株主優待

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
株主優待券から転送)
移動先: 案内検索

株主優待(かぶぬしゆうたい)は、株式会社が一定数以上の自社の株式を権利確定日に保有していた株主に与える優待制度のこと。略して株優(かぶゆう)と呼ぶこともある。

日本では3685社の上場企業のうち1307社が実施し、幅広く実施されている制度[1]だが、その法的な義務は無く個別の判断に委ねられているため定めない企業もある。諸外国ではほとんど行われておらず[註釈 1]、将棋棋士の桐谷広人[註釈 2]ダイヤモンド社のインタビュー企画で語ったところによれば、ほとんど日本だけで行われている株主還元の形であるという[4]。株主優待を実施する企業が日本にだけ多い理由は、返礼品が人気のふるさと納税と同様、お歳暮などの日本の贈答文化が普及の下地との指摘があるほか[2][3]、主に投資信託経由で株に投資する欧米と違い、日本では個人が株を直接持つ傾向が強いことが指摘されている[2][3]。なお、日本の国内企業から海外投資家、海外への日本人投資家への優待の発送は行われていない。

特徴[編集]

所有株数に応じて、優待内容が変わることが多いものの、所有株数に完全に比例はせず、概ね名義ごとに付与されるため、零細株主であるほど金銭に換算した利回りが高い。それゆえ個人投資家に人気があり、個人株主を増やしたい企業は積極的に実施している。

企業が個人株主を増やしたい動機には、企業価値向上のほかに株式持ち合い解消の受け皿・上場基準の達成・流動性の確保などがある。なお、日本の所得税法においては、給与所得者であって株主優待を含む給与以外の収入が20万円を超える場合、雑所得として確定申告が必要である。

信用取引(空買い)で一時的に株式を買っていても優待は貰えない。現物株で保有してその企業が定める権利確定時期、いわゆる権利日を迎える必要がある。権利確定日の翌営業日に当たる権利落ち日には、株主としての権利や配当金額分の価値が実質的に目減りするので、東京証券取引所日経平均株価東証株価指数が下落する傾向にある。

概要[編集]

上場企業の実施数は増加傾向で2016年9月末には1,307社になり、全上場企業の35.5%にあたり過去最高となった[1]会社四季報の巻末には、株主優待を含めた実質配当利回りランキングの表が掲載されている。証券会社や株式情報サイトなど、各社で毎年行われている『株主優待人気ランキング』では、イオン吉野家HD・オリエンタルランドANAホールディングスなどが『常連株』として名を連ねている[5][註釈 3]

権利確定日は通常、決算期末か中間決算期末、あるいはその両方である。日本で一般的な3月決算の企業では、ちょうど中元歳暮に近い時期に優待が贈られる。

家族名義で株式を購入して名義人数分だけ優待をもらったり、手に入れた優待券(運賃割引券、商品券など)をインターネットオークション金券ショップで換金する者もいる。企業の想定以上に株主数が増えた結果、優待実施に係るコストが上昇し、優待内容を縮小あるいは廃止する企業が出てきている。また、株式を多く保有する外国人投資家から、株式保有量に比例した配分がなされない優待よりも配当を優先すべきという声が出て、廃止に踏み切った企業も存在する。

海外投資家や投資信託、ファンドは、優待で得た物(特に日本国内でしか使えない金券・割引券)を換金して、配当に比べるとわずかな金額だが利益を出資者に分配している。法人株主も大抵の場合は換金している(ワールドビジネスサテライトの特集より)。

また、無配になった場合でも株主優待は実施する企業も多いので、優待目的に購入する個人投資家も多い。その為、権利確定日権利落ち日は売買数が増える傾向になる。

長期保有特典を実施し、安定株主を増やそうと実施する企業も2004年以降、毎年増加傾向にあるほか、新設銘柄も1992年以降増加している[註釈 4][註釈 5][7]。一方で、上場廃止業績悪化などの企業運営上の問題、あるいは後述する株主平等原則の観点から株主優待を廃止する銘柄も、毎年30社程度存在する[7]

非公開会社が株主優待を行っている場合もある。スターフライヤーは上場する以前から株主優待割引券(普通運賃の約半額となる株主優待割引運賃を利用できる券が株主に進呈される)を配布していたケースなどが挙げられる。

日本で記録が確認できた範囲で、最も古い株主優待は、1899年明治32年)に東武鉄道が行った「東武鉄道全線乗車」の優待券である[9]

スターバックスは、アメリカ合衆国資本の企業としては、珍しく株主優待を行っていたが、2014年に発表された株式公開買付けに伴う上場廃止により、株主優待が廃止された[10][11]

