コンテンツにスキップ

日本漢字能力検定

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。或野 吟山 (会話 | 投稿記録) による 2011年8月21日 (日) 20:14個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (→‎概要)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

日本漢字能力検定
英名 The Japan Kanji Aptitude Test
略称 漢検・漢字検定
実施国 日本の旗 日本
資格種類 民間資格
分野 教養・教育
試験形式 筆記・CBT
認定団体 日本漢字能力検定協会
認定開始年月日 1992年
等級・称号 10 - 1級 (全12級)
公式サイト http://www.kanken.or.jp/index.html
ウィキプロジェクト ウィキプロジェクト 資格
ウィキポータル ウィキポータル 資格
テンプレートを表示

日本漢字能力検定(にほんかんじのうりょくけんてい)は財団法人日本漢字能力検定協会が実施する漢字能力に関する検定である。一般に漢字検定または漢検と呼ばれる。 以前は文部科学省が後援していたが、現在は後援していない。

概要

検定級

括弧内のレベルは日本漢字能力検定協会公表のものである。 2010年(平成22年)11月30日付の常用漢字表の変更に伴い、以下の内容で行われるのは平成23年度実施分まで。平成24年度以降は新しい常用漢字表に対応する。

1級(大学・一般程度、対象漢字数5657字)
程度 常用漢字を含めて、約6000字の漢字の音・訓を理解し、文章の中で適切に使えるようにする。
領域―読むことと書くこと 常用漢字の音・訓を含めて、約6000字の漢字を読み、その大体が書ける。

  • 熟字訓当て字、対義語、類義語、同音・同訓異字などを理解すること
  • 典拠のある四字熟語を理解すること
  • 国字を書くこと(怺える、毟る など)
  • 地名・国名等の漢字表記(当て字の一種)を読むこと
  • 常用漢字体と旧字体との関連を知ること

領域―故事・諺 故事成語・諺を正しく理解する。
※約6000字の漢字は、JIS第二水準を目安とする。

ただし、上記の出題範囲のうち、平成14年度第3回からは、「地名・国名等の漢字表記(当て字の一種)を読むこと」と「常用漢字体と旧字体との関連を知ること」に関する問題が出題されなくなった。一方、動植物名その他の熟字訓・当て字の読みを問う問題は依然として出題されている。

一般的には用いない難解な漢字や読みが多く出題される。

準1級(大学・一般程度、対象漢字数2958字)
程度 常用漢字を中心とし、約3000字の漢字の音・訓を理解し、文章の中で適切に使えるようにする。
領域―読むことと書くこと 常用漢字の音・訓を含めて、約3000字の漢字を読み、その大体が書ける。

  • 熟字訓、当て字、対義語、類義語、同音・同訓異字などを理解すること
  • 典拠のある四字熟語を理解すること
  • 国字を読むこと(峠、凧、畠 など)
  • 表外漢字を常用漢字に書き換えること

領域―故事・諺 故事成語・諺を正しく理解する。
※約3000字の漢字は、JIS第一水準を目安とする。

ただし、上記の出題範囲のうち、平成18年度第1回からは、「表外漢字を常用漢字に書き換えること」の代わりに、二つの文に共通して用いられる常用漢字1字を答える問題が出題されている。1級同様、一般的には用いない漢字や読みが多く出題されるが、1級よりは比較的使用頻度の高いものが多い。2010年11月に常用漢字が196字増えたが、このうち168字が準1級配当漢字である。

2級(高校卒業・大学・一般程度、対象漢字数1945字 他に人名用漢字)
程度 小学校・中学校・高等学校で学習する常用漢字を理解し、文章の中で適切に使えるようにする。人名用漢字も読めるようにする。
領域―読むことと書くこと すべての常用漢字の読み書きに慣れる。特に高等学校で学習する音・訓を身につけ文章の中で適切に使えるようにする。

  • 熟字訓、当て字を理解すること(海女/あま、玄人/くろうと、祝詞/のりと、寄席/よせ など)
  • 対義語、類義語、同音・同訓異字などを理解すること
  • 典拠のある四字熟語を理解すること(鶏口牛後、呉越同舟 など)

