少額投資非課税制度

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少額投資非課税制度(しょうがくとうしひかぜいせいど、NISA = ニーサ)は、日本における株式投資信託投資金における売却益と配当への税率を一定の制限の元で非課税とする制度[1][2]

NISAには4つの種類があり、それぞれ非課税となる期間や投資対象、運用期間に定めがある[3]金融機関において、この制度が適用される非課税口座を、通常の取引口座とは別に開設する必要がある[4][5]

NISAの種類
名称 期間 非課税期間 概要
一般NISA 2014年~2023年 5年 一般の株式や投資信託向け(年120万円)
新・NISA 2024年~2028年 5年 積み立て(年20万円)+一般の株式や投資信託(年102万円)の2階建て
つみたてNISA 2018年~2042年 20年 投資信託などによる積み立て(年40万円)
ジュニアNISA 2016年~2023年 5年 19歳以下の子供を持つ親向け(年80万円)

概要[編集]

日本における個人の株式や投資信託の売買から生じる所得への課税を、この少額投資非課税制度が適用される口座(以下、非課税口座)において投資を行った場合、譲渡所得と配当所得が制度にしたがって非課税になる制度である。

2003年(平成15年)1月に5年間の時限措置で、上場株式などの配当や売却益にかかる税率は、本来の20%から10%に軽減される制度が導入され、延長が行われたが、2013年(平成25年)12月に打ち切ることになったことや[6]、個人の金融資産を他国と比べて突出している預金から株式投資へシフトさせ、さらなる経済成長を企図する意味合いもあり[7]2014年(平成26年)1月から、年間限度額を100万円として開始された[4]

イギリスにおいて、居住者に対する類似の少額投資を優遇する制度(非課税制度)として、個人貯蓄口座(Individual Saving Account、略称ISA)が1999年6月にスタートした。日本の非課税口座は、このイギリスの口座と制度を参考に作られ、日本版ISA[8]と呼ばれることもあった。

ただし、NISAはイギリスのISAに倣ったとはいえ、本家本元に比べると投資できる対象が限定されていて、ISAとは様々な違いがある[9]

NPO法人確定拠出年金教育協会2014年(平成26年)からNISAが開始されたことから、その内容を広めるのを目的に2と13で「ニーサ」と読む語呂合わせから毎年2月13日を「NISA(ニーサ)の日」として一般社団法人日本記念日協会に記念日の登録をした[10]

詳細[編集]

一般NISA[編集]

この非課税口座金融機関において通常の取引口座とは別に開設し、該当口座で上場株式投資信託を売買すると、この口座で得た所得に対して非課税税制が適用される[4]

ただし利用者1人につき1口座のみ開設可能[11]。すなわち口座開設時に他の金融機関において同制度を対象とした口座(一般NISA口座)が開設されていないことが必要[11]

非課税に関する具体的な条件や内容は次のとおり。

  • 資格者:非課税口座を開設する年の1月1日において20歳以上の日本国内居住者。
  • 非課税対象:非課税口座で購入した上場株式や投資信託の、配当所得・譲渡所得の金額分。
  • 非課税期間:最長5年間。
  • 非課税投資枠上限:毎年120万円[12]、最大600万円。

一般NISA口座を開設し、取引する場合は以下の点に留意する必要がある。

  • 銀行では株式が取り扱えないため、株式取引を行いたい場合は証券会社で口座を開設する必要があること。
  • 途中売却自由であるが、年度の途中で株式や投資信託を売却した場合、その分の非課税枠の再利用はできないこと。
  • 一般の特定口座からNISAへの株式、投資信託の移動はできないこと。(その逆は可能である)
  • 株式の配当金に対する非課税措置を受けるためには、配当金の受け取り方法に株式数比例配分方式(証券会社で配当金を受け取る)を選択する必要がある[13]
  • 年間の非課税投資額の上限が120万円であること。

なお、口座開設期間は2014年(平成26年)から2023年(令和5年)の10年間とされており、人生設計を考えた長期の積み立てにはやや短い。その為、一生使える制度にする為にも、日本証券業協会からは制度の恒久化を求める声が上がっている[14]

その他、開始後から2014年(平成26年)6月までに報じられている事項については次のようなものがある。

  • 非課税枠を200万円に拡大を検討(経済財政再生相甘利明の表明)[15]
  • 投資総額は、2014年3月末時点で1兆34億円。利用者の64.9%が60歳以上に偏り、20・30歳代の利用が少ない(2.0%・6.5%)[16]

