星座シリーズ

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星座シリーズ』(せいざシリーズ)は、日向章一郎小説ライトノベルのシリーズの通称。

1990年第1巻発行(コバルト文庫集英社)。イラストはみずき健

概要[編集]

主人公が星座占いを駆使し、学校を中心に起きる事件に挑む「ユーモアミステリー」の一つ。

毎回さまざまな事件が起こるが、殺人にまでは至らない。しかも犯人が改心、被害者と和解する事案もかなり存在する平和的な描写が多い。

基本的には黄道12星座がテーマになるが、黄道13星座が話題になった時は「へびつかい座」がテーマになった。また、星座占いに登場しない「白鳥座」もテーマになっている。

もう一つの重要なテーマが「教師と生徒の恋愛」であるが、主役の二人がなかなか公表できない中、事件を通じてそれぞれに成長して絆を強め、更には周囲の人物をも変えていく建設的な純愛がスリリングだが明るく描かれている。

執筆当時の有名人やTV番組などが実名で登場するが、そのために作品の時代設定が曖昧になっている部分がある。

なお、作品の一部は絶版となっており、図書館や中古本専用の書店等に行かないと閲覧できなくなっている。

星座占い[編集]

ここで言う星座占いは、西洋占星術を簡略化したもので、現在もウェブサイトも含め、様々なコンテンツで用いられている。
ただし同じ星座でも生年月日や誕生時間によって結果が大きく変わってくる。そのため、(自分達もそうだが)星座上は相性が良くないカップルの事例に出くわし、麦倉先生が悩む場面がある。
一方、話が進むにつれ、本来星座に懐疑的なはずのノリミやリョウが優しさや正義感から不意に星座に沿った行動をとり、部分的に問題を解決する場面も増えてくる。

シリーズタイトル[編集]

第1部
第2部

1巡目は発行された順番に時間が経過していたが、2巡目となると、巻ごとに若干時間軸が異なる。

ちなみに現時点で時間的に一番後になるのが『へびつかい座』(高3の8月)である。

ストーリー[編集]

都立T高校入学が近い大野ノリミは、中学時代のクラスメイト山本リョウに犯されたと思い込み家出、そこで自分を助けてくれた新島出身の青年に一目惚れする。

家に戻ると何とその青年、麦倉ナオトがいた。彼はノリミの祖母と彼の祖父が決めた婚約者であると同時に、都立T高の新任教師でもあった。そのため、二人はお互いの立場から周囲に公表できなくなってしまう。高校ではそれぞれに想いを寄せる人物が続出、リョウは勿論、ノリミの中学時代からの親友岸幹世も麦倉先生にアタックする様になる。

入学早々、二人の周りで様々な事件が発生し、麦倉先生は高校生の時習得した星座占いを使って事件解決に乗り出す。ノリミは星座占いには否定的だが、探偵助手として大好きな麦倉先生と共に多くの難解で時に危険な事件に立ち向かう。2年生になってからはクラス委員を任され更に多忙になるが、その分麦倉先生と一緒にいられる機会と活躍の場が増える。解決した事件を通して精神的に成長したノリミは自分たちの恋の障害にも逃げずに立ち向かい、3年生の夏には(不意にとは言え)リョウに本音をぶちまけるまでになる。

主な登場人物[編集]