領域―部首 部首の理解を深め、熟語の構成と意味を把握する。

ただし、人名用漢字そのものに関する出題は、現時点ではない。しかし、人名用漢字が問題文の中に現れることはある。

準2級(高校在学程度、対象漢字数1945字)
程度 小学校・中学校で学習する常用漢字の大体を理解し、文章の中で適切に使えるようにする。
領域―読むことと書くこと 常用漢字の大体が読める。特に中学校で学習する音・訓を身につける。学年別漢字配当表の漢字およびその他の常用漢字300字程度を身につけ、文章の中で適切に使えるようにする。

  • 熟字訓、当て字を理解すること(硫黄/いおう、相撲/すもう、草履/ぞうり、凸凹/でこぼこ など)
  • 対義語、類義語、同音・同訓異字などを理解すること
  • 典拠のある四字熟語を理解すること(驚天動地、孤立無援 など)

領域―部首 部首の理解を深め、正しく識別する。

3級(中学校卒業程度、対象漢字数1608字)
程度 小学校学年別漢字配当表のすべての漢字と、その他の常用漢字600字程度を理解し、文章の中で適切に使えるようにする。
領域―読むことと書くこと 約1600字の漢字が読める。学年別漢字配当表の漢字を身につけ、文章の中で適切に使えるようにする。

  • 音読みと訓読みを正しく理解すること
  • 熟字訓、当て字を理解すること(乙女/おとめ、風邪/かぜ、足袋/たび、雪崩/なだれ など)
  • 対義語、類義語、同音・同訓異字を正しく理解すること
  • 熟語の構成、四字熟語を正しく理解すること
  • 送り仮名や仮名遣いに注意して正しく書くこと

領域―部首 部首を理解し、漢和辞典の使用に慣れる。

4級(中学校在学程度、対象漢字数1322字)
程度 小学校学年別漢字配当表のすべての漢字と、その他の常用漢字300字程度を理解し、文章の中で適切に使えるようにする。
領域―読むことと書くこと 約1300字の漢字が読める。学年別漢字配当表の漢字のうち900字程度の漢字を書き、文章の中で適切に使えるようにする。

  • 音読みと訓読みを正しく理解すること
  • 熟字訓、当て字を理解すること(小豆/あずき、時雨/しぐれ、土産/みやげ、大和/やまと など)
  • 対義語、類義語、同音・同訓異字を正しく理解すること
  • 熟語の構成、四字熟語を理解すること
  • 送り仮名や仮名遣いに注意して正しく書くこと

領域―部首 部首を理解し、漢和辞典の使用に慣れる。

5級(小学校6年生修了程度、対象漢字数1006字)
程度 小学校第6学年までの学習漢字を理解し、文章の中で漢字が果たしている役割に対する知識を深め、漢字を文章の中で適切に使えるようにする。
領域―読むことと書くこと 小学校第6学年までの学習漢字を読み、またその大体を書くことができる。

  • 音読みと訓読みを正しく理解すること
  • 対義語、類義語、同音・同訓異字、四字熟語を正しく理解すること(豊年満作、郷土芸能 など)
  • 熟語の構成を知ること
  • 送り仮名や仮名遣いに注意して正しく書くこと

領域―筆順 筆順を正しく理解する。
領域―部首 漢字の形を理解する。

6級(小学校5年生修了程度、対象漢字数825字)
程度 小学校第5学年までの学習漢字を理解し、文章の中で漢字が果たしている役割を知り、正しく使えるようにする。
領域―読むことと書くこと 小学校第5学年までの学習漢字を読み、またその大体を書くことができる。

  • 音読みと訓読みを正しく理解すること
  • 対義語、類義語の大体がわかること(欠点―短所、死去―他界 など)
  • 同音・同訓異字、三字熟語を正しく理解すること
  • 熟語の構成を知ること(日照、上下、美人、読書、不明 など)
  • 送り仮名や仮名遣いに注意して正しく書くこと(等しい、短い など)