2023年で一般NISAは終了し、後継の「新・NISA」がはじまる。

新・NISA[編集]

2024年~2028年までの制度で、積み立て(年20万円)+一般の株式や投資信託(年102万円)の2階建て制度。

つみたてNISA[編集]

2018年(平成30年)1月1日から、年間40万円の積立投資信託を20年間非課税にする「つみたてNISA」が開始された[4]。投資可能期間は2042年までの25年間。「つみたてNISA」は「一般NISA」や「新・NISA」との併用は不可。金融庁が認めた投資信託等だけに投資できる。株価指数の投資信託や公社債やREITを組み合わせたバランス型などが中心。

ジュニアNISA[編集]

2016年~2023年までの制度として、0歳から19歳の未成年者専用のジュニアNISA(主に親が子供名義で大学入学費を作ることを想定[17])の創設[18](一人当たり年80万円が限度。3月31日時点で18歳である年の前年の12月31日までは引き出し制限あり)。2024年以降は延長せずに廃止[19]

歴史[編集]

2013年(平成25年)4月、日本証券業協会全国銀行協会などが組織する「日本版ISA推進連絡協議会」は、この新制度口座の愛称の募集を行い、7,000件を超える応募の中から、50代男性[20]が応募したNISA(ニーサ)に決定した[21][22]。なお、NISAのNはNipponを意味している[23]

2016年以降、年間の非課税投資額上限を120万円に拡大。2018年(平成30年)以降、個人番号による口座開設手続きの簡素化を検討[18]

批判[編集]

NISA制度への批判として、主に以下の意見がある。

  • 一般NISA制度そのものの継続期間が、2014年(平成26年)から2023年(令和5年)までの10年間であるのに対し、1つのNISA口座の非課税期間が「5年間であること」が分かりにくい[註釈 1][24]
  • 制度の推進を図る、金融庁日本証券業協会などは「家計の安定的な資産形成の支援と経済成長に必要な成長資金の供給拡大を図る」として、長期投資を推進すると言うものの、5年以内に売却しなければ、非課税のメリットを受けられない現行制度では、長期投資に繋がらない[24]
  • 高齢者に偏っている個人投資家の裾野を、若年層や初心者にも広げて株式市場を活性化するとともに、若者の長期の資産形成を後押しすることも制度目的の一つとされていたが[25]、実態はNISA口座開設者の大半が高齢者であり、投資未経験者の開設に至っては、全体の1割しかなく、制度の目的と実態が乖離している[註釈 2][27]
  • NISA口座で購入した金融商品の価値が、非課税期間の終了時点で下落していた場合、損切りをしたくなければ、一般口座や特定口座に移すことになる。その後、その商品の価値が少し回復した場合、当初取得時と比べて価値が低く、損失が出ていた場合であっても課税がされる[28][註釈 3]
  • NISA口座で取得した金融商品の損切りを行い、投資で損失を確定したとしても、特定口座あるいは一般口座で、確定申告において利益との損益通算ができないばかりか、まだ損益分が残っている場合は、それを3年間損益を繰り越し税控除を受けられる「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」制度が、NISA口座では不可能である[28][4]

脚注[編集]

註釈[編集]

  1. ^ 当初、非課税期間は制度の継続期間と同じ10年間とされていた[24]。しかしながら、この場合、非課税枠の総額は100万円×10年=1000万円となったため、これを「金持ち優遇」と批判する動きがあった。この批判への落としどころとして、総額を当初の半値である500万円とすることとなった[24]。結果として、100万円の非課税枠の期間を5年間としたが、制度そのものの継続期間は10年間で維持されたため、このようにわかりにくい制度となったことが指摘されている[24]
  2. ^ 東京証券取引所などが2016年6月20日には、2015年度の個人株主の増加数が362万人とデータが有る1967年以来で最大だったと発表しているが、日本経済新聞では、この増加の主要因として、日本郵政グループ日本郵政ゆうちょ銀行及びかんぽ生命が上場したことに加え、NISAの普及による個人投資家の増加があると指摘しており、現実に個人投資家の裾野拡大に、NISA制度も一定程度影響しているという実態がある。[26]
  3. ^ 例として、取得時に100万円で購入した株の価値がNISA口座の満了時に50万円に値下がりしていたとする。その後、その株の価値が60万円に回復した場合、実際は100万円-60万円=40万円の損失が出ているにも関わらず、所得税法及びNISA制度上は、60万-50万=10万円の利益が出ていると見なされ、その「利益」に課税がされてしまう、などということがある。[28]