大野 ノリミ(おおの のりみ)
この作品の主人公。本名は範美。7月19日生まれの蟹座放課後シリーズ渡辺ミサコのいとこで、ミサコより3歳下。
15歳で母を亡くし父と弟とL.A.に移住するはずだったが、自らの意思で日本に残り渋谷区の代々木で祖母と暮らしている。
入学前に麦倉ナオトに一目惚れし、その後彼が自分の許婚者であると同時に自分が入学する都立T高の新任教師と知る。やがて両思いになるがお互いの立場上公表できない。ただし、本当は秘密をきちんと公表したいと考えている。
身長156センチでストレートのロングヘアの持ち主。図らずも男子によくモテるが、基本的に真面目で優等生の部類[1]に入り、2年生からはクラス委員に選ばれている。性格はお人好しで少々卑屈だが思いやりがあり、更に打たれ強く立ち直りも早い。ただし限界を超えたり他人の危機を見かけたりすると、とんでもない行動に出て周囲を驚かせる。
星座占いには懐疑的で、それ故痛い目に遭うことも多い。理由としては誕生日が獅子座に近く漠然とした星座占いでは当たらない点が多いため。多くの事件を解決し、精神的に著しく成長するが、「へびつかい座」(高3の8月)においても星座を信じていない様子。
麦倉先生の出身校であるW大志望で、将来の夢はカウンセラー。
麦倉 ナオト(むぎくら なおと)
本名は直人。ノリミより8歳上で3月31日生まれの牡羊座。ノリミの通う都立T高の国語教師で天文部の顧問。
伊豆諸島の新島出身。月島の高校を経てW大卒業、ノリミの入学と同時にT高に赴任する。
中学生[2]の頃、かつて相思相愛だった彼の祖父(故人)とノリミの祖母によってノリミの許婚者となる。女所帯を不安視するノリミの祖母の願いもあり、大野家でノリミの父の部屋を借り暮らしている。
身長183センチの好青年で女性によくモテるが、祖母麦倉うらら[3]と同じ火の星座の女性は苦手。
星座にはまったのは、高校時代の片思いだった女子生徒の影響。彼女が通っていた占星術の佐郷先生に師事し本格的に学ぶ[4]
少々気弱なところがありノリミ以上に秘密がバレることを恐れているが、事件を解決できるのは事実上彼だけであり、場合によっては本来の腕力や行動力を見せる。
彼もまた多くの事件を通じて教師としても一人の男性としても成長していく。
山本 リョウ(やまもと りょう)
本名は。5月22日生まれの双子座。中学からのノリミのクラスメート。モノクロでは髪色がトーン処理の小柄な少年。第1部の「蟹座」(高2の10〜11月)では主役を務める。モデルは著者自身で、名前はデビュー前のペンネームに由来。両親は小型スーパー経営のため留守がち。4つ上の兄シュウがいる。
中学のときは委員長などを務めていたが、高校入学後は不真面目な言動が目立つ。一応陸上部所属だが幽霊部員。
ノリミのことが大好きで毎回アタックするが、その都度不埒な行為に出ては誰かに制裁され失敗する。その彼が最も恐れることは「ノリミに完全に振られ、忘れられてしまうこと」であり、彼女に少しでも拒絶される[5]とその都度酷く落ち込む。
彼が主役の「蟹座」では中盤以降本来の公正な判断力や社交力を発揮し意外な活躍を見せるが、同時にノリミから身を引く必要があることも暗示される。また、人知れず一連の行為を酷く後悔し、良心と恋心の間で苦悩している場面も見られる。
しかしなかなか諦めきれず不埒を続けた結果、ノリミに自分を突き放すきっかけと勇気を与えてしまう[6]
岸 幹世(きし みきよ)
ノリミの中学時代からの親友で、リョウとは小学時代からの遊び仲間。星座は牡羊座だが誕生日は不明。
女子にしては長身で、黒髪をセミショートのワンレングス。
高校ではノリミと同じ天文部員。学力優秀で優等生である。
小さい頃から遊び相手の多くは男子だったこともあり、性格は勝気で男勝り。目上にも容赦ない言動で一部からは不良少女と恐れられているが、普段は明るく面倒見も良い。
麦倉先生のことが大好きで、強引なアタックでノリミを心配させるが、当の麦倉先生からは彼の祖母と同じ火の星座を理由に内心苦手に思われている。しかし「蟹座」で非常に打たれ弱いことが発覚、この時強くなったノリミが自分から離れていく不安を口外している。
3年になると進路の違いからノリミたちと別行動が増え、受験シーズンが本格化する「へびつかい座」では姿を見せず、名前が出るだけになる。
細川 朱子(ほそかわ あかね)
「冒険少女編」のシンボルキャラクター。4月4日生まれの牡羊座。奈良の名家のお嬢様で、婿養子を取ることが決まっている。
両親は仕事で海外を飛び回っており、家では祖父と二人暮らし。幼稚園からずっと女子校で、良くも悪くも男子をほとんど知らずに育つ。
窮屈な生活が嫌で家出、渋谷までやって来る。実は担任が麦倉先生の大学時代の友人で、ノリミたちの秘密を知っている[7]
外見はリョウと同じ髪色のショートボブが特徴。明朗快活で行動力と社交力が高く、ノリミとすぐ親しくなる。
7月のある日事件に巻き込まれたの機に逃げてばかりだったこれまでの日々を自省する。
連城 龍希(れんじょう たつき)
「本格推理編」のシンボルキャラクター。高校生だがプロのミステリー作家で、幹世が彼の作品の大ファン。誕生日は不明だが星座は射手座
幼い頃に両親を亡くし、中学までは施設で育つ。猛勉強の末、進学校として知られるP学園に学費免除で入学する。その後公募のミステリー大賞で大賞を受賞、プロデビューしてヒット作を連発、自活できるまでになるが、執筆のために寝坊が多く1年落第している。なお、学園では作家活動の事を内緒にしている。
外見は麦倉先生をやや幼くした感じでモノクロではスミベタの長髪を後ろで結わえている。性格は利発で正義感が強い反面、少々生意気で軽薄な部分もあるため余計な敵を作りやすく、思わぬ相手まで敵に回してしまう。

脚注[編集]

  1. ^ 「へびつかい座」(高3の8月)では数学の偏差値が64と判明。
  2. ^ 当時ノリミは幼稚園児。
  3. ^ 「火の星座」(高3の4月)に登場。
  4. ^ 「ライブラ」(高2の7〜8月)より。
  5. ^ ノリミも話が進むにつれ、「私、リョウ君のお嫁さんにはならない」、「犯人よりリョウ君の方が怖いよ」などと明言している。
  6. ^ 「レオ」(高3の7月)より。
  7. ^ 「アリエス」(高2の1月)より。