領域―筆順 筆順、総画を理解する。
領域―部首 主な部首を理解する。

7級(小学校4年生修了程度、対象漢字数640字)
程度 小学校第4学年までの学習漢字を理解し、文章の中で正しく使えるようにする。
領域―読むことと書くこと 小学校第4学年までの学習漢字を読み、またその大体を書くことができる。

  • 音読みと訓読みを正しく理解すること
  • 対義語の大体がわかること(入学―卒業、得点―失点 など)
  • 同音異字を理解すること(健校、告、外 など)
  • 三字熟語を理解すること(百貨店、軽音楽 など)
  • 送り仮名に注意して正しく書くこと(落ちる、登る、放す など)

領域―筆順 点画にも注意する。
領域―部首 あし、かまえ、にょうを理解する。

8級(小学校3年生修了程度、対象漢字数440字)
程度 小学校第3学年までの学習漢字を理解し、文や文章の中で使えるようにする。
領域―読むことと書くこと 小学校第3学年までの学習漢字を読み、またその大体を書くことができる。

  • 音読みと訓読みを理解すること
  • 対義語の大体がわかること(勝つ―負ける、重い―軽い など)
  • 送り仮名に注意して書くこと(当たる、楽しい、後ろ など)

領域―筆順 筆順、総画を正しく理解する。
領域―部首 へん、かんむり、つくりなどを理解する。

9級(小学校2年生修了程度、対象漢字数240字)
程度 小学校第2学年までの学習漢字を理解し、文や文章の中で使えるようにする。
領域―読むことと書くこと 小学校第2学年までの学習漢字を読み、またその大体を書くことができる。
領域―筆順 点画の長短、接し方や交わり方、筆順および総画を理解する。

10級(小学校1年生修了程度、対象漢字数80字)
程度 小学校第1学年の学習漢字を理解し、文や文章の中で使えるようにする。
領域―読むことと書くこと 小学校第1学年の学習漢字を読み、またその大体を書くことができる。
領域―筆順 点画の長短、接し方や交わり方、筆順および総画を理解する。

合格基準

協会の発表によると、平成18年度第1回検定以降では、以下のようになっている。

満点 基準得点
1級、準1級、2級 200点 80%程度
準2級、3級、4級、5級、6級、7級 200点 70%程度
8級、9級、10級 150点 80%程度

なお、合格基準に達していない場合でも合格になることがある。具体的に言えば、協会が想定していた合格率・平均点と誤差が生じた際、合格点は数点程度基準点より下がることがある(2級の場合、ここ数年は155点以上で合格のことが多い)。一方で受験者数の少ない1級・準1級の場合はこの制度は事実上適用されておらず、合格基準の160点を1点でも下回っていた場合は不合格となる。

受検者の増加と社会的な傾向

2000年以降、急激に受検者が増加する。例えば2001年(平成13年)度の受検者数は180万人程度だったが、2007年(平成19年)度には270万人以上[3]となった。これに合わせ、協会のロゴマークは2007年(平成19年)度より「250万人の漢検」となった。しかし、一連の不祥事およびそれに伴う受検者数の減少により、現在は「250万人の漢検」ロゴは用いられていない。

漢検の級所持者を優遇する企業・学校がある一方、アナウンサーに対して入社前に2級以上を取得義務として課しているテレビ局もある。また、漢字の読み書きが脳の訓練にも効果を発揮し、認知症防止に役立つことが提唱されることもある。『今すぐ使える豆知識 クイズ雑学王』、『パネルクイズ アタック25』、『ネプリーグ』、『熱血!平成教育学院』、『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』など漢字の問題を扱うテレビ番組が増えている。また、漢字ゲームソフトとしてニンテンドーDS任天堂)というタッチペンにより直接漢字が入力できる携帯ゲーム機対応の協会公式ソフト・協会公認ソフト・協会協力ソフトが人気を集めている。また、加納喜光、出口宗和らによる『読めそうで読めない漢字』などの難読漢字に関する著書がベストセラーとなっている。