出典[編集]

  1. ^ NISAの概要金融庁ホームページ)2017年6月10日閲覧
  2. ^ 『アイアール magazine 特別号 知って得する株主優待(2017年版)』24頁(野村インベスターズ・リレーションズ 2016年11月発行)
  3. ^ (2) NISA(少額投資非課税)制度の見直し・延長 - 1 個人所得課税•資産課税 - 令和2年度税制改正
  4. ^ a b c d e 大賀智子 (2013年9月14日). “NISAが得とは限らない 課税口座にも利点あり  運用方針で使い分け”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). http://www.nikkei.com/article/DGXZZO59571670R10C13A9000000/ 2018年4月19日閲覧。 
  5. ^ 税金ゼロになるNISA口座を開くときは「特定口座の源泉徴収なし」を一緒に選べ!ダイヤモンド・ザイ・オンライン 2015年3月20日公開(2017年1月25日更新))2017年6月10日閲覧
  6. ^ 証券優遇税制廃止 来年から11年ぶりに2倍に 「貯蓄から投資へ」を加速かMSN産経ニュース、2013年12月7日
  7. ^ 新しい投資優遇制度「NISA(ニーサ)」がスタート!将来に向けた資産形成を考えるきっかけに政府広報オンライン
  8. ^ 長期のコツコツ投資優遇 日本版ISA、10月受け付け 繰り越し、最大10年非課税 日本経済新聞、2013年2月9日。
  9. ^ NISA(ニーサ)とは?お得に投資ができる少額投資非課税制度”. 2020年8月24日閲覧。
  10. ^ 「確定拠出年金の日(10月1日)」と 「NISA(ニーサ)の日(2月13日)」を制定しました。確定拠出年金教育協会
  11. ^ a b NISAとはSBI証券 2017年6月10日確認)
  12. ^ 2016年以降に上限が上がった。
  13. ^ NISA口座における上場株式の配当金等受取方式に関する注意事項日本証券業協会
  14. ^ 日本経済新聞 平成26年(2014年)5月6日(火)第15面「制度の恒久化求める声」より
  15. ^ NISA非課税枠「200万円に拡大も」 経財相が意欲日本経済新聞サイト、2014年6月28日
  16. ^ NISA投資、若者はそっぽ?…6割が60歳超読売新聞サイト、2014年6月24日
  17. ^ 来年から始まる"ジュニアNISA"って知ってますか? 詳しい内容を聞いてみた!まいなびニュース、2015年4月21日
  18. ^ a b 平成27年度税制改正について(金融庁)
  19. ^ 令和2年度税制改正の大綱の概要
  20. ^ NISA(少額投資非課税制度)愛称決定 | 日本証券業協会”. 日本証券業協会. 2014年8月22日閲覧。
  21. ^ 日本版ISA、愛称は「NISA」に決定 日本経済新聞、2013年4月30日
  22. ^ 愛称が「NISA(ニーサ)」に決定 来年開始の日本版投資非課税制度 MSN産経ニュース、2013年4月30日。
  23. ^ 政府広報オンライン. “新しい投資優遇制度「NISA(ニーサ)」がスタート!将来に向けた資産形成を考えるきっかけに:政府広報オンライン”. 内閣府大臣官房政府広報室. 2014年8月22日閲覧。
  24. ^ a b c d e NISAにため息 長期投資へ真の改革を(渋沢健) コモンズ投信会長日経スタイル 2013年9月1日配信) 2017年6月10日閲覧
  25. ^ 「NISAの弱みを強みに」 金融庁の田畑仁氏が講演  少額上限は時間分散、乗り換え不可は長期投資日本経済新聞 2013/10/31 6:49)
  26. ^ 『個人株主数、伸び最大に、昨年度、郵政上場などで』(日本経済新聞 2016年6月21日朝刊1頁)
  27. ^ NISA、投資は高齢者ばかり 若者や初心者を呼び込めるかが課題J-CASTニュース 2014年7月15日11:52配信) 2017年6月10日閲覧
  28. ^ a b c 株初心者から不満爆発 これじゃあ大損だ!NISAのバカヤロー少額投資非課税制度 巻頭大特集アベノミクスに「大異変」!週刊現代 2014年3月2日号) 2017年6月10日確認

関連項目[編集]

外部リンク[編集]