2016年8月時点の、国内上場企業の株主優待の内容で最も多いのは「金券・ギフト」であり471社が提供、ついで、「食品」を453社で優待品として提供している[註釈 6][8]

問題点[編集]

  • 会社法では株主優待を配当の一種と定める明文の規定がないため、会社法に定める現物配当規制や配当財源規制から潜脱するおそれがある。
例えば、配当財源がないのにもかかわらず、株主優待制度を用いて実質的に株主に対して配当(蛸配当)を実施することができる。
例えば、「1,000株以上保有する株主に一律に割引券1枚を交付する」と定めた場合、100万株保有する株主も1,000株保有する株主も同じ内容であり、1,000株未満保有する株主は割引券をもらえないため、株主平等原則に反することになる[3]

これらの問題点については、個人株主作りや自社製品・施設の宣伝等の経営政策上の合理的必要性があり、かつ、優待の程度が軽微であれば、配当規制や株主平等原則には反しないとの見方が多数であり、多くの企業で行われている株主優待制度は有効と解されている。

優待内容[編集]

株の保有数に応じて内容が変わることが多い。また、保有期間に応じて内容が変わることもある。

  • 自社製品の詰め合わせ(主に食品や日用品の製造業など)。
  • 自社のサービスや製品に使える商品券・割引券(クーポン)・無料券(タダ券と俗称される。鉄道会社航空会社、小売業など主に一般消費者を顧客とする非製造業が多い)。
  • 地方企業の場合はその土地の名産品
  • 自社とは関係のない汎用的な金券・商品券(一般消費者が顧客対象ではない機械メーカー、素材メーカーなどの業種が多い)。
  • 優待品に替えて、社会貢献事業への寄付が選べる会社もある。

関連項目[編集]

脚注[編集]

註釈[編集]

  1. ^ 2017年4月に日本経済新聞が調査したところ、実施企業は、米国では10社未満、英国でも30社程度にとどまっている[2][3]
  2. ^ 桐谷広人は将棋棋士であるが、株主優待マニアとしても著名である[3]
  3. ^ 野村インベスター・リレーションズが調査したところによれば、日清食品ホールディングスダイドードリンコイオン日本マクドナルドホールディングス日本ハムオリックスなどが株主優待人気ランキングの上位に名を連ねている[6]
  4. ^ 新設銘柄のうち、IPO実施から1年未満の企業の占める割合は2割以上となっている[7]
  5. ^ このほか、優待内容の拡充を実施する銘柄も2012年以降、毎年増加しており、2015年度には2012年度の2倍超の127銘柄が、拡充を実施している[8]
  6. ^ 2015年8月時点では「金券・ギフト」が402社、食品が「439社」であり、食品のほうが多かった[8]。この逆転は、自社製品を優待品としにくいBtoB企業や、サービス業での導入増加や、株主にとっての利便性の観点から金券・ギフトを選択した社が多かったことによると、野村インベスターズ・リレーションでは指摘している[8]

出典[編集]

  1. ^ a b 『株主優待ガイド2017年版』発刊 (PDF)”. 大和インベスター・リレーションズ株式会社. 2017年1月25日閲覧。
  2. ^ a b c 『株主優待バブル過熱、株価、特典で高止まり、機関投資家「配当軽視」』(日本経済新聞 2017年4月2日朝刊1頁)
  3. ^ a b c d e 株主優待バブル過熱 株価、特典で高止まり/機関投資家「配当軽視」 (日経電子版 2017年4月2日配信) 2017年6月10日閲覧
  4. ^ 【第1回】教えて桐谷さん 株主優待の魅力!! 株主優待は、株の値上り益、配当に続く、株式投資で儲けるための第3の道である!ダイヤモンド・ザイ公式YouTubeチャンネル 2016年8月31日公開) 2017年2月19日確認
  5. ^ http://www.kabuyutai.com/ninki/2015.html
  6. ^ 『アイアール magazine 特別号 知って得する株主優待(2017年版)』5頁(野村インベスターズ・リレーションズ 2016年11月発行)
  7. ^ a b c 『アイアール magazine 特別号 知って得する株主優待(2017年版)』228頁(野村インベスターズ・リレーションズ 2016年11月発行)
  8. ^ a b c d 『アイアール magazine 特別号 知って得する株主優待(2017年版)』229頁(野村インベスターズ・リレーションズ 2016年11月発行)
  9. ^ 嶋田有 (2015年2月19日). “元祖は鉄道会社か 知られざる株主優待のルーツ”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). http://style.nikkei.com/article/DGXMZO82492670Y5A120C1000000 2017年5月19日閲覧。 
  10. ^ Starbucks' gift to shareholders just a little drip、Seattle Times、2007年3月1日発行
  11. ^ http://www.777money.com/tameru/yuutai_haisi.html

外部リンク[編集]