その他

  • 受検方法
    • 個人受検の場合、年3回(6月、10月又は11月、1月又は2月、いずれも日曜日)開かれ、公開会場で受検する。公開会場は、日本全国の主要都市約124ヶ所と海外約13ヶ所に設置されている。
    • 団体受検の場合、準会場や団体公開会場で受検する。準会場は、協会が別途定める条件を満たす団体であれば、受検者が10人以上いる場合に設置可能。
    • 1級・準1級受検志願者は、公開会場用願書が必要である。
  • 検定の対象範囲
    • 1級の場合、実際には検定対象にわずかながらもJIS第3・第4水準の漢字も含まれており、一方でJIS第2水準の一部は含まれていない。
    • 2級の出題範囲の人名用漢字については1997年(平成9年)12月3日に改定された285字が対象。2004年(平成16年)9月27日より追加された698字は対象とされない。
  • 特別表彰
    • 団体受検において、受検者が100人以上の場合は成績優秀者に「団体内賞」が授与される。
    • 平成22年度第2回検定より「満点賞」が創設された。これは検定時に全問正解し満点合格した受検者を表彰する制度で、対象者には合格証書などと同時に「満点賞」の賞状が授与される。
  • その他
    • 以前の児童漢検初9級・初10級相当分が、現在は漢字検定9級・10級に編入されている。
    • 1級・準1級に合格すると、「日本語教育研究所」から「客員研究員」の応募用紙が賞状と一緒に送られてくることがある。これに応募するには好きな常用漢字を1字選び理由などを400字詰め原稿用紙6枚以内にまとめ、日本語教育研究所に送る。このとき新しくもらった賞状に加え、過去3回分の賞状に書かれている左端の番号を記入する必要がある。

漢検CBT

パソコンを使って受検する、漢検CBTというコンピューターテストが実施されている。自己の都合に合わせて受検でき、また結果の通知が早いというメリットがある。以下にその概要を解説する。

  • 受検可能な級は2〜7級。
  • 検定日は月に1回〜毎日。検定会場によって異なる。事前予約制で定員がある。
  • 解答は、漢字の読み問題はキーボードを(文字変換機能は無効にされている)、書き取り問題はペンタブレットを用いる。
  • 出題範囲や内容、難易度、合格基準は、従来の筆記による検定と同じである。
  • 合格者は一般の漢検と同じ認定が得られる(例えば漢検CBT2級合格者は、漢検2級合格扱いになる)。
  • 合格発表は、会場によっては、試験施行後1週間以内(最速5日後)に通知される。

詳細は財団法人 日本漢字能力検定協会のサイトを参照

合格証書番号例

  • 第一〇一四三〇〇〇〇〇〇〇号
    • 一〇→実施年 一四→試験回数 三→受験級 〇〇〇〇〇〇〇→証書番号

脚注

  1. ^ 例えば、『漢検ジャーナルVol.1 2010年 秋号』22ページの『日本漢字能力検定1級合格者発表』には、平成20年度第3回から平成21年度第3回まで検定4回分の1級合格者名(掲載了承者のみ)が記されているが、違う回に同所在地・同名の合格者が存在しているのが見て取れる。なおリピーターの意見として、例えば2010年12月5日放送の「熱血!平成教育学院」には連続5回1級に合格した中学生(合格回数・職業は放送時のもの)がゲスト出演し、連続して受検した理由として「1回の試験では全対象漢字が出ることはないので、何回も受けて色々な問題を知りたかった」と述べている。
  2. ^ 日本の古典文学や、昔の中国の漢文いわゆる漢籍(訓読文)からの出題が多い。また、医学哲学の専門用語、仏教用語など、日常生活上は馴染みの薄い単語も出題される。
  3. ^ 『日本漢字能力検定 過去問題集 1・準1級 平成14年度版』14ページ、『漢検過去問題集 1/準1級 平成20年度版』別冊14ページ

関連項目

外部リンク