すとする説もあるが[1]、狭義には、前近代の中国において中国語(漢文)で書かれた古典籍を指し、中国以外の東アジアの漢文古典籍や、近代以降に出版された新しい学問体系に従って書かれたものは含まれない[2]。また一般的に、仏教関連の書物は仏典として漢籍に含めない。洋書と対比した時には、和書と漢籍をあわせて和漢書と総称する場合もある。
中国で出版された書を日本で復刻・翻刻したものは「和刻本」と呼ぶ。また朝鮮半島で出版されたものは「韓本(朝鮮本・高麗本)」、ベトナムで出版されたものは「安南本(越南本)」と呼ぶ[3]。和刻本に対して、中国で出版されたものを特に「唐本」と呼ぶこともある。江戸時代の日本には、和刻本が数多く刊行された。
本来は袋とじにして糸で綴じた線装本であることが多かったが[注 2]、近代以降に出版したものには洋装本が多い。
対応する中国語は「古籍」(拼音: )だが、日本語と同様定義に諸説ある[4]。また中国では1980年代から、中国以外の漢文古典籍を「域外漢籍」と呼ぶ研究が盛んになっている[5]。
漢籍の分類
[編集]中国
[編集]| 目録学 |
|---|
通常、中国の伝統的な図書分類法である経・史・子・集という四部分類で分類される[6]。その模範となる『四庫全書総目提要』の分類に従いつつ、その不備を補うかたちで各所蔵機関で独自の分類がとられている[7]。なお漢訳仏典については子部・釈家類に入れられることもあるが、漢籍から独立させられ、仏典独自の分類がされることが多い。
日本
[編集]| 研究 |
|---|
| 対象 |
| 料紙 |
| 装丁 |
| 寸法 |
| 書籍の一部分 |
日本で標準的に参照されることの多い京都大学人文科学研究所や東京大学東洋文化研究所の漢籍目録では、四部分類に叢書部を加えて五部とし、近代の書籍は別に新学部を設けてそこに日本十進分類法に従って収める。集部に小説類を設けて白話小説をそこに収め、伝統的な筆記小説(子部小説家)とは分ける、などの工夫を加えている。
江戸時代の各藩などが学問ために漢籍を収集しており、その蔵書は明治時代に設立された書籍館から帝国図書館に受け継がれた。明治12年(1879年)、漢学者の岡千仞が幹事に就任した後から、漢籍の収集、受け入れが積極的に行われた。国学者の榊原芳野や公卿の醍醐忠順から寄贈された和刻本等の受け入れ、京都円光寺からは仏書・漢籍・朝鮮本が購入された。さらに東京帝国大学教授の服部宇之吉が清国並びに周辺国で、明治33年(1900年)から新刊購入を行うなど、国費による新刊の収集も進み、現在の国立国会図書館所蔵「漢籍」の大半が明治時代に形成された。
出版技法による分類
[編集]漢籍は印刷方法により、次のような種類に分けられる。
- 刊本 - 木版印刷によるもの。多くの漢籍がこれに属する。刻本・版本とも言う。
- 鈔本(抄本) - 手書きによって書き写された本。写本。
- 活字印本 - 古活字によって印刷されたもの。古活字には泥活字・錫活字・木活字・銅活字・磁活字がある。
- 石印本 - リトグラフ。薬品入りの墨で紙に手書きし、それを石版に転写して印刷した本。清末民初に流行した。
- 排印本 - 近代活字によって印刷されたもの。装幀は線装も洋装も、どちらも存在する。特に鉛活字のものを鉛印本と呼ぶ。
いったん出版された本を複製する場合には次のような用語が使われる。
装幀による分類
[編集]漢籍は装幀法により、次のような種類に分けられる。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ↑ 武田時昌 (2008), p. [要ページ番号].
- ↑ 京都大学人文科学研究所附屬漢字情報研究センター (2005), p. [要ページ番号].
- ↑ 武田時昌 (2008), p. 9.
- ↑ 王宝平 (2022), p. 156.
- ↑ 王宝平 (2022), p. 154.
- ↑ 清水茂 (2024), p. 34.
- ↑ 坂出祥伸 (2018), p. 213.
- ↑ ““龙鳞装”的试制”. 故宮博物院. 2016年3月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年2月25日閲覧。
参考文献
[編集]- 図書
- 京都大学人文科学研究所附屬漢字情報研究センター 編『漢籍目録:カードのとりかた』朋友書店、2005年。ISBN 4-89281-106-8。
- 清水茂『中国目録学』筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2024年(原著1991年)。ISBN 978-4-480-51276-5。
- 坂出祥伸『初学者のための中国古典文献入門』筑摩書房〈ちくま学芸文庫〉、2018年(原著2008年)。ISBN 978-4-480-09869-6。
- 論文
- 武田時昌 著「総説 漢籍の時空と魅力」、京都大学人文科学研究所附属漢字情報研究センター 編『漢籍はおもしろい』研文出版〈京大人文研漢籍セミナー 1〉、2008年。ISBN 978-4-87636-280-6。
- 王宝平 著「中国学研究の新動向 中国における「域外漢籍」研究について」、二松學舍大学文学部中国文学科 編『入門 中国学の方法』勉誠出版、2022年。ISBN 978-4-585-30005-2。
- 小島憲之「漢籍享受の問題に関して」『万葉』第92号、萬葉学会、1976年、NAID 40003565868。
関連文献
[編集]- 王小林『日本古代文献の漢籍受容に関する研究』和泉書院〈研究叢書420〉、2011年。ISBN 9784757605909。
- 山本信吉『古典籍が語る:書物の文化史』八木書店、2004年。ISBN 4840600449。
- 神鷹徳治・静永健 編『旧鈔本の世界:漢籍受容のタイムカプセル』勉誠出版〈アジア遊学140〉、2011年。ISBN 9784585226062。
- 水口幹記『日本古代漢籍受容の史的研究』汲古書院、2005年。ISBN 4762941697。
- 水口幹記『古代日本と中国文化:受容と選択』塙書房、2014年。ISBN 9784827312690。
- 藤井隆『日本古典書誌学総説』和泉書院、1991年。ISBN 4870884720。
- 劉菲菲『都賀庭鐘における漢籍受容の研究:初期読本の成立』和泉書院〈研究叢書532〉、2021年。ISBN 9784757609846。
- 髙田宗平 編『日本漢籍受容史:日本文化の基層』八木書店、2022年。ISBN 9784840622608。
関連項目
[編集]外部リンク
[編集]- 桂五十郎『漢籍解題』(2版)明治書院、1906年。
- 『WEB漢籍解題』青蛙亭漢語塾。(検索可能)
- 『全國漢籍データベース』京都大學 人文科學研究所 附屬 漢字情報研究センター。
- 「図書館調査ガイド 漢籍の探し方」(大阪府立中之島図書館) - レファレンス協同データベース